日々の泡。

popholic diary

2023年6月10日~16日の話。

2023/6/10

朝のうちに少し庭の枇杷を採って今日も映画。京都駅から烏丸通を歩いて京都シネマへ。まずは荻上直子監督「波紋」を観る。主人公は主婦の依子。夫と息子、介護が必要な義父と暮らしている。そんなある日突然、夫が失踪。それから数年。義父を看取った後、新興宗教を信仰するようになった依子のもとに失踪した夫が帰ってくる。がん治療のための費用を助けてほしいとすがる夫。自分の中で抑え込んできたものが溢れ出す…。すがりついた新興宗教にのめり込むことで怒りや苛立ちが表面張力でぎりぎり保たれている状態。だが決して無くなることがないそれは、日に日に増していくばかり。そこに放り込まれた一石が波紋になって広がっていく。絶望の底からたくましく浮かび上がっていく女性を筒井真理子が快演。まさに筒井真理子劇場で素晴らしかった。ラストシーンに拍手を送りたくなった。木野花キムラ緑子江口のりこ平岩紙安藤玉恵といった実力派女優アベンジャーズも見応えあり。面白かった。

そして特集上映「映画監督ヤンヨンヒと家族の肖像」。まずは2005年作「ディア・ピョンヤン」を観る。朝鮮総連の幹部である実父を中心に自分を含む家族を10年に渡り追った作品。部屋には金日成肖像画を掲げ、自身は済州島出身でありながら暮らしたこともない「祖国・北朝鮮」にすべてを捧げる父。そんな父に寄り添い共に「祖国の為」に熱心な活動を行う母。1970年代、日本から多くの在日朝鮮人たちが北朝鮮に渡った「帰国事業」。「地上の楽園」と謳われた北朝鮮への帰国事業を総連幹部として推し進め、日本で生まれ育った大学生、高校生、中学生の3人の息子を北に「帰国」させる。兄たちの「帰国」を新潟港から見送ったのが幼き日のヤンヨンヒ監督である。そして時が過ぎ、「北朝鮮」が「地上の楽園」とは程遠いことがわかる。兄たちは片道切符。それでもなお「祖国」に忠誠を誓う両親に反発し、イデオロギーは完全に真逆な立場をとる監督。だがカメラに映るのはステテコ姿で酒に酔い軽口を叩くどこか憎めないアボジとパワフルで陽気でお喋りなオモニの姿。そこにはふざけあい笑いあう大阪下町の在日家族の姿がある。北朝鮮で暮らす息子たちの為に、ありとあらゆるものを梱包し仕送りするオモニ。「親しかでけひんで」といいながら憑りつかれたように段ボールに物品を詰め込む姿がとても印象的である。それは親の愛情なのか、息子たちを北へ送ってしまったことへの贖罪なのか。その笑顔の奥底にどんな思いがあったのだろう。映画の終盤、監督はアボジにカメラを向け問いかける。「(息子たちを北朝鮮に帰国させたことを)後悔してる?」と。家族の中で重くのしかかる兄たちの「帰国」。30年近い月日を経ての娘からの問いかけに、アボジは真摯に答える。とつとつと吐き出される後悔の想い。将軍様への忠誠を誓うアボジから零れ落ちる本音が重い。しかしこのドキュメンタリーの面白いところは、ここまで重い内容を含みながら、アボジ、オモニ、娘である監督の会話になんとも言えない可笑しみがあるのだ。笑いながら泣き、泣きながら笑うような人間臭い家族の肖像がいっぱいに詰まっている。

上映後はヤンヨンヒ監督とプロデューサーでもある荒井カオルとの舞台挨拶。帰国事業について、皆が当たり前に知っている状況にしたいという監督。NHKのドキュメンタリーで私を腫れもの扱いするな、私は腫れものじゃないという魂の言葉に震えたが、その想いの強さを改めて感じた。あとクレジットの最後に映画評論家である「おすぎ」さんへの謝辞が出るのだが、その意味を語られていてそれが実にいい話で印象に残った。

監督の著作「カメラを止めて書きます」を購入し、サインもしてもらう。荒井さんに「メルマ旬報読んでましたよ」と声を掛けたら大層驚かれていた。「メルマ旬報」最初期からの読者としてはこれは伝えときたかった。

