2025/11/29
8時起床。いつものごとく京都まで出て映画。まずはMOVIXで中野量太監督「兄を持ち運べるサイズに」を観る。疎遠だった兄の急死を知らせる電話が警察から。滋賀から兄が暮らした東北の地へと向かう理子。兄の元妻・加奈子と娘の満里奈と合流し、亡くなった兄を弔い「持ち運べるサイズ」にするまでの4日間を描く。ここんとこすっかりはまっている地元・滋賀在住の翻訳家・作家、村井理子さんのエッセイ「兄の終い」が原作。これも数週間前に読み終わったところ。兄の後始末、そこで振りかかる様々なミッションをバタバタとクリアしながら、その中で疎遠だった兄、家族のことを振り返る爽快さとちょっとした切なさが絶妙な名エッセイだ。「兄を持ち運べるサイズに」というフレーズは原作に書かれたフレーズで村井さんが持つ客観的でクールな視線、これからすべきことへの覚悟、ちょっとした照れ隠しとユーモアもあってとても印象的なフレーズだった。これをタイトルにしたのがまず良い。映画は原作のエッセンスを活かしながら映画ならではのワンダーを生み出す。村井さんの持ち味である「言葉」のキレ、力を活かした「文字」演出。そして何より死んだ兄が「実体」として登場するのは映像だからこその遊びであり表現だろう。どうしようもなくクズでダメで嘘つきなトラブルメイカー。オダギリジョーが演じることでちょっとチャーミングが出ちゃうんだけど、そこがまた「兄」のキャラクターの複雑で重層的なところをうまく現わしている。村井さんのエッセイで書かれる「兄」は一筋縄ではいかない人物だ。空気が読めず自分勝手で粗暴で嘘つき、かと思えば何でも器用にこなし、愛情深い優しさを見せる。そんな兄に振り回され、愛憎入り乱れこんがらがる家族。中野量太監督は「家族」を撮り続けている監督だ。「家族」という得体のしれない繋がりを見つめ続けている。家族の形はそれぞれで、一つとして同じ形はない。それでもこうして家族の物語を観ると、どこか共鳴する部分がある。好きだけど嫌い、愛してるけど憎んでる-相反する想いが大きくなったり小さくなったりしながら同時に存在する。主人公・理子の兄への想いもまたそうで、大嫌いと大好きが大きさを変えながらせめぎ合っている。決して大好きだけにはならないし、大嫌いだけにもならない。好きと嫌いのせめぎあい、その狭間で揺れる様が繊細に描かれている。その揺れに共鳴し泣かされたな。そして並行して描かれるのはもう一つの家族。元妻の加奈子、そして死んだ兄と暮らしていた息子である良一との物語。離れて暮らしていた息子と再び家族になることになる加奈子。児童相談所で息子と対峙するシーン、満島ひかりが素晴らしい。「支えであり、呪縛ではない」家族について誰もがそう言えるわけではないだろう。だが、愛憎の果て恩讐の彼方でその言葉に辿り着いたのだなと思うと胸に込み上げてくるものがある。しかし柴咲コウはちょっと意外なキャスティングだと思ったんだが、とっても良かったな。
で久々にバーガーキングでランチ。スモーキーなパティとフレッシュトマトが美味いなー。
徒歩移動でアップリンクまで移動し本日二本目はチョ・ヒョンチョル監督「君と私」。修学旅行の前日、セミは不吉な夢を見る。なにか胸騒ぎを覚えたセミは脚のけがで入院中の親友ハウンのところへ向かう。ケガや様々な事情でハウンは修学旅行に行かないことになっているのだが、セミはどうしてもハウンと一緒に行きたいと説得する。しぶしぶ受け入れ修学旅行費を工面すべくビデオカメラを売ろうとする二人。そんな中で誤解が生まれ、すれ違っていく二人だった…。ハウンに友情以上の特別な感情を抱くセミ。修学旅行前日の一日、二人の少女の美しく淡く切ない関係が夢とも現実ともつかないような幻想的な映像で描かれる。直接的には描かれないが、その「修学旅行」は2014年4月済州島への旅行。高校生250人を含む多くの人が犠牲となったセウォル号沈没事故の前日の物語なのだ。2人の少女が過ごしたかけがえのない時間、疑心暗鬼、もどかしく不器用な恋、すれ違いを経て、二人はお互いの気持ちを確認し通じ合う。映されているのは、今なのか過去なのか、現実なのか夢なのか、幻想なのか記憶なのか、そしてそれはセミが観ているのかハウンが観ているのか。様々な境界線が曖昧になり逆転する。描かれない「明日」が「今日」を永遠にする。柔らかく優しい光が映画を包む。物語はゆっくりと胸を締め付け、切なさを残す。物語はフィクションだが、逝った者、残された者、すべての人たちに昨日があり今日があったのだ。脚本・監督は俳優でもあるチョ・ヒョンチョル。長編デビュー作ながら青龍映画賞で最優秀脚本賞と新人監督賞を受賞とのこと。じっくりと練られ、繊細に研ぎ澄まされたまるで詩のような映画だ。ぜひご覧いただきたい。
映画の余韻に浸りつつ、地下鉄、JR乗り継ぎ大津越えて石山まで。どうしても今日中に散髪したくて1時間待ちですっきりと。
夜は「とと姉ちゃん」観つつ日記を書く。「とと姉ちゃん」もそろそろ佳境。
2025/11/30
