日々の泡。

popholic diary

2022年8月27日~9月2日の話。

2022/8/27

久しぶりに京阪電車に乗って京都へ。MOVIX行く予定で家出たのだが、映画館のスケジュール諸々チェックして予定変更してアップリンク京都へ。イ・オクソプ監督「なまず」を観る。看護師のユニョンと恋人で無職のソンウォンのゆるーい日常。どこか懐かしい雰囲気と不条理さがまぶされたザ・韓国インディー映画!って感じ。物語は疑問符だらけだし、ひたすらオフビートなんだけど、今注目の若手イ・ジュヨンとク・ギョフンの自然な存在感に見入ってしまう。そして大女優ムン・ソリがいつになく軽く演じていて楽しい。

徒歩移動でMOVIX京都へ。その前に昼食。悩んだ末、気になってた鶏白湯ラーメンの店へ。ま、想像通りの味ではあるが美味しい。

ジョーダン・ピール監督「NOPE」観る。平穏な田舎町、空からの落下物により事故死した父から受け継いだ牧場を営むOJ。一瞬垣間見た空に浮かぶ不審な巨大物。妹のエメラルドとともにその不思議な物体を撮影しようと試みるが…。UFOの夢をたまに見る。それははるか上空というよりは絶妙な高さを飛んでいて、それが見る見る近づいてくる。巨大な飛行物体がわずか数メートル先に今にも衝突する、これはまじでやばいっと逃げ惑う夢だ。まさにその感覚を味わった。スクリーンに映る空が脅威に代わる。スペクタルな映像表現としての面白さがありつつ、差し込まれるチンパンジーの惨劇などその物語はメタファーだらけで目と頭がフル回転。すべての感覚が映画に飲み込まれ、一体何だったんだ?と観終わってからも映画が抜けていかない。面白くて謎めいて後を引く映画体験。凄いものを観た。しかし、こりゃ後で町山さんの解説とかチェックしなきゃ。

京阪電車で大津に戻り夜市の準備中の商店街を抜けて帰宅。夏も終わりだな。

2022/8/28

8時起床。珍しく妻と外食。クーポンがあったので「ブロンコビリー」でステーキランチ。サラダバーで欲張りすぎる。抜けない貧乏性。メガドンキで買い物などして帰宅。

NHKで「まんが道」。無事最終話まで放送された。富山から上京してトキワ荘に辿り着くまでの物語。ぜひ続編となる「青春篇」も再放送してほしい。ここからがまた面白いのだ。

大河「鎌倉殿の13人」くーっ、善児!心に残り続けるキャラクターになった。三谷幸喜梶原善の関係性なども含めグッとくる。

2022/8/29

午後代休で銀行行ったり諸々家の用事。

笹山敬輔ドリフターズとその時代」読了。著者は丁寧にメンバー一人一人の生い立ちからドリフ加入、そしてドリフで果たした役割などを辿っていく。その中でそれぞれの性格やコンプレックス、ルサンチマンなどが炙り出されていくわけだがドリフがいかりやの強い父性のもとで良くも悪くもグループを形成していったのがよくわかる。そしてその父性が軸となりいかりやと志村、二人の関係は奇妙にねじ曲がりつつ深く繋がっていく。絶対君主としてドリフを率いたいかりやに反発しながらも、やがて「父殺し」を果たし、自らが「いかりや化」していく志村。事故で記憶を失った実の父とうまく関係を作れなかったであろう志村が、いかりやと師弟でありながらライバル、そして疑似親子として愛憎入り混じる関係を形成していく。「お前、俺に似てるよな」晩年いかりやが志村に言った言葉である。くーっ!一度でもドリフのコントに笑った人は必読。そして日本演芸史~テレビ史においても貴重かつ重要な一冊。

 

2022/8/30

雨が降りそうで降らない。外回りでひたすら営業車を走らせる。車中で「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」ゲストはのん。性別とか年齢とかを超えた存在感で聴いてて元気になる。「東京ポッド許可局」でここんとこ牛・豚・鶏の中でどれか一つ食べられなくなるとすれば?という話題。これに関してはもう即答で牛を捨てる。まず鶏は絶対外せない。好物の親子丼にから揚げ、鶏のさっぱり煮、チキンカレー、冬場の鍋物には絶対鶏…鶏肉無しは考えられない。豚の汎用性も素晴らしい。最近は焼肉も牛より豚が好き。溶け出す油にカリッと焦げ目をつけた肉。サムギョプサルなんて最高。もちろんとんかつは絶対的エース。お好み焼きは豚玉だし、焼きそばは豚肉を食べるために食べてるようなもんだ。そうなると必然的に牛を切り捨てることになる。牛丼やすき焼きが食えなくなるけど、豚丼や鶏のすき焼きもそれはそれで旨いからなんとかなる。っつーかまじめに仕事しろ、俺。

