日々の泡。

popholic diary

「日々の泡。」の始まり の話

昨年末にUPしたエムカクさんの「明石家さんまヒストリー」の書評が、思わぬことで水道橋博士さんに取り上げていただき、ほぼ休眠状態だったこのブログも多くの人に訪れていただいた。

せっかく読んでいただいたのに開店休業状態というのもアレなのでちょっとこのブログの始まりについて書いてみようと思う。

自分がネットに文章を初めてUPしたころのことを少し振り返ってみる。

昔々1995年のこと。大学を卒業し、大阪の問屋で働き始めて2年目。大学時代の友人たちと自費で雑誌を作った。まぁ遊びなんだけど、自分の結婚式の2次会で友人たちに配ろうという目論見で10数名の友人たちに声をかけ、好きな音楽アルバムについて原稿を書いてもらった。「OFF!」というタイトルをつけて100部ほど作ったかな。

以前から文章を書くには嫌いじゃなかったし、子供のころから本や雑誌が好きだったので編集者ごっこがなんとも楽しく、なんとかもう一回作れないものかと友人たちから原稿集めたりもしたものの、仕事に追われるままなんとなくずるずると時間ばかりが過ぎていった。ちょうどその頃インターネットが普及し始め、当時勤めていた会社に数台ネットができるPCが導入された。お昼休みにそのPCに陣取りネットサーフィン(懐かしい言葉だな)する中で出会ったのが水道橋博士さんのHPだった。すっかりはまって浅草キッドの漫才台本や博士さんの日記をむさぼるように読んだ。ほんと文字通り更新を心待ちにして端から端までむさぼるように読んだ。

そこでふと思った「そうだ僕もHPを作ろう。雑誌ごっこが一人でできるじゃないか。」そして98年、見よう見まねで作った個人HPが「OFF!!音楽と笑いの日々」

で、そこにUPすべく日記を書き始めた。それが「日々の泡」と題した日記の始まり。

正直、仕事は面白くなかった。どう考えても不向きな営業仕事でストレスたまりまくってたこともあり、ストレス発散とばかりに、仕事の愚痴から好きな音楽やお笑いについてを書いてはUPした。まぁ今読んだら、お前何様なんだよという感じで書いていて恥ずかしいことこの上ないのだが…。

で一番古い1998年1月の日記を読んでみた。

1998.1.1
朝から
爆笑ヒットパレード」をチェック。
爆笑問題は見れなかったが浅草キッドの漫才と何年かぶりに遭遇。

という一文から始まる。面白いことに「浅草キッド」の話から日記が始まっているのだ。

日記を書き始めたこと、HPを作ったことは浅草キッド水道橋博士さんの影響であることは間違いないし、そのモノの見方や行動にこの先もずっと影響を受け続けることになる。

で紆余曲折あって2003年、僕は地元滋賀のラジオ局に転職し新たな生活が始まる。時代はHPからブログの時代へ。ここはてなブログの前身、はてなダイアリーに日記を移行したのが2004年10月31日のこと。つまりはこのブログ「日々の泡」である。それから2010年ごろまではほぼ毎日日記を書いてUPしている。自分でもよくまぁあんなに書いてたなと思う。文章とは面白いもので書けば書くほど調子が出てきて、もう何でも書けちゃうなんて気分になってくる。まぁ面白いぐらいに書くことができた。

で2010年半ばから日記は途絶えだす。この頃、僕は営業から念願の制作に異動になり、自分自身がディレクターとして番組を制作することになる。ブログ以外に表現する場ができたのと同時に作る立場になって急にブログで文章を発表することが怖くなってしまったのだ。それと2009年10月から始めたTwitterも大きい。短い言葉に慣れてしまってすっかり長文を書くことができなくなってしまった。

であっという間に10年。仕事は紆余曲折あり制作~営業の異動を繰り返し今はさえない営業マンとして相変わらず音楽を聴き、映画を観、本を読んだりラジオを聴いたりして暮らしている。

そして2020年12月13日、読み終えたエムカクさん「明石家さんまヒストリー」の書評を久しぶりにブログにUPした。

その4日後、2020年12月17日10時29分。Twitterに一通のDMが届く。

明石家さんまヒストリー」の書評を引用したいという内容、そしてそのDMの送り主の名前に僕は腰を抜かすことになる。

その送り主の名前は、僕がこうして文章を書くきっかけとなった「水道橋博士(小野正芳)」さんだったのだ!

 

 

2020年に観た映画の話 の続き

さて、2020年に観た映画の話 の続きです。

改めてMYベスト10の感想を自分のTweetから抜き出してまとめてみた。こんな感じです。

 

① 「はちどり」 (監督/キム・ボラ)

1994年、ソウル。14歳のウニが過ごす日々を描く。家と学校、自分を中心にした半径1kmの世界。この理不尽で窮屈な世界のことは世代も性別も国も違うけど僕もよく知っている。14歳だったことがあるから。
カメラは揺れ動くウニの心に寄り添い、彼女が観る世界を映す。少し風変りな塾の女性教師と出会い、彼女は自分自身の痛みの意味を知る。そして父や母、兄、姉、友人など自分以外の人にもまた世界があり痛みがあることを知るのだ。
14歳の長くて短い時間の中で、誰かと出会い、小さな事件をいくつも体験し、ウニは成長していく。半径1kmの世界、理不尽で窮屈な世界の外に、本当の世界があること知る。ラストシーンのウニの表情、眼差し。彼女は成長し、世界の見え方が変わっているということがはっきりとわかる。
キム・ボラ監督、これが長編一作目!主人公に寄り添いながら、主人公以外の人々にもまた世界があるということがちょっとしたシーンでわかり、主人公がそこに触れ、心が動いていく様が見える。素晴らしい演出。ラストシーンの力強い美しさ。2作目、3作目が既に楽しみ。
左利きのウニと左利きの女性教師ヨンジ。トランポリンで跳ねる姿と気持ちを持てあまし家の中でドスンドスンと跳ねようとする姿。小さなシーンを丁寧に積み重ね、主人公の世界が揺れながら拡がっていく様を見せる。噂にたがわぬ傑作。キム・ボラ監督恐るべし。