8時半起床。朝から妻と堅田まで。54歳にして初めて仕立てたフルオーダースーツが出来上がったので取りに行く。ピッタリフィットで大満足。いつまでもユニクロの感動スーツ着てる場合ではない。なんつって。で新しくできたホームセンター覗いていろいろ買い物。湖岸のレストランでランチ。インスタ映えしそうなシャレオツなレストラン。ペット同伴化でテラスもあってはやってるんだな。近江牛ハンバーグのカレー、妻はクリームソースのパスタ。あまり外食はしない夫婦なんだが、たまには。しかし話すのは介護や老後の話という。で安売りスーパーで買い物して帰ったらもう4時だ。少し昼寝、いや夕寝してもう晩御飯。一日があっという間に終わった。
2025/12/1
12月。もう12月。今年の今頃はまだ夏だった。時間が過ぎていく速さがどんどん加速化していく。ってな話をもう20年ぐらい毎年12月になると書いてるような気がする。
2025/12/2
ドラマ「ちょっとだけエスパー」はなんだかすごい話になって来たな。最近はもっぱら「マルチバース」ばやりのところを、現在を変えれば未来が変わるというストロングスタイルのSFものだ。面白い。
2025/12/3
寒い。テレビで大家族・石田さんちシリーズ。ついつい見ちゃうなー。出た!次女のヨーグルト事件みたいな。荒れていた末っ子も立派になったなー、おっついに長女が13年ぶりの帰還!となんだかんだと毎回楽しみに観ている。家族の中でも家族観が違い、その関わり方や想いが違う。そして齢を重ねる中でまた変わってくる。好きと嫌いのせめぎ合い、揺れながら長女も帰って来たんだな。
2025/12/4
帰宅すると妻と娘がM-1準決勝の配信をメモりながら観ている。2人とも好きだなー。
2025/12/5
今日は代休。妻も休みだったので二人で買い物。お昼は最近気にいっている近所の定食屋へ。カキフライ定食。具沢山お味噌汁、付け合わせのスパゲティがしっかり美味しい。手作りのタルタルソースも丁寧な作りでいいね。食後にコーヒー飲めるのが嬉しい。

帰宅し一休みしてから歩いてユナイテッドシネマまで。ジャレド・ブッシュ、バイロン・ハワード監督「ズートピア2」を観る。前作「ズートピア」は2016年のマイベストワン映画。待望の続編ということで公開初日に駆けつける。前作では「差別と偏見」の問題をとびきり楽しいエンタメ映画として昇華して見せた傑作。で今作はジュディとニックのコンビが「ズートピア」誕生の謎に迫る。先住民たちを追い払い、歴史を捏造し権威を奪ったもの。いないことにされるマイノリティ。差別を利用した支配、格差社会、権力勾配。真の共生とは何か。お互いの違いを認め合うことの大切さ。などなど今アメリカや世界中で起こっている問題を織り込みそこに対してしっかりと意見表明して見せる。そしてそれがもう徹底的に楽しいエンタメ作品になっているのだ。まさにアニメーションの楽しさが詰まった見せ場だらけのアクション、ワクワクして根源的に楽しいと思わせる動きの数々。もちろんユーモア、ギャグも満載。「走り屋のナマケモノ」とか最高!とにかく絵が動きまわる、アニメーションの楽しさがこれでもかと詰め込まれ一気に最初から最後まで見せていく。物語の中でジュディとニックは互いの違いを認め、それを越えてかけがえのない存在、バディになっていく。そんな友達とも恋人とも違う二人のバディとしての絆が最後には温かく胸に残る。いやはや完璧な映画だった。素晴らしい!
アメリカでも大ヒット、日本でもロケットスタートとのことなのだが、現実の世界は厳しい。差別主義者が歴史の改ざんを繰り返し、法に裁かれるべきものが権力を握り、国を世界を危険にさらす。なんだこれ。SNSやテレビでは権力者のケツをなめる奴がもてはやされ、分断を煽りまくる。なんだよ、金で雇われたバイトがやってんのか。アメリカもたいがいだが、日本もこの1ヶ月でさらに底が抜けたな。流行語大賞の露骨なプロパガンダとか反吐が出るよ。我が国のトップはどうせ「ズートピア」観ないんだろうな。働いてる暇あったら2時間観てみろよ。自分がやってること恥ずかしくなるぜ。ってその感性も理解力もないか。
夜はNHK ONEで「ひらやすみ」最終週をまとめ観。今や日本を代表する若手名バイプレイヤー吉村界人演じるヒデキがラスト週を締める。前半は厳しいシーンが続くも、最後はほっこり、優しく終わって良かった。岡山天音も吉岡里帆もみんな良かったけどやっぱりMVPは森七菜!「国宝」「秒速5センチメートル」そして「ひらやすみ」とふたを開けてみたら今年は森七菜イヤーだったね。
YouTubeで「豪の部屋」かとうけんそう回を観る。ここで言う「サブカル」こそが70年生まれの僕にとっても「サブカル」なんだよね。80年代が丸々10代だった僕が「サブカル」に興味を持ち追っていく中で「加藤賢崇」の名前や存在はそりゃもうよく目にした。片田舎のサブカル中学生からしたら加藤さんは東京のサブカルスターだったな。東京タワーズ、ナゴム、ラジカルガジベリビンバシステム、リーマンズ、いぬちゃん、ドレミファ娘の血が騒ぐ…etc.そんなサブカル中学生の頃にインプットされた様々な固有名詞が出てきて懐かしくもあり楽しい。