日々の泡。

popholic diary

2023年12月23日~29日の話。

2023/12/23

昨日までの高熱は落ち着いて、今日は37度前後でずいぶん楽になった。ただまだ食欲はなく咳と倦怠感が残る。布団から起きてソファーでのんびり。

NETFLIXで映画を一本。イ・ビョンホン監督「ドリーム ~狙え、人生逆転ゴール!~」を観る。暴力事件を起こしたサッカー選手のホンデは、自身のイメージ回復のためホームレス・サッカーチームの韓国代表監督に就任するはめに。彼らのドキュメンタリーを制作するソミンらとともに、サッカード素人で個性的なホームレスたちとともにホームレス・ワールドカップへの出場に挑戦する。初めて韓国が参加した2010年ブラジル・ホームレスワールドカップの実話を基にした作品。一癖も二癖もあるホームレスたちと問題児のサッカー選手、たがいに反発しながらも絆を深めていくってなもう王道中の王道、がんばれベアーズ方式の好きなやつ!ホンデを演じるのは今や国際的スター、「梨泰院クラス」のパク・ソジュン、ソミンを演じるのは我らがIU!ということでまぁ大傑作とは言わないけど、楽しく2時間を過ごせる良作。

そしてNETFLIXでもう一本。「ハンナ・ギャズビーのナネット」を観る。オーストラリア出身のハンナ・ギャズビーによる2018年のスタンダップコメディショー。これは凄まじい作品だった。1997年まで同性愛が犯罪だったタスマニア州出身のレズビアンである彼女。最初はきつめのジョークを散りばめながら自虐的にレズビアンである自分にふりかかるあれやこれやをネタに観客を沸かすが途中から話はより深く自分自身に迫っていく。もうコメディにはしない、自虐はしないと、自身に振りかかった様々な困難、トラウマを包み隠すことなく吐き出していく。その鬼気迫る喋り、そして彼女の心に刻まれた深い悲しみと痛み、激しい怒りに触れ、涙が止まらなくなった。こんな経験は初めてのことだ。それだけ強く心が揺さぶられた。同性愛が罪であると教えられ育てられた彼女は自分を憎み自分を恥じ生きてきた。社会や男性から向けられた酷い仕打ちや攻撃の数々。彼女はそんな攻撃にジョークで対抗してきたのだ。そうすることでサバイブしてきたのだ。だが、彼女は言うコメディでは語り切れない、救えないものがあると。ジェンダー、コメディ、緊張と緩和、美術史、ピカソ…etc散りばめられた様々な話題が回収され、一本の線となり突き刺さる。その抜群の構成力、観客を笑わせながら巻き込んでいく圧巻の喋り。60分の強烈なショー。ぜひ多くの人に観て欲しい。

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配信で竹内義和×角田龍平「妄言自由人」ゲスト、水道橋博士をチェック。いきなり下ネタで飛ばしまくる竹内先生、相変わらず最低で最高。完全に乗っかりシュートを決めていく博士さん。もちろん角田さんはそれを止めることなく油を注いでいくという。しかし「コキ道」をまい進するストロングスタイルの竹内先生、笑った。そして中盤からは博士さんの裁判話。専門家である角田弁護士との激しいやり取り。裁判に至った経緯や博士さんの志、裁判に臨む姿勢は大いに理解できる。その一方、あくまで「裁判」は「裁判」でしかなく、裁判そのものの仕組み、感情を配したところでロジカルかつ判例を基に判決が出るシステムであることを語る角田弁護士。その冷静さもまたとても大事だと思う。マクロの視点とミクロの視点での討論が熱く繰り広げられる。で最後は再び竹内先生が最低で最高の下ネタをぶっこみの大団円。これでいいのだ。

2023/12/24

朝のうち、久々に太陽の光を浴びようと湖岸を散歩。午後からはこたつに入って「マルコポロリ」~「M-1」をぼんやり。我が家は妻も娘も僕も「マユリカ」推し。ま、結果は納得。令和ロマンは計算されつくしたクレバーで達者な漫才。いかにもお笑いサークル出身という感じで理論的に笑いを構築してるなーという印象。ただもう年々はっきりしているのは、僕自身の興味が薄れている。はっきり言うともうついていけてないのだ。面白くないんじゃなくて、わからない。ま、そりゃそうだ。審査員すら年下が何人かいるぐらい俺は年を取り過ぎてる。

夜。母からTEL。祖母が亡くなったとのこと。103歳、大往生である。

2023/12/25

体調不良から復帰。会社に出て、たまった仕事を片付け、早退し妻とともに祖母のお通夜へ。いやしかし103歳。大正、昭和、平成、令和を生きたんだから素晴らしい。祖母は大らかで大柄な人だった。京都の百万遍にあった祖父母の家(母の実家)へは子供の頃からしょっちゅう遊びに行っていた。夏休みなどには必ず1週間ほど泊った。長屋の奥から2軒目。家では朝はパンだったが、祖父母のとこはご飯で祖母が作る炒り卵が美味しかったなぁ。夜食で出してくれた紫蘇入りのおにぎりも祖母の想い出の味だ。祖母手製のちらし寿司も大好きだった。あまりに僕が絶賛するので、祖母は我が家に来る時は必ず作って持ってきてくれた。祖父が亡くなってからは僕の実家近くに越してきて母が面倒を見ていた。100歳を越えて施設に入ってからも母は週に2、3回自転車で片道30分かけて会いに行っていた。僕が最後に顔を観れたのは2ヶ月ほど前。10分ほどの面会時間だったが直接会うことができた。さすがにもう僕のことは何となくしかわかっていなかったけど、顔色も良く元気そうだったのだが。数週間前に体調を崩し、流動食しかとれなくなったと聞いてはいたが、後1週間で104歳になるところだったのに。でも悲しいというより、お見事というか、よく生きましたというか、その人生を讃える気持ちの方が大きい。103歳、老衰で死去なんて、これもうスタンディングオベーションものでしょ。

