日々の泡。

popholic diary

Are You Ready for Flying?

休日。娘はばあちゃんのとこに泊まりに行ってる。妻はバイト。でやっと俺の夏休みだ。カーネーションのTシャツにお気に入りのスニーカー。冷やしたお茶と文庫本を鞄に入れて、i-podをお供に朝からお出かけ。兵庫県立美術館まで「冒険王・横尾忠則」観に行く。
ずっと楽しみにしてた。駅降りて美術館が見えてきたらもうちょっとソワソワして早足になる。横尾さんの絵はやっぱりワクワク感があるな。
ひんやりとした大きな美術館。足を踏み入れるとそこには「Y字路」が。
03年の「横尾 by ヨコオ」展で初めて出会った「Y字路」シリーズ。ちょうど転職の為の面接を受けていた時期で、まさに僕もY字路にいた。Y字路の風景は静かに僕を見つめていた。そして08年のY字路。ゾワゾワと胸騒ぎをおこさせるような「冒険」を感じさせるY字路はもはや見つめているだけではない。Y字路はスタート地点。その先には冒険が待ってる。
さらに進むと、大好きな「星の子」という作品。11年前に観た「私への帰還」展で出会った絵。赤が塗りこまれたキャンバスにすべての感情が渦巻いていて、初めて見た時は絵の前から動けなくなった。この「私への帰還」展は自分にとってとても大きなもので、こうして文章を書いて(小さいながらも)発表する-という行為の直接的なきっかけでもある。書くことが僕にとっての「私への帰還」だったのだ。濃厚な死の匂いが立ち込める「赤」のシリーズはそれゆえに圧倒的な「生」を感じさせる。「赤」はY字路や少年探偵など様々なモチーフを飲みこみ、時にはユーモアさえも感じさせ「冒険」をより危険で猥雑-つまりは「生」そのものに仕立てていくのだ。うーたまらんなぁ。
そして一気に60年〜70年代に。デザイナー時代の様々な原画、アイデアスケッチが大量に展示。そのあまりに緻密で繊細な手仕事にただもう圧倒された。超一流の職人、仕事師としての横尾さんの完璧な仕事ぶりにクラクラした。特に和田誠氏との奇跡的なコラボ「ヨーロッパ観光ポスター集」原画には釘付け。完璧な構成、究極のデザイン、若き二人の才能と息遣いに大感激!
さらにデザインセンスとユーモアセンスが炸裂するコラージュ作品、自らの作品やルソーの絵画をモチーフに毒気にあふれたナンセンスなコントを見せるような作品。
そして「温泉」シリーズに突入。過去の作品がもう全部ミックスされて、さらに新たなイメージを生む。「人工庭園」シリーズの突き抜け方!11年前の「星の子」は静寂の中に全ての感情が渦巻いていたが、ここにはそれすら笑い飛ばすような突き抜けた感覚があふれてる。全部の感情、全部の現象、夢も現実も死も生も性も聖も俗でさえもが呑気に共存してる。
疲れたとか言ってる場合じゃないな。私への帰還の先、Y字路の向こう、冒険は続く。危険で猥雑で、でもワクワクするような。なんかもの凄くパワーもらったな。