日々の泡。

popholic diary

The April Fool

今日もワカチコ…ってもういい?で会社出て歩いてると「久しぶりね」と女性が声をかけてきた。トンボみたいなサングラスを外してニコッと微笑んだのは、今は東京で女優をやっている、元カノのNだった。なんでも仕事で海外に行ってたとかでこれお土産よと紙袋を照れくさそうに渡すのだった。「アフリカに行ってきました」と刻印が入ったクッキーに、「ケニアの女(ひと)」という温泉饅頭。相変わらずお土産選びが下手な子だ。彼女は昔から明るくてかわいい子だった。女優になっていつかはユニセフ大使になりたいのという彼女に、それなら東京へ行け。そうするべきだといったのは俺の方だ。俺のことは忘れて、その夢に向かっていくべきだ。君ならきっとできる。そう言って、大きな瞳にいっぱい涙をためた彼女を見送ったのはもう何年前だろう。俺は影ながら「夢中でがんばる君にエールを」おくったものだ。2年ほど前に大きな結婚式をあげたなんて噂は耳にしていたが、いろいろ話きいてみると浮気癖がひどい亭主と別れたのだとか。わたし、さびしいの。そういってナナメ45度に視線をそらす彼女。なにか言いたげだがそれ以上言ってはいけない。俺は言った。さぁこんなところにいないで早くお帰り。君の笑顔を待っている人は世界中にたくさんいるよ。女優になってユニセフ大使になって、世界中の子供たちに希望を与えるのが、きみの夢だったじゃないか。君に泣顔は似合わない。君に似合うのは笑顔とユニクロのスキニーパンツだけだ。そう言うと彼女はまっすぐに僕を見つめて、そうね、あなたの言う通りね。泣きごと言ってごめんなさい。そう私は女優よ、みんなに希望を与える私が泣いちゃダメね。えぇ行くわ。みんなが待っているものね。あの舞台に笑顔で上がるのが私の仕事ですもの。と言ってトンボみたいなサングラスを再びかけて颯爽と帰って行った。そう。それでいいんだ、N。まぁちょっとあのナイスボディーはもったいなかったけどね(笑)
それにしても今日も寒いな。ぶらぶら夜道を歩いてると携帯がなる。出てみると幼馴染のIからだった。Iは幼い頃、にいちゃんにいちゃんといつも俺の後ろについてきていた。ある日、いじめられていたIを助けてやると、泣きべそをかきながらIは俺に聞いた。にいちゃんはどうしてそんなに強いの。えっ?どうしてかって?それは毎朝カレーを食ってるからだよ。俺は軽い冗談のつもりでこう言った。Iは、そうか、カレーか、カレーを毎朝食べるんだねと眼をキラキラと輝かせた。Iはそれから今でも毎朝カレーを食べてるらしい。まぁそんなかわいい奴だ。電話口のIはにいちゃん、ありがとう。にいちゃんのアドバイスのおかげで打てたよ。優勝したんだ。全部にいちゃんのおかげだよ。と興奮気味に喋ってる。確か1週間ほど前かな、たまたま通りかかった公園でIが棒っきれを振り回していた。なんだかいつになく深刻な表情。おい、Iどうした?なんだなんだそんな不景気な顔して。何?スランプだって?なんだよ。こんな棒っきれ振り回して。ちょっと貸してみろよ。ほれ、こんな風にちょちょいのちょいで振ったらいいんだよ。そう言って数回その棒っきれを振り回してみてやったのだ。するとIの表情がパァっと明るくなって、わかった。そうか、さすがにいちゃん。見えたよ、そんな風に振ればいいんだね。やっぱりにいちゃんは僕のスーパーヒーローだよ。なんてことを言いやがる。おいおい、やめてくれよ。そう言って逃げるように俺はその場を去ったのだ。でなんだ、俺はよくしらないが、CCBだかなんだかいうベースたらボールたら言う大会で世界一なんだと。そうかいそりゃ良かった。元・女子アナの女房にもよろしくな。そう言って電話を切った。ま、どちらにしろめでたいことのようだ。早速、明日にでも祝儀を届けてやろう。少なくて悪いが7億ほどでいいか。今月ちょっとピンチなもんでね(笑)
家についてPCを開くと、ハイスクール時代の友人Oからメール。俺が留学した時に知り合ったOは真面目な男だった。歳は俺より上だが、まぁ飛び級で進学しちゃったもんだから同級生だ。Oと俺とはやけにウマが合った。二人で文化祭の時には漫才コンビなんか組んでね。ちょうど海辺の小さな浜に住んでたので、俺がコハマって名前でね。二人で海原オバマ・コハマなんて名乗ってね。うけたねぇ、あの時は。いいかげんな俺と違ってあいつはきっちりした男でね。いっしょに飲みに行っても勘定は絶対に折半。いくらおごってやると言ってもきかないんだよ。「Yes、ワリカン!」なんて、うるさいんだ。散髪にいってもいつもきれいに刈り上げてる。「Yes、バリカン!」だって。そんなOも最近、大統領になったとか。なんだか、前任者がちゃらんぽらんな野郎で尻拭いが大変。ちょっと悩んでるんだ、特に経済問題が…なんて悩み相談のメール。ま、とにかく誠実に対処すればいいと返事。誠実にコツコツ働いて、贅沢せずに身の丈に合った生活をすりゃみんな幸せになれんだ。そういうもんだろ。そんな国を作るのがお前の仕事だろ。期待してるぜ。がんばれよ。それにしても恋の相談ならともかく、経済の相談じゃあ盛り上がらないな(笑)
(注)エイプリルフールということで今日の日記には1つだけウソを混ぜてみました。どこがウソか、わかりにくいかなぁ(笑)