日々の泡。

popholic diary

2023年8月5日~11日の話。

2023/8/5

7時15分「あまちゃん」起床。午前中から「蛤御門のヘン」真夏のサイキックミーティング聴きながら映画館へ。竹内先生絶好調。キャンドル・ジュン、夜は耳に〇〇〇という最低な邪推に爆笑。電車内で笑いこらえるのが大変だった。誠さんの華麗なる綱さばきで自由に軽妙に、下世話に立ち回る竹内先生。二人の間で絶妙なトスを上げる角田さんと最高に面白い放送だったなー。

京都シネマでエレガンス・ブラットン監督「インスペクション」を観る。ゲイであるということで母親と絶縁状態となり16歳から一人で生きてきたフレンチ。生きていくために、彼は海兵隊に志願する。そこには人格すら崩壊させるほどの過酷な訓練、激しい差別、理不尽な日々が待ち構えていた。文字通りどこにも居場所がないフレンチ。暴力やヘイトにさらされながらも、自分であることを諦めずに傷だらけで現実に向かう姿を静かに落ち着いたトーンで描く。監督自身の体験を基にした、まさに個人的な映画で、そこにある切実さや痛みが強烈に胸に迫る。主人公が抱える底知れない孤独、それでも生きるという選択をした強い意志。かっての自分、どこかにいる自分に似た誰かへ、死ぬな、生きろ、あなたにも生きる価値があるという監督の静かながら強い想いが伝わる。

映画の面白いところは自分ではない誰かの人生を疑似体験することだと思う。それによって自分自身に新しい目が一つ加わる。自分には見えていなかった世界を知ることで、自分の行動や発言は変わってくる。無自覚に誰かを傷つけ追いやっていなかったかを考える。誰もが自分のままで幸せになるべきだ。で「誰もが」と言うとマジョリティの権利云々をいうやつがいるがそれは違う。圧倒的な権利を持つ立場であるならばまずは誰かを踏みつけていないか、踏みつけているとしたらその足をすぐにどけるべきなのだ。マイノリティを踏みつけたまま踏みつける権利を叫ぶのはナンセンスだろう。

でもう一本。シャルロット・ゲンズブール監督「ジェーンとシャルロット」を観る。娘、シャルロット・ゲンズブールが母・ジェーン・バーキンを被写体にカメラで追ったドキュメンタリー。女であり、母であり、女優であり、歌手であり、時代のアイコンであった二人。どちらもが強力な光を放つ存在ゆえにか二人は母娘ではありながらどこかよそよそしさがある。母は言う「あなたに気後れしていた。あなたは幼い頃から特別な存在だったから」と。娘はカメラを通して母の姿を見つめる。娘のカメラに映る母。カメラ越しに見つめ合いながら言葉を交わす二人。そこに流れる時に緊張感が漂い、時に優しくやわらかになる空気。誰も立ち入ることができない二人の世界。そして二人の間に、母の夫で娘の父であったセルジュ・ゲンズブールの存在が浮かび上がってくるのも面白かった。二人にとってかけがえのない大きな存在だったのだなということがわかった。

で少し遅い昼食は、昨日から調べてた近くの定食屋に行こうと目論んでたが休み。しょうがないのでチェーンの定食屋でざるそばとソースカツどんのセット。ちょっと違ったなー

にしても暑い。汗かきながら帰宅。夜はNHK+で堀田真由さんが出たあさイチのプレミアムトークを。

2023/8/6

日曜はいつものごとく妻と買い物。そうめんの昼食、「マルコポロリ」観て、NETFLIXで映画を一本。ニック・ブルーノ、トロイ・クアン監督のアニメ映画「ニモーナ」を観る。かつてモンスターの襲撃を受け、グロレスという名の騎士が立ち上がり、民を守ったという王国。騎士が王国を守る役目を代々受け継いでいるが、1000年目にして初、庶民出身のバリスターが騎士に任命されることに。しかしその任命式でバリスターの剣から突然放たれたビームで王女は死んでしまう。王女殺しの烙印を押されたバリスター。彼は無実を証明すべく身を潜める。そこにニモーナと名乗る少女が現れ手伝いを申し出る。だが彼女は様々な動物や人に変身できる“モンスター”だったのだ…てな物語。中世と近未来が融合したような王国のビジュアル、変幻自在に変身するニモーナの躍動感あふれる動き、まずはアニメーション表現が素晴らしく魅せられる。そして物語はといえば、古くからの慣習やそれによって植え付けられた偏見。その偏見に囚われ実態を知らないまま膨らんでいく憎悪。役割を押し付けそこからはみ出したものを排除しようとする世界。まさに現代社会を映し、そこからの脱却を描いている。しっかりとメッセージが込められ、それでいて楽しく豊かな表現に満ちていて素晴らしかった。おすすめです!

