日々の泡。

popholic diary

2023年10月28日~11月3日の話。

2023/10/28

8時前には家を出て本日も休日出勤。屋外でのイベント仕事。4時終了。商店街の床屋によって散髪。もみあげが北大路欣也ばりに白髪だらけなのでスカッと刈り上げ。ちょっと気持ちすっきり。

帰宅してゆっくり新聞読む。書評欄の「なつかしい一冊」選者は玉袋筋太郎さんで山本周五郎青べか物語」。30代前半に出会った本で「山本周五郎に触れることが遅すぎだよ、オレ」と思ったとのこと。今、ちょうど山本周五郎「季節のない街」を読んでいて、50代になって初めての山本周五郎体験してる。まさに「触れるの遅すぎだよ、オレ!」と思っている次第なので興味深く読む。スポットライトに照らされることのない人間たちを「私」の目線から発せられる光線で照らした作品に「私に生きることを教えてくれた大切な一冊」と紹介する玉さんの名文。「恥も外聞もなく生きてぇなぁ~」という締めの一文が良い。次はこの作品を読んでみよう。

2023/10/29

朝から妻と近所でやってる健康フェアへ。健康マニアなところがある妻に付き合って骨密度検査やらマッサージ体験やら歯の健康チェックやらいろいろ回る。

昼から京都へ出る。10月で期限が切れる鑑賞券があったので久々に出町座まで。出町座の定番パターンということでまずは近くのパン屋「ボナペティ」でボストークバゲットのフレンチトースト)、カレーパンにクリームパンを買って、賀茂川の河川敷で昼食。以前は100円均一のパン屋だったがさすがに120円に値上げ。でも十分すぎるほど安い。種類も豊富で味も良いので出町座来るたびに寄っているが、ついつい同じパンばかり買っちゃう。食に関しては政治信条とは真逆に保守派。のんびり河原でパンを食べて映画を観る。自分的にはこれ以上の贅沢はない。毎日こんな風に過ごせたらいいのに。

で出町座で観たのは加藤拓也監督「ほつれる」。夫・文則との関係は冷め切っており、愛人の木村と逢瀬を重ねる綿子。ある日、木村が目の前で交通事故にあい亡くなってしまう。拠り所を無くした綿子の心の機微を描く。関係が綻び、やがてほつれていく様が静かにだけど容赦無く描かれていて実に見応えのあるドラマになっていた。登場人物たちは皆、弱くて狡くて自分勝手。自分に都合よく嘘をつき解釈し他者を断罪する。カメラはそんな人間の人間たるところにフォーカスを当て徹底的に映し出す。俳優陣のまさにミリ単位の演技が凄まじい。主演の門脇麦はもちろん、夫の文則を演じた田村健太郎が絶妙に嫌な感じを漂わせており、素晴らしかった。

で帰宅。入れ違いに妻は娘と祇園花月M-1予選観に行ったので一人の夕食。キャベツを消費すべくお好み焼き。下品なぐらいにソースとマヨネーズをかけて食べる。美味しい。

NHK+で先週の「大奥」仲間由紀恵怖っ!ヒットドラマ数ある仲間由紀恵だけど、自分の興味の範疇からは外れていてほとんど見たことないんだよね。でもこんなに凄味があっていい演技する人なんだと認識。

2023/10/30

TVerで昨日見損ねた「マルコポロリ」観る。サバンナ八木の奇行の数々に笑い転げる。面白いなー

続いて「あちこちオードリー」FUJIWARAゲスト回観る。フジモンは一番当て逃げとかしちゃいけないタイプなのになー。勿体ない。

2023/10/31

弁護士・三輪記子さんのYouTubeチャンネルで夫である樋口毅宏さん、そして町山智浩さん、水道橋博士さんゲスト回を観る。まさに絶賛沈没中の日本という泥船について町山さんの厳しすぎる解説に納得しつつ暗い気持ちになる。

浪人することなく大学に入って4年で卒業。すぐに社会人になって10年目で転職。前の会社の退社日の翌日が今の会社の入社日でそれからさらに20年。すでにサラリーマン生活も30年が過ぎた。まぁ比較的真面目に働いてきた。結婚し、子供が生まれ、なんとか大学にまで行かせてやることができて子育ても終了、マンションのローンも一応は返し終えた。まぁここまで出来たしそろそろサラリーマン卒業したい気分なのだが、なぜか今も全く生活には余裕がない。地方の中小企業、それなりに出世もしたが給料は残念ながら昔思い描いていた金額とは程遠い。なんなら残業代ついてた頃のほうが手取り多かったぐらい。酒もたばこもギャンブルもしないし、ましてや女遊びなどもってのほか。昼は弁当を持っていくし、たまの休みは会員料金で映画を観て、なか卯の親子丼を食べるぐらい。それでもまだこの国では将来に不安が残る。年金もあてにならないし、この先どんな病気するかもわからない。その前に親の介護なども出てくるだろう。搾り取られるだけ搾り取られて、先が見えない。30年真面目に働いて、税金納めて、まだこんなに不安が残るんだ。政治家の給料は上がり、誰も望まない万博に税金が使われる。差別主義者の議員が野放しにされ、カルト教団と関わる政治家はだれ一人辞めない。なんなんだ一体、この絶望しかない泥船は。こんな国に誰がした?

