日々の泡。

popholic diary

2007年ベストアルバムの話。

1.「政風会政風会

政風会

政風会

  • アーティスト:政風会
  • メトロトロン
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ロックに導かれた男二人から、20年の時を越え届けられたファーストフルアルバム。全ての音が、そこにある空気が、自分の中にもある。到達点でもあり出発点でもある、この忘れ難き通過点。07年、僕の心の奥に深く刻まれた音がこれ。

2.「FLYING SAUCER 1947」HARRY HOSONO & THE WORLD SHYNESS

息のあったメンバーと奏でられる音には、愛と叡智とユーモアが溢れてる。細野さんはずっと細野さんだけど、ずっと待ってた細野さんがここにいる。ご機嫌なヴォーカルに音楽の喜びが頭のてっぺんから足の先まで拡がってく。

3.「CINEMA RETURNS」シネマ

まさかのセカンドアルバム。最高にポップでひねくれてて、キラキラしてて切なくて、過剰で過激でドリーミー。25年前と変わらぬ閃きと初期衝動が25年分の技と力で紡がれる音楽の贈り物。四半世紀ぶりに届けられたこの贈り物ははやっぱ最高だった。

4.「タルホロジーあがた森魚

タルホロジー

タルホロジー

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誰にも似てない、どこにもない「あがた森魚」としか言えない音楽。あらゆる音楽を知り尽くした久保田麻琴プロデュースの下、そんな「あがたワールド」が姿を現す。1歩足を踏み入れたら抜け出せない音楽の森の奥。ほら、あがたさんが唄ってる。

5.「御身」寺尾紗穂

御身onmi

御身onmi

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シンプルだけどグルーヴィーなピアノ、透明で凛とした歌声。耳に残るメロディがどこか懐かしい柔らかな風景を描く。並み居るベテラン勢の中、美しく輝く音楽の原石。もしかしたら今年一番聴いたアルバムかも。

6.「Coyote佐野元春

熟成された蒼き魂。佐野元春は本気で世界を憂いている。たとえ捨てられ踏みにじられようとも、ロックンロールの音と言葉で、希望の種を蒔き続ける。音楽の力をもう一度信じたい。そんな気持ちになったな。

7.「ハンナと怪物達」西村哲也
京都が誇るシンガーソングギタリスト、西村哲也!ポップミュージックの魅力が詰まったマジカルなメロディ、緻密でクレイジー、大技、小技が光るギター、グルーヴィーなバンドサウンド。完全手工業の大傑作。即ココから買え!

8.「Random Access Melody」MUSEMENT

Random Access Melody

Random Access Melody

  • アーティスト:musement
  • hurricane( C)(M)
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カーネーション矢部さんの初ソロ作は、氏のメロディメーカーぶりを堪能できるポップアルバム。華やかなゲストヴォーカルと織り成す珠玉のメロディ。キャッチーでカラフル、どんな言葉より雄弁で饒舌な音達。あー気持ちいーっ!

9.「music & me」原田知世

music & me

music & me

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デビュー25年、はっきり言ってずっと好きでした。永遠に忘れえぬ人。その佇まい、その歌声は今も変わらず、鼻の奥をツーンとさせる。淡い色をした甘酸っぱい記憶と重なる新しい音が、優しい記憶を胸に残す。

10.「DANCE MUSIC」野本かりあ

BPM135、ノンストップで聴かせるダンスミュージック。バブリィで自由、ミラーボールに光る女の子。そして東京は夜の七時。でもなんでこんなに悲しいんだ。これは21世紀の「SWEET PIZZICATO FIVE」。小西さん、だから嫌いになれないんだよ。

<総評>
はい、こんなん出ましたけど…。07年のベストはちょい新鮮味にはかけるかもしれない。でもこのラインナップを見てみると、自分自身の20数年に及ぶ音楽体験を総括したよう。
例えば一位に選んだ「政風会」。鈴木博文直枝政広、この二人に僕はロックという音楽を教えてもらったようなもんだ。そういうこと。胸を切り裂くようなギターや乾いたヴォーカル、音の向こうで震える湾岸の空気。なにもかもが自分の血となり肉となってる。ライブ盤、ベスト盤は外すという(自分内)規定を設けているのでムーンライダーズ「PASSION MANIACS」、鈴木博文「THE DOG DAYS」、カーネーション「The Sounds of ROCK LOVE」は入れてませんが、もちろん愛聴。そして12月のライブに涙。全部ひっくるめて07年を象徴するアルバム。多分20年後も聴いてる。
それから細野さんにあがたさんに佐野さんとベテラン勢の作品はやっぱり強かった。当たり前すぎて面白くないかなと思いながらも、どうしても上位に入れるしかない。懐古趣味に走るなんてことは全くなくて、そこらの新人よりはるかに過激で過剰だったり、実験的だったり、青臭かったりと、敵わねぇなぁと思う力作ばかりなんだもん。シネマの実に四半世紀ぶりの新作も素晴らしかった。ずっと音楽聴き続けてると、こんないいことが起こるんだ!と心底思った。今年一番の贈り物だった。
原田知世さんの新作も嬉しかった。昔は良かったじゃなくて、今のほうがもっとずっといい!と言える作品。
で西村さんのアルバムも忘れがたい一枚。産地直送、本人直販の傑作。音楽ビジネスがどーとか、音楽ギョーカイなんかホントはどーでもいい。そこにいい音楽があり、それに対して僕らはいくばくかのお金を払う。CDを買う、ライブに行く、それはそのアーティストに対してまずは僕らが出来ること。08年はそれを広げていくことが何か出来たらいいな。それにしてもホント07年は西村さんの追っかけしたなぁ。それも含めて07年、外せないアルバム。
新人では寺尾紗穂さん。長く音楽聴いてると、どうしても高値安定のとこに落ち着いちゃうもの。でも彼女みたいな才能と出会うと、新しいアーティストも聴いていかないと、と思っちゃう。
そしてカーネーション矢部さんの初ソロ作。このソロを聴く事で、矢部さんのポップセンスがいかにカーネーションにとって大きな役割を果たしてるかを思い知る。またそれと同時に改めてカーネーションの懐の深さを感じたね。
それから野本かりあ。ピチカート亡き後、リミックス仕事や営業仕事が多い中で、本気の小西作品を聴けるのはここだけなのかも。今作は「野本かりあ」という素材そのものの魅力が小西さんを本気にさせたよう。
とまぁ、こんな感じのベストテン。順位はあまり関係なく2007年の僕に刻まれたのがこの10枚。音楽聴き始めて早20数年。グルッと一周回った感じ。もうずっと音楽聴いていく。これが私の生きる道…なんて。それもまたこの10枚が僕の耳元で囁いたことなんだ。そして08年は新しい何かが始まる予感。不思議とワクワクしてる。

そんなこんなで僕の07年ベストアルバム。毎年同じ締めだけど、どこかで誰かがこれを読んで、ここにある音楽に興味を持って、聴いてみてくれたら、それはとても嬉しい。
そして自分の耳で聴いて、自分の身体や心で感じて下さい。