日々の泡。

popholic diary

2004年2月上旬の話。

2004/2/1
家の建て替えが完了した京都の実家へ。工事中預けていた家具や大量の荷物が運び込まれるのをお手伝い。で昼、近くのスーパーに弁当を買いに行った時、事件がおこる。車で犬を轢いてしまったのだ。公園に犬がいるのは見えていた。飼い主が見当たらなかったので野良犬かなとか思いながら、近づいてきたら困るなとスピードをかなりおとして家の前に車を止めた。車から降りると後ろで犬がキャンキャン吼えてる。まさかと思い犬に駆け寄ると血こそ出てないが後ろ足を引きずってる。しまったと思ってもしょうがない。あたりを見回すが飼い主らしき人はいなくて、とりあえず病院につれていかなきゃと家にいる母に動物病院を調べてもらう。とそこにやっと飼い主が登場。事情説明しあやまりつついっしょに動物病院へ。車の中でキャンキャン鳴くその声がかわいそうでしょうがない。膨らむ罪の意識。病院でいろいろ検査。とりあえず命には別状ないものの、腰骨を骨折。高齢犬ということもあり手術は難しいとのこと。飼い主はご近所さんで、目を離していた間の事故ということで気にしないでとおっしゃられるが、気になるよねぇ。ひたすら謝りたおす。犬はしばし入院となり一旦家に。こうなったら引越しどころじゃなくなる。

2004/2/2
仕事で京都をうろうろ。ふと昼飯に入った喫茶店は昔からの漫画喫茶。で本棚から選んだのは石ノ森章太郎サイボーグ009」。「神々との戦い篇」にぶっとぶ。石ノ森先生の死を持って、最終的には未完に終わってしまった「009」。その描かれるはずだった完結篇に向かう序章というべき、一編。命の意味を問い掛ける壮大なモノローグ。神の領域に近づきすぎた為に石ノ森先生は、この作品を未完のまま、天に召されたんじゃないか?とさえ思う。手塚治虫先生が「火の鳥」を未完のまま、天に召されたように。

2004/2/3
営業先のレコード屋は商店街にある昔ながらの町のレコード屋。前に訪問したとき、店の親父さんとジャズ談義で盛り上がり、試聴させてもらったMARK MURPH「MIDNIGHT MOOD」を発注してたのだ。で用事のついでに取りに行く。と店内は旧盤半額セール中。物色の末、佐藤奈々子「ファニー・ウォーキン」購入。夜、なんだかんだで「僕と彼女と彼女の生きる道」から「はねるのトびら」観る。塚地の「ビートたけしの歌まね」に笑う。

2004/2/4
仕事で大阪の某有名イベント会社へ。まさに業界ですな。で久々に梅田タワーへ。ASA-CHANG&巡礼 feat.小泉今日子「背中」購入。でここんとこ毎日聴いてるのがSPANK HAPPY菊地成孔と岩澤瞳が、あえて菊地成孔 feat.岩澤瞳名義で発表したシングル「普通の恋」。2000年代を代表する名曲。「ハンパに高いIQがいつでもいつでも邪魔になって/革命ばかり夢見るけれども/何もできない」男と「友達なんて誰も居ない/アタシきっと/死んだら絶対/地獄に堕ちるわ」という女が「あのコンビニ」で出会った「普通の恋」。とにかく、この詞にぶっとんだ。9.11以降のありきたりなラブソング。でも、これが9.11以降最高のラヴソング。「だからコンビニに行かなくっちゃ/あのコンビニに行かなくっちゃ」のフレーズに潜むポップマジック、これこそがポップミュージックの肝。

2004/2/5
仕事後、先輩達と飲みに。先日途中入社されたFさんが昔、浜田省吾に「弟子にしてください」という手紙を渡したというエピソードに爆笑。ハマショーが弟子とってたら笑うやろ。

