日々の泡。

popholic diary

2019年6月のTweet

2019/6/1

フォン・シャオガン監督「芳華-youth-」を観た。1970年代後半の中国。文化大革命毛沢東の死、戦争という激動の時代に生きた若者たちの群像劇。瑞々しく美しい映像が一転、まさに身体が吹っ飛ぶ激しい戦争シーン。残酷な現実に斬り裂かれる心。そして映画はその心の痛みを優しく見つめる。映画で描かれる悲しみや喜び、恋心や切ない想い。国や時代が違っても、しっかりと心に響く。人を見つめればそこに共感が生まれる。決して分断ではなく、誰もが同じ心を持った人なのだと思う。

2019/6/5

蒼井優、信用できるなー。「たまむすび」ファンなので町山さんの紹介した映画をちゃんと観に行く山ちゃんには好感しかない。IT社長と結婚!とかよりずっといいよ

2019/6/9

BSで一足早く「いだてん」。素晴らしい台詞がいっぱい。今の時代に響く。

2019/6/14

長久允監督「WE ARE LITTLE ZOMBIES」を観た。親を亡くした4人の少年・少女の物語。新しい映像、新しい音楽、新しいセンスの新しい映画。独創的で刺激的。そして紛れもなく「生きる」為の映画。文字通りゴミの中に宝がある。絶望の先の狂騒。その先には強烈な「生」の光。今に生きる映画だ。スコットピルグリムmeets台風クラブなんてことをふと思った。工藤夕貴さんも出てるし

中野量太監督「長いお別れ」を観た。認知症になった父と過ごす泣き笑いの7年間。それぞれの生活の中で問題を抱える娘たち。ゆっくりと記憶を失っていく父に振り回されながらも、その中で改めて「家族」になっていく。変に大袈裟な感動話ではなく、軽いユーモアがあってじんわりといい映画だった。山﨑努、松原智恵子竹内結子蒼井優。家族を演じる4人が本当に素晴らしかった。ちゃんと生活を積み重ねている感じがあって。実に気持ちの良い日本映画を観たなーって思いつつ映画館を後にした。

2019/6/15

朝から京都へ。出町座でチャン・リュル監督「春の夢」と「慶州ヒョンとユニ」の2本。合間にはイ・ファンミさんによる映画講座でチャン・リュル監督についてお勉強。どちらの映画も路地裏の郷愁があって生と死が交差するちょっと不思議な抒情詩。映される街に迷い込んでみたくなる。

2019/6/17

毎週録画してみている「町山智浩アメリカの今を知るTV」。今日は2時間特番!ここ数日BSの映りがよくないんだけどなんとか観てる。知らなかったことを知るということは世界が豊かになるということだ。

2019/6/22

昨晩はサイモン・キンバーグ監督「X-MEN ダーク・フェニックス」を観てきた。シリーズ最終章!にしては若干盛り上がりに…。ジェニファー・ローレンスがあっさり…とかちょい寂しいな。プロフェッサーXとマグニートーの仲良しぶりには思わずほっこり。

今朝は午前十時の映画祭で岡本喜八監督「日本でいちばん長い日」を観賞。男たちの顔がとにかく濃い。昭和の俳優はとことん男を煮詰めているな。そして杉作さんの「どっきりナイト7」リスナーとしてはやはり高橋悦史さんに注目!

2019年5月のTweet

2019/5/1

今泉力哉監督「愛がなんだ」を観た。もはや恋愛ですらない「好き」という感情とそこから巻き起こる厄介な事象。大きなドラマがあるわけでもないのだが、まるでアクション映画を観ているような不思議な高揚感があって実に面白かった。得体のしれない「好き」を抱えた男と女の心のアクション映画。主人公テルコを演じる岸井ゆきの素晴らしい。丸い顔に丸い目と鼻、彼女の表情の一つ一つが持つ説得力。そして相手役の成田凌がまたいい。最低なクズ男のようだが、彼もまた「好き」に囚われる人間臭さがあって、その何とも情けない部分を実にチャーミングに体現していた。

2019/5/2

今日は電車に揺られ明石まで。江口寿史イラストレーション展「彼女」。まさに現在の美人画。何時間でも見ていられる。10歳の時に「すすめ!!パイレーツ」と出会って以来、江口先生は自分の中ではずっと「KING OF POP」な存在。今もまだ次の作品を楽しみに待っている。

ミキ・デザキ監督「主戦場」を観た。いやはや凄い映画だった。テーマは「従軍慰安婦」。なぜここまでこじれるのか?疑問を抱いた監督が日米韓を跨ぎ左右両陣営から徹底的に言葉を引き出す。一人一人の発言と表情から浮かび上がるものは?複雑に絡み合う人権、イデオロギー、差別、金、宗教まさに主戦場。人権を守ろうとする者、人権を過度なまでに憎む者。監督はそれぞれに自由に発言させた上でじっくりと検証していく。否定論者たちに共通する思惑とある組織。現政権との密接な関わりまでもが炙り出される。ある一部の人たちは決して観てほしくないだろうが、だからこそ観るべき映画。

