日々の泡。

popholic diary

2020年7月のTweet

2020/7/2

ホ・ジョンホ監督「ムルゲ王朝の怪物」を観た。16世紀朝鮮王朝時代、その存在が人々の間でささやかれた謎の怪物「ムルゲ」。朝廷にうごめく陰謀とムルゲ騒動を描く時代劇怪獣アクション!ドハデに大暴れするムルゲと陰謀渦巻く人間ドラマ、いやはやお腹いっぱい。安定感抜群のキム・ミョンミン座長のもと、キム・イングォン、パク・ソンウン、イ・ギョンヨンにパク・ヒスンとお馴染みの顔がずらっと並ぶ。さらに「パラサイト」のチェ・ウシク、そしてヘリ!Girl'sDayの愛嬌溢れるマンネ、あのヘリが堂々の女優っぷりで感慨もひとしお。

それにしてもヘリはここ数年のガールズグループ出身者の中では断トツの成功者なのでは。2011年のGirl'sDay「반짝반짝」は強烈だった。K-POPの最終形か!というぐらいの全部載せやりすぎポップチューン「반짝반짝」は結果大ヒットし、その後確実にヒットを飛ばしメジャー感溢れる人気グループに。中でもマンネであるヘリの成長ぶりは目を見張るものがあった。バラエティで見せた最強の愛嬌で一気にお茶の間の人気者に。CMクィーンの異名をとり、バラエティのMCやドラマに進出。「ムルゲ」でも凛々しさとお茶目さを併せ持つヒロインを熱演。ずっと観てきたから父親目線になっちゃうな。

イ・スジン監督「悪の偶像」を観た。ひき逃げ事件の加害者の父と被害者の父。そのぞれの物語が交差しやがて善と悪が混沌とする濁流に飲み込まれていく。それぞれの物語だけでも十分一本の映画になるところをさらに強烈過ぎる被害者の妻という第三の物語までが合流。とにかく濃厚なこってり具合。しかしその濃厚さが癖になるのが韓国映画ハン・ソッキュソル・ギョングという90年代から韓国映画を支えてきた名優二人の共演。そして中盤から登場し二人を凌駕する怪演をみせるのがチョン・ウヒ!「サニー」以来お気に入りの女優さんだけど、スゲーことになってたなぁ。

2020/7/4

イ・ゲビョク監督「がんばれ!チョルス」を観た。チョルスはマッチョでイケメン、しかし頭脳は幼いまま。ある日出会った難病を抱えた少女セッピョルが自分の娘だと聞かされたチョルス。何もかもかみ合わない二人の珍道中が始まるってな話。これが見事に笑って泣ける王道コメディ。心温まるいい映画!主演はイケメン俳優チャ・スンウォン。やりすぎな顔芸ととぼけた演技で大いに笑わせてくれるのだが、チョルスに隠された過去にそのイケメンぶりが活かされる。しっかり笑わせ、しっかり泣かせる韓国新喜劇。その思い切りの良さが心地いい。

2020/7/5

録画していた坂元裕二さん脚本「スイッチ」観た。面白かったなー。それと野木亜紀子さん脚本の「MIU404」2話も良かった。でどちらも「今」を映している。丁寧に考えて、今語るべきことをエンタメとして面白く見せている。素晴らしいことだ。

2020/7/9

空気公団の窪田渡氏の初ソロAL「霞んだ昨日、雫の中の明日」。素晴らしい!グッドメロディと朴訥としたヴォーカル、最高レベルのアレンジセンス。

2020/7/12

オム・ユナ監督「マルモイ ことばあつめ」を観た。時は1940年代日本統治下の朝鮮。朝鮮語の辞書作りに命をかけて奔走する人々を描く。言葉を奪われ、名前を奪われ、文化が踏みにじられていく中で必死に言葉を守ろうとした人々の姿が胸を打つ。読み書きすらできずスリで生計を立てるダメ男が主人公。ひょんなことから辞書作りに関わり、やがて「自分達の言葉」の大切さを知り、目覚めていく。オム・ユナ監督はあの「タクシー運転手」の脚本家。「タクシー運転手」同様、市井の人々が歴史の中で目覚め、自分たちのやり方で戦う物語。史実を基にしつつスリルあふれるサスペンスフルなフィクションを絡めエンタメとして魅せる。方言を集め辞書を作る。それがここまで手に汗握り、最後に涙する作品になるとは。主人公パンスを演じるのはユ・ヘジン。頭より身体が動いてしまう憎めないお調子者役はまさにユ・ヘジンの真骨頂。インテリの朝鮮語学会代表を演じるのはユン・ゲサン。最初は対立しながらも徐々に友情を深めていく二人。素晴らしかった。

2020/7/13

トレイ・エドワード・シュルツ監督「WAVES」を観た。レスリング部のエリート選手タイラーは恵まれた家庭に美しい恋人、何不自由ない生活を送っている。だが厳格な父親との軋轢、そのちょっとした綻びから大きな悲劇を生む。とここまでが前半。後半は妹エミリーが主人公となり再生の物語が始まる。傑作。色彩、音楽、そして画面のサイズ。主人公たちの心の動きが映画全体を使って描かれる。なんて繊細で美しい映画なのか。ちょっとしたことで真っ逆さまに落ちていくタイラー。自らを責めながらやがてまた立ち上がろうとするエミリー。忘れがたき映画、忘れがたき人々。エミリーを演じたテイラー・ラッセルが本当に素晴らしかった。彼女のことをずっとずっと観ていたいと思った。