2004/2/6
仕事後、試写会に行く。リチャード・カーティス監督の「love actually」。秘書に恋してしまう英国首相、クソみたいなクリスマスソングで復帰をかける老いぼれたロックスター(このエピソードが最高)、親友の花嫁に恋する画家、言葉の通じないメイドに恋する作家etc.いくつもの恋の形が微妙に重なりながら進んでいく。まずはこの職人芸ともよべる脚本が素晴らしい。オープニングシーン、空港の到着ゲートで再会を喜び合う人々の姿が映され「世界は憎悪や貪欲に満ちていると多くの人が思い始めているが、私はそうは思わない、愛はいたるところにある・・」といったモノローグが重なったとき、すでにグッときた。この肯定ぶりが素晴らしい。そう、世界を肯定する原動力は「恋する気持ち」にほかならないのだ。一度でも人を好きになったことがある人なら絶対に好きになる映画である。それと音楽の使い方がうまいんだわ。ラストにブライアン・ウィルソンが書いたあの世界で一番美しいポップソング「God only knows」が流れた時、のけぞったね。それにしても「ロマンティック・コメディー」って最高だな。もう一回観たい。

2004/2/7
朝から娘と図書館へ。糸井重里ほぼ日刊イトイ新聞の本」、中島らもチチ松村「らもチチ」借りる。で先週轢いてしまった犬が無事退院したと聞いて、西武百貨店で手土産買って今週も実家へ。まずは再度飼い主さんに詫びを入れる。あとは新しくなった実家でのんびり。僕が悶々と青春時代をすごしたあの5畳の部屋は僕の記憶の中だけにとどまることになった。

2004/2/8
今日は午後から仕事。スポンサーでもある某地元企業主催のカラオケ大会の審査員という仕事。実に3時間演歌ばかり聞き続けぐったり。一応20点満点で点数つけていくんだが、カラオケ大会に出ようなんて人ばかりなんだから皆、それなりにうまい。後半なんだかもうわからないから適当に数字書き入れとく。しかしこれだけ続けて演歌を聴くのは初めてだな。ほとんど知らない曲なんだが、ここに集まる人にとっては知ってて当然な曲なんだろうな。成世昌平「はぐれコキリコ」なんて3人も歌ってたぞ。でコキリコってなに?しかし普段ポップソングばかり聴いてるので、この演歌の世界観はちょっと新鮮。だいたいポップソングは基本的に「童貞」の音楽なんだが、演歌はもう完全に「やってる」というかもはや黒ずんでる感がたっぷりで、どういう工程でこの世界に行き着くのだろうと興味持っちゃう。演歌にでてくる女性達はみな帰らぬ男を想い、一人お酒を飲んでたり、泣きながら一人寝してたりで情念というか、体の奥の疼き具合がなんちゅーか、奥深いというか、はぁーという感じで。でそんな歌を、ポールマッカートニーと同い年ぐらいのおっさんみたいな顔したおばはんが熱唱してて、なんなんだこの世界は!?とアジアの片隅で思う。

2004/2/9
ジャネットジャクソンの「おっぱいポロリ」事件は大変なことになってるが、いつから「おっぱい」は「神聖」な場にふさわしくないものになったのだろう。おっぱいこそが神聖なものだという気がするけどなぁ。「おっぱい」こそが「神聖なるスーパーボウル」じゃないか。でもあの目くじらのたてかたは凄いな。普通、別のものを立てるだろうに。そんなアメリカ人のうそ臭いモラルとか正義感は大嫌い。実際「おっぱい」嫌いなやつなんて、この世にいるのか?俺はどっちかというと好きだけどね、いや、大好きだけどね、いや大好物だけどね(きっぱり)。ごはん3杯はいけるね。

