日々の泡。

popholic diary

2018年9月のTweet

2018/9/1

大根仁監督「SUNNY 強い気持・強い愛」を観た。韓国傑作映画の日本リメイク版。90年代、コギャル文化にってのは確かに上手い翻訳。原典のいいとこ取りしつつ、枝葉を刈り込んでよりベタでわかりやすくの直球勝負。余白を残した韓国版と違い、ラストで全部見せ切ったとこが象徴的。エンタメど真ん中。先日以前勤めていた会社の前を通った時、サラリーマンなりたてで手も息も抜けずにただただ懸命だった自分を思い出し、良く頑張ってたなぁと過去の自分を抱きしめてやりたくなった。人生も折り返しを過ぎるとふとそんな瞬間がある。映画「SUNNY 強い気持ち・強い愛」観ながらそんなことを想う。現在パートの小池栄子ともさかりえが素晴らしい。脇をきっちり演じる素晴らしい役者さん。それと一番印象に残った台詞が、過去パートでの三浦春馬が言う「~"伊東家の食卓"でやってた」。90年代!しかしまぁ結局、韓国版「SUNNY」を見返したくなった。エンタメに徹していて、韓国版よりスッキリ見やすいのだが、故にそこが少し物足りない。韓国版もエンタメ性は高いが、そこをはみ出してしまうゴツゴツとした歪な熱量、苦味が、ただ良くできた作品というだけじゃない魅力になっていたと思う。

原田眞人監督「検察側の罪人」を観た。想像以上に骨太かつ気骨のある社会派エンタメで素晴らしかった!30年近く日本のエンタメ界のど真ん中に立つ木村拓哉から放たれるビンビンのスター性。圧倒的な存在感。対する二宮和也がとにかく凄かった。鳥肌が立つほどの瞬発力と天才的な演技力。見応えあり。「正義」を巡る物語の背景に置かれた、はっきり日本会議を思わせる極右組織の存在と危険な空気。主軸となる物語からすればノイズになりかねない背景だが、あえてそのノイズが2大スター主演の映画に入っている。今という時代に放たれた映画、その映画人の気骨。感触が韓国の社会派エンタメ映画のそれだった。日本映画ではあまり感じたことのないダークさと苦い後味。スター俳優が徹底的に本気の演技でやりあう感じとか。逆に韓国でリメイクして欲しい。イ・ビョンホン、イム・シワンあたりでどうか。

2018/9/8

NHK警察庁長官狙撃事件」面白い!イッセー尾形劇場!

チャン・ジュナン監督「1987、ある闘いの真実」を観た。1987年の韓国。1人の大学生が警察による拷問の末に死亡。隠蔽工作を図る軍事政権と警察。絶対的権力に向い、立ち上がる人々の姿を描く実話。一人一人の小さな力がやがて大きなうねりとなっていく。あっぱれ!素晴らしい作品だった。政権に楯つくものは全て「左」とレッテルを張り、愛国の名の下、徹底的に叩き潰す。情報は操作され、不都合な事実は隠蔽・改竄されていく。法を変えてまで政権にしがみつく独裁者。権力の側について私欲を貪る卑怯者たち。あれっどこかの国の"今"に似てないか。一つの死が、やがて人々を動かす。検事が、記者が、看守が、学生が…小さな力が連なり巨大権力に闘いを挑んで行く。傷つき失われていった小さな命のレクイエム。その上で掴んだ民主化。たった31年前に隣の国で起こっていたことに強い衝撃を受ける。この、国が犯した罪、歴史の暗部であり恥部を、韓国映画界のオールスターキャストで、それもド級のエンタメ作品として抜群に面白く見せる。その韓国映画が持つ力には大きな拍手を送るしかない。最初から最後まで緩む間もなくずっと面白いんだからなぁ。凄いよ。脱北者であり共産主義撲滅に手段を選ばないパク所長を演じるキム・ユンソクをはじめ、ハ・ジョンウ、ユ・ヘジン、カン・ドンウィン、ソル・ギョング、パク・ヒスン、そしてキム・テリとまさにオールスターキャストによる最高級の演技を堪能。この贅沢さよ。しかしこの1987年の韓国と、2018年の日本がやけにシンクロする。ただ違うのは向こうは民主化に向かっていく過程であり、こちらは独裁政権に向かっていく過程であるということだ。

2018/9/9

ユン・ガウン監督「わたしたち」を観た。10歳の少女・ソンはクラスでいじめられている。だが終業式の日に転校してきたジアと出会い、二人は夏休みの間にすっかり仲良くなる。しかし新学期が始まるとジアは急にソンに冷たくなって…という物語。観ている間中、ずっと胸が締め付けられた。少女たちの小さな世界で起こる出来事。嫉妬や裏切り、築いた友情は脆く崩れ去る。その小さな世界の出来事は、少女たちにとっては世界のすべてだ。繊細な心が傷つき、痛む。主人公、ソンは不器用だけど心優しく人の痛みを誰よりも感じ取ってしまう。彼女の表情が頭から離れない。

2018/9/15

ビバリー高田文夫先生が神田松之丞に負けじと浅草ロック座に行った話。高田先生のフットワークの軽さに感動。いくつになってもアンテナはビンビン感度最高でいたいものである。

最近はかなりお疲れ気味。会社帰りに「アントマン&ワスプ」。なかなか楽しいが、最後の最後にアレのあそこにあー繋がるのか!次のアベンジャーズ早くして!