2019/5/7

GW中に「ノンスタンダードの響き」を聴きながらブックレットを読み耽る。細野さんの下に集った若きミュージシャンたち。小西さんのインタビューがないのがちょっと寂しいが、それもなんか小西さんらしい。80年代初頭~中頃を舞台にした若きミュージシャンたちの群像劇。鈴木惣一郎さんと小西康陽さん、もちろん直枝政広さんもどこかに絡んでくるだろうし、当然一方ではケラさんもいる。みたいなそんな映画が観てみたい。

2019/5/18

盲目的に好きなLovelyzももうすぐカムバ。髪を切ったスジョンが眩しい!

youtu.be

イルディコー・エニュディ監督「心と体と」を観た。恋愛から引退した片腕が動かない男と会話が上手く出来ない恋愛を知らない女。孤独で不器用な二人が夢を媒体にゆっくりと近づいていく何とも不思議なラブストーリー。ぎくしゃくと空回りすれ違う「心と体と」。二人が働くのが食肉処理場というのがいい。とても美しく繊細。でもそこに映されるのは生々しい"生"。ドクドクと流れ出る真っ赤な血がとても印象的だった。

噂の映画、片山慎三監督「岬の兄妹」を観た。足が不自由な兄と自閉症の妹。生きることすらままならず社会の底辺であえぐ二人。生活の為、兄は妹の売春を斡旋しはじめることに。ストーリーだけ追うととんでもないのだが、悲壮感よりも不思議なユーモアがあって何より生命力と人間愛に溢れている。障碍、貧困、売春…タブーに触れる映画だが、タブーを並べるセンセーショナルな映画ではない。そこに至る過程、登場人物たちの心情や行動のリアリティ。最低で最悪だけどそれが日常の総てでもあり、そこには生活がある。生活の中には悲しみや喜び、絶望や光が混ざり合っている。兄妹を演じる二人の素晴らしさ、そしてとても映画的な力を持ったショットの数々。万人にお薦めするには強烈すぎるかもしれないが、それでも観て欲しい。「映画」が持つ凄みや力、面白さがむせ返っている。観終わって数時間たって思う。これは完璧「に」映画だったと。

というわけで今日は出町座で映画を二本。映画までの時間、近くのパン屋でいくつかパンを買い、鴨川べりのベンチに腰掛け、マグボトルで持参したホットコーヒー飲みつつの昼食。映画とパンとコーヒー。自分にとってはこの程度がちょうどいい幸せなんだなーと思う。

ここんとこ移動中は常にradikoで杉作さんの番組を聴いてる。なにしろ月~日、週7日の帯番組。「ふりかけ」だけで2時間半とか面白い人の面白い話は面白いなー。杉作さんの番組はラジオの原点にして理想に思える。たわいのない雑談は結局人間にとって最大のエンタメであり娯楽。それから選曲がいいんだよね。幅が広くて選曲者の顔が見える。レコード会社のおススメをただ並べるのは選曲とは言わないよ

2019/5/21

セクシー路線に走らず、ガールクラッシュには目もくれず、まっすぐに「Lovelyz道」を走るLovelyz。とにかく髪を切ったスジョンが眩しい!可憐なKei、伸びやかなJIN、しっとりとしたベビソル、そしてちょいハスキーで憂いを帯びたスジョンと歌えるメンバーが揃うLovelyz。品のいいサウンドに切ないメロディ。正直面白味には欠けるけど、この路線がやっぱり似合う。


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まさに一服の清涼剤。ほんともー毎日しんどいけど、とりあえず可憐なLovelyz観てると一瞬だけでも嫌なこと忘れられるなー

2019/5/24

ローソンの「どらもっち」美味しすぎる!一週間真面目に働いたので今日は食べる!

2019/5/25

キム・ヨンファ監督「神と共に 第一章:罪と罰」観てきた。いやはや開始早々フレッシュな映像に度胆を抜かれ、そのまま一気に地獄巡りにひっぱり回されるスーパーエンタメアクションVFX人情劇。ちょっとお腹いっぱいですわ!と言いたくなるほどのおかずテンコ盛り韓定食映画!荒唐無稽な物語に最先端のVFXアクション、豪華俳優陣揃い踏みのオールスター映画でありながら、その本筋は涙涙の親子愛、なんとも人間臭い人情劇。涙のカツアゲぶりも半端ない。そして続く第二章では我らがマ・ドンソク兄貴を投入ってんだからどうなっちゃうんだろう

ピーター・ヘッジズ監督「ベン・イズ・バック」を観た。クリスマス・イヴの朝、薬物依存症治療施設を抜け出し帰ってきたベン。暖かく迎え入れる母ホリーだが、妹や継父は不安を隠せない。薬物依存に立ち向かおうとするベン、だがそれはあまりに困難な道のり。信じたい気持と信じられない気持の葛藤。本人の葛藤、周りの人々の葛藤、愛情と厳しさのさじ加減、終わりのない依存症治療の困難さ…一夜の物語の中で丁寧に描き出していく。傷つきながら、もがきながら、それでも一筋の光に向かおうとする家族の姿。いい映画でした。

