日々の泡。

popholic diary

2002年7月の話。

2002/7/1~31

久しぶりに京都の実家へ。娘の誕生日が近いので両親ともども「TOYザラス」に。以前から熱望していた「キックボード」をじいさんに、シリバニアファミリーの小物セットをばあさんから買ってもらい娘も大喜び。なんでもかんでも買い与えるのはいいことじゃないかもしれないが素直に喜ぶ娘を見るのはなんともうれしい気分だ。そういえば僕も子供の頃、おもちゃ屋は夢の国のように感じていた。母親の買い物について行ってはおもちゃ屋のショーケースにディスプレイされた超合金を眺めていたもんだ。

でそのままみなで食事。父親は先月、定年退職を迎えた。会社生活47年。18で入社し役員にまでのぼりつめたんだからこれは偉いよね。もう、足元ぐらぐらな会社員生活を送っている不肖の息子としては恐れ入るばかり。戦争をリアルに知ってる最後の世代、高度経済成長期にガンガンに働いて今の日本を築いた世代。そして滅び行く日本経済を前に去ってっちゃうなんてずるいや。でも、なにはともあれご苦労様。僕はあなたみたいな父親になれるかな?

娘の誕生日。残業を早めに切り上げ帰宅。文科系親父からのプレゼントは島村楽器で購入したミニアコーディオン。半分自分が遊ぼうって魂胆もあるんだが。で家族でケーキを囲んでささやかな誕生日のお祝い。アコーディオンのプレゼントも喜んでくれて良かった。しかしもう5歳だって。大人の成長と違って子供の成長は早い。ただ泣いているだけの赤ん坊だったのに。もちろん、まだ小さく弱いけど自分の意志を持つ「個」として成立している。娘が娘自身として成長していくように僕も僕で僕の目指すところへ向かっていかなきゃな。君が君であるように僕は僕なんだな。

久しぶりにオーパにある本屋「ヴィレッジヴァンガード」を覗く。ちょっと品揃えが狙いすぎというかわかりやすすぎるのが魅力でもあるんだろうが、もはや今の僕の気分とは遠いな。で藤子F不二雄特集の「relax」誌とみうらじゅん「グレイト余生」購入。

「relax」誌の藤子F不二雄特集が出色の出来。藤子F不二雄先生こそ真の大人コドモ、愛と叡智とユーモアを完璧なバランスで備えたリスペクトするに値するアーティスト。
僕がいまだにポップカルチャーの魅力にまいっているのは、子供の頃F作品によってポップカルチャーの素晴らしさを刷り込まれたからだ。でこの特集で特に感動したのはF先生の娘さん3人が語る父・藤子F不二雄の思い出。家族に仕掛けた愛とユーモアに満ちたいたずらエピソードのその大人コドモぶり。「印象に残ってるのは、私たちに対して、父は自分のことを“パパ”とは絶対言わないで“僕”って言うんです。誰に対しても対等の目線で付き合ってたってことだと思うんですけど」という娘さんの発言。F作品が子供から大人まで、世界中の人々に読み続けられるのはこのスタンスあってこそなんだな。それと「『オレたちひょうきん族』の、のりおがやるオバQすごく喜んでたよね」ってさすがF先生、わかってらっしゃる!そんなわけでF先生の短編集を改めて読み直す。挫折と苦悩、センスオブワンダー。闇の向こうにある光、光の中に潜む影。アナザー・サイド・オブ・Fの魅力たっぷりのF短編集は何度読んでも飽きない。ドラえもんがポケットから出す不思議な道具は僕らの空想の必須アイテムとなってる。これってとんでもなく凄いことだよね。

でまたもやFブーム到来。早速本屋で藤子F不二雄「モジャ公」購入。

会社帰りに本屋で「笑芸人」の7号購入。イリュージョン&ものまね特集。プリンセステンコーこと引田天功の浮世離れしたインタビューがおもろ。「初めて地下鉄に乗ったのは北朝鮮」「日本で虎をペットに飼ってるのは私だけ・・」「月に土地を買ったんです」などなど。まさにイリュージョンですな。

ボーナス出る。額面みて腰抜ける。悪い、悪いとは聞いていたがさすがにこうはっきり数字化されると辛いなぁ。出ただけマシなんて大人にはなれない。だって、俺には生活がかかってるんだもの。ということでこのボーナスはすべて生活費の補填用として消え、私のこづかい分は無しと決定。欲しかったあれもこれもこれでさよなら。

レンタルCD屋でCD借りる。レンタルは好きじゃないがなにせこづかいが・・・。つじあやの「BALANCO」、スーパーバタードッグ「grooblue」、LITTLE TEMPO「KEDACO SOUNDS」の3枚。LITTLE TEMPOがめちゃめちゃ気持ちいい。暑い夏はクールな音楽がやはり最高だな。

岸野雄一のユニット・ヒゲの未亡人の「ヒゲの未亡人の休日」が素晴らしい。21世紀のシャンソン、キワモノすれすれながらこの洗練されたユーモアぶり。「三十路の小娘」なんて最高。

青山陽一の新曲「come and go」もいい。誰にも似てない音楽。もうすぐ発売の新譜は傑作の予感。待ち遠しい。

レディメイドの一押しのアイドル、野本かりあだが、きれいだとは思うがあまり魅力は感じないなぁ。でも人の好みなんてわからないもんで。どこがいいのかよくわからんってのはあるなぁ。例えば、米倉涼子とか菊川玲なんてなにがどういいのか、俺にはさっぱりわからん。癒し系なんつー井川遥とかもそんなにいいかぁ?って感じ。小西真奈美ちゃんのほうがよっぽど癒し系だとおもうけどな。

