日々の泡。

popholic diary

2023年5月20日~26日の話。

2023/5/20

朝から日記を少し書いて、散歩がてらユナイテッドシネマへ。藤井道人監督「最後まで行く」を観る。ベラボーに面白かった韓国映画のリメイク。刑事・工藤は危篤状態の母のもとに向かうべく車を走らせていた。だがそこで人をはねてしまう。事故を隠蔽しようと遺体をトランクに入れ現場から立ち去る工藤。がそこからモー大変なんすから…な状況が続いていくってな大まかなストーリーは韓国版通り。だが絶妙の味付け具合でしっかりちゃんと面白い映画になっていた。オリジナルではイ・ソンギュン、チョ・ジヌンが演じた役を岡田准一綾野剛が演じる。最初、配役逆ちゃうとも思ったが、これで正解。岡田准一のチャーミングなとこがうまく出ていて、悲劇的な状況が俯瞰で見ると喜劇にしか見えなくなるというブラックコメディとして成立。やってる本人大真面目なのに笑ってしまうシーンが意外に多くて、藤井監督はスタイリッシュで社会派という印象があったんだけど、笑えるエンタメもいけるねと思ったな。追いつ追われつ小競り合いを続ける二人がどんどんエスカレート。最後にはもはや小競り合いする理由すらなくなっているのにまだやってるというまさに最後まで行き切っていて面白かった。柄本明のいかにも柄本明的な怪演もいい味。さすが朝一、京都のミニシアターで「TAR/ター」観るだけのことあるぜ(先週の日記参照↓)

2023年5月13日~19日の話。 - 日々の泡。

家に玉ねぎとピーマンがあることを思い出し、帰宅してナポリタン作って昼食。配信終了間際になってたのでNETFLIXキム・ジウン監督「人狼押井守原作・脚本のアニメ作品を基にした韓国映画。南北統一を果たした近未来の朝鮮半島を舞台に、騙し騙されのSFアクション。しかしぼんやり見てたら話についていけなくなってしまった。映画館じゃないと集中しきれないのが悪いとこ。カン・ドンウォンハン・ヒョジュには申し訳ない見方をしてしまった。

夜は「ザ・セカンド」を。やはり劇場で場数踏んでる漫才師は強いね。

2023/5/21

朝から近江八幡でお仕事。で終わって近江八幡から一路、大阪へ。時間ぴったり5時半着で梅田TRAD。カーネーション“LIVING/LOVING”20th Anniversary Tour。2003年、3人体制になって初めてリリースされた超がつく名盤「LIVING/LOVING」を“今”のカーネーションで再構築したライブ。仕事だったのでいったんは諦めてたんだけど、江口寿史先生によるTシャツも販売されるってんでこれは無理してでも行くべきとチケット購入。結果、やはり行って良かった。40年目のカーネーションによる20年目の「LIVING/LOVING」。重ねた歴史の重みと、今を生きる軽やかさ。まさに青春と円熟が同居する最新型のカーネーションだった。とにかく圧倒的に強い。最強のロックバンドぶりを堪能。サポートメンバーも素晴らしく、一曲目から橋本歩さんのチェロが大活躍。特に「愚か者、走る」のブルージーに決めまくるチェロに痺れた。キーボードの伊藤さんが吹くトロンボーンも素晴らしく、やはりストリングスとホーンが入るとより豊かな広がりが生まれて、カーネーションの音楽の懐の深さが感じられる。2部は新しめの曲を中心に、マッドでグルーヴィーな最新型のカーネーション。サポートギターの松江潤さんが大暴れ。直枝さんとのスリリングなギターの絡みが強烈だった。最後は煙突でキメ!Tシャツも購入して大満足。

カーネーションの数ある名盤の中でも「LIVING/LOVING」は特に印象深いアルバムだ。2002年、カーネーションが5人から3人にというニュースは衝撃的だった。鉄壁の5人と思っていたしトリオ編成でのカーネーションが想像できなかった。「VENTURE BUSINESS」シリーズと銘打ちリリースされたシングルで披露された「愚か者、走る」でなるほど、こう来たかと新しいカーネーションを理解した。2003年「VENTURE BUSINESS」Vol.3の「OOH!BABY」は忘れがたき曲だ。この頃、仕事面で大きな悩みに直面していた。朝晩の通勤時にひたすらこの曲を聴いた。何度も何度も繰り返し。その音が、言葉が自分の背中を押した。そして10年務めた会社を退社し、転職することになった。2003年8月27日「LIVING/LOVING」リリース、2003年9月1日僕は今も務めるラジオ局に入社した。まさにそれは偶然や必然だけじゃ測りきれないことだったのだ。

