日々の泡。

popholic diary

2004年ベストアルバムの話。

1.「ピアノ」原田郁子
クラムボン原田郁子嬢のファーストソロアルバムが並み居るベテラン勢を押さえての一位。音楽が音楽として存在する、清々しく、豊かで何よりも幸せを感じる、音楽の楽しさに満ちたアルバム。音楽ファンで良かった、このアルバムに出会えて良かったと胸が熱くなる想い。とても丁寧に優しく差し出される音、言葉、その一つ一つに込められた音楽への深い愛。

2.「SUPER ZOO!」カーネーション
カーネーション、3人になっての2作目。全曲名曲、脂乗り切ってる状態の最強で最高のロックトリオ。男も惚れる大人の男のホンモノのロック。情けなさも弱さも全部飲み込んで放たれた音のしなやかさ、強さ、優しさに、この30男は胸を熱くさせるのである。人生のサウンドトラックは04年もカーネーションに決定だ。

3.「There she goes」戸田誠司
フェアチャイルド、いやあえて元Shi-Shonenの戸田誠司氏が10年ぶりに放ったソロ作。これは21世紀の「Singing Circuit」(Shi-Shonen85年発表の大名盤)だ。ロマンティックでセンチメンタルなエレクトロ・ソフトロックな音世界に、この30男は胸を熱くさせるのである。RCの名曲「スローバラード」のカヴァーに泣いた。

4.「確かな光」高野寛
ポップマエストロ・高野寛氏が真摯に真っ当に作り上げた音楽。柔らかな朝の光にも似たその音楽は、心の奥の大切なものを照らし出す。ずっと大切にしたいアルバム。

5.「ODREL」青山陽一
青山流ソウル&ダンスミュージック。気心しれたミュージシャンたちとの音の会話っぷり、青山氏のキレがあってコクがある、そして色気のあるギターと歌が最高に気持ちいい。聴けば聴くほど味のでる傑作。

6.「The SUN」佐野元春
ポップでロックな稀代のストーリーテラー佐野元春が帰ってきた!そんな風に言いたくなるぐらいフレッシュなアルバム。希望の光を運ぶ音楽の贈り物。今こそ、佐野元春を聴け!

7.「SPIN」松尾清憲
全曲美メロ、これぞポップミュージック。松尾氏のメロディメーカーとしての天才ぶりが全開、そしてロックフェロモン溢れるヴォーカルがまた素晴らしい。

8.「KARLY」野本かりあ
これは小西康陽脚本・監督、野本かりあ主演の映画である。一音、一音、そしてジャケット、ブックレットに至るまで徹底して小西氏のフェティッシュな美意識に支配されている。ここまで本気でやられると降参ですよ。

9.「LOCOMOTION」SAKANA
余分な装飾を削ぎ落とした西脇一弘の爪弾くギターの真摯な響き、そしてポコペンの「歌」。その「歌」にはどんな言葉も追っつかない。
誰にも似ていない、どこにもない、優しくて、深くて、切なくて、かっこよくて・・。心を揺さぶる音楽。これが本物です。

10.「THE SPHYNX」ノーナ・リーブス
ノーナ・リーブス、腕を上げたな・・と感慨にふける。西寺郷太のソングライティング力に唸った。この才能を見逃してはいけない。

<総評>
さて、2004年ベストアルバムが決まりました。大きく言うと、今年は「音楽」が主役の「音楽」、これ当たり前なんだけど、改めてそんな「音楽」に心惹かれました。
ラジオ局で働き出したこともあって、今年は例年以上に多くの音楽を聴いたのだけど、いかに「音楽」が軽視されているCDが多いかと逆に思い知らされて落ち込む部分もあったのですが・・。
そんな中で、20年自分の耳を信じて音楽聴いてきて、「やっぱり音楽ファンで良かった」と思わせてくれたアルバム、それが上の10枚です。
一位にあげた原田郁子は、本当に音楽の豊かさ、楽しさ、美しさに満ちた奇跡的な一枚で、音楽を見切ったというかっての音楽ファンに「まだこんな素晴らしい音楽があるんだと」と聴かせてあげたい。もちろん、まだホンモノの音楽と出会ってない若い人たちにも聴かせたい。そして音楽の喜びを感じて欲しい。
カーネーションの良さについてはもう言い倒してるのですが、それでも「最高!」と言わずにおれない傑作。10代の頃より、20代の頃より、30代の今、カーネーションの音楽に胸が震えてる。「これは俺の歌だ」と120%の共感で男泣きしてます。
待ちに待った戸田誠司作品はこのベストの肝。「So I'm in Love」という曲を聴いた時、僕の心は15歳に戻った。初恋の気持ちなんか忘れちゃったけど、この胸を締め付けるメロディの感触は憶えてる。
高野寛はナタリーワイズでの作品も素晴らしいものだったが、ここではソロ作を入れた。「はっぴぃえんど」から続く日本ロックの王道を引継ぎつつ、クラムボンハナレグミなど若き才能を育ててきた氏の「いい仕事」っぷりはもっともっと評価されるべき。間違いなく今現在、日本ロックシーンの最重要人物の一人であるのだから。
青山陽一は飄々としながらも、自分の音楽をちゃんと作り上げていてその完成度は驚くべき高さである。キャッチーさも加わった今作は青山陽一の最新作にして最高作。ライブもめちゃめちゃ良かった。
佐野元春はエピックから離れての新作。ベテランでありながら、決して現状に甘えることなく、これだけの作品を作り上げるんだから素晴らしい。若い人たちに聴いて欲しいな。
松尾清憲作はとにかくポップマジックに満ち溢れている。そのメロディーのポップさは群を抜いているし、松尾の変わらぬロックフェロモンヴォーカルはとにかく「いかしてる」。
野本かりあ作というか小西康陽作はジャズ・ジャズ・ジャズな水森亜土「Suki Suki Songs」も愛聴したが、その本気の凄みで野本作を。小西自ら「『KARLY』というレコードを作った人、として記憶されたい」と言ってる位で、パッケージの隅から隅まで小西印の入魂ぶり。その姿勢に感動した。
SAKANAの音楽の力。静かだが決して嘘はつかない本物の音楽。こういうの聴くと、音楽をバカにしたような音楽モドキは決して聴けないのだ。
ノーナリーブスはいい音出してる。こういう中堅バンドが聴かれない状況というのは本当に勿体無いと思うな。
それから今年の特筆事項として上げときたいのが、「鈴木さえ子の復活」。アニメのサントラという形であったが長らく音楽活動から遠ざかっていた彼女の復活は嬉しかった。戸田、松尾作でも素晴らしいコーラスを聴かせており、オリジナルソロ作が待ち遠しい。
それから今年最も聴いた曲が、菊地成孔 feat.岩澤瞳の「普通の恋」。9.11以降最も胸を打つラブソング。一生忘れられない曲になった。
そんな訳で、これが僕が2004年に気に入ったアルバム。もちろん好みは人それぞれだけど、誰かがこれを読んで、気になったアルバムを聞いて、音楽を好きになってくれたら、僕はとても嬉しい。