日々の泡。

popholic diary

天国と地獄の話

さて、先週のカーネーションから、ちょっと濃厚な1週間だった。先週末は金曜に映画一本、土曜は朝からマンションの理事会行って、午後から映画観て、夜は家族で外食。日曜は朝から娘とブックオフ行って、夜はライブ。と盛りだくさん。さ一個づつつぶしていくか。
先週の日曜はカーネーション「天国と地獄」ライブ@梅田シャングリラ。20年前に出たアルバム「天国と地獄」。リリース日は92年8月25日。ということは8月24日に買ってる。大学4回生、ちょうど就職が決まったぐらい、卒論書きながら聴いてた記憶がある。デビュー盤「YOUNG WISE MEN」続く「GONG SHOW」はまだどこか「ムーンライダーズの弟分」といった印象だった。ちょっと知的で捻くれたポップ。ムーンライダーズ経由で聴き始めたカーネーションだったが、好きなバンドの一つという一だった。そこから一歩抜きんでたのは91年にリリースされた「エレキング」だった。鳥羽さんの勢いがあるギターが加わり、よりポップでロックなサウンドになることで、直枝さんの楽曲の良さがより前面に出たように感じたし、実際もう本当に唸るぐらいいい曲ばかりだった。音楽メディアからはほぼ無視されていたアルバムだけど、その痛々しいまでにポップなアルバムは大のお気に入りになって、当時音楽好きの友達に随分聴かせて回ったものだ。そして待望のニューアルバム。ピチカートが「女性上位時代」を、フリッパーズが「ヘッド博士〜」をリリースした後、カーネーションから出てきたアルバムがこの「天国と地獄」だった。一曲目「オートバイ」。先のピチカートにフリッパーズ。ポップミュージックにサンプリングがもたらす効用。その好例。さらに聴き進める。ベースにグランドファーザーズの大田さんが加わり、カーネーションの下半身が強化。ポップな楽曲、ロックな勢い、そこにぶっといグルーヴが加わり、カーネーション最強の布陣が揃った!って思ったな。僕自身、当時ソウルミュージックに興味を持って聴き始めていたことも有り、これだ!この音だ!ってとにかく興奮して聴き終えたのを覚えてる。カーネーションが怪物になった瞬間に立ち会ったような気分だった。それからは毎日のように聴いてた。
でそんな日々から20年。「天国と地獄」は当時決して話題になったアルバムではない。音楽ジャーナリズム、マスメディアからはほぼ無視。「お洒落な」渋谷系の波に乗ることもなく、かっての捻くれポップ枠からもはみ出し、どこにも居場所がないような感じだった。でも間違いなく名盤だったし、そのまま消えていくアルバムな訳はなかった。98年に一度目の再発。そして20年が過ぎ、まさに完全盤と言える今回の再発。歴史が証明したのだ。
そんなバンドにとってもファンにとっても大切なアルバム「天国と地獄」の20年目の幸福なリベンジとも言えるのが今回のライブ。かってのメンバー、鳥羽さんの参加も嬉しい。ここまでの20年、カーネーションは何度も傷つき、倒れてきたが、それでもその度、砂を掴んで立ち上がってきた。身体についた肉も顔に刻まれた皺も、全てが音の厚みや凄味になっている。決してノスタルジーではない、「今」のカーネーションが奏でる「天国と地獄」。そのふてぶてしいまでにタフなサウンドは20年というの時間の意味を、理由をきっちりと語っていた。
ロックファンの間でまことしやかに語られるカーネーション最強説。それは噂なんかじゃない。紛れもない真実なのだ!
なんてね。きっとこれもいずれ歴史が証明するさ。きっとね。