2004/2/10
仕事後、ディレクターさんといっしょに大阪までピカデリーサーカスのライブ観にいく。99年のファーストはその年のベスト1アルバムに選んでるぐらいビシビシに聞き込んでるので期待大。いやぁ8人の音楽家がずらりと揃うステージは壮観。4人のヴォーカリストなんて実に贅沢で、ポップミュージックの豊かさを体感。実にアットホームなMCもご愛嬌で、この時代にこの音!この人生肯定ぶり!断固指示。松尾清憲氏のカッコイイヴォーカルも素晴らしかったが、伊豆田洋之氏の甘いヴォーカル&ピアノマンな佇まいが実に良くて一気に評価高まった。CDだと甘すぎるなぁなんて思ってたのだが、このステージですっかりはまった。

2004/2/11
休日。特にやることもなく「大長編ドラえもん」を読む。第7作「のび太と鉄人兵団」が特に素晴らしい。ラスト12Pで打ち寄せる感動。日常と地続きの未来、お茶の間SFの真骨頂。これぞ、F先生のセンスオブワンダー。

2004/2/12
最近、QUEENがやたらかかってるな。ベスト盤はバカ売れで「めざましテレビ」で軽部アナがとりあげてるぐらい。例のくさい演技の大根役者がやってる最低のドラマで使われてるからなんだろうけど、金の匂いしかしない最悪の売り出し方でフレディ・マーキュリーも草葉の陰で泣いてることだろう。業界人よ、恥を知れ。

2004/2/13
会社帰りパルコへ。ピカデリーサーカスのライブの影響もあり、杉真理松尾清憲のユニット「BOX」を久々に聴きたくなってファースト「box pops」とセカンド「Journey to Your Heart」を2 in 1で収めた再発盤を購入。あと紀伊国屋で「キネマ旬報」と「Invitation」誌購入。で帰って「BOX」聴き込む。うん、やっぱ「Temptation Girl」最高。まんまビートルズな音色といい、松尾-杉のヴォーカルの相性の良さといい、いいとしか言えない。鈴木慶一のコーラスがかっこいい「人生はコーンフレーク」とか、なんでこういう曲がもっともっと聴かれないのか、本当に理解に苦しむ。

2004/2/14
岩井俊二監督「Love Latter」テレビで。公開時、劇場で見て以来数年ぶりに。初々しい酒井美紀ちゃんに胸がキュンとなる思い。「初恋の記憶」はいつでも美しくて、切ない。結局、人はその記憶の幻影を求めて、恋をし続けるのだろう。そして恋の現実はいつでも人を傷つけ、結果、初恋だけが「甘美な記憶」となる。なんつって。

2004/2/15
行列のできる法律相談所島田紳助氏の素晴らしい話芸に笑い転げる。ここにきて、この番組を始めとして毎日のように、紳助氏の天才的なトーク芸が披露されている訳だが考えたら長い道のりだった。島田紳助が「漫才」から一歩抜け出し、最初に天才的なトーク芸を見せたのは、20年前だった。KBS京都の深夜放送「ハイヤング京都」。僕は小学6年生で毎週土曜日の夜はラジオにしがみついていた。ビートたけしに「オールナイトニッポン」があったように、島田紳助には「ハイヤング京都」があったのだ。慎重派の紳助はそのトーク芸をまずはラジオから、そして大阪ローカルのテレビそれも深夜から徐々に広めていくことになる。一時期の紳助氏は大阪では存分に発揮するトーク芸をあえて東京では見せないようにしているのではと思えた。明石家さんまの人気の上昇、ダウンタウンという天才の登場の影で地道に基盤作りに励み、決して前へ出ない男。そして、さんま、ダウンタウンの安定化、若手の台頭も大きなものはなく、「笑いの勢力地図」はここ10年動きがないように見える。しかし、「司会」という切り口からいつの間にやら「笑いの勢力地図」上にがっちりと領土を広げているのは紳助氏ではないか。少なくとも今のテレビの中で量的にも質的にも、最も「笑い」を提供しているのは紳助氏なのでは。ま、そんなことはどうでもいいのですが、いや、紳助氏はおもろい。