日々の泡。

popholic diary

2023年6月3日~9日の話。

2023/6/3

今日はやっと映画館。久々に京阪電車にのんびり揺られてMOVIXへ。まずは「なか卯」で親子丼。今日のは特に卵のトロトロ具合が最高。やっぱ美味いな~。

でまずはシャーロット・ウェルズ監督「aftersun/アフターサン」を観る。11歳のソフィと離れて暮らす若い父・カラム。ひなびたリゾート地で二人が過ごしたある夏の日々。買ったばかりのビデオカメラで撮られた何気ない瞬間、瞬間。その時の父と同じ年齢になったソフィが、その映像を観ながら思うことは…。人生の夏を迎えようとする娘と、人生の夏を終わろうとする父が過ごす濃密な時間。楽しい想い出での底には悲しみや痛みが潜んでいる。その時にはわからなった父の想い。今にも壊れてしまいそうなほど繊細で、余白や行間から漏れ出してくる何か。素晴らしかった。胸の奥に引っかかって、忘れられなくなる。そんな映画。

ここのところ、自分の古い日記をこのブログに移設していてまさに自分が20代から30代になる頃、仕事も何もかも不安定な中で、幼い娘と過ごした日々を綴った日記を読み返していた。ま、映画と比べるとはるかに呑気なもんだが、それでもどこか重なる部分があって、後半はずっと涙目状態になってしまった。「aftersun/アフターサン」本年度ベスト級の傑作。

で余韻に浸りつつももう一本。パク・フンジョン監督「THE WITCH/魔女-増殖-」を観る。前作から5年、シリーズ二作目がいよいよ。前作「THE WITCH/魔女」は新鮮な驚きがある傑作であった。青春ほのぼのストーリーからの超絶ハードコアバイオレンスアクション!なによりキム・ダミという超逸材を世に知らしめたということで映画史にも残る一作。でそんな作品の続編、当然ハードルは上がるし、どうやっても比べられちゃうしで不利なのは仕方がない。がいや、よくやりましたよ。確かに主人公はめちゃめちゃ強いということがわかっている状態なので前作のような驚きはないものの、前作から倍、さらに倍!といった過剰にもほどがあるバトルロイヤルな超絶ハードコアバイオレンスアクションがもはや楽しい。っつーかもう画面の強度がMCUとかDCにも負けてない。オーディションを勝ち抜いた新星、シン・シアの新鮮なシン魔女っぷり、大食い天然少女からの大覚醒に痺れた。そして彼女を匿う優しく勇敢な牧場主を演じるは「ウ・ヨンウ弁護士」パク・ウンビン!で、我らがキム・ダミがここぞというところで登場!さぁここからは!次作に続く…とこうなる。何かと難しい2作目ながら、特にバトルシーンは後先考えずにガンガンやり切っていて気持ちよかった。さぁこの広げた風呂敷をどうするのか!次回こうご期待ってとこですね。

で帰りも京阪電車に揺られて帰宅。

夜は「水もれ甲介」ラスト2話、完走!初っちゃん、輝夫といっしょになれて良かった。まこちゃんも甲介といい感じになっての大団円ですな。

2023/6/4

7時起床で、朝から自転車飛ばしてショッピングモールでイベント仕事。天気も良くなって一安心。で一日炎天下で動き回って終了。のんびり自転車漕いで帰宅。

夜は石立鉄男ドラマで昭和にワープ。「雑居時代」に突入。大原麗子が美しい。

2023/6/5

6時起床。7時半の新幹線で出張。一人気楽にとはいかずに、上司二人と。3人席の真ん中で寝ることも出来ず…。で栃木まで。諸々仕事し、餃子のお土産買って帰宅。帰りも3人席の真ん中で…。