 

② 「ブックスマート 卒業前夜のパーティデビュー」 (監督/オリヴィア・ワイルド

モリーとエイミーは親友同士。高校生活のすべてを勉強に捧げた二人が青春を取り戻すべく卒業式前夜パーティーデビューすることに。ってな青春コメディ。いやーもう最高!楽しくってパワフルでこっちも元気になった!
勉強一筋だった二人がパーティに参加すべくドタバタな展開になっていくのだが、その中で今まで軽蔑していたクラスメイト達のことを知り、それぞれの事情に触れ、より広い世界への一歩を豪快に踏み出していく。まさに「ブレックファストクラブ」なグッとくる青春映画。
主人公二人の掛け合いが楽しいし、まわりの珍妙なるクラスメイト達も最高!人種やセクシュアリティの描き方が多様で新しく、かつバカバカしく笑えてとてつもなくパワフル、でも青春ど真ん中でグッとくる。彼女らの行く末をずっと観ていたくなる。大好きな映画が1本増えた。

 

③ 「私をくいとめて」 (監督/大九明子

まず最初に言わせて。大傑作!めちゃくちゃ面白かった!気ままなおひとりさま生活を送るみつ子が、恋をして…という自問自答映画。最初は恋愛メインの話かと思いきや中盤から一気に深いところに突っ込んで行く。ここまで斬り込んで行くんだというぐらい
社会の中で生きていく上で人は様々な鎧を身につけていかざるをえない。その苦しみや悲しみをどう乗り越えていくか。どう解放されていくかを実に映画的な表現で描いていく。その「映画的」な見せ方がPOPに突き抜けていて楽しく、この見せ方こそが最良にして最善と思える
主演はのん。全編出ずっぱりで80%は一人芝居、それもほぼドアップ。でもうこれが最高!主演女優賞とらなかったら嘘でしょ的名演。桂枝雀ばりの緊張と緩和。心の中を描く映画だが、これはもう心のアクション映画だ。
外と内の間にある「玄関」が象徴的に描かれているのは監督・大九明子×原作・綿矢りさの傑作「勝手にふるえてろ」を想起させるし、親友役の橋本愛とのシーンでは「あまちゃん」が浮かぶし、吉住のTHE W優勝も必然としか思えなくなる。全部のパズルがピタッとはまる感じがある。
とにかく女優のんの代表作来た!という感じで、なんでこんな凄い天才女優を使えないんでいたんだとここ数年のエンタメ業界を叱りつけたくなる。これからもうがんがんに演技してもらいたい。

 

④ 「ストーリー・オブ・マイライフ 私の若草物語」 (監督/グレタ・ガーウィグ

4姉妹が織りなす小さな喜びや悲しみ、夢と希望、挫折や後悔…積み重ねっていく出来事と過ぎ去りし日々。古典を原作としながら、今を描く新鮮さと瑞々しさ、躍動感があってとっても素敵な映画だったなー。
物語の主人公、原作者、そして監督自身が重なる鮮やかなラストが素晴らしい!ファンタスティック!と映画館で叫びたくなった。その見事なラストで最上級の活き活きとした今を生きる映画になった。グレタ・ガーウィグ監督のもとに集まったシアーシャ・ローナン、フローレンス・ピュー、エマ・ワトソン、そしてエリザ・スカンレンという最強の座組もいい!

 

⑤ 「燃ゆる女の肖像」 (監督/セリーヌ・シアマ)

18世紀フランス。望まぬ結婚を控える貴族の娘と彼女の肖像画を描く女性画家。二人が恋に落ち愛に生きた数日を描く。なんという気高さ、名画の品格。完璧なまでに美しい映画。
格調高くクラシカルでありながら女たちが寄り添い共闘する現代的なテーマもしっかりある。映画史的にも重要な作品として残り続けるだろう。ハッとするほどに美しいショットの数々が目に、心に焼き付く。
見る/見られる関係が反転し、二人は恋に落ちる。決して結ばれることのない愛の結末とその余韻。愛と芸術の関係、その深さを叩きつけるラストの畳みかけが凄い。完全に打ちのめされました。

 

⑥  「パラサイト 半地下の家族」 (監督/ポン・ジュノ

かなりハードルが上がっている状態で観たのだが、観終わってみればそのハードルすらはるか下の方に霞んで見える。こんなところにまで連れて行かれるんだと放心状態。ちょっともう別物というか、でもこれ紛れもなく「映画」なんだよなぁ。
「面白い」と言っても様々な「面白い」があるわけだがそのどれもに当てはまる「面白い」に溢れている。でもちろんそれだけで済まされる訳はなく、圧倒的な力でとんでもない場所まで放り投げられる。観終わって周りを見渡せば今まで観たことも無い景色が広がっていた
ソン・ガンホのあの表情が頭から離れない。とにかく大袈裟に聞こえるかもしれないが、映画の到達点を観てしまった。という感じだ。

 

⑦ 「WAVES」 (監督/トレイ・エドワード・シュルツ)

レスリング部のエリート選手タイラーは恵まれた家庭に美しい恋人、何不自由ない生活を送っている。だが厳格な父親との軋轢、そのちょっとした綻びから大きな悲劇を生む。とここまでが前半。後半は妹エミリーが主人公となり再生の物語が始まる。傑作。
色彩、音楽、そして画面のサイズ。主人公たちの心の動きが映画全体を使って描かれる。なんて繊細で美しい映画なのか。ちょっとしたことで真っ逆さまに落ちていくタイラー。自らを責めながらやがてまた立ち上がろうとするエミリー。忘れがたき映画、忘れがたき人々。
エミリーを演じたテイラー・ラッセルが本当に素晴らしかった。彼女のことをずっとずっと観ていたいと思った。

 

