日々の泡。

popholic diary

灰になるまで

はい、そんな訳で昨日のライブ話。ついにあの噂のバンド、タマコウォルズが京都初上陸!京都西村会の面々も熱望していたタマコ、いつもながら西村さんには足向けて寝れないっす。
6時過ぎに拾得に辿り着くと既にお客さんが結構入っててちょっとホッとする。今日は東京からの遠征組も多いよう。タマコヘッズの皆さんですな。ステージ上に詰め詰めにのっかった楽器を眺めながら、期待に胸膨らませ漬物ピラフで腹膨らませる。
トイレに駆け込む西村さんの姿を確認したら、いよいよ開演だ。まずは西村さん弾き語り、清涼感溢れる(と本人・談)。軽快なストロークを刻む一曲目は「Poor Boy」(後で西村さんに曲名聞く)。弾き語りではむき出しの名曲が並ぶ。カラフルなメロディはブリティッシュな印象。でもその味わいはアメリカの短編小説を読むよう。歌の向こう側に、ちょっとビターで、乾いたユーモアを持った物語が見える。ライブの度に大絶賛してるド名曲「lost Sunday」なんてまるで映画だ。日曜の穏やかな日差しの中、溶けていく酔いどれ男の唄。こういう曲を聴くと、西村さんのソングライターとしての類まれなる才能に唸ってしまう。グランドファーザーズ時代からギタリストとして定評のある西村さんだが、ソロになってからはその隠されていた作家性がグンと表に出てそれは嬉しい発見だった。さっきも書いたようにメロディのカラフルさ、一曲の中においしいメロディがこれでもかと詰まっている。この量と質を保ってるのは凄い。そして詞。たとえば「ひまわり」の「君のママには/内緒にしておけよ/二人がかって少し/いがみ合っていたことを」なんていうフレーズを聴くと軽く目眩がしてしまう。僕はこのフレーズ、鈴木博文作詞「Don't trust anyone over 30」の「昨日の朝/トーストを食べて/子供に言った/パパは帰らないよ」に匹敵する真にロックな名フレーズだと思う。となんだか西村哲也論になってしまいましたが。
で続いてはついにタマコウォルズ登場。拾得のステージに6人が並ぶ図は壮観。いやが上にも期待が高まる。で、音が鳴る。既にCDでは聴きこんでいたが、もう音の迫力が違う。拾得との相性が恐ろしいぐらいにいい。フロントマン西池さんは、前に出るというより音を束ねるコンダクターのよう。そして鳥羽さんのギター!これには参った。なんたるコクとキレ。指弾きのスタイルがめちゃめちゃかっこいい。先頭を切って暴れたかと思うと、ぐっと下がって音の土台を支える。またカッティングにしろスライドにしろ音の存在感が凄いんだ。弾きまくる鳥羽修!とキャプションをつけたい。そしてショートカットの中原由貴さんのドラムがまたかっこいい!なんつーか砂埃が舞うような、風が吹くような、ドラム。僕は彼女のドラムを聴くとヴィム・ヴェンダース監督の「パリ、テキサス」を思い出す。そういうイメージ。高橋結子さんパーカスとの見事なコンビネーション。このコンビを擁してるって時点でタマコ最強でしょ。MC抜きで一気にライブが進む。体がガンガン揺れる。最高で最強のジャムバンド。あの時間の拾得は多分世界で一番ご機嫌で幸福な空間だった。音楽で世界変わるかもしれないってまじ思ったもん。こりゃみんな遠征してくるのわかる。これ一回味わったら抜けられない。タマコヘッズになっちゃうわけだ。
そしてこのタマコに西村さんが加わる。もはや落語の域に達しつつある西村さんのMCを挟みつつ、これまたとんでもない音が展開する。西村さんの京都バンド、CROCKWORK PORK PIE HATSはバンドの洗練されたグルーヴの中、西村さんのギターがどんどん加速をつけてグルーヴィーに狂ってくるって感じだが、バンドが変われば音も変わる。普段は中盤に据えられるメロウなナンバーがタマコの音でワイルドなサザンロックと化す。音の洪水。ハリケーン。西村さんのヴォーカルもよりブルージーで色っぽい。3本のエレキギターはそれぞれの音で拾得を塗りつぶす。ラスト「砂のコリン」。奇跡的な瞬間。バンドと観客が一緒にイク感じ。一緒にイクってなかなか難しいんだよってことは大人の皆さんならわかるはず。それが今晩のライブでは起こったのだ。つまりは最高だってこと。時間の関係もありアンコールはなかったけど、十分でしょ。
ライブ後はライブの余韻に浸りながら西村会の面々と一杯。「今日は頑張ったよ〜」という西村さんにいろいろ話してもらったり、タマコメンの皆さんと乾杯させてもらったりと拾得ならではのお楽しみ。メトロトロンっ子だった自分としては西村さん、鳥羽さんと同じテーブルにいるということ自体、夢のよう。帰りには来られていた加藤千晶さんにも挨拶できてメトロトロンファン冥利に尽きる一日だったなー。それにしてもタマコウォルズ、噂以上のとんでもないバンドだった。チケット代一万二千円になってもいいから関西でまたやって欲しい!