日々の泡。

popholic diary

悲しい歌

午前4時。ふいに目が覚める。なんとなくトイレに行き、布団に戻ってぼんやり天井を眺める。去年の今頃にはもうチビがいた。布団の中に潜り込んできて、僕の腕を枕にしてスースー寝息をたててた。人たらしの猫。そんなことを考えてたらまた眠れなくなる。チビがいなくなってから、夜寝る時もリビングのカーテンは半分開いたまま。いつ窓の向こうにチビが帰ってきても見つけられるように。
猫なんて好きじゃなかった。今ではすっかり家猫のクロはもともと野良猫で、最初はずっと家に入れることを拒否していた。妻と娘に押し切られて渋々家に入れた。クロは思慮深い猫だから、布団の上に乗っかってる時はあっても、布団の中に入ってくることはない。大好物の煮干しをねだる時も餌皿の前にちょこんと座って、何も言わずにじーっと僕を見つめるだけ。まん丸の目でじーっとずーっと見つめてくる。煮干しをやってもすぐにがっつかず、一拍置いて食べ始める。頭だけは残して食べる。こいつは思慮深い猫。
ある日娘と友達が段ボールに捨てられていた子猫を拾ってきた。4匹の子猫。3匹の引き取り手はすぐに見つかって数日後には貰われていった。最後に残った、一番元気がなかった猫。クロも居るし、もう一匹なんかとんでもない。と言っていたのは僕。なかなか引き取り手の見つからないまま数日。ミャアミャアと鳴くその小さな猫は日に日に元気になりやんちゃになっていった。ピョンとジャンプして膝の上に飛び乗っては僕の身体をよじ登る。いつのまにかチビと呼ぶようになった。隙があるとすぐ膝の上に乗ってきて、顎をペロペロなめて、丸くなって眠る。気づいたらチビに会いたくて急いで家に帰っている自分がいた。こいつは人たらしの猫。
猫なんて好きじゃなかった。今でも多分そうだ。でもクロとチビは家族だ。僕はこの家のお父さんだから、やっぱり家族を愛している。失くした1ピースを埋めることは難しい。あぁ、寂しいなぁ。