⑧ 「カセットテープダイアリーズ」(監督/グリンダ・チャーダ

1987年イギリスのルートンで暮らすパキスタン移民の少年ジャベド。閉鎖的な街、父との確執、毎日を悶々と過ごす彼。そんな中出会ったのはカセットテープから流れてくるブルース・スプリングスティーンだった!一言、最高っ!大好き!
音楽との出会いが少年の人生を変えていく。音楽の力が彼の背中を押す。扉が一つ、また一つと開いていく。そしてその過程で彼は大人になっていく。自分の人生を生きていくことで、自分以外の誰かにも人生があることを知る。
映画「はちどり」では主人公の少女は塾の先生と出会う。自分のことを理解してくれる存在を知り、大きな世界への一歩を踏み出す。ジェベドが出会うのはブルース・スプリングスティーン。まるで自分のことが歌われているように感じ、閉じた世界の外にある大きな世界へ一歩踏み出すのだ。
音楽が世界を変えることは出来ないかもしれないけれど、音楽が誰かの人生を変えることは出来る。これは断言できる。ジャベドと同じ1987年に16歳だった僕も、身を持ってそれを経験しているからだ。物の見方、考え方、生きる指針。カセットテープから流れてくる音楽が導いてくれた。
なんていうと大袈裟かもしれないけど、何かを好きになるってこういうことだし、何かを好きになったことがある人ならわかるはず。映画「カセットテープダイアリーズ」はある意味、音楽好きあるあるなのだ。愛すべきあるある!そう早く言いたい。音楽あるある言うよ。音楽に人生変えられる!
でもう一つ。映画の中で主人公は酷い差別にさらされる。街には分断が起こり、ヘイトが横行している。それにNoを叩きつけるのもまた音楽なのだ。決して簡単なことじゃないし、勇気のいることだけれど、声を上げることの大切さを映画は示唆する。

 

⑨ 「ジョジョ・ラビット」 (監督/タイカ・ワイティティ

第二次世界大戦下のドイツ。10歳の少年ジョジョは空想の友人・ヒトラーとともに兵士を目指す。そんな彼が家で出会ったのは母により匿われていたユダヤ人の少女だった。なんと愛らしく、悲しく、そして気高いコメディなのか。素晴らしかった!
戦争のさなか、ナチスに憧れる靴紐も結べない少年ジョジョユダヤ人少女との出会い、そして戦争の狂気の中で大人になっていく。事象だけを追えば重く苦しい話なのだが、映画は愛らしくユーモアに溢れ、力強くその先へと進む。抱きしめたくなるような映画。心底感動した。
主人公の少年が実にかわいらしく物語を健気に引っ張っていく。母親役のスカーレット・ヨハンソンは過去最高にチャーミング。またサム・ロックウェルが凄まじい存在感をみせる。そして監督、脚本、ヒトラー役を務めるタイカ・ワイティティ監督!天才かよ

 

⑩ 「アルプススタンドのはしの方」 (監督/城定秀夫)

瑞々しく清々しく気持ちの良い映画だった。舞台の真ん中で輝けなかった若者の中にある輝くものを優しく見つめ、舞台の真ん中で輝く人への敬意もある。青春映画のはしの方でありながらど真ん中。この先、多くの人に愛されるであろう作品。
自分はアルプススタンドにすら行かなかったクチで、人生の3分の2、いや4分の3を過ぎて「そんなもんだよ、しょうがない(©昭和のいる・こいる)」が身に沁みついてしまっている身だけども、もう一度送りバントぐらいはという心情になったな。

 

 

2020年に観た映画の話

といいことで2020年のMYベスト映画は…

①はちどり
②ブックスマート
③私をくいとめて
④ストーリー・オブ・マイライフ
⑤燃ゆる女の肖像
⑥パラサイト 半地下の家族
WAVES
⑧カセットテープダイアリーズ
ジョジョ・ラビット
⑩アルプススタンドのはしの方

ってな感じに。

上位5作は全て女性監督による女性を描く映画となった。

ここ数年、女性をめぐる問題は自戒も含めて自分の中でも大きなテーマになっている。それは映画を観ることで浮かび、考え、自分の中に広がってきたことで2020年もまたそこに言及する作品に関心を持ったし、惹かれた。

いかに女性たちが不条理な現実の中でもがき苦しんできたか。そしていかに男性たちがそこに気づかず(あるいは意識的に)不条理を強いてきたか。「いい加減、その足をどけろよ!」という女性たちの意思表示にはっと気づき、過去の自分の振る舞いや行いを恥じ大いに反省もしている。

で、もちろん上に挙げた作品はそれだけじゃない。そのような社会の現実を背景に、主人公や主人公を取り巻く登場人物たちが、時にぶつかり、共闘し、一歩を踏み出していく。他者の人生を知り、自らの人生を生きていこうとする力強い意志が一筋の光となり希望となる。そんな物語達に強く惹かれた。そしてそんな物語達を生みだしたのが女性監督だった。

しかし2020年は改めて映画館という空間が自分にとっていかに大切だったかを思い知った。暗闇の中で、他者の人生を疑似体験し、その人生に想いを馳せる。それによって自分の人生はより豊かに深く拡がっていく。

映画館に行けない間は配信でも多くの作品を観たが、やはりあの映画館が持つ深い闇とスクリーンに映える光にはかなわない。映画館に自分は随分救われていたんだなと再認識をした一年だった。自分は映画館で観る映画が好きなんだな--それがよくわかった。

 

 

2020年12月のTweet

2020/12/21

パティ・ジェンキンス監督「ワンダーウーマン1984」を観た。オープニングのチビダイアナのSASUKEシーンでもう楽しい。ガル・ガドット先生が大スクリーンに現れた時には思わず「待ってました!」と心で叫んだ。痛みと孤独を知る愛の戦士。最高ですよ、そりゃ。肥大する欲望が分断を生み世界を破滅させようとする。弱きものが踏みにじられた末に闇に落ち邪悪な心を宿す。現代的なテーマを最強の戦士WWがどう解決するのか。とにかくガル・ガドット先生、あんたは偉いっ。危機一髪で助けられた幼い少女達がワンダーウーマンガル・ガドット先生)を見上げるその瞳。キラキラ輝くその瞳こそが力強いメッセージではないか。

