日々の泡。

popholic diary

2024年1月6日~12日の話。

2024/1/6

朝のうちに日記を書いてから京都まで出る。まずは腹ごしらえ。バーガーキングでスモーキーBBQワッパーのセット。これが美味しくて年末から食べたいと思ってたので大満足。バーガーキングは肉が香ばしく焼かれていて野菜もたっぷりで食べ応えあり。アプリのクーポンを使えばかなり安く食べられるしでここんとこすっかりファンに。

映画まで少し時間があったので丸善で本を物色。地元のT書店はベストセラー本ばかりの品揃えで本屋好きとしてはかなり辛いのだが、さすが丸善さんはいい本屋だな。でムーンライダーズ鈴木慶一さんのインタビュー本、宗像明将「72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶」購入。こういう本がT書店には売ってないんだよなー。

でMOVIX京都にてオム・テファ監督「コンクリートユートピア」を観る。大災害により一瞬にして街は崩壊、唯一残ったのは一棟のアパート。家を失った人々がアパートに押し寄せる中、アパートの住民たちは自警団を結成する。リーダーに指名されたのは職業不明の冴えない男、ヨンタク。防犯隊長に任命されたのは役所勤めで妻を愛する優しい男、ミンソク。彼ら自警団はアパートの住民たちを守るため、生き残るために、部外者をアパートから追い出し、食料などを探しに街を探索する。やがて住民たちの間にヒエラルキーが生まれ、絶対的な権力を手にしたヨンタクは徐々に狂気を浮き上がらせていく。心優しきミンソクまでも極限状態の中でヨンタクに傾倒していく。社会が崩壊した後に、再構築されていく秩序。富み、強いものが力を持ち、持たざる者を支配していく。「火事場泥棒を殺せ」と行動するヨンタクだが、そこには裏があった。彼こそが混乱のどさくさで権力を手にした火事場泥棒なのだ。地獄の先の地獄。暴走した正義が善意を踏み潰していく様が描かれていく。いやぁ唸った。今、震災の起こった真っただ中で起こっていることと重なっていく。ここで描かれる地獄は、今「X」上で起こっている地獄とそっくりだ。デマが飛び交いヘイトに乗っかったいかれた正義が善意を叩く。地獄の先に待ち受けるのはさらなる地獄なのだ。

ヨンタクを演じるのはイ・ビョンホン!韓国を代表するイケメンにして名優。情けなく胡散臭い男から狂気を宿しいかれたリーダーとなっていく様を見事に演じている。俺と同い年の大スター、イ・ビョンホンに外れ無し!ミンソクを演じるはイ・ビョンホンに続いてハリウッドにも進出した次世代の大スター、パク・ソジュン。妻を愛する心優しき男が狂った正義に心をのっとられていく。ミンソクの妻を演じるのはパク・ボヨン。善意と正気を失わずにいる彼女の存在が地獄の中の唯一の光となり希望に繋がっていく。

ということで時期的に辛い映像もあるが、人間の怖さを捉えた傑作であった。

アップリンク京都まで移動してもう一本。滝本憲吾監督「笑いのカイブツ」を観る。大喜利番組でレジェンドの称号を得、深夜ラジオのハガキ職人からフックアップされ構成作家に。ツチヤタカユキによる自伝小説を映画化。ただただ笑いに憑りつかれた男の激しくも不器用に過ぎる生き様が描かれる。あまりに「笑い」だけを追い求めるが故、「人間関係不得意」で関係を壊し、恩を仇で返してしまう主人公。狂気の側に引っ張られ「笑い」だけで生きる激しさは共感すら拒絶する。だけどその激しさに目が離せなくなる。主演の岡山天音が素晴らしい。笑いという地獄の底から世を睨みつける目が良い。熱く痛い青春映画の良作!あと映画上で仲野太賀、板橋駿谷によって演じられる漫才がちゃんとおもしろい。漫才指導は令和ロマンだとか。

2024/1/7

朝から買い物へ行ってうどんの昼食。乾燥小豆があったのでなんとなくあんこを作る。父や祖母は甘いもの好きだったので母はよく家であんこを作ってくれた。おはぎにしたり善哉にしたり、父はよくあんトーストにして食べてたな。完全にその血を受け継ぎ僕も甘いものに目がない。特にあんこが大好きで、最後の晩餐は何がいい?との問いにはおはぎ(冬場は善哉)と答えるほどだ。で餅を温めあんころ餅にして食べる。美味しい。

アマプラで公開時に見逃していたジェラード・ジョンストン監督「M3GAN/ミーガン」を観る。交通事故で両親を亡くした9歳の姪ケイディを引き取ることになったジェマ。AIの研究者である彼女は開発途中のAI人形「M3GAN(ミーガン)」に「ケイディを守るように」と指示しケイディに与えることに。やがてケイディはAI人形であるミーガンに依存、そしてミーガンはケイディを守るために暴走していくってな話。もはやスマホを手放せなくなってしまった現代人、自分に合ったサービスを提供してくれるスマホに依存しやがて現実の世界よりものめり込んでしまう恐怖。娘が高校生になった時にスマホを与えたのだが、日がな一日スマホを手にしてる娘に手を焼いた。自分の好みによって形成されていくAI人形は誰よりも自分のことをわかってくれる。それは錯覚なのだが、その心地よさを味わってしまうと後戻りができない。そんな恐怖をベースにさらにミーガンは守護神として暴走していく。ま、最終的には笑っちゃうレベルまでやり過ぎちゃって、ホラーとコメディの紙一重ぶりが面白い。最新型のB級ムービー。