2023/8/7

通勤中は骨伝導イヤフォンを使っている。それなりに聴けるが周りの音がうるさいと一気に聞こえなくなったりとやはり「いい音」という訳ではない。で改めてちゃんと聴こうと有線のイヤフォンで鈴木マツヲ「ONE HIR WONDER」を聴く。いやはや最高のポップアルバムですやん。もはや老境に差し掛かる同い年の二人、鈴木慶一松尾清憲がお互いのポップセンスをぶつけ合い爆発させたアルバム。晩年と青春が同居する手練手管の瑞々しさ、二捻り、三捻り、ぐるっと回ってド直球という快作。

幸宏さん、岡田さん、PANTAさんと悲しい別れが続く中、慶一さんの精力的な活動が嬉しい。

2023/8/8

地元の花火大会。湖岸付近はフェンスで覆われ有料観覧客が優先。ということで今日は家でテレビで観るかとも思ったが、4年ぶりということなので妻と散歩しながら観ることに。ここに越してきたころはマンションを少し出れば観ることができたが、この20年で大きなマンションが湖岸沿いにたくさんできてそうもいかなくなった。で妻と歩きながら湖岸近くまで行ってみると、思ったほどの混雑でもなく風が吹いて少し涼しくもあり立ち並ぶマン所の隙間からではあるが比較的に快適に観ることができた。なんだかんだで夜空に大きく広がる花火、いいもんだね。

2023/8/10

休前日。ちょっとやっかいな仕事を抱えていて胃が痛いこの頃。しかし50過ぎたらもっと余裕ぶっこいて仕事できるかと思ったが、そーじゃないのな。質は違えど、精神的にも肉体的にも追い込まれるなー。

帰宅しご飯食べて、風呂入って、パピコ食べて気分転換。パピコのなめらかな食感に心癒される。安いもんだ。

ちょうど水道橋博士さんと町山智浩さんの今月の対談が3本Upされていたので早速見る。先月の対談は久々ということもあって博士さんの喋りはまだ本調子とは言えなかったが、今月はばっちり。#1アイルランド~#2政治~#3ロック、町山さんと博士さん、僕の好きな先生二人による対話は刺激的で学びがあり、かつ面白い!これだよ、これ。二人が観て、聴いて、体験し、感じ、考えてきたこと、その膨大なメモリーが対話の中に存分に詰まっていて、それを聴ける贅沢さ。自分にとっては何よりの娯楽であり学びである。


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2023/8/11

祝日。朝のうちは音楽を聴きながら日記を書く。冷麺の昼食をとり、散歩がてらユナイテッドシネマまで。

グレタ・ガーウィグ監督「バービー」を観る。最初に言うと、大傑作!素晴らしかった。いやはやバービー人形を題材によくも、まぁここまでの話にしたもんだ。主演のマーゴット・ロビーがプロデューサーを務め、監督・脚本がグレタ・ガーウィグと聞けば、単なるエンタメ作では終わらないだろうし、一筋縄ではいかない面白さがあるだろうとは思ったが、予想の遥か上を行く大エンタメ作にして、ジェンダー問題のみならず生きるとはという深いとこまで切り込んでいく強力な一本。ポップでキッチュなバービーランドのワクワクするような楽しさ。そこはバービーたち女性が取り仕切る世界でケンたち男はあくまでバービーの添え物。現実社会を反転させたような世界。そしてケイト・マッキノン演じるヘンテコバービーに導かれ人間社会に向かうバービーとケン。人間社会で二人が見たのは男たちが取り仕切る社会。笑ったのはバービー人形を販売するマテル社。男ばかりの重役会議。社長を演じる名コメディアン、ウィル・フェレルが最高!有害な男らしさを徹底的にシニカルに茶化したキャラを嬉々として演じる。これがもう全部面白い!で人間社会でバービーは自信を失い、ケンは目覚める。ケンはバービーワールドに舞い戻り、裸にミンクのコートを着て男社会を作り上げる。バービーを救うのはかってバービーで遊びマテル社に入ったものの受付係に追いやられているグロリア。はたしてバービーはバービーランドを取り戻せるか…ってなところから思いがけないところにまで連れて行ってくれる。まぁもう最高。フェミニズム映画なんて雑に括れるような、そのレベルの映画ではない。グレタ・ガーウィグ監督が今までも描いてきたように様々な常識(と呼ばれるもの)や偏見、そんなものを吹き飛ばして自分自身を生きていいんだという痛烈なメッセージが込められている。女は笑顔でいる必要はないし、男だって泣いていい。家父長制、有害な男らしさからバービー人形の歴史まで全部まとめてシニカルでキレッキレのブラックジョークで斬りまくる痛烈なコメディにして、アセクシャルメンタルヘルス、死に至るまでをも網羅する「君たちはどう生きるか」という哲学が込められた映画。でバービーと同時にケン(男たち)の物語でもある。ケンもまた様々な経験を経て自分自身を取り戻すのだ。ケンを演じるライアン・ゴズリングがまたまた最高!歌にダンスに大ボケに大活躍。この映画を観て救われたり勇気をもらえるのは何も女性だけじゃない。それにしてもマーゴット・ロビー素晴らしすぎる。「プロミシング・ヤング・ウーマン」「ハーレイ・クイン」そして今作とプロデューサーとしても一本筋が通っていて、グレタ・ガーウィグ監督との邂逅も必然と思えるし、それをしっかり成功させる手腕も凄い。とにかく「バービー」観るべき映画です!