2020/12/24

水道橋博士さんの書評に掟破りの書評内書評として私の書評が!お読み下さい!

kangaeruhito.jp

文春、小林信彦さんの連載コラムでエムカクさんの「明石家さんまヒストリー」が!中学生の頃、愛読書は「日本の喜劇人」だった。

「勇ましい勝者が一瞬に光る本ではなく、弱き人を介抱をする、一生燻り続けながらも後世に残る本を作りたい。」
痺れるなぁ(2020年12月24日号|水道橋博士|博士の異常な日常|水道橋博士のメルマ旬報より)

2020/12/26

大阪韓国映画祭でチョン・ヨンギョン監督「私を救わないでください」を観た。借金の末、命を絶った父。12歳の少女ソニュは母と逃げるように誰も知らない街へ。転校先でやんちゃで明るい少年ジョングクと出会い、やがて心を通わせる。だが貧困にあえぐ生活の中で母娘ともにしだいに追い詰められていく。社会から見放された母娘。淡い初恋を生活が押し潰していく。ソニュを救いたいと願うジョングクの姿にはっとさせられる。実際の母子心中事件から着想を得たという本作。隣人に手を差し伸べたいと思う優しさや親切心が人々の心にあることを信じたいし自分自身も大切にしたい。いい映画だった。

手塚眞監督「ばるぼら」を観た。稲垣吾郎×二階堂ふみで描くデカダンでエロティックでキッチュな世界。エンタメとアートの狭間で「創造」を突き詰め追い求めた手塚治虫の心のリアル。決して触れてはいけない創造の神に触れてしまった男=手塚治虫の物語。手塚治虫の宇宙、その広大さと奥深さを思い知る

イ・ジョンオン監督「君の誕生日」を観た。高校生ら300人以上が犠牲となったセウォル号沈没事故。残された父と母が息子の死と向き合うまで。ソル・ギョングチョン・ドヨンという韓国映画界きっての演技派が複雑な事情を抱えた夫婦をギリギリまで抑えに抑えた演技でじっくりと見せる。そして最後の最後に涙腺が鬼のように決壊。ソル・ギョングチョン・ドヨンといえば18年前に共演した「私にも妻がいたらいいのに」は大好きな映画。こっちのチョン・ドヨンはもう最高にかわいらしくってすっかり彼女のファンになったもんだ。鼻のとこにきゅっと皺がいく笑顔が何ともいえずいいんだよ

ナワポン・タムロンラタナリット監督「ハッピー・オールド・イヤー」を観た。北欧から帰国したデザイナーのジーン。ミニマムなライフスタイルを築くべく断捨離に挑むが…。一つ一つの物にはその歴史があり想いがある。要不要、ときめくときめかないでは簡単に分けられないものがある。物を通じて知る誰かとの関係は複雑で答えがない。掛け違えた想いや壊れた関係に揺れる主人公を演じるのは「バッドジーニアス」のチュティモン・ジョンジャルーンスックジン。とっても魅力的な女優さん。

北野誠のズバリサタデー」エムカクさん出演回聴く。誠さんに(マニアックすぎる)質問をぶっこむエムカクさん最高!そこから貴重な話を引き出し、またヒストリーが上書きされていく。ヒストリー2、3…さらに1の増強版が必要になるじゃないか!

1年と1日遅れでポール・フェイグ監督「ラスト・クリスマス」を観た。不運続きのケイトは自堕落な日々を送っているが、ある日トムという青年と出会い…。というクリスマスのロマンチックコメディなだけでなく親切や優しさ、与えることこそが幸せであり願いなのだというクリスマスの意味を知る良作!

正直者が報われ、思いやりや親切が救いとなり心優しき人々が心穏やかに過ごせる世界。クリスマスぐらいそうあって欲しいと願うが、この国ときたら…。恥知らずで卑怯者の嘘つきがデカイ顔でのさばっていやがる。クソ最低だよ。

2020/12/27

マキタスポーツさんとキョンキョンの対談。マキタさんと同じ1970年生まれ。この世代にとってキョンキョンがいかに特別な存在か。明菜、ちえみ、秀美に優とそれぞれ好みはあったとしてもキョンキョンは全員が好きだった。今でもずっとかっこよくてかわいい憧れの女性。彼女と対談なんて1970年生まれ男子全員の夢だよ

2020/12/29

井筒和幸監督「無頼」を観た。あるヤクザ者の生涯を通して戦後の裏昭和史を描く群像劇。いい顔の男たちが織りなすまさに無頼な物語。荒々しくハードな描写もありながら、なぜかほのぼの感すら漂う「ファミリー映画」だった。実在の人物をモデルにしながらの一代記もので、まるで朝ドラのような面白味がある。毎朝15分の連続ドラマで観てみたい。いや絶対ならないだろうけど。ヤクザ者たちの会話の随所に映画ネタが散りばめられてるのも楽しい。松角洋平、清水伸、阿部亮平、清水優といった渋いバイプレイヤー達が主演の松本利夫をがっちり支えるが、その中でもずば抜けた存在感で影の主役と言えるのが中村達也。名優の貫禄!