で続いて2009年作「愛しきソナ」。北朝鮮に暮らす次兄の娘、監督の姪であるソナ。初対面の場面。アイスクリームを一生懸命食べながら珍しそうにカメラのレンズを覗き込むソナのかわいらしいこと。総連の幹部として、しばし北朝鮮を訪れるアボジとオモニ。時に監督も北朝鮮に赴き北朝鮮に暮らす兄たち家族を被写体にカメラを回す。長兄コノの息子が流麗なピアノを披露する。クラシックとコーヒーをこよなく愛した長兄コノだが北朝鮮での暮らしで心を病んでいた。壁にもたれピアノを聴くコノ兄の瞳が忘れられない。アボジと二人、街を歩くシーンがある。二人はほとんど言葉は交わさずただ並んで歩く。済州島から15歳で日本にやってきたアボジ、18歳で日本から北朝鮮に送られたコノ兄。家族でありながら自由に会うことも難しく、本当の気持ちを伝えあうことも出来ない。交差する祖国、交差する想い。歴史が生んだ歪が家族に影を落とす。初対面から数年後、ソナは5歳で母を亡くす。そしてギターが得意な新しい母を迎えソナは成長していく。ニューヨーク帰りの自由な雰囲気をまとった叔母である監督を見るソナの瞳は輝いている。中学生になったソナにとって叔母は特別な存在なのだろう。憧れであると同時に近くて遠い存在。結果的に最後となった大劇場の前での会話。演劇が好きだったという叔母の話を聞きながら、ソナは声を潜めカメラを切ってと頼む。国外の演劇の話を興味を持って聞く。そのことすらこの国ではセンシティブになる。ここにもまた歪がある。「ディア・ピョンヤン」を発表したことで北朝鮮への入国が禁止されソナと会うことができなくなった監督の元に届いたソナからの手紙。英語を学び、英語で書かれた手紙に希望が宿る。近くて遠い国で会うことのできないソナに叔母が与えた影響は小さくないだろう。大人になったソナはきっと気づくだろう、遠くても近くにある叔母の存在に。

自分の家族を撮った映画。最も個人的なことを映しているのに、そこに社会が描かれ世界が語られている。アボジの歌声、オモニの笑い声、ソナの笑顔、そしてコノ兄の瞳。会ったこともない家族のことを想い、考える。それが社会を、世界を、考えることになる。

今回この2作をリマスタリングするためのクラウドファンディングに参加した。クレジットに自分の名前が載るのはやっぱり嬉しいな。ちょっと映画に関われたような気分。

soupandideology.jp

2023/6/11

朝から妻と昨日採った枇杷を手土産に京都の実家へ。車中では東野幸治の「ホンモノラジオ」とダイアンの「TOKYO STYLE」。実家行くときの定番。で母といっしょに叔父のところへ寄って買い物。スーパーで買ってきた寿司を食べつつ母のトークを聞くといういつものパターン。

で帰宅しNETFLIXで「サンクチュアリ」を3話分。おもしろい!残り2話は来週のお楽しみに。

2023/6/12

3連休明けでやたら疲れる。朝から京都営業して、昼はインドカレー。でっかいナンでなんとか気分をあげる。

2023/6/13

今日は朝から暑い。通勤ですでにバテる。横綱ならとっくに引退している年齢。きっついなー。TVerで「日曜の夜ぐらいは」と「だが、情熱はある」。最近はドラマもバラエティもTVerで観ることが多くなったな。ラジオもそうなんだけど、限られた時間の中であれこれチェックしようとするとこうなる。

2023/6/14

会議でぐったり。意に反してまぁまぁ責任ある立場になってしまってるので常に胃が痛い。きっついなー。NHKプラスで「日本の話芸 上岡流講談“浜辺にて”」観る。引退直前2000年の放送。スマートで品があり、それでいてぐいぐいと引き込む圧巻の喋り。最後に明かされるある仕掛け。まさに芸は一流。

2023/6/15

朝から営業で大阪へ。観光客も随分多いなぁ。一商談終え滋賀にとんぼ返り。昼は鶏とんこつラーメン。radioで「角田龍平の蛤御門のヘン」。ゲストはコラアゲンはいごうまんさん。弟子時代にオール巨人師匠に「お前とは相性合わん!」とまで言われたコラアゲンさん。しかし時が過ぎ巨人師匠に「(弟子の中で)エッチするなら森田(コラアゲンさん)かな…」と言われるくだらなくも感動的なエピソードに笑う。

2023/6/16

やっと金曜。今日もやること多いなー。プレイングマネージャーのきついところでここにきてやたら忙しい。頭下げ過ぎて腰が痛いぜ。こんな日は映画観て帰りたいが、うまい具合に時間が合わない。サラリーマンに冷たいスケジューリング。結局週1日しか映画鑑賞に割けられないのが悲しい。なんだかんだで映画館の暗闇に身を沈めているときが一番幸せなのだ。