2025/1/18
土曜。休日。ゆっくり朝ご飯を食べて、いつものごとく映画館へ。MOVIX京都まで出てパク・ジンピョ監督「勇敢な市民」を観る。非正規採用で高校に赴任してきた女性教員、ソ・シミン。正規雇用を勝ち取るため、何事も見ざる聞かざるで受け流すことに徹する。だがその高校は権力者の息子スガンが生徒はもちろん教師たちすら支配していた。スガンの激しいいじめを目の当たりにし自分を抑えきれなくなったシミンは猫の仮面をかぶりスガンに立ち向かう。実はシミンは元ボクシングチャンピオンなのだった。Webコミック原作ということもありマンガチックではあるのだが権力と暴力で弱者を踏みにじり支配する悪人を、小市民=ソ・シミンが傷つきながらもぶちのめす展開は嫌でも盛り上がる。弱きを助け強きをくじく。映画ぐらいは正しくあって欲しい。シミンを演じるシン・ヘソンのチャーミングな演技とシャープなアクションがとても良い。足を高々と上げて繰り出すハイキックの華麗さたるや。
2本目どうしようかと一旦アップリンクまで行くがお目当ての映画は完売。先にネットで買っとくべきだった。で第二候補で京都シネマまで。その間に日乃屋カレーでカツカレー。安心感のあるカレー。
でエレネ・ナヴェリアニ監督「ブラックバード、ブラックベリー、私は私。」を観る。48歳の女性エテロ。両親と兄を亡くし日用品店を営みながら一人で生きている。独身であることから村の女たちからは何かと噂されるエテロだが、強権的だった父と兄の影響で結婚したいとは思ったことはない。そんなある日、崖から足を滑らせ死を意識したことから、突発的に配達員のムルマンと肉体関係を結ぶ。48歳にして初体験を済ませたエテロ。そして人生が動き出す。生と死と性を巡るエテロの物語。誰にも媚びることなく正々堂々と自分を生きる彼女は一人だけど孤独じゃない。彼女は自由で自立しているのだ。中高年女性を主人公とした映画。私たちは居るし、今までもずっと居た。そんな挑発を感じる映画だった。
夜はライブ配信を観る。昨晩行われた「コーヒーハウス・モナレコーズ」出演は小西康陽、髙浪慶太郎!もうこの二人の名前が並ぶだけで涙ちょちょぎれる。この二人の名前を知ったのは中学生の頃だ。ピチカートVのデビュー12インチ「オードリィ・ヘプバーン・コンプレックス」。大好きになったその曲のクレジット、作詞・小西康陽、作曲・高浪慶太郎。このコンビが残した数々の名曲にどれだけ痺れたか。ピチカートは様々にスタイルを変えてきたし、高浪さんは途中で脱退することになるんだけどやっぱりこの二人が僕にとっては大好きなピチカートファイブだ。しかしこの二人が共演することはもうないのだろうなとなんとなく思っていた。小西さんの本で名前こそ直接的には書いてないが明らかに高浪さんのソロ作をけちょんけちょんにくさしてるのを読んだ時はちょっとショックだった。でもそれが実に小西さんらしく、まさに二人は「音楽」で繋がっていたのだなと思ったもんだ。そして自ら歌い出した小西さんと高浪さんの再びの邂逅。2人がステージに並んで座り、一曲ずつ交互に弾き語りしていく。ピチカート時代にはありえなかったステージだ。都会的で洒落た高浪さん曲。初期ピチカートはこの高浪さんのソングライティング力が牽引していたと思う。心地よく耳に響くソフトなヴォーカルもやっぱり良い。そしてもはや名人芸となってきた小西さんの弾き語り。歌と喋りが繋がって楽しい。お互いの曲を歌い合う二人。若き日から音楽で繋がり互いに敬意を持つ二人のマジカルコネクションに感動。彼らの音楽を聴いて一発でグッと来た中学生の俺、ナイスジョブ!40年後も彼らの音楽にグッと来てるぜ。
二人の弾き語りを聴きながら、自分も弾き語りしてみたいと思う。大人のたしなみとして弾き語りぐらいできないと、それもオリジナルで。なんて。
2025/1/19
朝、新婚旅行から帰ってきた娘夫婦の迎えに駅まで。でその後はいつものように妻と買い物。昼は昨晩の残り物でさっさと済まし、ゆっくりウトウトしながらテレビ。NETFLIXでドラマ「阿修羅のごとく」を観始める。宮沢りえ、尾野真千子、蒼井優、広瀬すずが4姉妹を演じる。いやもう素晴らしい。向田脚本を是枝監督の下で演じる演技巧者たちの名演ぶりに見入る。かき餅をポリポリ齧りながら、とりとめもなく姉妹の会話が続く、なんてシーンに惹きこまれる。なんというか脚本、演出、演技が見事なアンサンブルで演じてて手応えあるだろうなという感じ。今の時代にはそぐわない表現も当然出てくるが、もはや向田脚本は古典。シェイクスピアを演じるがごとく、この先も実力者集めて何度も何度もドラマ化すればいい。皆素晴らしいが、宮沢りえは本当に良い女優さんになったなと感動する。国民的アイドルだった時代を知っているから、今の姿に感慨もひとしお。
