日々の泡。

popholic diary

Sweet Thing

土曜。8時起き。妻も娘も出かけてるので、ゆっくり朝飯。冷ご飯に熱々の炒り卵、インスタントの味噌汁。なんたるビンボー臭さ。でもこれが一番好き。ご飯2膳いっちゃう。
新聞もゆっくり読む。宮部みゆきさんの連載が毎朝の愉しみ。土曜版は桐野夏生さんの連載もあってこっちも愉しみになってる。
それからi-podお供に散歩。路地裏抜けて商店街、図書館に本を返してちょっと一服。雑誌やエッセイの類をひとしきり読んでまた歩く。肉屋でコロッケを買ってこれはお昼ごはんに。帰って猫たちに餌をやって、一玉残ってた塩焼きそば作ってコロッケといっしょに食べる。HDDで「にけつ」「リンカーン」など。
それから娘が所属してる金管バンドが出るから、市民会館まで。滋賀県のジュニア吹奏楽のコンサート。ここんとこ毎週土曜日も学校に出て練習してたからな。本人はめんどくさいだとかブツブツ言ってたが、それでもこうして音楽を続けてくれてるのは嬉しい。
で京都に出てライブ。鈴木祥子@旧立誠小学校。実に久々の祥子さん。ここんとこ足が遠ざかってたんだが、鈴木博文武川雅寛fromムーンライダーズがゲストとあっちゃ、行かないわけにはいかないだろう。会場の旧立誠小学校は繁華街のど真ん中にある廃校になった小学校。ここの講堂が会場。ノスタルジックでなかなかいい雰囲気。でライブ。
着物姿で登場した祥子さん。グランドピアノの音は講堂に似合う。ライブハウスとはまた違った音の響き方、声の抜け方。力強くて心地いい。91年のアルバム「Hourglass」の曲を中心に進む。このアルバムは思い出深い一枚。僕は20歳の大学生だった。祥子さんのことはビートニクスのバックメンバーだったってこともあってデビュー時から知っていたし、音も聴いていた。この前作「Long Long Way Home」のツアーで初めて祥子さんのライブを体験。CDではおとなしめのポップスという印象だったが、ステージでギターをかき鳴らすあまりにかっこいいロッキンな姿に度肝を抜かれ一気に熱が上がった。それ以来、祥子さんは僕の中では最強の女性ロッカー。ニューアルバムの発売を当時どれだけ心待ちにしたことか。そして届けられた「Hourglass」。淡くノスタルジックで美しいアートワーク。CDをトレイに乗せてプレイボタンを押す。地に足がついた本物の名曲が次々と出てきて心底感激した。なんてスゲー音楽家なんだ!と狭い部屋で興奮したもんだ。それももう18年も前だって。つい昨日のことのように思い出しちゃうな。
で武川さん登場。どんなライブでも武川さんの名前があれば絶対安心できる。ヴァイオリン、トランペット、マンドリンにギター、コーラス、どれをとっても完璧、腕もハートもある最強のライブ職人だからね。今日、初めて武川さん観た人も、その超人ぶりに度肝抜かれたことだろう。祥子さん曲のお手伝いだけかと思ったら、まさかの武川ヴォーカルで「俺はそんなに馬鹿じゃない」を披露。そして呼びこまれる鈴木博文。ここからの展開は祥子さんファンには申し訳ないが、もう今回の目玉というか完全なステージジャック状態。博文&武川のムーンライダーズ1/3によるオンステージ。これが実にもう最高だったな。この二人だけでステージやるのは初めてといいつつ、そこは長年のバンドメンバー。ボケと突っ込み、いや阿吽の呼吸で繰り広げられる男汁全開のステージ。博文さんの「ブルー」から始まり、武川さん作、ドントラ収録の名曲「A FROZEN GIRL,A BOY IN LOVE」。うわっ、泣きそう。武川さんと博文さんの声の相性の良さ、男臭さが堪らない。続いて「Bomb」。博文さんの激しいギターが講堂に響く。でここでなんと「今すぐ君をぶっとばせ」だ!いかにもライダーズな捻くれてて情けないダメ男ソングが、博文&武川コンビで歌われるとド渋いロックな男歌になる。しかしここで聴けるとは思わなかった。15歳に戻っちまうぜ。さらにさらに博文さんがピアノに移って歌われたのが「月夜のドライヴ」!!えぇーっ!ここでそれやっちゃう。言葉でないっす。驚愕。かっこ良すぎる。ゲストと言いつつここまでやっちゃう二人のド迫力ぶりが祥子さんファンにどう映ったかわからんが、でもこの音の前じゃ何も言えねーってとこでしょ。そんな放心状態のところ、祥子さん登場。ここでまたサプライズ。3人で政風会「Highway Star」!いいのか、祥子さんのライブでここまでやって。でも最高。でダメ押しにランディ・ニューマンのカバー。いやー祥子さんも負けてない。おっさん二人のロック濃度に全く屈しない歌いっぷり。
で祥子さんのライブだってことを忘れてしまいそうになったとこで、再び祥子さんのステージ。思い出したかのように話続けるが、「Hourglass」曲はホント名曲揃いだなと18年ぶりに再認識。「Happiness」「花束」「とどくかしら」「Love Child」などなどメロディーが鼓膜の奥に染み付いてる。古い小学校の講堂、汚れの染み付いた天井を眺めながらメロディーに身をゆだねる。過ぎていった時間が胸の奥で思い出と言う名の結晶になっていく。振りかえれば結構な時間を通り過ぎてきた。なんだか、相変わらずだけど、それでもこんな風に胸の奥の結晶が一つ、一つ増えてきた。ちっぽけで、くだらない結晶もまた大切な一つで、それは確かに俺が過ごしてきた時間だ。歳とるのも悪くない…なんて思ったりしちゃったりなんかしてね。
アンコールは博文さん&武川さんとともに「くれない埠頭」。あぁまたこんな名曲やっちゃう。もう何千回も聴いた曲。15歳の俺、17歳の俺、20歳の俺、23歳の俺、29歳の俺、32歳の俺、いっしょに歌おうや。歳とると涙もろくなっていけねぇ。
そして祥子さん一人で「言葉」。初めてこの曲を聴いた日のことは今でもはっきり覚えてる。先に書いた初めて行った祥子さんのコンサート。ロッキンなステージの中盤、弾き語りのコーナー。「出来たばっかりの新曲を歌います」こう言っておもむろに歌われたのがこの曲だった。感動した。鳥肌が立った。ションベンちびった。この時の、この一曲があったから、こうして19年後も彼女の歌を聴きに来てる。そういうことだ。
大ラスはリクエストで「逆プロポーズ(仮)」。これはまるで「Happiness」のアンサーソングじゃないか。なんだか出来すぎなエンディング。とてもいいライブだった。