日々の泡。

popholic diary

2014年2月中旬のTweet

2014/2/11

本日も休日出勤でお仕事。で通勤中に聴いてるのがムーンライダーズ「Live at FM TOKYO HALL 1986.6.16」。まさにムーンライダーズに完全にはまった時期のもの。メンバー30代、キレッキレの演奏。15歳だった僕にはもうとんでもなくかっこいい大人たちだった。86年は今まさにバンドブームを迎えようという時期だった。多くの若いバンドは見た目こそちょっと過激だったが音楽的には実に品行方正でちっともロックには感じられなかった。30過ぎた中年バンド・ムーンライダーズの音を聞いた15歳の僕はその過激で狂った音楽にとてつもなくロックを感じたんだ。とかイロイロ思い出しながら、ムーンライダーズを聴いてる。なけなしの小遣いでムーンライダーズを選んでレコードを買った中学生の俺にすれ違ったなら「なかなかいいセンスしてるよ」と言ってやりたい。当時は誰とも音楽の話できなかったからなー。

2014/2/15

今日は朝からイベント仕事。終了後、京都まで出て映画を一本。イ・ファンギョン監督「7番房の奇跡」観てきた。泣いてまうやろー!と叫びたくなる催涙爆弾映画。ある種あざとい涙のファンタジーなんだが、あらゆるマイナス点を帳消しにする我らがリュ・スンリョンの超絶的名演に1万点!「殺人犯に仕立て上げられる知的障害者」という役。一見セオリー通りの大味でベタな演技に見せかけて、場面場面で緻密に考えられた表情、仕草、声の出し方etcでこの設定にリアリティを持たせるリュ・スンリョンに脱帽。「高地戦」の冷酷な北の将校と同じ人だとは思えん。オ・ダルスをはじめとした塀の中の住人を演じる韓国の悪役商会名脇役陣がまた素晴らしい。泣かす為だけの映画は嫌いだけど、俳優たちの高い演技力と脚本構成の妙で、それだけに終わらない映画になってた。

2014/2/16

休日。朝から映画館へ。黒木華受賞記念ということで山田洋次監督「小さいおうち」観てきた。まず一言。素晴らしかった!物語の中に込められた監督の強い意志や想い。戦争を知っている世代の責任として、この時代にこの映画を撮った山田洋次監督に敬意を表したい。昭和初期、東京郊外のモダンな「小さなおうち」。女中・タキが知ったある家族の秘密。物語は「小さなおうち」での出来事を丁寧に描くのだが、それと同時に戦争へと向かっていく時代の空気、その不穏な空気をさりげなくでもしっかりと浮き上がらせるのだ。映画の中に出てくる赤い屋根のモダンな家、おもちゃ、音楽や絵画、おいしい料理、そして恋愛。「優しい言葉で、勇ましいことを言う奴がのさばる、嫌な時代」には全てが要らないものとして黒く塗られる。映画は声高に戦争反対を叫ぶものではない。でもはっきりと伝わってきた。女中・タキを演じる黒木華の繊細な受けの芝居も良かったが、僕は何と言っても松たか子にぶっとんだな。気品のある艶っぽさ、心の奥の秘めたる思いと情熱、素晴らしかった。いや素晴らしすぎた。巧いなんてもんじゃなくて、もう圧巻でしたわ。

で昼挟んでもう一本。デヴィット・O・ラッセル監督「アメリカン・ハッスル」観てきた。ハッスル=詐欺。汚職政治家を捕らえる為にFBIが行った「おとり捜査」。捜査に協力したのは天才詐欺師だった。という実話をもとにした映画。70年代の名曲使いも最高な傑作だった!騙し騙され生きるのさ、ということで全く気の抜けない150分。1・9分けのデブに扮したクリスチャン・ベイルに、胸元開きすぎのエイミー・アダムス、パンチパーマのブラッドリー・クーパーに、口うるさいおばはんのジェニファー・ローレンス。いやもう眼福な演技合戦。俳優たちがハッスルするハッスルぶり、そこに70年代の「いい音」の音楽がバチッとはまる。「かっこいいアメリカ」の匂いが沸き立つ面白さだったなー。映画って楽しいなーと思える映画だな。それにしてもジェニファー・ローレンス!まだ若いのに、しっかりおばはんに見えるのが凄い。またまた大好きになっちゃったな。

リュ・スンリョン、松たか子ジェニファー・ローレンスが共演する映画とか見て観たいなー。監督はポン・ジュノで。

「ジャパニーズ・ハッスル」こと佐村河内の物語もいずれ映画にしたら面白そう。っつーかコントか、これ。

2014/2/19

ここんとこ休日出勤が続いてたので今日は代休。夜更かしして朝はゆっくり寝とこうと思いつつ、「ごちそうさん」観たくて8時には起きる。結果、寝不足。

で今日は(も)映画。チャン・ロンジー監督「光にふれる」観てきた。盲目のピアニスト、ホアン・ユィシアンの物語を本人の主演で描く。「感動作」なんて言葉では決して片付けて欲しくない、小さくも心に光が灯るような、素晴らしい青春映画だった。傑作!盲目であることはひとつの要素だけども、それだけをことさら強調するものではない。仲間との出会いや外の世界に身を投じることで、新しい扉が開き、世界が広がっていく。という誰もが共感できる普遍的な青春の物語になっていて、とても清々しい気持ちにさせてくれる映画だった。自らの人生を演じるユィシアンさんは、朴訥とした中に優しい人柄と物事に対する真摯な視線を感じさせてくれる。ピアノを弾く時の身体中が楽器になるような強い身体性が説得力を高めていた。ユィシアンに背中を押されるダンサーを夢見る少女、サンドリーナ・ピンナさんも素晴らしかった。

続けてダニス・タノヴィッチ監督「鉄くず拾いの物語」観る。ボスニア・ヘルツェゴヴィナに暮らすロマ一家。妊娠中の妻が腹痛を訴え、病院にいくも保険証もなく、鉄くず拾いで生計を立てている二人には手術代を払うすべがない。手術を拒否され途方に暮れる貧困の中にある一家の姿が淡々と映し出される。寒々としたボスニアの風景と貧困が容赦なく二人に襲いかかる。懸命に生きながらも抜け出せない貧困の連鎖。このシビアな物語は現実で、実際にあった事件をその当事者である一家が演じるという限りなくドキュメンタリーに近いドラマなのだ。決して明るい映画ではないが、支え合う家族の姿には小さな希望がある。で、この映画に出演し自身を演じた一家の長、ナジフはなんとこの作品でベルリン映画祭で主演男優賞を受賞!保険証と定職を手に入れると言うんだから面白い。