2025/1/20
細田昌志著「格闘技が紅白に勝った日 2003年大晦日興行戦争の記録」読了。2003年大晦日。NHKの国民的番組「紅白」の裏で、日本テレビ、フジテレビ、TBSの3局が格闘技をぶつける。数年前から起こった格闘技人気、その流れの中三つ巴、いや紅白も含め四つ巴の戦争が始まる!本書はその裏側を追っていくのだけれど、いや、これは面白かった。格闘技は門外漢だし、特にこの頃は子育てに追われつつ転職したばっかりで記憶もぼんやりなんだけど、曙VSボブ・サップは確かにリアルタイムで観ていた。その裏にこれだけスリリングな駆け引きが行われていたとは。日本テレビ「INOKI BOM-BA-YE」、フジテレビ「PRIDE 男祭り」、TBS「K-1 Dynamaite!」それぞれの興行会社、TV局が離合を繰り返しながら複雑に絡み合い、騙し騙され出し抜き出し抜かれのまさに狂騒曲を繰り広げる。当事者たちの声を基にその絡まった糸をほどきながら2003年の熱狂を浮かび上がらせていく。紆余曲折の上で曙を引っ張り出すミッションインポッシブル感や狡猾なTV局、杜撰な計画を綱渡りで渡っていく興行のスリリングさ、そして特にそれぞれの思惑とドタバタが大晦日に一気に流れ込んでいく様は圧巻。ゴングが無い騒動やある大物ミュージシャンのどさくさ紛れの大ペテン、影のMVPとなる美川憲一の一言など極上かつ壮大な喜劇を見ているよう。TV史上初めて紅白が裏番組に視聴率で抜かれた4分間、最高視聴率43%をはじき出す曙がサップに倒された瞬間の昂揚感。そしてその後の夢の跡。生々しい未払金の羅列には背筋が凍る。喜劇のような悲劇、あるいは悲劇のような喜劇。夢とロマンと欲望が詰まった仁義なき戦い。というか仁義にがんじがらめになりながらその隙間に出来た綻びから取り返しのつかないことになっていくという大晦日狂騒曲。最高に面白い一冊!
2025/1/21
TVerでドラマ「御上先生」観る。学園物があまり好きじゃないのでどうしようかなと思いつつ、信頼と実績の松坂桃李主演ということで。パーソナルイズポリティカルというテーマに踏み込んでいくのか。面白くなりそう。
2025/1/22
アメリカはもう完全に悪の組織に乗っ取られたのだなという感じ。邪悪な詐欺師が絶大なる権力を持ち、金の亡者たちがひれ伏す。正義はどこへ。終わりの始まりというか、もう終わり。
で日本はどうかというとまぁその先を行っていたわけだけど。テレビやSNSの喧噪。被害者面する加害者にげんなり。
2025/1/23
久々の東京出張。とはいえ日帰りで会議こなしてとんぼ返り。何回来ても東京駅はややこしく、溢れかえる人波に疲れ切る。昼は大手町の地下街でそば。夜は新幹線でまい泉のロースかつ弁当。なんかもうちょっといい選択はできなかったのかと思うが、今の自分ではこれが限界だ。体力の限界!
2025/1/24
朝ドラ「おむすび」なんというかもはや見ていられない状況に。見ていて恥ずかしくなる演技ってが辛い。下手という訳ではないのだけど、そうせざるを得ないという感じで役者がかわいそうにすら思えてくる。逆「阿修羅のごとく」。再放送中の名作「カーネーション」「カムカムエブリバディ」(深津絵里編に突入。深津絵里の可憐なこと!)と比べるとかなり厳しいものがあるな。誰も悪くないのに何もかもがうまくかみ合ってない感じ。
仕事2時間ばかりの休みを取って大阪へ。ビルボードライブ大阪にて小西康陽ライブを。矢舟テツロートリオにギター、チェロを加えた5人編成のバンドとともにアルバム「失恋と得恋」からの曲を中心に、白い髪に髭、コートを着た小西さんが歌う。最高のアレンジと最高のバンド演奏。だが何よりエモーショナルな小西さんの歌に心掴まれた。トークをたっぷり挟みながら自作曲を歌っていく。ピチカート時代の曲や提供曲も「自分で歌うために作っていたのだ」と歌う初老のソングライターの歌声。昔から聴きなれた楽曲も改めてその良さがひしひしと伝わってくる。ラスト歌い踊る小西さん。涙がこみ上げてくるほど楽しかった。笑いながら泣き、泣きながら笑う、ハッピーでサッドな歌。そうずっと好きだった歌だ。