今さらながら周防正行「『Shall we ダンス?アメリカを行く」読了。めちゃめちゃおもろ。一本の映画が国境を越えるその裏話。アメリカという大味な国、立ちはだかる異文化という壁。映画は紆余曲折しながらもその映画そのものの力で壁を越える。読んでてなんだが凄くパワーを与えられた。

妻と娘が義父、義母や姪ッ子と旅行。しばしの擬似チョンガー体験。とはいえ別になんてことなくいつもの調子でパルコへ。ゆっくりタワーレコード紀伊国屋めぐる。しかし、俺、行くとこっていったらレコード屋と本屋ばっかりだね。でタワーでレディメイドからCDに先行して出たムッシュかまやつのアナログ「Je m'appelle MONSIEUR」、クレイジーケンバンドのシングル「GT」、Reggae Disco Rockers「Remixes」購入。紀伊国屋では田代まさしの告白本などを立ち読みし、本の背表紙眺めながらブラブラ。どうして本屋ってこうも落ち着くのかねぇ。

家にいてもしょうがないので「ふるさとZIP探検隊」の蛾次郎よろしく自転車にまたがり大津の町を探索。県庁所在地とは思えない湖のそばの物静かな街。さびれた商店街や細い路地は現役の昭和。やけに住みやすいんだな、ここは。

夜食は肉味噌のレタス包みに冷奴、テレビ見ながらチューハイを飲んでのんびり。一人でのんびりしたいと思いつついざ一人になるとちょっと寂しい。娘が赤ちゃんの頃に撮った8ミリビデオをVHSに落とす作業をおやつに買ってきた「水無月」を食べつつコツコツと。もう笑っちゃうくらいにかわいくて最高。気付いたら3時間もやってた。

今日も一人の夜食。金目鯛の煮付けを作って、あと焼きなすにスーパーで買ってきた軟骨の唐揚げをチューハイ飲みながらつまむ。独身のわびしさを擬似体験。でも俺、案外やっていけそう。

会社帰りにタワーに寄って小西康陽プロデュースのムッシュかまやつ「我が名はムッシュ」購入。ムッシュかまやつ「我が名はムッシュ」。これ間違いなく傑作。現時点で今年のベスト。ムッシュがひたすら自分の愛したモノを並べる「ソー・ロング20世紀」が圧巻。どうしてこんなにも胸が熱くなるのだろう。めちゃめちゃ感動。窪田晴男のストリングスアレンジが光るメロウな「ノーノーボーイ」、市川美和子ちゃんが好演する「二十才のころ」、そして名曲「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」全部素晴らしい。かっこいいぜ、ムッシュ

戸川京子、自殺の報に驚く。一般的にはタレントとして認知されている彼女だが(11PMの司会とかしてたな、懐かしい・・)僕にとってはシンガーとしての彼女が思い出深い。僕のCD棚には彼女のCDが2枚。88年作品「涙」と89年作品「Ocan」でどちらもプロデュースは林哲司。彼女は小西康陽をいち早くソングライターとして起用してて、どちらにも小西作品が収録されている。「Ocan」にいたってはほとんどの詞を小西が手がけている。もう15年ほど前になるけど雑誌「テッチー」で好きなアルバムとして彼女は当時無名だったピチカートの「ベリッシマ」なんかを挙げていて、それで僕は彼女に対して好感を持ったものだ。「2ちゃんねる」あたりでは彼女の唄は下手だったなんて書かれてたけど、何人の人がほんとに彼女の唄を聞いたのだろうか。下手なんてとんでもない、彼女の歌声は清楚で透明感があるとても美しいものだった。「涙」(ジャケットに写るショートカットの彼女はとんでもない美少女ぶりでグッとくる)に収められた小西作「動物園の鰐」やピチカートの「月面軟着陸」に収められた彼女が高浪敬太郎とデュエットする「ちょっとでようよ」なんて曲は何回もリピートして聴いた。あと彼女がAVEC名義で高浪敬太郎と組んだ「或るクリスマス」(オムニバス盤「Winter Garden」収録)、これまた高浪作品「I Never Know」(オムニバス盤「Weekend for ladies」収録)なんて小粒ながら実に「いい」ポップソングを残している。「自殺」ってのはやっぱりちょっと悲しいな。合掌。

休日。娘と朝からプール。今夏初。一年前は顔を水につけることがなかなか出来なかった娘もスイミングスクールに通ってることもあって随分成長した。2時間ばかり二人で遊ぶ。30過ぎにはプール2時間はもはやきつい。帰って思わず昼寝。

ここんとこ週一で本社出勤。梅田のタワーはいつのまにか閉店時間が10時に延長。でやっぱり寄っちゃう。大津のタワーでは売ってなかった松尾清憲「ハロー・シェイクスピア」、鈴木慶一「チキンハートost」購入。

大槻ケンヂ「リンダ・リンダ・ラバーソウル」読了。バンドブームってのがあった。僕がちょうど高校~大学の頃。あの騒ぎはいったいなんだったんだろうってことをまさにその渦中にいた大槻ケンヂが描く。笑いつつもちょっと泣けた。青春は間違いなく終わる。終わってしまった青春を想うとき、いつでも胸は締め付けられる。若さとバカさが空回ってた時代のことを、今、ここにいるバカな自分は決して忘れることなんかできないんだ。青春時代をバンドブームとともに送った人も、そうでない人も読むべき。