日々の泡。

popholic diary

2003年7月の話。

2003/7/1~31

7月。なんか毎日、雨ばかりという感じ。

で休日。早起きして家族でユニバーサルスタジオジャパンに。大津から電車で約1時間。案外近いな。で開園と同時になだれ込む人の群れにまぎれ初USJ体験。早速「セサミストリート」に行くがいきなり80分待ち。さすがにキツイなぁ。でもってやっと中に入るとこれがちゃんとおもしろくて並んだかいがあったと思っちゃう。ディズニーランドもいったことがないテーマパーク童貞といわれる私にはこの豪勢で楽しげな世界はただただ驚きだったりする。妻と娘はスヌーピータウンがお目当てで、スヌーピーと写真とったりして大喜び。怖がりの娘はあまりハードなアトラクションはイヤということでアニマルショーとかアニメスタジオとか子供向け中心にのんびり回る。やっぱこういうところはうまく作ってあるというか、楽しいねぇ。

そんなことを思いながら、ここを舞台に「たけしのお笑いウルトラクイズ」とかやったらおもろいかもと妄想。ジュラシックパークザライド、ボートに乗り込むたけし軍団ダチョウ倶楽部の面々。洞窟の中からボートが出てくるとなぜか全員全裸。そのままボートは水面に急降下。頭から水浸しになった全裸の「井手らっきょ」をハリセンで叩くたけし、なんてなかなかいい画ですな。バックドラフトでこれまた全裸の「上島竜平」が涙目で「聞いてないよ!」とか、ETよろしく自転車ごと吊るされる「ダンカン」とか・・。

で、USJさすがアメリカ。こうなりゃ日本も負けじと映画会社協力してテーマパーク作ったらどうだろう。東宝・松竹・東映、それぞれの特色を活かしたアトラクションで。まずは東宝。これはもうゴジラっしょ。「ゴジラ・ザ・ライド」なんてのはありえるでしょ。松竹はまずは寅さんっすね。「葛飾柴又ゾーン」にはだんごやをはじめとしたファーストフード店が並び、テキ屋スタイルでポップコーンやバナナが売られる。キャラグッズも充実。寅さんはじめ、さくらに満男、おいちゃん、おばちゃんに博、タコ社長、源公まで多彩なキャラのグッズがバカ売れ。そして「釣りバカ」も忘れちゃいけない。「ウォーターワールド」なんか目じゃない「釣りバカワールド」が炸裂。鯛やヒラメが飛び出し、水しぶきがかかる「ハマちゃん、スーさんの4Dマジック」。「釣り舟」をデザインしたジェットコースターに乗り込み日本海・瀬戸内海・太平洋を走りぬけ水面に突っ込み、ザバーっと水を浴びる爽快なアトラクション。入口には水濡れ防止に麦わら帽にライフジャケットも販売。で肝は「東映」。戦後の広島をイメージした「仁義なきゾーン」では連日行われるアトラクションが凄い。いきなりなり響く銃声。観客の間をいかつい男達が血まみれになって撃ちあう。お客さんは手持ちのビデオカメラでその姿をぜひ追いかけていただきたい。また東映は子供たちよりむしろお父さんをターゲットに。山城新吾をイメージキャラにした「××(チョメチョメ)ゾーン」は「呑む・打つ・買う」を大々的に取り上げたまさに大人の為のアトラクションが目白押し。なんていうテーマパークは・・無いだろうな。

日曜お昼のゆるーい吉本特番。仁鶴師匠、カウス・ボタン師匠、小枝&中川家が長崎旅。みんなでゲームの末、負けたボタン師匠が罰としてみなに昼食を奢ることに。高級中華料理店に入った一行。高級フカヒレなどなど高額料理をオーダーする面々。最後にボタン師匠が放った一言「僕、白ごはんに塩」。そのタイミングとくだらなさに爆笑。

ダウンタウンDX」にて。ゲストの北村総一郎氏がドラマ「教師びんびん物語」撮影時のおもしろエピソードとして「トシちゃんがカメラに写らないところで突然パンツを脱いだ」という話を披露中。すかさず関根勤氏「『びんびん物語』でしたか?」と一言。「いや、それは・・」という北村氏にさらに関根が一言「『哀愁でいと』ぐらいでしたか」。そのタイミングとくだらなさに爆笑。

7月10日。地元滋賀の某企業から「書類選考合格」の通知。6月の終わりにたまたま社員募集を行っていることを知り、考えるところあり思い切って応募していたのだ。サラリーマンになって10年。ちょうど仕事も一区切りついたところ。このまま今の会社にいることも出来なくはないが、ホントに居たいのか?最初の10年はただ与えられた仕事を懸命にこなしてきた。さてこの先10年どーなのよ?と自問自答するも迷走。そんな時に聞いた社員募集告知。営業経験者で25~35歳までという条件にはピッタリはまる。地元滋賀で僕の好きなポップカルチャーとも接点のある会社。受かる受からないはともかく、アクションを起こさないと後悔するかも・・と〆切り2日前に「自己PR」「職務経歴書」「履歴書」書き上げ、速達で応募。運命に身をゆだねることにする。でまずは第一関門突破。この先どうなりますことやら。