カーネーションと時を同じくして再出発したあの時から20年である。ま、いいことばかりでもないし悪いことばかりでもない。それなりに偉くなったし、そこそこ泥水もすすってきた。カーネーションは順風満帆な勝ち組バンドじゃないかもしれないけど、何度倒れても砂を掴んで立ち上がるバンドだ。負けない組なのだ。自分もそうありたいと思っている。相変わらず愚痴っぽいし、今もまだ不安定だけど、カーネーションがやってる限り、俺もまだもがき続けようと思う。「やるせなく果てしなく」が今もまだ頭の中で鳴り響いている。


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2023/5/22

で今日もまた日常がやってくる。夜はアマプラで石立鉄男ドラマ「水もれ甲介」。住み込み従業員のまこちゃんが登場。演じるのは川口浩隊長の妹、川口晶さん。この人も懐かしい女優さんだ。

2023/5/23

今夜もまた「水もれ甲介」。まこちゃんフィーチャー回が続く。出演者たちの気の合った演技、石立鉄男のシーン終わりにぶっこむアドリブ、捨て台詞が全部面白い。山本紀彦との掛け合いとか最高。

2023/5/24

TVerで「だが、情熱はある」。南海キャンディーズM-1再現が完璧な仕上がりで素晴らしい。ジャニーズの若手俳優たちは力があるな。

しかし「ジャニーズ」であることが今後彼らの足枷になるかもしれない。その名を残し、曖昧なまま逃げ切れば、才能ある若者たちを潰すことになりかねないのでは。彼らを守るためにも、その大きな罪を認め、償うべきだろう。

2023/5/25

町山智浩著「アメリカスーパーヒーロー映画徹底解剖」読了。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」を見事完結させたジェームズ・ガン監督論を最初と最後に配し、スパイダーマンキャプテン・マーベル、シャザムなどMARVEL、DCのスーパーヒーロー映画を監督の生い立ちやフィルモグラフィから紐解いて見せる。例えば女性に「SMILE」を強要する男たちに反旗を翻す「キャプテン・マーベル」、家父長制の呪縛を描いてきたディスティン・ダニエル・クレットン監督が「シャン・チー」で描いたものは…などなど監督を知り、作品を知り、ヒーローが本当は何と戦っているのかを知る。本書はヒーロー映画の中に埋め込まれた監督の想いや叫びを丁寧に掘り出し教えてくれる。面白くかつ学びがある一冊になっている。特に心に響いたのはヒーローをヒーローたらしめることとは何かについて「シャザム」をベースに語る章だ。誰かを犠牲にしたり、切り捨てたりせずに皆を救おうとする。強さではなく、他者を思いやるその心こそがヒーローなのだと本書は語るのだ。

しかし現実を見てみるとどうだ。財力や権力を握った者たちは、その力を振りかざし、自分とは違う者や弱き者たちを踏みにじり、切り捨てようとする。ヒーロー映画に出てくるヴィランそのものじゃないか。そしてなぜか切り捨てられる者たちがヴィランに一票を投じる。時に絶望を感じてしまう。だが、それこそがまた罪なのだ。ヒーロー映画は絶望を感じる大人こそ見るべきかもしれない。たとえこの世界がクソみたいだとしても、希望を決して捨ててはいけない。何度倒されても立ち上がるそれがヒーローなのだ。もし世界をクソだと思うなら抗い続けるしかない。希望を忘れず、人を思いやる。子供っぽくて青臭いその心を捨てさえしなければ僕らもヒーローになれるのだ。

それにしてもインディペンデント映画で個人的な物語を描いてきたマイノリティの映画作家たちを起用し、ヒーロー映画を撮らせるMARVELのプロデュース力は凄いなと改めて。「最も個人的なことは、最もクリエイティブなことだ」を実践、世界中に愛されるエンタメ作品でありながら、観た人の心に突き刺さる個人的な映画にもなっているという。それは僕がヒーロー映画を観る理由でもある。

2023/5/26

会社帰りに映画を一本。マイケル・B・ジョーダン監督・主演「クリード 過去の逆襲」観る。ロッキーサーガ、クリードシリーズ3作目にしてクリード役のマイケル・B・ジョーダンが監督に。タイトルの通り自分自身の過去であるムショから出てきた幼馴染が今回の対戦相手。捨て去ろうとした過去と向き合い、正しく断ち切るべく再びリングに上がるクリード。監督はマンガやアニメが大好きで影響を受けているとのことだが、それは試合のシーンによく出ている。マンガの一コマ一コマのようにポイントをしっかりわかりやすく見せていく。リズムよくショットを積み重ね、ケレンミたっぷりにトドメのキメを見せる。最後の試合シーンの演出なんかはもう完全にマンガというか少年ジャンプ。ま、ちょっとやり過ぎ感もあったけど。

しかし最後におまけとして上映された謎のアニメ短編。監督には悪いんだけど、いらなんだな…。