2019年4月のTweet

2019/4/1

10年前何してたかなぁと昔書いてたブログをふと見てみる。10年前の4/1の日記。何を書いているのだ

popholic.hatenablog.com

2019/4/6

スパイク・リー監督「ブラック・クランズマン」を観た。黒人刑事と白人刑事が二人一役で白人至上主義団体KKKに潜入捜査。という驚きの実話を映画化。軽快なエンタメ作ではあるがそこからはみ出してくる強烈なメッセージ。熱量と勢い、そして怒り。映画の舞台は70年代だが、今を痛烈に描く一作。凄い!スパイク・リー監督の痛烈なメッセージは何もアメリカだけの話じゃない。アメリカ同様、我が国だってクソレイシストが国のトップにいやがる。お上が率先してヘイトを撒き散らしたらどうなる。ドゥ・ザ・ライト・シング!恥知らずな卑怯者に国を滅ぼさせるな。

2019/4/7

噂のデンマーク映画、グスタフ・モーラー監督「THE GUILTY ギルティ」を観た!緊急通報司令室のオペレーター、アスガーが受けた一本の電話。今まさに誘拐されているという女性からの通報。そこからの88分間、映画は部屋を出ることなくほぼアスガーのみを映す。電話からの声と音だけで物語は進むのだ。画面に映るのはヘッドセットをつけたアスガーのみ。言わば変わり映えのしない映像が続くのだが、88分間、目を、耳を逸らすことができなかった。物語はスクリューしながら電話を受けているアスガーと同様に観客の神経をギリギリと追い込んで行く。これは凄い!電話でのやり取りのみで映画と実時間が同じ88分。その中で電話の向こうに現れる人々の動き、葛藤、そして電話を受けているアスガーの抱える問題や人生までもが浮かび上がる。これはちょっと凄いものを観た!という感じ。参りました。

映画「レゴ®ムービー2」を観た。前作の展開を踏まえての堂々たる続編。すべてはサイコー!な楽しくも奥深い作品だった。レゴで描かれる驚異の映像に80's映画小ネタやギャグをふんだんに盛り込みながら、ストーリーがちゃんと人間の成長に繋がっている。ちょっと楽しすぎて泣けた。毒のあるギャグも含めて徹底的にエンタメでありながら、個人の心に訴えてくる物語。子供にも大人にも届くメッセージが楽しく詰まっている。映画の力を感じるし、本当に映画ってサイコーだなと思った。それとエンドクレジットがもう素晴らしすぎて笑いながら泣いたよ。

2019/4/12

ここ数日聴いていたのは「ノンスタンダードの響き」。鈴木惣一朗さん選曲・監修によるCD4枚組。YMOには遅すぎてフリッパーズギターには早過ぎた自分にとってノンスタンダードは言わば初恋のレーベル。14歳の時に出会った大好きな音。懐かしいとは言わない。今もまだ地続きで聴いているから。最初に買ったノンスタンダードのレコードはSHI-SHONEN「Singing Circuit」。85年の5月、駅前のレコード屋に予約して発売日に買った。8月にはピチカートのデビュー盤。この2組にはとにかくはまった。その年の12月に出たSHI-SHONEN「Do Do Do」には心底感動したなー。その時のことは今も鮮明に覚えている。85年頃、男子中学生の間ではヘビメタブームだったけど僕には全くピンとこなかった。SHI-SHONENにピチカート、同時期にデビューしたPSY・Sがお気に入りで音楽の話できる友達は一人もいなかったなー。改めてSHI-SHONENを聴き直しているが「2001年の恋人達」も大傑作。当時は2001年なんてずっと先のことだと思ってたけど、今となっては随分な過去。それにしても福原まりさんのボーカルが実に魅力的で素晴らしい。とにかく絶妙としか言えない不安定な安定感というかずっと聴いていられる。そして戸田誠司さんはもっともっと評価されるべき。はっきり言って天才。POPなメロディー、POPなアレンジ、その手腕は群を抜いていた。戸田さんの音楽仕事をまとめてしっかり残しておくべきだと思う。フェアチャイルドもYOUさんがタレントとしてブレイクしたことで逆に過小評価されすぎ。

2019/4/13

「キャプテンマーベル」や「バンブルビー」にも通じる話。必読。

www.u-tokyo.ac.jp

2019/4/20

アダム・マッケイ監督「バイス」を観た。ブッシュ政権時の副大統領チェイニーを描く。ボンクラで凡庸な男が権力に魅せられ、権力を手にすることのみに邁進、結果大統領すら操りイラク戦争に突入。アメリカを、世界を狂わせていく。笑えないけど笑うしかないコメディ。このゾッとする世界は現在進行形。絶対に権力を握らせてはいけない人物が権力を握り、世界を意のままに動かしていく。チェイニーはまるでヒーロー映画の邪悪なヴィランそのもの。だけどヒーローを待っていても現れることはない。だから一人一人がヒーローになるしかない。誰もがヒーローになれる。スパイダーマンにだってアンパンマンにだってなれるはずだ。選挙に行って一票を投じるだけでもいい。その志があれば世界を取り戻せると信じて。邪悪なヴィランを倒すのは誰でもない、僕らなのだ。

