日々の泡。

popholic diary

2020年2月のTweet

2020/2/9

イ・ハン監督「無垢なる証人」を観た。情熱を失い人生に少々疲れ気味の弁護士スノ。担当する殺人事件で検察側の証人として立つのは唯一の目撃者である自閉症の少女ジウだった。少女との出会いで自分自身を見つめることになるスノ。捻りのある法廷劇であり、ゆっくりと心が温まるヒューマンドラマ。自閉症の少女との交流なんてストーリーだし感動に逃げると一気に胡散臭くなってしまうのだが、チョン・ウソンの誠実さが滲み出る演技がそこを抑えていた。そしてキム・ヒョンギの嫌みにならない名演技がとにかく素晴らしい。

シネマート心斎橋ポン・ジュノ監督、2003年作「殺人の追憶」を。随分前にDVDで観て以来、スクリーンでは初。改めて観て、ケレン味溢れる実に映画的な面白さが詰まった傑作だと再認識。観客を驚かし映画に惹きつけ引きずり込むを徹底的にやってる。最後はしっかりソン・ガンホの顔が頭に残る。

2020/2/10

「パラサイト」アカデミー賞受賞素晴らしい!ここ数年、韓国映画を観れば観るほどその面白さに魅入られ虜になってきた。いやーほんとステージに並ぶポン・ジュノ監督、ソン・ガンホ兄貴をはじめとするキャストの皆さんを観て心底感激したなー、いや、まじ、泣けたっす。

2020/2/16

昨日はMONO公演「その鉄塔に男たちはいるという+」へ。20年前の作品に新メンバーによる前日譚的短編を加えるという30年を迎えた劇団だからこそできる構成。20年で社会が作品に近づき、物語の核となる“想い”がより強く響いた。個と集団、分断の果ての悲劇、ポップカルチャーの存在意義など想いが巡る。

深田晃司監督「よこがお」を観た。去年見損ねていたのだが先日配信で観た「淵に立つ」があまりに面白かったこともあり、ちょうど京都シネマでかかったので観に行く。静かに様々な横顔を魅せる筒井真理子劇場。闇の瀬戸際、その危うい淵に立つ主人公、これもまた凄みのある作品だった。

2020/2/17

ピーター・ジャクソン監督「彼らは生きていた」を観た。第一次世界大戦のドキュメンタリーフィルムが現在の技術で色鮮やかに生まれ変わる。生々しくリアルな映像はまさにそこに彼らが生きていたということを饒舌に物語る。戦場の悲惨さを、戦争の無意味さを、無情にも炙り出す。

ずっと本屋が好きだった。学校帰り、会社帰り、出張先、ちょっと時間があると本屋に行っていた。今住んでいる街にはもう本屋は無くなってしまった。正確に言うと一軒あるんだけどこれがもう本に愛情を感じない品ぞろえで足が遠のいてしまった。

2020/2/22

朝から出町座へ。片渕須直監督「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」をやっと観た。確かにこれは単なるロングバージョンではない。まさに「さらにいくつもの」物語が幾重にも重なり、彼女、彼ら、そこに生きていた全ての人々の息遣いをより感じられた。すずさんとリンさんの人生が互いに交差し重なっていくように、それぞれの世界が様々に形を変え、動き、影響しあい、新たな世界を作り上げていく。戦争という圧倒的な暴力が世界を分断しようとするけれど、人々の「暮らし」が静かに強くそれに抵抗する

2020/2/23

ミスター老害!もう「森喜朗のひとりオリンピック~ピンチをチャンスに!」でいいと思う。真夏の炎天下に森喜朗が一人でフルマラソンに挑む!東京湾で溺れかける喜朗!とか観たいな~。最終的に「森ちゃんは死なへんでぇ~」と絶叫。国民はクーラーの効いた部屋で爆笑しながらテレビ観戦!

2020/2/24

久々のライブは「青山陽一 the BM's@ムジカジャポニカ」。まーとにかくスゲーわ。穏やかな見た目とは相反して、最強かつ最凶とんでもない音のモンスターぶり。凶暴な演奏にざっくり喉元をやられた。このバンドに映画のサントラとかやって欲しい。探偵もののドラマの劇伴とか絶対合うと思うな。

カン・ヒョンチョル監督「スウィング・キッズ」を観た。1951年、朝鮮戦争時下の捕虜収容所。対外的なイメージ作りの為に元タップダンサーの黒人下士官のもと戦争捕虜によるダンスチームが結成されることに。ダンス映画でありながら、悲劇が重くのしかかる反戦映画でもある。また凄い作品が生まれた!心躍る音楽と圧倒的なまでのダンスシーン。寄せ集めのダンスチームがイデオロギーを越えて一体になる。「サニー」の監督だけあってユーモアもたっぷりなのだが、それゆえに戦争の愚かしさ、不条理さが痛々しく胸に刺さる。分断される世界、剥き出しの差別、今の時代に響く。主人公を演じるのはトップアイドルであり演技派、信頼と実績のD.O.(EXO)。彼の類まれな身体性がまさに映画をスウィングさせる。そしてダンスチームの紅一点、パク・ヘスも素晴らしかった。パワフルな歌とダンス、そしてドロップキック!

2020/2/25

サム・メンデス監督「1917 命をかけた伝令」を観た。第一次世界大戦のさなか前線にいる部隊に作戦中止の命令を届ける二人の兵士。ただ二人を追うだけの映画なのに(だから)ずっとクライマックスシーンが続く。この前「彼らは生きていた」を観たとこだったので現実はもっと悲惨だったんだよなと思う。しかし僕なら最初の5分で心折れ、20分で死んでただろう。雨が靴に沁みて足先がちょっとグチュグチュになるだけで本当に嫌な気持ちになる。そんな俺には到底無理だ。でもやっぱり戦争ってバカがやることだと思う。

2020/2/28

HIKARI監督「37セカンズ」を観た。生まれた時に37秒息をしていなかったことで障害を抱えるユマ。過保護な母、自分を利用する友達、閉じられた世界から抜け出そうとする彼女の姿を描く。障害者の日常を逃げずに描くことで、誰もが自分自身の物語であると感じられるその先に到達する。観るべき映画!主人公を演じるのはオーディションで選ばれた佳山明さん。彼女自身、脳性麻痺で障害を持つ。彼女の表情、声、身体の動きが様々な"壁"を壊していく。観ている側が勝手に作ってしまっていた壁をも容赦なく壊してくれる。