夜、配信アーカイブ水道橋博士×モルモット吉田×アル北郷with篠崎誠監督による北野映画語り「アフタークリスマス!! Mr.TAKESHI監督!!」視聴。「首」の構想ノートから「VS桑田佳祐」、そして「その男、凶暴につき」最初期から紆余曲折ありまくっての奇跡的な着地までの秘話に次ぐ秘話には驚いた。北野武監督、主演に落ち着くまでに松本人志主演構想まであったとは。それにしても出演者皆のたけし愛が凄い。まさに男が惚れる男、「殿、かっこいい!」が溢れまくっていて、それは観ているこちらにも伝播する。

2024/1/8

今日は1日家の中。TVerで見損ねていた番組などを色々見たり、鈴木慶一本「72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶」を読み進めたり、うとうとと昼寝したり。

アマプラで映画を一本。ユン・ジェグン監督「スピリットウォーカー」観る。交通事故の現場で目覚めた男。すべての記憶を失い、自分が誰だかわからない。鏡の中の自分の顔すらしっくりとこない。そして再び気を失い目を覚ますとまた見知らぬ場所。鏡に映る自分はまた違う顔になっていた。彼は12時間ごとに別人に入れ替わっていることに気付く。本当の自分は誰なのか、巨大な陰謀に巻き込まれながら彼はその謎を追いかける。いやはやよくまぁこんな荒唐無稽な話を思いつく。魂の自分と肉体の自分。主人公を演じるのはユン・ゲサン。構造上、一人の人物をユン・ゲサンと乗り移った先の人物を演じる俳優の二人が演じ、それが入れ替わっていくという複雑さなのだが、巧みな演出と見せ方で混乱を防ぎ、一つの魂が幾人かの肉体に乗り移っていくという仕掛けを見事に表現していた。複雑に張り巡らされた謎が一本の線となり収拾していくストーリーも面白い。すでにハリウッドリメイクも決定だとか。アイデアがいいやね。

2024/1/9

先日の北野映画語りがあまりに面白かったので、voicyアプリをDLして「アル北郷の朝礼ラジオ」を聴き始める。一映画ファンとして観てきた北野映画について、そして弟子入りし殿の付き人として至近距離から観てきた北野映画について1作ごとに語っていく。北郷さんは1歳違いの同年代なので、聴いているとその時代の空気や自分のいた場所なんかがふいに思い出される。通勤のお供にちょうどいいな。

2024/1/10

勉強不足で知らなかったのだけど、タイタン所属の若い芸人さんでありながら切れ味鋭い論客としてドラマ語りや映画語りでも大人気だという大島育宙と言う人の「松本人志大日本人論」を聴く。松本人志の「大きさ」への執着。なるほど、おもしろい。映画「大日本人」は2007年6月5日(こういう時、日記を残してると便利)に観た。その時の第一印象は映画、巧いな!で以降の作品い期待を寄せている。

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だがその後松本人志映画は尻すぼみになっていく。でそれと反比例するようにマッチョ化しテレビ、芸能の世界でさらに権威を巨大化させていく。

水曜日のダウンタウン」観る。自分の中で松本人志の存在がノイズになっている。

2024/1/11

TVerで「世界仰天ニュース~赤木ファイル」を観る。つくづく酷い話で今もまだ現在進行形で続いている酷い話だ。こうしてTVで取り上げることができるようになったのは一歩前進だが、まだまだ足りない。どんな悪いことをしても政治家は法で裁かれることがない。そんなクソみたいな国に今この国は成り下がっている。まだまだまだまだ足りないのだ。僕たちはもっともっと政権の不正に対して怒らなきゃいけない。本当に国を愛するのならば。

2024/1/12

夜、配信アーカイブ水道橋博士×モルモット吉田×アル北郷with篠崎誠監督「北野映画を語ろうVol.2」を観る。90年代の北野映画について、「3-4x10月」「あの夏、いちばん静かな海」「ソナチネ」「みんな~やってるか」から「キッズリターン」へ。助監督などで現場を観てきた篠崎監督による「ソナチネ」のラストシーンについてなど今回も見応えたっぷり。そして「キッズリターン」まさに北野武そのものの物語で、なぜこの映画がこんなにも胸を打つのかがわかる。出演者の一人であるお宮の松さんからの長い手紙。「ビートたけしの優しい夜」に貫かれたエピソードの数々。博士さん、北郷さんの涙に思わずもらい泣き。

「強きを助け、弱きを憎む」とはタケちゃんマンの歌の一節だが、実際の北野武は真逆で常に強きを憎み弱きを助ける人だ。何度も何度も倒れながら常に砂を掴んで立ち上がる。テレビで天下を取った後もそこで権威を巨大化させるわけではなく、より大きな世界で学び実践し、より巨大な権威に挑んでいく。より上の、より強い方を睨みつけそこに挑んでいくのだ。その一方で彼には自分を慕う者たち、弱き者たちへの優しい眼差しが常にある。

映画に挑んだものの学ぶことなく撤退した松本人志は自分自身が強い者でいられる場所でより力を強大にしていった。

博士さんが以前に書かれていた松本人志と自分を比べビートたけしが呟いた言葉

「でもな、俺の方がより凶暴で、俺の方がよりやさしい」

くーっ!殿、かっこいい!