大九明子監督「私をくいとめて」を観た。まず最初に言わせて。大傑作!めちゃくちゃ面白かった!気ままなおひとりさま生活を送るみつ子が、恋をして…という自問自答映画。最初は恋愛メインの話かと思いきや中盤から一気に深いところに突っ込んで行く。ここまで斬り込んで行くんだというぐらい。社会の中で生きていく上で人は様々な鎧を身につけていかざるをえない。その苦しみや悲しみをどう乗り越えていくか。どう解放されていくかを実に映画的な表現で描いていく。その「映画的」な見せ方がPOPに突き抜けていて楽しく、この見せ方こそが最良にして最善と思える。主演はのん。全編出ずっぱりで80%は一人芝居、それもほぼドアップ。でもうこれが最高!主演女優賞とらなかったら嘘でしょ的名演。桂枝雀ばりの緊張と緩和。心の中を描く映画だが、これはもう心のアクション映画だ。外と内の間にある「玄関」が象徴的に描かれているのは監督・大九明子×原作・綿矢りさの傑作「勝手にふるえてろ」を想起させるし、親友役の橋本愛とのシーンでは「あまちゃん」が浮かぶし、吉住のTHE W優勝も必然としか思えなくなる。全部のパズルがピタッとはまる感じがある。とにかく女優のんの代表作来た!という感じで、なんでこんな凄い天才女優を使えないんでいたんだとここ数年のエンタメ業界を叱りつけたくなる。これからもうがんがんに演技してもらいたい。

「無頼」の後に「私をくいとめて」を観たんだけど、全く違うタイプでありながら、共通点は大滝詠一メロディー。しかしこの2作、タイトル入れ替えても成立するんじゃないか。

2020/12/30

セリーヌ・シアマ監督「燃ゆる女の肖像」を観た。18世紀フランス。望まぬ結婚を控える貴族の娘と彼女の肖像画を描く女性画家。二人が恋に落ち愛に生きた数日を描く。なんという気高さ、名画の品格。完璧なまでに美しい映画。格調高くクラシカルでありながら女たちが寄り添い共闘する現代的なテーマもしっかりある。映画史的にも重要な作品として残り続けるだろう。ハッとするほどに美しいショットの数々が目に、心に焼き付く。見る/見られる関係が反転し、二人は恋に落ちる。決して結ばれることのない愛の結末とその余韻。愛と芸術の関係、その深さを叩きつけるラストの畳みかけが凄い。完全に打ちのめされました。

エムカク著『明石家さんまヒストリー1 1955~1981 「明石家さんま」の誕生 』を読んで

エムカク著『明石家さんまヒストリー1 1955~1981 「明石家さんま」の誕生 』読了。
水道橋博士主宰の「メルマ旬報」に2013年から連載中の壮大なる歴史ロマン「明石家さんまヒストリー」がついに待望の書籍化。今作はシリーズの第一弾となる。

明石家さんま」。この国に暮らしていて、その名前を知らない人はいないだろう。
40年以上にわたって日本中を笑わせ続けている男。生み出した笑いの総量は、日本芸能史の中でも間違いなくトップクラスに位置する、現在進行形で笑いを日夜生み出し続けている稀代の芸人。この巨星に魅入られ、とり憑かれた男が27年に渡って、テレビ、ラジオでの本人の発言、関係者の発言、雑誌記事や過去の新聞をマイクロフィルムから調べあげてその足跡を克明に記録。「日本一のホラ吹き野郎」ともよばれた芸人から発せられる大いに盛られた話さえも数々の発言を照らし合わせ、裏を採り、その最初の1滴を突き止め、徹底的に事実を炙り出す。
改竄、捏造、歴史修正などとんでもない。全ての言葉を集め、丁寧に濾過し、探り当てた事実だけを一つ一つ積み上げていく--この恐ろしく労力を伴う歴史学者の仕事は今もなお休むことなく続いており、本書はその最初の研究発表となる。

『「明石家さんま」の誕生』との副題の通り、1955年7月1日金曜日(この「金曜日」という部分が実にいい。「7月1日」までなら誰でも書ける。そこから曜日を調べるひと手間の掛け方が本書の肝だと思う)、和歌山県に生まれた杉本高文がどのようにして「明石家さんま」になっていくのかを年代を追いながら描いていくのだが。いやもうこれがめっぽう面白い!
筆者は大袈裟な表現や無理やりに劇的な言葉で「明石家さんま」の歴史を盛りたてることはしないし、事実に基づかない話は一切ない。にもかかわらず、杉本高文少年が「明石家さんま」に変貌を遂げていく道程はとてつもなくドラマチックで、一気に引き込まれる。

プロローグでは師匠・笑福亭松之助との出会い、弟子入りのエピソードが語られる。この歴史書のオープニングを飾るにこれ以上ないエピソードではないか。弟子入り志願の若者の「師匠はセンスありますんで」にガハハと答える松之助師匠。出会いにして二人の波長がピタリと合う瞬間。ワクワクと胸が高鳴る。
だが落語家への道を進もうとする息子に父親は猛反対する。やがて開かれる親族会議。結果、父以外は全員賛成で親戚一同から「高文ちゃんはいけるでぇ」と逆に背中を押されるという鮮やかなオチ。最高っ!

「生きてるだけで丸もうけ」を座右の銘とする男の少年時代は「実母の死」から始まる。
「笑い」と最もかけ離れた場所にいた少年が「笑い」を武器に世界を変えていく歴史ドラマなんて面白いに決まってるじゃないか。
そしてこの「お笑い一代記」に色を添える登場人物たちの何と魅力的なことか。
この祖父にしてこの孫あり--笑いの遺伝子を高文少年に与えた祖父・音一から始まり、笑いに愛された親友・大西康雄、高文が恋をする慶子ちゃん(本書では大幅にカットされているが、彼女との恋物語、これがまたたまらないのだ。外伝的にまとめられたメルマ旬報2020年10月22日配信「明石家さんまヒストリー・高文の恋」は必読!)、そして天敵・乾井先生。
運動会における乾井先生との最終対決、その臨場感たるや!綴られた文章の中から、生命力に満ちあふれ活き活きと青春を謳歌する「杉本高文君」が飛び出してくるようで、もう何回も読み返したくなる。
友情と笑い、甘酸っぱい恋--青春の輝きに満ちた高校時代。杉本高文が過ごした青春時代が、芸人「明石家さんま」の確かな礎となっていることがよくよくわかる。