NHK「透明なゆりかご」今年のベストドラマ。今日の物語はかなりつらく重い内容だったが、誠実に丁寧に逃げずに踏み込んで描いていた。素晴らしい。

ジアド・ドゥエイリ監督のレバノン映画「判決、ふたつの希望」を観た。レバノン人のトニーとパレスチナ難民のヤーセル。ささいな口論がやがて国全体を巻き込み法廷での対決となっていく。民族、政治、宗教…様々な問題が複雑に絡み合い、個人の尊厳を傷つけあう。難しい内容ではあるがめっぽう面白い。歴史の中で作られてきた、憎しみや差別、戦いがもたらした負の遺産の数々が次々と噴出。これは日本も含め世界各国で今まさに起こっていることではないか。主語が大きくなればなるほど問題は複雑になり憎しみは増大する。個人に立ち返りお互いの痛みを知ることが希望になる

2018/9/16

吉田恵輔監督「愛しのアイリーン」を観た。凄い映画、凄まじい映画。吉田監督の過去作は掛け違えたボタンの物語という印象があるのだが、今作はそもそも掛かるはずの無いボタンを無理やりにねじ込む歪さが極限まで達している。でもその中で奇跡的にかかってしまった一瞬の美しさが核になる。今年の助演女優賞木野花さんで決まりでしょ。

昨日は新京極のMOVIXから、四条烏丸京都シネマへというハシゴ映画。MOVIX上映終了時間が13:50。京都シネマ上映開始が14:15。その時間わずか25分。なかなか無理のある移動だったが早歩きでなんとか辿りついて席に座って前を見たら、さっきMOVIXで同じ映画を見てた人がいた。こんな無理のあるハシゴをしてる人がもう一人いるとは。でなぜその人のことを覚えているかというと、この5~6年何回も映画館ですれ違っているから。向こうは気づいてるかわからないけどみなみ会館京都シネマ韓国映画の初日なんかはかなりの確率ですれ違っている。同じような趣味の人っているんだな

2018/9/17

昨晩は妻と一緒に大津の市民会館であったシソンヌのコントライブ「モノクロ」へ。何もないシンプルな舞台、白いシャツとグレーのズボン。なのにコントが始まるとそこに様々なものが浮かんでくる。濃縮した演劇。1時間ほどの短いステージではあったがとても濃い笑いと芝居があったな。

録画していた「ザ・ノンフィクション/転がる魂 内田裕也」を観る。僕の世代だとやはり思春期の頃に観た「十階のモスキート」「コミック雑誌なんかいらない」だな。とにかく怖くてヤバくて不良の大人。今もなお異形の人で、車椅子に乗った姿ももはや進化形に見える。

しかし「十階のモスキート」の中村れい子さんはエロかったなー。

NHKでやったTWICEの番組。ファンによるリクエストは韓国での最新曲。そりゃそうでもはや日本デビューとか日本語版なんて必要か。リアルタイムで韓国の音楽番組をチェックし、豪華ブックレットがついた輸入盤を2000円そこそこで簡単に入手できるんだから。K-POPはもう国境を越えてるよ。普通に考えて秋元康をありがたがるK-POPファンはいない。秋元康臭が苦手だから、K-POPに流れてる人も多いのでは。なんというか日本のレコード会社の周回遅れっぷりにはがっくりくる。

2018/9/22

地元の旧大津公会堂にて寺尾紗穂さんのライブ。ささやかな暮らしの中で起こる波風、カメラが遠く離れたところから俯瞰で映したかと思うと、毛穴が見えるまで、息遣いが耳にかかるまで近づく。そんな風に一曲一曲が人の営みを、心の中にまで入って切り取り映しだす。寺尾さんの歌はちょっと別格だな。MCでは亡くなられたお父様、そして吉原聖洋さんの話も。「人生は夢のように短いのだから」という吉原さんの言葉が浮かぶ。何を大切に生きるのか。そんなことをふと思う。そして大切にしたい何かに触れられたようなライブだった。

2018/9/29

録画していたNHKのドキュメンタリー「"樹木希林"を生きる」を観た。まさに死ぬまで「生きた」人。どれだけの人が死ぬまで生きられるのだろうか。自分は自分を生きているのか?と突きつけられる。とにかく見事なまでの生き様であり死に様だった。