日々の泡。

popholic diary

頑張れ

朝から映画を一本。園子温監督「ヒミズ」観る。
震災以後、あちらこちらで「頑張れ」が聞こえる。でも初めて本気の「頑張れ」を聞いた。「頑張れ」は人に対して言う言葉じゃないんだな。自分に向けて精一杯言う言葉なんだ。
映画は震災後の無残な街の風景を黙って映し出す。出てくる大人たちは、うそつきにクズ、極悪だったり、卑怯だったり、馬鹿だったりするダメな大人ばかり。全てが流されて、化けの皮が剥がれる。ここにいる大人たちは、僕らが大人だと思っていた大人たちの剥き出しになった素顔だ。映画に出てくる二人の子供。彼らは大人たちに傷つき、徹底的にもがき、苦しむ。無残に流された街の風景のように、ボロボロになってもがき苦しむ。やがて消えていく所詮ダメな大人が唯一できることは、そんなボロボロになってもがき苦しむ子供たちを、本気で、身体を張って守ることだけだ。もうインチキは通用しない。剥き出しのダメでクズな大人の顔で、もがき苦しみながら、やがて自分の足で立ち上がる子供たちを何があっても守らなきゃならない。本気の「頑張れ」だけが光を掴むのだ。
主演の二人の子供。染谷将太二階堂ふみが素晴らしい。彼らのもがき、苦しむ様はたかが演技を越えた真実を体現していた。彼らの存在そのものが最後にちゃんと光になる。そして脇を固めるダメな大人たちもまた素晴らしい。特に渡辺哲さんの表情、言葉には泣いた。でんでん扮するヤクザに金を渡すシーンの言葉は映画史に残る名台詞だし、自分の胸が震えるのがわかった。もちろんでんでんさんも「冷たい熱帯魚」に続いてホント素晴らしい演技。もはや名優と呼んで差し支えない。

ヒミズ」今を生きる全ての人に、ぜひ観てほしい一本。