土曜、ひさびさに大阪出社。いろいろ会議やらなにやらで気が重い。なんとなくまっすぐ帰りたくないなぁとタワーレコードうろうろ。ケラリーノサンドロビッチ演出の舞台「ドンとトラストオーバー30」の鈴木慶一によるサントラ、小西康陽参加の「ソバアンビエント」購入。で何気に店内見たら見覚えのある男が一人。クレイジーケンバンドのCDを手になにやら思案中の男は、大学時代からの友人Kではないか。そういや前に一度、タワレコでKと偶然合ったことがあったな。そう99年の5月。でちょうど今から大学時代の後輩で今はKの義兄でもあるY君と京都で呑む予定とのことで、いっしょに付いて行くことに。Y君は大津在中ということもあり、どうせなら大津で呑もうよとKを大津まで逆に連れていき、地元大津で一杯。軽く一杯が結局5時間近く呑むことに。久々の呑みで地元という安心感からついついいい気持ちになるまで呑む。なんか楽しかったけど、何話したかは覚えてないや。

オリジナルラブの新譜「踊る太陽」が素晴らしくいい。一人になってからのオリジナルラヴ作品としてはダントツ。男のエロティシズム、ロマン。かっこいい!田島貴男の新境地、矢野顕子の美しく力強くしなやかなピアノがフィーチャーされた「のすたるぢや」、そして男気溢れる「相棒」がとにかく最高。

クレイジーケンバンド「777」購入。前作「グランツーリズモ」のド派手さと比べるとちょっと弱いかなと一瞬思ったが、聞き込むほどにジワッとくる何とも言えないゴージャスな手触りっつーんでしょうか。アルバム発売に合わせてメディアへの露出も増加。大人の色気とユーモアを兼ね備えたステージングはどう聞いても、どう見ても「かっこいい」としか思えない。クレイジーケンバンドの「クレイジー」は「クレイジーキャッツ」の「クレイジー」なんだなと思う。俺がTVプロデューサーなら「クレイジーケンバンド」と「おぎやはぎ」と「ケンドーコバヤシ」でバラエティ番組作るんだけどな。

久々にライブ。佐野元春の「MJT」ツアー最終日、大阪フェスティバルホール。妻と友人Mとともに。ファンクラブ会員のMのおかげで前から5列目といういい席。佐野元春のライブは大概、土曜か日曜なのだが今回は金曜。会場は空席が目立ちなんとなく寂しい。今の高校生とかにこそ聴いて欲しい音楽なんだけど。でライブはホーボーキングバンドがめちゃめちゃ充実の演奏。若干お疲れ気味に感じられた佐野をカバーして有り余る完璧な演奏。もう腰に来る来る。井上富雄のベースがめちゃめちゃかっこいいんだもん。

7月16日。
会社を不自然に休んで、面接を受けに。約一時間、今までの仕事についてやら応募動機やら話す。実に10年ぶりの面接で相当緊張するも、マシンガントークで乗り切る。もうこれで落とされたら縁がなかったと思うしかないもんね。あらゆる偶然と必然の結果、今こうして話してるんだからもう運命を信じるほかないのである。で面接終了。ドッと疲れが、なんだか変に興奮しその日はほとんど寝むれず。

連休。妻と娘は義父さん、義母さん、姪ッ子と旅行に。私は一人仕事。が仕事が終わればあとは久々の一人暮らし!会社帰りにまずはスーパーに寄り、さてこの一人暮らし期間中何造ろうかなと思案しながらお買い物。普段なかなか家で造らないもん造ろうと初日は「鯛のアラ煮」二日目は「豚の角煮」と大好きな煮物2点造ることに決定。チューハイやらおやつ用のプリンとか買い込む。あぁなんて楽しいんだ!

で日曜。今日は朝から京都へ。京都国立近代美術館でやってる横尾忠則の展覧会「横尾 by ヨコオ」見に行く。相変わらず強烈なエネルギーがうずまいていて、その中に身を置くだけで突き動かされる何かが胸に生まれる。そこにある様々な作品をランダムに眺めると「時間」のあり方が、流れ方が日常とはまるで違って感じられる。パラレルに存在する「時間」。過去も現在も未来も全てはそこに「存在」しているのだ。今回特に印象深かったのは「Y字路」のシリーズ。横尾作品としては珍しく明るく柔らかな色調で描かれた「Y字路」に自分自身を重ねる。