そしていよいよ入門。ここからもさらに魅力的な人物達が歴史の中に登場してくる。
まずは師匠・笑福亭松之助。「白紙に戻れる~完全に尊敬できる」と言いきれる師匠との出会いは運命であり奇跡である。師匠・松之助の芸人としての、人間としての大きさが伝わってくるエピソードの数々。芸人としての在り方を師匠・松之助の下で学び杉本高文は芸人へと成長していく。
盟友・島田紳助との出会いもまた奇跡的。後にテレビでの人気を二分することになる二人のまだ何者でもない時代。芸人としての一歩を踏み出したばかりの二人が出会い、友情を育み、切磋琢磨する姿が活写される。

「笑福亭さんま」としてスピードデビューを果たし、順調な弟子っ子生活が始まるが、ここで事件は起こる。この『「明石家さんま」の誕生』の中でも最も重要なエピソード、「芸をとるか、愛をとるか」を悩んだ末の「東京へ逃げる」1974年の出来事。「完全に尊敬できる」師匠の下を離れ、「愛」を取った「笑福亭さんま」。普通に考えたらこれですべて終わり。だが運命はそうはさせない。過酷な半年の東京生活を救うのもまた「笑い」であった。やがて愛は終わり、友人たちの 後押しで再び師匠・松之助のもとへ。
この一件における松之助師匠の振る舞いがとにかく最高にかっこいい!この師匠とこの弟子だからこその最高級のエピソード。もはや「明石家さんまヒストリー」はこのエピソードを公の文書として残したと言うだけでも十二分に価値があると言いたくなる。
東京での半年、芸人人生を終わらせるかもしれなかったこの回り道が、あらゆる意味で「“明石家”さんま」を生むことになる。「明石家さんま」が誕生した重要ポイント。そうここテストに出るところ!

そして1976年1月15日23時15分「11PM」(しかしここ23時15分まで要るか?いや 、ここが本書の肝なのです。)で鮮烈なテレビデビューを飾ってから1年と10ヶ月、1977年10月2日17時30分(だから17時30分まで…以下略)「ヤングおー!おー!」のレギュラー出演がスタートし、芸人「明石家さんま」の快進撃が始まる。

ここから先は紳助、巨人や「明石家さんま」の育ての親の一人、桂三枝(現・文枝明石家さんまを鍛え上げ、テレビ・ラジオで生きていく術をすべて伝授し、その道筋をつけていく「明石家さんま」の芸人人生における最重要人物!)、横山やすし林家小染笑福亭鶴瓶関根勤(無名の若手芸人だった明石家さんまうめだ花月の2階席で爆笑しながら見初める同じく無名の関根 勤。後の二人の関係性を思えばこれもまた運命的であり奇跡)、西川のりお(個人的にさんま&のりおのただただ楽しいだけのエピソードが大好き)ら芸人達から小林繁桑田佳祐松田聖子大原麗子などなどのキラ星の如きスター達とのエピソードを交えながら、詳細な活動記録とともにまさに「明石家さんまヒストリー」が記されていく。

とそんな「明石家さんま」のヒストリーを読んでいてふと気付く。ここまでのエピソードを拾い、吟味し、積み上げていく労力がいかにとんでもないものかと。一人の芸人の人生にかける過剰に異常な愛情とその熱量のえげつなさ。だがそこには悲壮感はなく、なんともいえない多幸感が溢れている。ラジオやテレビなどで発せられた言葉を丁寧にそのままの形で配置しつつ、平易な言葉で、むしろ淡々と事実を並べているにもかかわらず、もう行間から溢れだしているのだ。「さんちゃん、かっこいい!」が。調べれば調べるほど、知れば知るほど「明石家さんま」という巨星の大きさを知り、輝きを知る。その人生を知れば知るほど、魅了され、好きになっていく。その喜びがもう行間から溢れていて、読者へもまたその喜びが伝播していくのだ。

明石家さんまヒストリー」の多幸感に浸りつつ、もう一つのヒストリー。筆者である「エムカク」さんのヒストリーに想いを馳せる。
Twitter上に「明石家さんま」に異常に詳しい人物がいると、放送作家にして演芸墓掘り人の異名をとる柳田光司さんや弁護士で俳優の角田龍平さんの間で話題となり、僕もその流れで「エムカク」という不思議な名前のアカウント(@m_kac)をフォローするようになった。さんまさんが出演するテレビなどに合わせて瞬時にどこから拾ってきたんだ!?という画像や関連する過去の発言をTweetするエムカク氏。やがて水道橋博士さんにフックアップされ「メルマ旬報」で連載をスタート。柳田さんや角田さんのポッドキャストに登場、「魅惑の姜尚中Voice(©角田龍平)」で語る明石家さんま話は完全にどうかしていて完全に面白かった!
僕もすっかりエムカクさんの愛情と狂気が入り混じる「明石家さんま」話のファンになった。
2014年1月25日に開催された「メルマ旬報fes」ではサブステージに柳田さん、角田さん、竹内義和先生とともに登壇。そこではじめて動いているエムカクさんを観て、明石家さんまさん題字による「明石家さんまヒストリー」カードを頂いた。
2014年7月1日「明石家さんま59回目の誕生日を勝手に祝う会」、2015年7月1日「明石家さんま60回目の誕生日を勝手に祝う会」にも参加。その徹底したリサーチぶりと過剰で異常な愛情を目の当たりにしてますますファンになっていった。
驚異の連載「明石家さんまヒストリー」は話題を呼び、市井の「明石家さんま」研究家・エムカクさんは「明石家さんま」特番にリサーチャーとして関わるなどアメリカンドリームならぬ「アカシヤンドリーム」を実現させていく。

「好き」という気持ちだけに突き動かされた研究は、エムカクさんの人生をもまた動かしていく。
2020年11月22日22時31分、エムカクさんのアカウントから「人生初のさんまさんとのツーショット写真」というハッシュタグと共に単行本『明石家さんまヒストリー1 1955~1981 「明石家さんま」の誕生』を挟んで並ぶエムカクさんと明石家さんまさんのツーショット写真がTweetされた。

好きという気持ちの尊さ。我を忘れるほどに何かを好きになって熱中することの尊さ。
稀代の芸人「明石家さんま」を綴った「明石家さんまヒストリー」は稀代の明石家さんま好き「エムカク」さんの「ヒストリー」でもあるのだ。

でそんな二人のヒストリー。もちろんこれがゴールではない。
1981年11月21日「オレたちひょうきん族」の「タケちゃんマン」第6話でおたふく風邪で病欠した高田純次に代わり「ブラックデビル」を演じたところまでで「明石家さんまヒストリー1」は終了!
で最終ページにドーンと躍る『明石家さんまヒストリー2 1982~1985 生きてるだけで丸もうけ(仮)」2021年初夏発売予定!の文字。いやいや、次1985年までて!完全にどうかしてるし完全に面白い!