2023/6/6

しかしさすがに今日はしんどい。

2023/6/7

朝から会議続きで、昼休み取れないままに外回りでクタクタ。そんな状態のまま大阪までライブを観に。ここんとこライブに参加するのがちょっとしんどくって、特に平日、夜、大阪、スタンディングなんて言ったらよっぽどじゃないと行かないんだけど、今日はその「よっぽど」なライブ。梅田クラブクアトロにてYerin Baek(ペク・イェリン)初のJAPAN TOUR。そりゃ行くっしょ!という訳で若い女性中心の客層の中、ざっと見、最年長の場違いなスーツ姿のインチキおじさん登場!ステージ全体を見渡せる中段の場所を確保。老体に鞭打ちスタンディング。

で、ペク・イェリン!想像の遥か上を行く素晴らしいパフォーマンス。歌巧いのはわかってたが、ただ巧いだけじゃないんだなー。優れた歌手というのは一声で場を制圧する力がある。彼女もその力があるんだけど、ただ力で押さえつける感じではなく、その気高い神々しさを前に皆が自然とひれ伏しちゃうような。それでいてMCやちょっとした仕草や振る舞いはとにかくかわいいペクイェリンと言いたくなるようなキュートさで完全にやられた。ドラムとギター、そしてサウンドプロデューサーでもあるcloudがベース、キーボードetcを操るバンドの演奏も完璧。テクニックもさることながら時に繊細に音を構築したかと思えば、パッション溢れる熱い演奏でフロアを沸かせる。いやー素晴らしかったな。無理して行ったかいがあったってなもんだ。


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2023/6/8

通勤音楽はもちペクイェリン。で一日真面目に働き帰宅。夜、収穫した枇杷でジャムを作る。こういう作業はもっぱら私の仕事。一粒一粒皮をむき、種を取り除き、砂糖とレモン汁でひたすら煮る。

2023/6/9

代休。妻も休みだったので午前中はのんびり過ごし、昼は近くのカレー屋へ。サラダ月のランチ。カレーには素揚げされた野菜、さらに食パンが付くというスタイル。旨辛で美味しかった!

で妻とイオンシネマへ。是枝裕和監督×坂元裕二脚本「怪物」を観る。息子を愛するシングルマザー、生徒想いの教師、そして子供たち。お互いの思い込みと偏見によって掛け違ったボタン。ちょっとした溝は埋まることなくどんどんと深く大きくなっていく。やがて向けられる悪意、相手を傷つける為だけに発される邪悪な言葉。どこを観て、どこを観ていないか。観ていない部分を偏見や思い込みで補完し、増大していく憎悪と対立。母、教師それぞれの視点で時にユーモアを交えながら描く前半。ここまではある意味わかりやすい。いかに人が物事の一面だけをみて断罪してしまうのか、正義と正義が対立したあげく互いが相手を呪い邪悪な闇に落ちていくのかを提示していくので理解もしやすい。だがここからがやはりこの映画の肝だと思う。後半、子供たちの視点が加わることで、物語はより複雑に深いところに入り込んでいく。二人の少年の複雑だが、純粋な感情は誰にも気づかれることがない。周りの者たちは偏見のさらに外側にある何かに想像すら働かせることができないでいる。ゆえに自分が発する無自覚で何気ない言葉が誰かを傷つけていることがわからない。善意や思いやりの下に発された何気ない言葉が、誰かにとっては呪縛となり、誰かの心を傷つけていく。すべての人は幸せになっていいはずだ。無知、偏見、差別が連鎖し渦になり、誰かの命すら奪い去る。誰かの幸せを拒み、奪い取る怪物は誰なのか。その怪物はあなたであり、私でもある。ラストシーンを現実にするのか、幻想にするのかは私たちにかかっている。子供たちを生かすも殺すも、私たちの手にかかっているのだ。

それにしても坂元脚本と是枝演出がここまで相性良いとは。安藤サクラ永山瑛太、田中裕子は当然、子役二人が素晴らしかったな。

ネタバレに気をつけつつの宣伝になっているようだが、あまり避けすぎるのもどうなんだろうか。カンヌのクィア・パルム賞を受賞していることからわかるようにLGBTQがテーマとしてあるのだけれど、それを隠して無いことにすることが怪物を生む土台にもなるんじゃないのか。知った上で語り合うべき映画だと思う。