2022/8/31

テレワーク日。一日部屋にいてPCに向かうのもしんどいな。テレワーク飯はざるそばと昨日の残りの枝豆と塩昆布をご飯に混ぜた枝豆ご飯。美味しい。

Webマガジン「onotano」郷ひろみ特集、ライターの下井草秀さんによる「郷ひろみを知るための厳選オリジナル・アルバム22枚」が素晴らしい。読み物としても面白く、興味を惹かれ郷ひろみのアルバムを順に聴いている。筒美京平先生をはじめとした作家陣の様々な実験を飲み込む郷ひろみの声の強さ。聴いてて楽しい。サブスクについてはいろんな意見があるが、やはり様々な音楽遺産に気軽にアクセスできるってのは単純にうれしい。サブスクがなければ40年前の郷ひろみのアルバムを聞くという行為は相当ハードルが高いだろう。またサブスク時代にあってはこういうレビューが本当に大切だと思う。このちょっとした後押しが聴くという行為に繋がり、新しい扉を開いていく。放り投げられた小石がやがて大きな波紋を生むのだ。

otonanoweb.jp

2022/9/1

9月。プチ鹿島さんが言う通り、9月になったらもう大晦日。ここからが早いのだ。

2022/9/2

今日も一日外回り。radikoで角田龍平さんゲストの「桑原征平 粋も甘いも」聴く。征平さんお素晴らしい話術に感動。とんとんとんと畳みかけ、気持ちよくゲストに話を振る。リスナーを誰一人置いていくことなく、話を引き出し、興味を掻き立てる。角田さんとの見事なラリー、素晴らしかった。

爆笑問題カーボーイ」オープニングでは太田さんが見たNHK柄本明 最後の講義」の話。たっぷり時間を使って語るのだがこれが凄かった。柄本明の話を通して、太田さんの演劇論、漫才も含めた人の前で演じるとは?が熱く深く語られていく。「わからない」ということを「わかる」こと。太田さんは徹底して考え、わかりたいと思っている人で、自分は無知であるという前提に立っている。わかってないのに、わかったようなことは言いたくないのだという強い意志がある。ゆえに様々な批判を浴びることもあるし、僕も時に太田さん何言ってんの?と思うこともある。それでも太田さんを信用しているのは、彼が言葉を、知性を、考えるということを投げていないからだ。

仕事終わりに映画を一本。沖田修一監督「さかなのこ」を観る。さかなクンのエッセイをベースに、さかなクンさかなクンになるまでの物語が描かれる。でさかなクン=ミー坊を演じるのが「のん」。もうこのミラクルなキャスティングだけで最高。映画は沖田監督らしいイリュージョンな演出と、とぼけたユーモアとオフビートな感覚が楽しい。でもポップでキュートというのとは違って、むしろ物語の奥には重く深いものが流れている。この前観た「こちらあみ子」と表裏一体というか、「普通」や「常識」と相いれない生き辛さを笑いに転じて描く無骨さがある。とはいえ大いに笑える映画でもある。ミー坊という異質な存在が巻き起こす愉快なコント的シーンの数々、役者陣の間と表情も素晴らしく声出して笑うシーンがいくつもあった。ミー坊の幼少期を演じる子役の子も素晴らしいのだが、学ランを着て青年期を演じるのんがとにかく見もの。「あまちゃん」以来の当たり役!夢中になってさかなの絵を描く活き活きとした表情、逆にさかな以外の部分での呆けたような表情。こいつ全く話聞いてねーなという絶妙な呆けぶりが最高。「普通ってなに?」と訊く時の屈託がないなんてものじゃない、迷いのないまっすぐさ。性別や年齢を超えた人間としての底知れない存在感。ミー坊とのんが一体化している。あとミー坊のペースに巻き込まれる心優しき不良の総長を演じる信頼と実績の磯村勇人、ミー坊の幼馴染で理解者でもあるヒヨを演じる柳楽優弥も素晴らしかった。柳楽優弥は「浅草キッド」で演じた「たけし」が抜けきってないような感じがあって、でもその「たけし感」がめちゃくちゃいい。

何かを好きになって、夢中になる。その何かがあるってことは本当に幸せなことだと思う。多くの人は社会や生活に押しつぶされてその何かを手放さざるを得なくなる。

好きを好きでいられる世界。それを子供たちに残すのが大人の役目だと思う。

 

今週聴いた音楽は