日々の泡。

popholic diary

松田聖子は僕らの世代の美空ひばりである。(2001年5月)

1998年に開設して、すでに12年間放置しているHPがある。もはや削除すら出来ない状況なのだが、久々に覗いてすっかり忘れていた駄文があまりにバカバカしかったのでここに再録することにした。実に19年前に書いた文章。いまはもうここまでの文章は書けないなぁ。

 

松田聖子は僕らの世代の美空ひばりである。(2001年5月)

 

SAYAKAデビュー記念というわけでもないが、松田聖子の歌声がやけに聞きたくなって、中古盤屋で松田聖子の初期シングルをまとめ買い。
私の勝手な持論で「松田聖子は僕らの世代(昭和40年代生まれ)の美空ひばりである」というのがあるのだが、「赤いスイートピー」を聴きながら改めてそう思った。
にしてもデビューしてから結婚するまでの松田聖子の声の魅力ってのはどうよ。
うまいかといわれればうまくないのかもしれない、が決して下手ではないやね。
ま、ポップミュージックに歌の上手下手なんてのはほとんど関係ないとは乱暴な言い方かもしれないけど少なくとも僕はそう思う。
で聖子の歌声。
これがもう微妙かつ絶妙ないい塩梅ぶり。
アイドル歌謡ポップスはこの声を求めていたのだといわずにおれないね。
特別個性的な声ではない、むしろ無個性な感じ、でもどこにもない歌声。
フレッシュ(古い表現だね、どうも)かつどこかアンニュイ(これまた臭い表現っすね)で時に舌足らずな感じもキュート。
当時小学生だった僕でさえその声の持つ少女の危うさやかすかにもれるエロティシズムにグッときたもんだ。
で少女に対する幻想をぱんぱんに膨らませた独自の詞世界で、その歌声を最大限に生かした松本隆の功績は大きい。
当時30過ぎぐらいだった松本隆、それぐらいの年齢だと、現実の女性の前で心に抱いていた女性に対する幻想は消え、幻滅だけがぐっさりと心に突き刺さったりしつつ、でもなお女性に惹かれる自分の煩悩に苦笑いし、99%自分が追い求めるような女性は現実世界にはいないと知りながら、明らかに失敗することもわかってるのに、残り1%にやっぱりかけてしまい、結局傷ついたりしてる頃のはずだ。(これ、あくまで当時の松本隆の心情を想像した文章で、決して今の私の心情を吐露してるわけではないと強く言っておきます)
でそんな氏が松田聖子の歌声に対してその残り1%の女性に対する幻想を120%まで膨らませぶつけた男心が30になった今、痛いほどわかる。
松本-聖子コンビの最高傑作というか日本歌謡史上に残る傑作「赤いスイートピー」を聴いてみよう。
まずこれを聴いて今わかること、恋愛経験が極端に貧弱な私ですらわかること、それは「こんな女、いないよ!」である。
「何故/知り合った日から半年過ぎても/あなたって手も握らない」
そう思い少女はアンニュイな表情を浮かべるわけだが、はっきり言おう21世紀の現在、付き合って半年過ぎても手を握らない男は「このフニャチン野郎の皮かぶり!これでもくらえ!」と「握りっ屁」の一つでもかまされるのがオチだろう。
しかしながらこのフレーズ、好きであるが故、半年手も握れない男(多分、文化系)その心をわかっていつつも、「どうして握ってくれないの・・」と表情を曇らせる少女・・そんな少女いて欲しい!松本隆氏の心の叫び、いや全文化系小心男の心の叫びを裏に隠し持った最高のフレーズだ。
なおかつそれに続けて
「I will follow you/ちょっぴり/気が弱いけど/素敵な人だから」とその文科系小心男(完全に決め付けてますが・・)をフォローする少女の気遣い。
「そんな女いねーよ!」と知ってるはずなのに「いや、いるよ!きっといるさ!」と失いかけていた少女幻想に火をつけちゃう聖子の歌声。
まさに、マジックですな・・。
このマジックにもうわれわれ世代のハートはがっちりと掴まれちゃったんだな。
それとそんな少女に対するファンタジーにさらにエロの香りをにおわせ、われわれ世代のハートだけではなく股間までをもがっちり掴むなんざ、やることがえげつないね、松本-聖子コンビは。
これまた代表曲「秘密の花園」を聞いてみよう。
まずもう「秘密の花園」って・・。
当時、中学1年だった私ですらピンときたね、「秘密の花園」って要するに関西弁で言うところの「お○こ」のことでしょ・・ってね。
で歌が始まる。
「真夜中に呼び出すなんて/あなたってどういうつもり」
ってそーいうつもりやん、明らかに。
「Hold me tight/入江の奥は」
おいおい、「入江」って、で「奥」って、もう、もろやん、それ。
「誰も誰も知らない」
おい、ほんまかいな、けっこー知ってるんちゃうの?
秘密の花園
・・出たよ、花園。 「秘密」の「花」の「園」やで、これが。 当り、間違いないね、「秘密の花園」やもん、もう確実やん。
でさらに続く
「思いきりつねってあげる」
おい、どんなプレイやねん! さらに
「小船のロープほどいて二人」
おい、おい、そのロープ、何につかうねん!案外、ハードやね。君ら。
「流れる星を見上げ/ah・・さすらう」
なに、急にロマンチックになっとんねん。 肝心のとこ抜けとるやないかい。 バカにすなっちゅーねん・・。 アホー。
とこうなる(一応、一言言っておきますが、決して私、ノイローゼではありません)。
そんなわけで、本題からかなりずれましたが何はともあれ、松田聖子はわれわれ世代の美空ひばりなのである。
いきなりすぎて、意味がわからないって?
つまりは、もう僕らの心には松田聖子の歌声が完全に刷り込まれちゃってるわけなんだよ。
この先、数十年たっても僕らの心の中にはあの頃の聖子の歌声がいつまでも響き続けるでしょう。
といいつつ私はもう一度「赤いスイートピー」をターンテーブルにのせるのであった・・。