2023/11/1

朝ドラ「ブギウギ」、やはり趣里がいいね。泣き、笑い、歌い、踊る一挙手一投足、ころころ変わる表情に惹きつけられる。

音楽は相変わらず韓国ものを聴いている。今一番ライブが見たいシンガーソングライター、キム・スヨンの新曲「Goodbye」はセンスが光るミディアムなバラードナンバー。キリンジ好きな人とか絶対気に入ると思う。


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で事務所騒動で分裂した「loona/今月の少女」だが、12人のメンバーそれぞれグループやソロとして順調に動き出し結果楽しみが増えた。シャープな3人組「ODD EYE CIRCLE」にキュートでポップな5人組「Loosemble」、今やCMクイーンでありTVバラエティでも大人気のCHUUは意外にもしっかりとボーカルを聞かせるアルバムをリリース。HaSeulはシティポップ風の良曲をリリースしソロコンサートを成功させた。でついにセンター、HeeJinがソロ作をリリース!まさにど真ん中王道路線でMVも気合入ってるねー。グループとしては一旦は分裂したもののメンバー同士のつながりは深く今後再結集もあり得るんじゃないのと言う感じで、ますます目が離せない。


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日本の音楽ではシンガーソングライター、宇宙まおの新作「Far away from」が良い。特に「Purple gray」という曲が詞、メロディ、アレンジ、演奏、歌全てがこれ以上ないぐらいにはまって素晴らしい。ここんとこ毎晩のように聴いている。

2023/11/2

NHK+で今週分の「大奥」観る。今週も素晴らしい。ついに仲間由紀恵が!ライターの西森路代さんがXで韓国映画「お嬢さん」と「インサイダーズ」を引き合いに出されていたが、なるほど確かに。で男女逆転劇がさらにまた逆転してというところで来週へ。面白いなー。

2023/11/3

文化の日。なら映画だ。ということで京阪電車に揺られ京都まで。MOVIXでまずはチェ・グッキ監督「人生は、美しい」を観る。主婦セヨンは役所勤めで亭主関白な夫・ジンボンと高校生の息子、中学生の娘との4人家族。だががんに患い余命宣告を受ける。家族の為に自分を後回しにして生きてきたセヨンだが、生きてるうちにやりたいことをかなえようと初恋の相手を探す旅に出る。離婚を盾に旅に付き合わせられた夫・ジンボンとの最後の旅が始まる。お涙頂戴のベタな粗筋ながら、韓国懐メロを使ったミュージカル仕立てになっていて観ていてとても楽しい。そしてまぁ途中からはボロ泣き。不器用で無愛想、家父長制の古いタイプの夫像はこの先もう描かれることはないだろう。僕と同世代、ここらが最後の世代だろうな。演じるは名優リュ・スンリョン。セヨンを演じるヨム・ジョンアとともに二人が出会った20代からをユーモラスに演じ歌い踊る。二人の出会いや積み重ねた時間、辿った人生が日本人である僕にもなぜか懐かしく感じられる韓国懐メロ歌謡に乗せて描かれる。夫婦が共に過ごし、家族を作り、そして別れが来る。自分も結婚して早28年。いろいろ重なるとこもあり正直、今年一番ぐらい泣いた。刺激的な物語でもないし新しくもお洒落でもないけど、優しく愛しい映画だった。

で映画館を出て丸善書店で欲しかった本を購入。「江口寿史扉絵大全集」と「別冊太陽 小泉今日子」。どっちも地元の本屋には入荷してなかったので。江口寿史小泉今日子。80年代からずっと大好きだけど、二人とも今が最高。でどっちも表紙が素晴らしい。持ってて嬉しくなる。かっこいいなー。

京都シネマでもう一本。残り一席のチケットを無事購入出来て石井裕也監督「月」を見る。洋子は「今は書けなくなった、かっての人気作家」。夫の昌平と二人、慎ましやかに暮らしている。森の奥にある重度障碍者施設で働くことになった洋子。同僚には作家を目指す陽子や絵が得意なさと君などがいた。意思疎通も難しい入所者との日々、そこで観た深い闇。そんな中、さと君からある決意を聞かされる…。実際に起こった障碍者殺傷事件を題材にした辺見庸の小説を映画化。心の闇と簡単には言えない、誰もがどこかで先送りして見ないふりをしている問題。頭では理解している、心でもわかっている。喋れなくとも意思疎通できなくとも人は人であり、その人権は守られるべきだ。生きている限りそれは誰もが同等にかけがえのない命なのだ。と。だが一方で「じゃぁお前が面倒見てやれよ」と言われたらどうする。結局きれいごとを並べてみても、誰かに面倒を見てもらっている。日々の生活の介助に下の世話まで。誰よりも障碍者たちに関わる「さと君」はやがてまっすぐに狂っていく。社会の理不尽を一身に背負い歪んだ理屈を成立させていく。対峙する洋子や昌平だが、彼を説得することができない。言葉を尽くし、想いをぶつけても、彼を説得するには至らない。いくらきれいごとを並べてみても、重度の精神障碍者がまき散らした糞尿、その匂いに顔をしかめ目を背けるしかできないという現実が突き刺さる。それでも、それでもかけがえのない命なのだと映画は静かに叫ぶ。たとえきれいごとと言われたとしても、切実に映画は語り掛ける。宮沢りえ、圧巻の演技である。彼女の自問自答、心の葛藤、苦しみ、切実で誠実な想いが伝わってくる。気が滅入るような難役をこなしたのは信頼と実績の磯村勇斗。暗くて重い、だがとても大切で重要な映画だ。観る側にも覚悟を強いるし、強く揺さぶりをかけてくる。簡単におすすめとは言わないが、観るべき映画である。