DCの新作「シャザム!」観てきた!めちゃくちゃ面白かった!身寄りのない少年ビリーは、謎の魔術師からスパーパワーを授かるり「シャザム!」の掛け声で筋肉ムキムキのスーパーヒーローに変身。見た目は大人、中身は子供。元気が出るテレビの頃の高田純次みたいなチャイルディッシュなヒーローが最高!暗く物憂げな思春期ど真ん中の少年ビリー。スーパーパワーのシャザムに変身したら陽気なコドモオトナになるのが何とも楽しい。相棒になるフレディ少年がまたなんとも魅力的なキャラ。障害を持ちながら毒舌とブラックジョークでシャザムをヒーローに導く。最高だったなー。あの暗かったDCはどこに?というほどにスパっと明るく、80's映画の感触があってどこか懐かしい。でもただ楽しいだけじゃない。愉快痛快な万引き家族な物語でもあり、そこには暖かなハートがある。いやこれはおススメ!

2019/4/27

朝一でアベンジャーズ。紙オムツしなくて大丈夫だろうか。

アベンジャーズ/エンドゲーム」見終わりました。なんも言えねー。ただ、とても優しい気持ちになった。思わず実家の母に電話したくなるような。

朝から体調を整え「アベンジャーズ/エンドゲーム」観てきた。前作でサノスに敗北。傷つき挫折したヒーロー達が砂を掴んで立ち上がるONCE AGAINな物語。新たな戦いの中で自分自身の物語を辿りながらExcelsior!=さらなる高みへ、な選択をしていく。いやもう大満足です。MCUだよ!全員集合!!的なド派手な見せ場もたっぷりありつつ、どこかほっこり、不思議なほどに優しい気持ちになった。荒唐無稽なヒーローものでありながら、繊細な心の機微は誰もがどこか心当たりがある。ま、でもMCUはまだまだ終わらへんで~

2019年3月のTweet

2019/3/9

ロバート・ロドリゲス監督「アリータ:バトル・エンジェル」を観た。いやはや、もはや何でも出来ちゃうんだなという驚愕の映像。とにかく主人公アリータをはじめとしたサイボーグの動きや質感に見とれる。あれだけ繊細な表情の演技ができてるんだもんなぁ。

ピーター・ファレリー監督「グリーンブック」を観た。なんとも気持ちの良い映画。孤高の天才黒人ピアニストと粗野な白人用心棒のロードムービー。正反対の二人が差別が色濃く残る街で過ごす中で人種や肌の色を越えて一人の人間同士として結びつく。ちょっとした親切や思いやりが壁を越える。いい映画。ガサツで無教養、黒人に対しても差別や偏見を持つトニーは旅を通じてシャーリーの才能、そしてその複雑な孤独を知る。同時に黒人に対する厳しい差別の現実に直面し、その理不尽さや差別されるものたちの痛みを知る。「知る」ことでトニーの意識はやがて変わっていく。黒人でありながら黒人文化を知らず宮殿のような部屋で一人暮らすシャーリーもまたトニーの無骨な優しさ、その人間味に触れ、長い孤独の中で凍ってしまった心を柔らかく解かしていく。シャーリーを演じるマハーシャラ・アリが素晴らしい。その複雑な内面を見事に演じていた。

スパイダーマン:スパイダーバース」を観た。これは凄い!もう開始5秒から最後までずっと新しくてかっこいい!観たことのない映像の連続であまりの凄さにクラクラした。しっかりMARVEL=スタン・リーの意志を持った物語でまさに「エクセルシオール!」な作品。いやーこれは凄いわ。この春休みに少年・少女たちにぜひ観てもらいたい。キレッキレの映像と音楽に興奮しながら、そこで語られるメッセージに胸を熱くさせる。完全に傑作!

2019/3/10

エリック・ポッペ監督「ウトヤ島、7月22日」を観た。2011年7月22日、ノルウェー連続テロ事件。サマーキャンプが行われるウトヤ島を突如襲った無差別銃乱射事件。たった一人の犯人によって69人が殺害された大惨事。その恐怖をリアルタイム72分ワンカットで描く。息もできない72分だった。映画はまさにその現場に観客を放り込む。突然の銃声に一体何が起こったのかわからないまま逃げ惑う。近づいてくる銃声、悲鳴。一瞬にして死が目の前に迫る。映画の後、改めて事件の全容を知る。差別、排外主義、ヘイトの行き着く先に起こった事件。遠い国の話ではない。

2019/3/17

キャプテン・マーベル」観てきた!いやぁヒーロー映画って本当に楽しいですねぇ。倒れても倒れても立ち上がるONCE AGAINな物語にして女性達への賛歌であり、過去のアベンジャーズ作品、そして来るべきアベンジャーズ・エンドゲームに繋ぐ重要作にして最高の“猫”映画!好きだなぁ、僕ぁ。壮大さとユーモア、深みと軽味、ケレン味と小ネタ、心に刺さる名作ではないけれどとにかく楽しい作品。キレイなサミュエル・L・ジャクソンも最高。「アベンジャーズ/インフィニティワォー」ラストの憂鬱を晴らし、「エンドゲーム」への期待が一気に膨らむ。