明石家さんまさんと、エムカクさん。二人のヒストリーはまだ始まったばかりなのだ!

 

 

 

2020年11月のTweet

2020/11/2

土井裕泰監督「罪の声」を観た。35年前に起こった食品会社脅迫事件。マスコミを賑わせたこの劇場型犯罪に使われた子供の声による脅迫テープ。その声の主が自分だということを知った曽根。そしていやいやながらも事件を追うことになる新聞記者の阿久津。二人が辿りついた真相は…。骨太なエンタメ大作!事件の真相を追うという流れにのって描かれるのは、犯罪に関わった人々の深層。事実の点と点を繋ぎながら「罪の声」を背負わされた子供たちにフォーカスを当てる。原作の核の部分をしっかりと抽出してヒューマンドラマとした見事な映画化。脚本は野木亜紀子さん!上映時間は2時間越えながら、きっちりと整理しテンポ良く見せていく序盤からすっと映画に連れて行かれる。様々な要素を的確に配置しつつ、事件によって人生を狂わされた子供たちのドラマが浮かび上がる。「罪の声」が一転するラストに救われる。小栗旬星野源が共演するまさにスター映画でもあるのだが、佐藤蛾次郎塩見三省佐川満男正司照枝といったピンポイント出演陣の味わい深い演技がどれも印象的。そして原作者、塩田さんも絶賛した高田聖子の涙、宇野祥平の鬼気迫る佇まいが素晴らしい。

単行本発刊時に原作者・塩田武志さんが最初のプロモーションとして出演した角田龍平さんのポッドキャストを聴いてすぐ原作本を購入。その後自分が関わる番組にもゲストで出て頂いたこともあって堂々たるど真ん中の映画化に感慨もひとしお。あと琵琶湖を望む風景の中に住んでるマンションも映ってた。モデルとなった事件は当時中学生だったので今も鮮明に覚えている。連日報道された子供の声による脅迫テープも。あの声の主がもしかしたらどこかでこの映画を観ているかもしれないと思うとぐっと身が引き締まる。

2020/11/3

それにしても大阪のテレビはいつまで維新のケツ舐め続けンだ。

2020/11/7

「続ボラット栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画」を観た!まさに命を懸けたやりすぎハードコアコメディ。コロナ禍での大統領選という状況の中、ギリギリのところを軽く踏み越えて権力を茶化し社会を斜め斬りにしつつ、父と娘の物語にもなってる。凄いものを観た!。このタイミングで、これ作ってぶつけてくるサシャ・バロン・コーエンのコメディアンとしての気骨。下品で過激で完全にアウトなやり口で分断や差別の現実を剥き出しにする一方、女性の権利を考えさせる。父と娘の物語にはむちゃくちゃなのになぜかグッとくる。感情が追っつかない。ぜひ日本でもこんなコメディ作ってほしいね。そうだな、日本の芸人がアメリカに渡ってトランプを慰めるみたいな。主役には、ほ×こんさんを推薦したい。文字通りトランプのケツまで舐めてきてくれるだろう。

2020/11/12

杉作さんのドッキリないと5。ワンオクのTakaの話題から「たかたかしって作詞家がいるんだよ」「野比のび太みたいですね」というJさんとひなた狼さんの会話に癒される。今、世界に必要なのはこういう会話だと思う

2020/11/20

エムカクさん「#明石家さんまヒストリー」出版記念イベント配信にて視聴。さんま愛溢れるエムカクさんとエムカク愛溢れる角田さんによるただ好きなだけの話が最高。Twitterからメルマ旬報、そしてついに一冊の本に。「明石家さんまヒストリー」もさることながら「エムカクヒストリー」に涙が…

2020/11/21

読書の秋。エムカク著「明石家さんまヒストリー1」、細田昌志著「沢村忠に真空を飛ばせた男」。ともにメルマ旬報から生まれた濃厚過ぎるノンフィクション。心して読ませて頂きます。

2020/11/22

昨日は数カ月ぶりにライブへ。カーネーション winter tour"LOVE SUITE"。AL「LOVE SCULPTURE」から20年、ゲストに山本精一さんを招いて。まさに音の洪水。3密を避けつつ、濃密な音の渦潮に飲み込まれて魂が解放されていく。体の内側に音楽が広がっていくような不思議な感触があった。

2020/11/28

大森立嗣監督「星の子」を観た。中学三年のちひろは仲の良い両親から十二分に愛情を受けて育つ。だが両親は病弱だったちひろを救ってくれた怪しげな宗教に信心しきっている。当たり前に宗教がある環境で育ったちひろの感情の揺れとともに信じる心とは何かを問う。テツ&トモみたいなジャージを着て頭に怪しげな水を掛けあう両親(永瀬正敏原田知世!)。異常な環境の中で折り合いをつけながら大人にならざるを得ないちひろ芦田愛菜の愛らしさと聡明さが同居する感じがとてもよく合っていた。両親が傾倒する宗教がどこか怪しいこともわかりつつ、そのきっかけが自分だということも知っている。ゆえに…。ちょうど聴いていた角田さんの「蛤御門のヘン」で語られた「マーティンセントジェームスの催眠術にかかる北野誠竹内義和」の姿と芦田愛菜が重なる