2023/12/26

で今日は葬儀。妻、娘と葬儀場へ。親族一同で送り出し、火葬場まで。とても100歳越えとは思えないしっかりした骨。歯もまだ数本残っていたのだから大したものだ。ということで通夜、葬儀と母と兄が見事に取り仕切ってくれたおかげで、しっかり祖母を送り出すことができた。長年面倒を見てきた母も寂しさはもちろんあろうが、少しは楽になるかな。

2023/12/27

体調不良からの葬儀と年末にバタバタ。で今日はお仕事。しかしなかなか絶好調とはいかない。咳がまだ少し残っているうえ、どうも食欲がわかず、声に元気がない。おとなしく過ごそう。

韓国の俳優、イ・ソンギュンさん死去の報。これはなかなかに悲しい。「パラサイト 半地下の家族」はもちろん、ホン・サンス作品や日本でもリメイクされた「最後まで行く」、そしてIUと共演したドラマ「マイ・ディア・ミスター」(名作!)と彼の出演作で好きな作品も多く、いい俳優さんだと思っていたので。麻薬疑惑による過酷な取り調べと過剰な報道の末という。韓国の映画や音楽を好きになって長いが、悲しい選択をしてしまう歌手や俳優が多くそのたびに大いにショックを受ける。奥さんである俳優のチョン・ヘジンさんのファンでもあるのでそこも心配だな。

2023/12/28

仕事納め。例の文春砲。まだ記事読んでないから何とも言えないけど、性加害する奴はクソ野郎という認識でいます。いくら才能があってもそれはそれ。権力や財力、力で弱者をねじ伏せる。声を上げた者に振りかかる二次加害…とにかく権力者による性加害は最低最悪だと思っている。人間の尊厳の問題であり、人権の話である。そこは第一に守られてほしい。

2023/12/29

休日。とりあえず映画館へ。MOVIX京都にて古賀豪監督「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」を観る。舞台は昭和31年。日本の政財界を牛耳る龍賀一族が支配する村、哭倉村。一族の当主が死んだことから起こる事件。まだ「目玉おやじ」になる前の鬼太郎の父の物語。横溝正史的なおどろおどろしい雰囲気、村の因習と強い家父長制。権力者が弱者を食い物にするという今もまだ根深く残るいかにも日本的な問題をベースに大人のドラマが展開されていく。いやー悪役の顔が××××に見えたぜ、なんて。でもこれあながち間違ってない。でエンドクレジットで鬼太郎誕生のエピソードに見事繋げるなんて芸が細かい。

で新京極のMOVIXから15分徒歩移動で四条烏丸京都シネマへ。本日の2本目、アキ・カウリスマキ監督「枯れ葉」の上映に滑り込む。舞台は寒々としたヘルシンキの街。アンサは理不尽な理由で職を失った中年女性。ホラッパは酒を手放せないでいる工事現場の労働者。孤独を抱えて生きる二人はバーで出会い惹かれあう。だが、すれ違っていく二人…ってな物語。キラキラと眩しい恋愛映画とは真逆。まさに「枯れ葉」のような二人の恋の行方。二人の寂しく過酷な生活、なかなか辿り着けない幸せへの道がとぼけたユーモアとともに描かれる。登場人物たちは皆、無表情で感情を表に出さずセリフすら棒読みというアキ・カウリスマキ演出には独特の優しさがある。弱く小さなものたちへ向けられた視線、無情な世界の中で起こるささやかな奇跡。じわっと沁みる映画だった。

なか卯で遅めの昼食。もちろん親子丼。親子丼一杯の幸せですな。行き帰りに「爆笑問題カーボーイ」。いきなり「ツマミになるような話はありません…笑ってはいけないんですから」などなどぶっこむ太田さん。それもおもろいんだが、ナイツ塙を学会ネタでいじり倒す話も最高。

義実家の猫、チビ太が急逝。ここ数日調子が悪く病院にも連れて行っていたがまさかこんなに早く逝ってしまうとは。チビ太との出会いはもう13年前。我が家の猫、チビが家出してしまい探し回っていた時に出会った。商店街にチビに似た猫がウロウロしているとの情報でかけつけたところに現れた一匹の子猫。残念ながらチビとは違った。首輪をしているものの、商店街の駐車場にここ数日いるという。色々聞いてみると飼い主が引っ越しして捨てていかれたのだという。さすがにほっておけなくて連れて帰ってきたのがチビ太。そして妻の実家で飼うことに。丸々と太って愛嬌たっぷりのチビ太は近所の人気者に。学校帰りの子供たちや近所の人たちが連日チビ太を撫でにやってくる。義母とは名コンビで仲良く暮らしていた。仕事終わりの娘もいっしょに義実家へ。今にも目を覚ましそうなチビ太。遊びに行くといつもゴロンとお腹を見せて甘えてくる、本当に愛嬌たっぷりの猫だった。今日は訃報を知った近所の人たちが朝から花やおやつをもってチビ太のところに来てくれたんだと。妻も娘も涙涙、いつも元気な義母も今日は一日泣けてしょうがなかったらしい。50超えてからの人生は引き算だな。今週だけでも祖母が去り、チビ太が去った。とても悲しいが、それでも心には様々な想い出が残っている。ありがとう。さようなら。

帰りに妻と娘と国道沿いのガストで夕飯。働き始めて4年。娘もすっかり社会人で大人同士の会話ができて楽しい。

それにしても先週からいろいろあるなー。怒涛の年末です。