で美術館を出て京都の町を歩く。懐かしい夏の暑さを感じ三条大橋を渡る。「河道屋」で蕎麦の昼食をとり錦通りをブラブラ。のんびり休日を過ごし、帰りに桃を買って帰る。で料理の時間。鯛のアラ煮にちくわ、するめの天ぷら、冷奴を作って一人チューハイで一杯。なんという贅沢。夜、以前にビデオに録画しといてずっと見てなかった市川崑監督61年作「黒い十人の女」観る。若き中村玉緒があんまりにもキュートで驚く。02年に市川監督自らが手がけたリメイク版も続けて。映像的にはモノクロの61年版のほうがやっぱりモダンでスタイリッシュかな。61年版の船越英二、02年版の小林薫、飄々とした演技がどちらもいい。男の滑稽さがよく出てて、なんというか男という存在自体がもはやコメディーである。とすれば女という存在はサスペンスなのか。

翌日。朝から近所の本屋、レコード屋めぐり。昼から4時間かけて豚の角煮作りに取り掛かる。もはやプラモ作りとかといっしょだな。で遂に完成。トロトロ具合、味の染み具合、完璧。が食べちゃうと一瞬にして無くなるとこが料理の潔さ。えぇあんなに時間かかったのにもう終わり!みたいな苦労の無駄使い感が男の料理の贅沢さってもんだ。

妻と娘が「赤福」土産に帰ってくる。一日2個づつと約束して赤福大好き親子は赤福を味わいつくす。一日、一個赤福を食べ続けることができるとしたら、こんな幸せなことはないだろう。

7月22日。面接を受けていた某企業よりTEL。一次面接合格、最終面接を受けてくださいとのこと。「転職」の二文字が俄然リアルに浮かび上がってくる。もう、こうなったらやるしかないでしょう。

会社では相変わらず仕事。状況が状況だけになんとなく居心地悪し。8月から組織変更もあり社内もなんとなく揺れている。運命に身を任せるんだと言い聞かせながら、今は自分の仕事をこなすのみ。

和田誠「銀座界隈ドキドキの日々」読了。「和田誠」の名前はもう20年ぐらい前からインプットされていてその活動は常に気になっていた。文化系サブカル科メガネ目に属する僕みたいな人間には避けては通れない人物なんだが、ここにきてやっと辿り着いたという感じ。でこの本は学生だった和田誠がライトパブリシティというデザイン会社に就職するところから始まる。様々な人、仕事との出会いの中、世界が開けていく様が、そのイラストと同様べたつかず、上質のユーモアをともなって描かれる。言葉のリズムが良くてどんどん読める。「文化系青春モノ」と勝手に呼んでるジャンルの最もいい形の作品。打算や戦略なんかじゃなく、本当に愛するもの、魂を揺さぶられるものに突き動かされ、決して無理なくただ愛し思い続けることで、人を呼び、運命を呼び、軽やかに偶然と必然を飛び越えてみせる。殿堂入りの一冊。大好きになった。

広告批評」の佐藤雅彦研究室特集がもうめちゃくちゃおもしろい。僕が最初に「佐藤雅彦」という名前を強く意識したのは「デザイナー」としてだった。もう10年ぐらい前だと思う。確かブルータス誌だったかで彼がデザインした「原美術館」のポスターを見て、あまりのかっこよさ、心地好さに凄い衝撃を受けたのだ。そして彼がCMプランナーが本職で「ポリンキー」だとか和久井映見サントリーモルツ(「うまいんだな、これがっ」ってやつね)とかキョンキョンのJRとかバザールでゴザールとかの作品、皆個性的で独自のリズム感を持ち、ピースとポップを優しく易しく提示した一連の作品群の作者だと知り、もうホントに驚愕した。好きになるとしつこいたちなのでそれ以降ずっと追いかけてきてる。大ヒットした「だんご3兄弟」も、このHPでも絶賛してる「ピタゴラスイッチ」も、氏の作品に触れる度に一体この心地好さ、気持ち良さはどこからくるんだろうと好きになればなるほどその不思議にとりつかれてしまう。でこの「佐藤雅彦研究室特集」なんだがもうなんなのよ、このおもしろさは。「教室で作り方を作ってる」という氏のインタビュー読んでるだけで凄く興奮する。数学と物理学に根ざしてあらゆる情緒を抜き去り、ひたすら人間の快感原則を追求する。そして形となって表現されてきたものは根源的な美しさを持ち、脳の奥を刺激するおもしろさに満ちている。でまるで難しくなくてひたすらポップでピースでキュートであるという不思議。この本、これから先ことあるごとに引っ張り出しては読み続けることになるだろう。

7月30日。最終面接の日。もちろん面接のため休みますとは言えず、今日も不自然に有休とる。泣いても笑ってもこれで最終。社員募集に応募して一ヶ月足らず。10年間のサラリーマン生活が急展開を見せ始める。一体、どうなる俺?今回は最終だけにさらに突っ込んで約1時間の面接。出来る限り自然に本当に思ってることだけを話すように心がける。それでダメならそれまでだし。でとりあえず後は返事を待つばかり。

7月31日。落ち着かないままいろいろ仕事。所属部署内で8月からの打ち合わせ。もしかしたら辞めるかもという思いもあり、非常に辛い。合否のTELは今日、明日中にはあるはず。一日そわそわする。夕方になり夜が来る。そして電話は無し。結論は明日8月1日に持ち越し。さぁ、俺の運命はいかに!!