イ・チャンドン監督の1999年作「ペパーミント・キャンディー」。20年目の再上映でやっと観ることができた。くたびれた中年男キム・ヨンホ。何もかも失った男は線路の上で向ってくる列車を前に「帰りたい!」と叫ぶのだった。そこから映画は男が辿った20年を巻き戻しながら描く。深く胸に刺さる傑作。どうしようもなくゲスく最低な男が映画が進み過去に戻るにつれ純粋で弱く優しい男になる。それゆえにその痛みや悲しみ、やるせなさが胸に迫る。どこで間違ってしまったのか?一人の男を通して国を、時代を描いてみせる。一生忘れられない映画になった。「タクシー運転手」「1987、ある闘いの真実」の後で観ることができて良かった。歴史、時代背景を感じながら観ることができたので。しかし40代から20代を演じる20年前のソル・ギョングがもう既にとんでもない名演で凄過ぎた。

2019/3/21

アルフォンソ・キュアロン監督「ROMA/ローマ」を観た。1970年代のメキシコ。ある家族の物語。モノクロで画かれる忘れえぬ人、忘れえぬ時間、忘れえぬ想い出。そして時が経ち、大人になってわかること。静かだけれど、とても力強い。圧倒的に「映画」だった。

2019/3/22

クリント・イーストウッド監督「運び屋」を観た。鼻歌を歌いながら呑気に寄り道しつつ、安全運転で大量のドラッグを運びきる90歳の老人。イーストウッド監督が自ら軽妙に主人公を演じる。家庭を顧みず過ごした人生、90にしてそんな人生をやり直そうとする。いくつになっても人は変わることができる。心地よい軽妙さを持ちながら深みと渋みがある。イーストウッド監督が演じることでの説得力が半端ない。後継者、ブラッドリー・クーパーとのやりとりがこれまた素晴らしい。まだまだやれる、まだまだ変われると心が軽くなった。

2019/3/24

昨日は久々に妻と観劇。MONO第46回公演「はなにら」。天災から20年、寄り添うように暮らしてきた疑似家族の物語。ちょっとした会話の中にそれぞれの葛藤や嫉妬、悲しみや痛みそして優しさが滲む。笑ったり泣いたり怒ったりする日々の積み重ねがやがて家族になる。とてもいい気持で観終わった。

トラヴィス・ナイト監督「バンブルビー」を観た。悲しみを抱えた孤独な少女と地球外生命体。派手なアクションに驚きの映像を越えるなんともキュートな王道青春映画。映画を彩り、重要な役割を担う80'sナンバーの数々も最高。甘酸っぱくも爽やかで一歩を踏み出す勇気を教えてくれるこれぞ春休み映画!

2019/3/27

大好きな杉作J太郎さんのラジオ「どっきりナイトナイトナイト」、4月から月~日の帯に!って凄いなぁ。毎日聞かなきゃ。しかし角田さんのや東京ポッド、松之丞にビバリー、たまむすびやアトロク、火曜キックスとかもうリスナーとして大忙しで仕事できないよ

2019年2月のTweet

2019/2/2

イ・チャンドン監督「バーニング」を観た。二人の男と一人の女。不穏な空気がひたすら充満。まはや回収する気も無いし必要もない伏線。不可解さが不可解なまま転がっている。生きていると自分の中にも理解しがたく腑に落ちないままの感情や感覚が多くあって、その言葉にできない何かと共鳴するのだ。

今更だけど年末からAmazonで観ていたドラマ「トッケビ」やっと観終わった。キム・ゴウン、何時間でも観てられるなー。

最近はすっかりライブご無沙汰状態。平日(精神的に)ズタボロに疲れているせいか、休日の夜は家で過ごしたいから。午前中からでもさっと観に行ける映画に偏りがち。相変わらず韓国音楽は追いかけ続けているけど、呟きも少なくしばし隠遁生活。ま、ちょっとしばらくそんな時期なのかも。

2019/2/8

ジェームズ・ワン監督「アクアマン」観てきた。なにこれ、めちゃくちゃ面白いやつやん!ワイルドに過ぎるさかな君がギョギョギョッ!な大活躍!愉快痛快な海洋エンタメ。泳げる奴とは大体友達、アクアマンの海底大戦争海獣海人大百科な快作。ド派手なアクションの中にも小ギャグを忘れない姿勢。最高。金曜夜の仕事後に、大スクリーンで観るには最適な映画。1週間の嫌なことをすべて海水に流してくれる。週末は海鮮鍋にしよう。

2019/2/9

塚本晋也監督「斬、」やっと観ることができた。舞台は江戸時代末期。斬れない浪人・杢之進と剣の達人・澤村が織りなす時代劇でありながら現代を浮き彫りにするような物語。恐れが反転し、やがて勇ましい言葉で鼓舞されていく憎悪と強硬な姿勢。憎しみの連鎖が生む悲劇。共存か分断かが揺れ続ける。むせかえるような血と汗、体液の匂い。人を斬る道具としての刀。死に直結する痛みが生々しくそこにある。憎悪による分断が醸成されていく様、そしてその不毛さ。しかし袋小路に入っていくリベラルの弱さもまた露呈していく。どの道を行くのかを深く考えさせられる。