先週は久しぶりに観劇。生瀬勝久池田成志古田新太の「ねずみの三銃士」公演「獣道一直線!!!」。宮藤官九郎・作、河原雅彦演出、客演は宮藤に池谷のぶえ山本美月。婚活サイトで出会った男女の保険金殺人事件をネタに毒気と笑いと演劇人の心意気が詰まった作品。楽しかった!この状況下で演劇人が出来ることを爆発させたような舞台で、やはり世界にはエンタメが必要なんだと思ったな。笑いつつ、舞台に広がっていく世界に感動した。

キム・ヤンヒ監督「詩人の恋」を観た。済州島で暮らす詩人のテッキ。スランプ中のテッキに代わり稼ぐのは妻のガンスン。妊活をスタートさせる二人だが、ドーナツ店で働く青年セユンにテッキは惹かれていく…。大人になりきれないテッキがセユンと心を通わせる中で愛を知り、同時に痛みも知っていく。妻がいながら同性の美青年に惹かれていく詩人。済州島のどこか懐かしい風景の中で、テッキ、ガンスン、セユンが愛と表裏一体の痛みを知り、それぞれの形で成長していく。繊細な詩人の感性で紡がれた映画。

 

2020年10月のTweet

2020/10/5

キム・スンウ監督「ブリング・ミー・ホーム 尋ね人」を観た。6年前に行方不明になった息子ユンスを探すジョンヨン。郊外の漁村に似た子供がいるという情報を聞き漁村に向うのだが…ってな話。いや、もうハード&ダークな展開にどんより&ぐったり。疲れた…。主演は14年ぶりのスクリーン復帰となるイ・ヨンエ。彼女の気高さに反して漁村の怪しい警官ユ・ジェミョンを筆頭に彼女を陥れる漁村の面々のまぁなんとも腐りきった極悪非道ぶり。韓国脇役陣の演技力の高さゆえ心底憎々しいのだ。

ミッジ・コスティン監督「ようこそ映画音響の世界へ」を観た。映画の「音」を生み出す達人達を追った丁寧なドキュメンタリー。出てくる面々の凄まじいプロフェッショナルぶりと、映画音響という仕事をまさに嬉々として楽しんでる姿が良い。観てるこっちも楽しくなる。仕事柄、たまにミキサー卓をいじることがあるんだけど、あれホント楽しいんだよね。

2020/10/10

ルル・ワン監督「フェアウェル」を観た。癌で余命3ヶ月と宣告された祖母ナイナイに会うべく中国へ帰郷したビリー。祖母に病気のことを知られない様にいとこの結婚式をでっちあげ親戚一同が集まるのだが…。告知すべきか黙っておくか、正解のない問題に向き合う家族の物語。告知すべきというNY育ちのビリー。中国で育った家族たちはそれに反対する。祖母を思う気持ちは同じなれどすれ違っていく家族。東洋と西洋の違いというだけでなく、やはり対「人」。まさに「正解」がないのだが、まさかの大オチが気持ちを和ませる。

2020/10/12

筒美京平先生、ありがとうございました。

2020/10/17

キム・ドヨン監督「82年生まれ、キム・ジヨン」。現在進行形の絶望を大いなる皮肉も交え突きつけた原作と比べ、コン・ユ演じる夫の比率を高めることで物語は随分ソフトな印象。それによって男性に逃げ道を作ってしまうきらいもあるが、それでもなお男性中心の社会が生む不条理が浮かび上がる。ジヨンの人生の前には母の人生があり、その前には祖母の人生がある。何代にもわたって男性は、社会は、女性たちを虐げその可能性を搾取してきたのだということを強く思い知らされた。そこは映画にあるエモーショナルな展開によってで原作以上のものだったと思う。また映画は原作に無かった「絶望の共感」の先を一つ提示して見せる。それはこの「82年生まれ、キム・ジヨン」という一冊の本が提示して見せた希望であるのだ。またその方法は女性だけでなく、社会の不条理を変えるために弱者ができる唯一の手段なのかもしれない。原作を読み、映画を観て、何を感じどう行動するのか。少なくともこの作品を成立させる力がある韓国社会は、古い社会へと逆行していく日本社会よりも成熟しているように感じる。今観るべき映画である。

しかしアメリカも、日本もなんちゅーかヒーロー映画に出てくる典型的な悪役みたいなやつらがでかい顔してんな。自分たちの利益の為ならどんな悪事も平気でできる嘘つきで卑怯でずるい奴ら。弱きをくじき権力者に群がる恥知らずの下卑た連中。連日のニュースに絶望しか感じない。

連日の筒美京平先生特集、さすが杉作さん。確かな選曲と熱い語り。これぞ音楽番組。それに比べ我が局ときたら…(以下自粛)

2020/10/24

instant cytron片岡知子が死去。言葉がない。素晴らしい音楽を届けてくれたInstant Cytron。長瀬さんが心配…。Instant Cytron、今もまったく色褪せてない。音楽は残り続ける。

2020/10/25

中野量太監督「浅田家!」を観た。両親、兄とともに様々なコスプレをして撮った「家族写真」で注目を集めた写真家・浅田政志氏の実話を基にした物語。なんとも優しい時間が流れるいい映画だった。ゆったりとした「間」が心地よかった。時にグータラでいい加減に見える主人公が無駄な時間の中でゆっくりと一歩づつ進んでいく。だからこそ見えてくるもの、生み出されるもの。「家族写真」からにじみ出るユーモアと優しさがしっかりと映画化されていた。ノロマな亀のようにゆっくりとじっくりと時間をかけて考え納得し行動する主人公を演じる二宮和也がさすがに素晴らしい。大胆で繊細、グータラだけど誠実、そんな愛すべき人間味が奥底から溢れてくるよう。もう最近はおっさんになってすっかり涙腺のパッキンが壊れているので中盤からずっと涙のお漏らしが…。べつになんてことのないシーンに流れる「優しさ」がたまらないのだ。それだけ現実の中で「優しさ」が失われているからでもある。

2020/10/28

フット後藤の「悲しみSWING」がいい!アレンジはスカート澤部氏。いい仕事してる!