2020/7/18

朝一で京都みなみ会館へ。キム・ボラ監督「はちどり」を観た。1994年、ソウル。14歳のウニが過ごす日々を描く。家と学校、自分を中心にした半径1kmの世界。この理不尽で窮屈な世界のことは世代も性別も国も違うけど僕もよく知っている。14歳だったことがあるから。カメラは揺れ動くウニの心に寄り添い、彼女が観る世界を映す。少し風変りな塾の女性教師と出会い、彼女は自分自身の痛みの意味を知る。そして父や母、兄、姉、友人など自分以外の人にもまた世界があり痛みがあることを知るのだ。14歳の長くて短い時間の中で、誰かと出会い、小さな事件をいくつも体験し、ウニは成長していく。半径1kmの世界、理不尽で窮屈な世界の外に、本当の世界があること知る。ラストシーンのウニの表情、眼差し。彼女は成長し、世界の見え方が変わっているということがはっきりとわかる。キム・ボラ監督、これが長編一作目!主人公に寄り添いながら、主人公以外の人々にもまた世界があるということがちょっとしたシーンでわかり、主人公がそこに触れ、心が動いていく様が見える。素晴らしい演出。ラストシーンの力強い美しさ。2作目、3作目が既に楽しみ。左利きのウニと左利きの女性教師ヨンジ。トランポリンで跳ねる姿と気持ちを持てあまし家の中でドスンドスンと跳ねようとする姿。小さなシーンを丁寧に積み重ね、主人公の世界が揺れながら拡がっていく様を見せる。噂にたがわぬ傑作。キム・ボラ監督恐るべし。

映画「はちどり」を観て、自分が14歳だった頃にいた世界のことを想う。理不尽で窮屈で居場所がなくて居心地悪かった。本屋とレコード屋、そしてラジオが僕にとってのヨンジ先生だった。ビートたけしが、鈴木慶一が、みうらじゅんが、つかこうへいが、大林宣彦が、他にも世界があることを教えてくれた。

2020/7/19

行定勲監督「劇場」を観た。才能に憑りつかれた男とその男に出会ったことで壊れていく女の物語。主演俳優は素晴らしいし、多くの人を魅了する映画だと思う。でも今の自分からするとあまりに“うっとり”が過ぎた。20年前ならまた見え方が違っただろう。

最近は「はちどり」キム・ボラ監督や「ストーリーオブマイライフ」G.ガーウィグ監督、日本だと「MIU404」の野木さんや「スカーレット」の水橋さんなどが描く現在社会とリンクしつつ心の深層に届く骨太かつ鮮やかな物語に痺れていることもあって、男目線のうっとりドラマに正直ノれなくなっている

2020/7/22

リー・ワネル監督「透明人間」を観た。ストーカー気質で束縛がきつい夫から逃げ、怯え暮らすセシリアのもとに夫が自殺したとの知らせが。しかしその日から彼女の周りでは不可解な出来事が。「見えない恐怖」が彼女を襲う-。いやーこれは面白かった!半端ない緊迫感からの逆襲劇。映画面白い!

2020/7/23

角田さんの「蛤御門のヘン」聴いていたら、映画「はちどり」の話の中で不意に自分の名前が出てびっくり。ありがとうございます。同じく連盟賞獲れなかった者として光栄です。そして寺井先生の話にグッときた。

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イ・ウォンテ監督「悪人伝」を観た。もしも連続無差別殺人鬼が襲った相手がマ・ドンソクだったら!はみ出し刑事(武井壮似)と極悪やくざ(マ・ドンソク兄貴)がお互いのやり方で連続殺人鬼(和牛・川西似)を追う面白すぎる韓国ノワール!三つ巴の頭脳&肉弾戦。おもろい話を考えるもんだなー。ひねりの効いたアイデアから怒涛のアクション。刑事とやくざがそれぞれの理屈と正義で出し抜き出し抜かれ、無差別にも程がある殺人犯捜しのデッドヒートを繰り広げる。そしてお互いにちゃんと決着つけちゃう思わずニヤリとするラスト。マ・ドンソク兄貴、最高ですやん!

2020/7/24

「えみちゃんねる」騒動。理由は知らんが、営業からしたらゾッとする話だな。どれだけ関係各所に頭下げに回らなあかんかと…。

ドラマ「MIU404」今回もド骨太な物語。真正面から"人権"やってる。

2020/7/25

南海放送杉作J太郎さんの「どっきりナイトS」なっちゃん卒業SP。寂しくなるなー。でラストにトラブル!からのグダグダ!どっきりナイトらしくてそれもまた良い。これも含めていい放送。なっちゃんの笑い声がまた素晴らしい

2020/7/26

出町座にて土田英生監督「それぞれ、たまゆら」を観た。ある日突然世界中の人々が眠り始める。静かに訪れた人類の最期。劇的とは程遠い最期の瞬間を過ごす人々を描く群像劇。劇団「MONO」の持ち味である会話の面白さが活かされつつ行間を映像が補完し、しっかり映画になっていた。面白かった。MONOのメンバーも総出演。水沼さんと奥村さんのシーンはまさにMONOのリズムで嬉しくなる。もちろん映画はMONOファンじゃなくとも十分楽しめる。意外に海外でもうけるんじゃないかな。上映後のアフタートークにも参加。土田さんの話はやはり面白い。結局、雑談こそが最大のエンタメなんだなと思う。