ノ・ドンソク監督「ゴールデンスランバー」を観た。伊坂幸太郎原作で日本でも数年前に堺雅人主演で映画化されたものの韓国版。最初から最後まで見せ場たっぷりのノンストップエンタメ作。国家権力VS小市民の無謀な戦いを淀みなく魅せ、胸のすくラストに。青春映画の清々しさが余韻として残る。巧いなぁ

「どっきりナイトナイトナイト」。エンディング曲が番組終了前に終わってしまって、もう一回掛け直すハプニング。ディレクターさんの心境お察しします。生放送で時間読み間違いした時、めちゃめちゃ焦るんだよね。

今日は京阪電車に揺られ、出町座へ。出町の商店街では大根炊き。映画の前に温かい大根炊きを食べて、映画を二本。近くの安くて美味しいパン屋でパンを買い帰宅。久々にのんびりとしたいい休日だった。

2019/2/11

デイミアン・チャゼル監督「ファースト・マン」を観た。月面着陸というとてつもないミッションの記録。人類初の偉業でありながらアームストロング船長はひたすら冷静沈着で、物語は静かに進んで行く。しかしその反面、死の恐怖を体感させるほどの映像が映画としての興奮を生む。広大な宇宙で、その偉大な一歩を踏む瞬間の静寂。極限にまで張り詰めた緊張感の延長線上に総ての時間や空間から解き放たれたような開放感が世界を包む。実際の宇宙が心の中の宇宙と繋がるかのような神々しい時間を追体験する。

2019/2/16

イ・ジュンイク監督「金子文子と朴烈」を観た。1923年、東京で出会った朝鮮人アナキスト・朴烈と金子文子。同志であり恋人となった二人は関東大震災後の混乱の中囚われ、歴史的な裁判に挑んで行く。暴走する権力に対峙し人としての尊厳を守るべく激しく生きた二人。国や民族を越えて心に刺さった。時に激しく時に静かに二人の愛と誇りをかけた戦い。登場人物たちも日本人、朝鮮人ではなく一人一人の人間としてしっかりと描いていく。当然、反日なんてことはなく日本人は全員悪なんて描き方は一切していない。しっかりと歴史を見つめた、今に必要な映画だと思う。権力を維持する為、事実を捻じ曲げ意図的に社会を動かそうとする政権。お墨付きをもらったレイシストの暴走。権力に踏みにじられる持たざる者たち。これは国と国の物語ではない。人としてどう生きるかの話なのだ。金子文子を演じるチェ・ヒソがとにかく素晴らしい。過酷な過去を生き抜いてきたであろう強さを感じさせながら、茶目っ気のあるチャーミングさがある。彼女の力のある笑顔が、物語の光となる。

ケヴィン・マクドナルド監督「ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー~」を観た。ポップミュージックシーン最高の歌姫の一人、ホイットニー・ヒューストンのドキュメンタリー。スターの光と影。その光が強ければ強い程、その影もまた黒くなる。幼少期からデビュー、そしてスターに昇りつめていく彼女はこれ以上ない程に輝いている。明るくチャーミングで誰をも魅了する笑顔。ゆえにクスリに溺れ、ボロボロになっていく晩年の姿は観ていてとても辛い。映画は丁寧に証言を集めながら堕ちていかざるをえなかった彼女を映す。

2019/2/18

ビョルン・ルンゲ監督「天才作家の妻」を観た。現代文学の巨匠であるジェゼフのもとにノーベル文学賞受賞の知らせが届く。妻、ジョーンとともに喜ぶジョゼフ。しかしこの夫婦には“秘密”があった-。夫を文字通り“影”となり支えてきた妻。才能のある女性と搾取する男。見応えあり。妻・ジョーンを演じるグレン・クローズが素晴らしい。夫の“ありふれた”受賞スピーチを聞く、そのうんざりしたような表情。忘れ難い表情だった。

2019/2/25

ヨルゴス・ランティモス監督「女王陛下のお気に入り」を観た。時は18世紀初頭。アン女王と彼女を陰で操る女官サラ。そこに侍女としてやってきたサラの従妹・アビゲイル。女王の寵愛を奪い合う女の戦い!笑っていいもんかどうかという状況が続く、実に意地悪な悲喜劇。3女優の強烈な演技合戦が凄い!愛と権力闘争の末、誰ひとり幸せにならないという…ラストのそれぞれの表情がもう…。悲しみの果てに辿りついた先で生きざるを得ない実に複雑なアン女王を演じたオリヴィア・コールマン。アカデミー女優賞も大納得。

これ、素晴らしいな。なんていいメロディなんだ。超がつく名曲! 


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2019年1月のTweet

2019/1/6

正月休みも今日で終わり。1週間以上の連続休暇は10年以上ぶりだと思う。しかしこの土日はAmazonで韓国ドラマ「トッケビ」を観始めてしまい、とりあえず6話まで観賞。あと10話、いつ観たらいいのか。

2019/1/9

Apinkの新曲を聴く。デビュー7年、多くのグループが離脱していく中、息の長い活動を続けるガールズグループの鏡。活動曲もいいがApinkはアルバムにもいい曲が多いんだよね。K-POP界最高峰のボーカリスト、ウンジを筆頭にボミ、ナムジュ、ハヨンが歌えるし、チョロンのウィスパーボイスがいいアクセントだし、ナウンのボーカルもデビュー当時から格段に上がっている。Apinkいいグループです。数年前の話。ナムジュ以外のApinkメンバーとエレベーターで乗り合わせる!という奇跡が起きた。その1分にも満たない時間が人生最良の時間だった。でエレベーターの扉が開いたらナムジュがメンバーを驚かそうと「わっ!」と言って出てきた。その瞬間、心臓が一瞬止まった。

2019/1/19

イ・ヘジュン監督「22年目の記憶」を観た。1972年、南北会談のリハーサル用に金日成を演じることになった売れない役者ソングン。やがてソングンは役に飲み込まれていく…ってなところから父と息子の物語へ。名優ソル・ギョングが大根役者からの金日成を演じきるソル・ギョング劇場。

キム・デウン監督「レッスル!」を観た。ユ・ヘジンが元レスリング代表選手のシングルファーザーを演じる軽いコメディ。まさかの展開からの最後はこれまた父と息子の物語に。シリアスからコメディまで名バイプレイヤーでありながら今や主演作でもヒットを飛ばす逆イケメン俳優ユ・ヘジン劇場。ヒロイン、イ・ソンギョンのキュートなコメディエンヌぶりが最高。

2019/1/20

ティーブン・ケイプルJr.監督「クリード 炎の宿敵」を観た。クリード、ロッキー、そしてドラゴそれぞれの"親子"の物語。泥水を啜ってきたであろうドラゴ=ドルフ・ラングレン。敗者への愛と敬意を忘れないロッキー=スタローン。33年の時を経て役者の人生すら伏線回収。ラストのドラゴ親子に泣いた!

2019/1/26

ハイファ・アル=マンスール監督「メアリーの総て」を観た。舞台は19世紀、イギリス。今では誰もが知る「フランケンシュタイン」。この物語を書きあげた18歳の女性、メアリー・シェリーの人生を描く。孤独に苛まれ悲しみの果てに生まれたモンスター。そこに込められたものはまさに「メアリーの総て」。少女の面影も残しながら、聡明で気高く、激しさと強さを持ったメアリーを演じるのはエル・ファニング。とにかく彼女が素晴らしい!メアリーの総てを演じきっていた。そして監督のハイファ・アル=マンスールは「少女は自転車にのって」で注目を集めたサウジアラビア初の女性監督。男性優位で、偏見が色濃い中、自らの表現を世に問う。彼女もまた「メアリー」なのだ。

2018ベスト映画

2018ベスト映画
①「パディントン2
②「タクシー運転手」
③「1987、ある闘いの真実
④「ブラックパンサー
⑤「愛しのアイリーン
⑥「serch」
⑦「バトルオブセクシーズ」
⑧「万引き家族
⑨「THE WITCH/魔女」
⑩「カメラを止めるな!

⑪「レディバード
⑫「わたしたち」
⑬「ペンタゴン・ペーパーズ」
⑭「スリービルボード
⑮「15時17分発、パリ行き」
⑯「恋は雨上がりのように
⑰「操作された都市
⑱「きみの鳥はうたえる
⑲「ボヘミアン・ラプソディ
⑳「フロリダプロジェクト」

番外・チャンピオン作品「花筐」

 

2018年の観賞本数は計131本。ここ数年の平均ぐらい。基本は劇場観賞で一部旧作などはDVD。年末近くになってAmazonプライムに登録したので見逃してた作品や近隣で公開されなかった作品なども観ることができた。でも映画館がやっぱり好き。1人、暗闇の中で大きなスクリーンに映される別の人生を生きる。それが楽しいし、嬉しい。

でこうしてラインナップを見て作品を思い返せば、当たり前だけど「今」という時代に対して向き合った作品が多く、自分もまたそういった作品を求めていたことがわかる。社会、家族、女性、偏見と差別、そして人権。ここ数年、いやはっきり言うと現政権になってから、社会の状況はどんどんひどくなっているように感じる。偏見や差別、ヘイトが剥き出しにされ、それを隠そうともしない。ましてや恥ずかしいとも思わない。強いものに媚びへつらい、弱いものを叩く。想像力を失った恥知らずが大きな声で勇ましいことを言う。まともに生きていたら傷つくことばかりだ。

ま、ちょっと脱線したがそんな空気を感じながら、日常を生き、映画を観る。

パディントン2」は言ってしまえば「希望の光」であった。とびきりキュートでチャーミング、ポップでカラフルな表現を使って徹底的にエンタメとして楽しく描きながら、今本当に大切なことを伝えようとしている。物語の奥には今の社会に潜む問題がちちりばめられている。パディントンという異端の存在。それを排斥しようとする者もいるが、その一方で多くの人々がパディントンという存在に触れ、その存在と繋がり、知ることで彼を愛する。市井の人々のありふれた小さな親切心や思いやり。その小さな行動の一つ一つがやがて大きな希望の光となる。映画から溢れる多幸感。なんかもう幸せすぎて涙が出たよ。ホントに素晴らしい映画体験だった。

「タクシー運転手」「1987、ある闘いの真実」はともに韓国の歴史に基づいた作品。わずか数年前に隣国で起きた出来事。より善き世界の為に、卑怯者であることを選ばなかった人々の物語。今の自国の状況と照らし合わせざるを得ない。これは過去の物語であると同時に未来の物語であるかもしれない。そんな怖さも感じながら観た。それは「ペンタゴンペーパーズ」も同様。そして"今"この映画を作らなければいけないという映画人の真摯な想いも強く伝わった。卑怯者であることを良しとするか否か。どう生きるんだと映画は問う。目の前にバトンを差し出す。確かにそのバトンを受け取った。

MARVELの新ヒーロー「ブラックパンサー」もまた"今"を生きる映画。黒人のヒーロー、女性たちの活躍、善と悪の単純な2分化ではなくそれぞれのなかに理屈があり理由がある。ただ力で圧倒するのではなく、思慮深く、その解決策を見いだそうとする新たなヒーロー像。無知であることを恥じず、未知のものを見下す姿勢がいかにダメなことか。

「バトルオブセクシーズ」も男VS女という単純な構図ではない。どちらもが属性に囚われることなく1人の人間として、他者を、自分自身を捉えることの大切さを教えてくれる。エマ・ストーンとスティーブ・カレル、二人の演技がとても素晴らしかった。「スリービルボード」もまた単純な物語ではなかった。それぞれのなかに理屈があり理由がある。絡まった糸を丁寧に解き、個も見て、知ることで新たな繋がりが生まれる。とても考えさせる作品だった。

愛しのアイリーン」はとてつもなく凄まじく、とてつもなく美しい映画だった。最低の暮らし、最低の家族、最低の出会い、それでもそこに生まれた一瞬の奇跡。その美しさ。「万引き家族」もまた奇跡的な時間が描かれる"家族"の物語。社会から零れ落ちた者たちが紡いだ儚い時間。法律や制度、論理や倫理だけでは救えないもの。でもそれを救おうとするのもまた人である。「フロリダプロジェクト」にもそれはあった。

「search」「カメラを止めるな!」はともにその"仕掛け"が話題になったが、"仕掛け"以上のものがあったからこそ、多くの人に支持されたんだと思う。そしてどちらも娘の為に頑張るお父さんの話であり、映画館で観客が"体験"する映画。体験する映画ということで言えば「ボヘミアン・ラプソディ」も。ラスト20分、ライブ体験の圧倒的な力。でもそこに至る、零れ落ちた者と家族の物語がしっかりと胸に残る。

で今年も韓国映画を多く観た。前出の2作品以外にも、女子高生が殺人マシーンという超絶アクションエンタメ「THE WITCH/魔女」には大興奮したし、「操作された都市」も一捻りのあるアクションエンタメで楽しめた。またこの2作品とは真逆の「わたしたち」も素晴らしかった。二人の少女の繊細な心の動きを丁寧に描いた作品で、観ている間、ずっと胸が締め付けられた。

日本映画では「きみの鳥は歌える」が印象に残った。フィルムに閉じ込められた夜明け前のやるせない空気。明けない夜に漂う二人の男と一人の女。主演3人のアンサンブルがとても心地良かった。「恋は雨上がりのように」は拾い物。女子高生とおじさんの恋という謳い文句とは真逆で、恋愛ドラマでは全くなくて、挫折からの再生の物語。決して恋には発展しない二人。人間同士が出合い、それぞれが再生していく過程が描かれる。

80歳を越えるクリント・イーストウッド監督が辿りついた「15時17分発、パリ行き」も凄い作品だった。実際の事件を、実際に体験した本人に演じさせるという、まさかの本人出演再現ドラマ。まさに筋書きのないドラマなのだが、事実は小説より奇なりというか、全ての偶然は必然であるとしか言いようのない奇跡がそこにある。これが映画なのか、いや、これは映画でしかない!

で最後に大林宣彦監督の「花筐」。もはや順位などつけられず殿堂入りのチャンピオン作品とした。3時間近い大作ながら全編異常なまでのテンション、フィルムを切ったら血が流れ出すんじゃないかというぐらいの生命力、狂気の沙汰としか思えない映像の数々…あらゆるセオリーや文法を飛び越えつつ圧倒的に映画的であり映画そのもの。余命宣告までされた80歳になる監督が、ここまでの作品を作り上げるとは!一か所もありきたりな映像が無くどーかしてる映像のオンパレード。「この空の花」「野のなななのか」に続く戦争三部作にして監督の作家性が大爆発。アヴァンギャルドでありながら痛切なメッセージ性。映画という嘘で綴られた、真に真正面から叫ぶメッセージ。ユーモア、実験性、エロティシズム、押し寄せてくる過剰さ、そこに流れる赤い血。とにかく凄まじい映画である。憎悪と差別を隠そうともしない恥知らずが権力を握る狂った世界に対抗しうる狂気的なまでの正気。自分はやっぱり政治家より芸術家を信じるし、金より文化を愛しているんだなと再確認した。