日々の泡。

popholic diary

2023年8月26日~9月1日の話。

2023/8/26

7時15分、今日も「あまちゃん」起床。ゆっくりと朝ご飯を食べて、午前中は部屋で日記を書く。「MOONRIDERS FUNHOUSE BOX」のDISC1を聴きながら。カバーミニアルバム「B.Y.G. HIGH SCHOOL BASEMENT1」、カバーアルバムと言ってもそこはもうムーンライダーズ。ここまでやるかという解体と構築。カバーアルバムという名の歌うま自慢カラオケアルバムとは訳が違う。ムーンライダーズがカバーするとなるとこうなるという実験性と毒気、音楽のマッドサイエンティストぶりが凄い。95年リリース時も驚いたもんだが、今聴いても古びないマッドネスが炸裂。そしてレゲエアレンジによるセルフカバーアルバム「Le Cafe de la Plage」。ムーンライダーズのポップサイドの名曲群をレゲエアレンジでって時点で人を喰ってるのだが、これが意外とはまっている。ムーンライダーズ史上、最も売れる可能性があったアルバムかもしれない。 いや、そんなわけないか。一見親しみやすい音像ながらそこかしこに奇妙が詰まってる。やっぱりヘンなアルバム。でも、そこがいいんじゃない!ムーンライダーズ、最高!となる。

昼はチャチャっとカレーピラフ。でアップリンク京都まで。

マイ・ホン監督「猫と、とうさん」を観る。猫と暮らす男性たちのドキュメンタリー。アメリカでは猫を飼うというのことは「男性的」な行いではないと思われているのだとか。猫とは不思議な生き物だ。まるで何も考えていないようなのに時に何もかもわかっているような顔をする。そっぽ向いてるかと思えば、ふいに甘えてきたり、ぐーたら寝てるかと思えば、俊敏に動き回る。まるで先が読めない。自分も猫と暮らしてもう20年ほどになる。特別猫好きだったわけじゃない。むしろ最初は毛嫌いしていた。が今はもう猫がいない生活は考えられない。大袈裟かもしれないけれど、猫という存在に救われているような気さえしている。で映画は厳しかったり辛かったり、孤独だったりという生活の中、猫という存在に救われてきた男性たちを映す。猫はただそこにいて、ただ生きている。そんな猫の中に人々は生きる意味を見出す。ただ生きることこそにもう十分意味があるのだと。

続いてもう一本。ダヴィ・シュー監督「ソウルに帰る」を観る。赤ちゃんの頃に韓国からフランスに養子縁組されフランスで育ったフレディ。たまたま立ち寄った韓国で、彼女は自分の本当の両親を探すことに。そして父親と対面することになるのだが…。まずフレディというキャラクターが面白い。自由奔放で、時に自暴自棄なふるまいで周りを振り回す。強く、媚びず、攻撃的で複雑だ。言葉や文化の違いもあり、父親家族と馴染むことなく、むしろ嫌悪感を抱く。それでも彼女は揺れている。自分はフランス人、なのに韓国人でもある。そしてフランス人でもなく韓国人でもない自分。近づいては壊し、離れて、そしてまた近づく。複雑な彼女の心と身体と行動から目が離せなくなる。共感やましてや好感も抱きにくいが彼女の心の痛みや叫びが映画からはみ出してくる。好きな映画か?と問われるとわからない。だが、忘れがたき映画だ。

2023/8/27

ニャーニャー、ニャー坊の鳴き声で7時起床。でも結局、布団の上で1時間ばかりだらだら。8時起きだして朝食。

いつものように妻と買い物して、焼きそばの昼食。麺は先にしっかり焼いてから、炒めた具材と最後に混ぜ合わせるコウケンテツさんのレシピで。

妻がクドカンのドラマをやっぱり観ておきたいとDisny+に登録。とりあえず1ヶ月だけ入って観てしまおうということで。で早速、宮藤官九郎脚本・監督「季節のない街」を観る。1話30分ほどで10話。取り壊し間近の仮設住宅で暮らす人々の群像劇。そこに暮らす人たちはそれぞれがそれぞれの事情がある。ま、ちょっと訳アリで社会からわずかに零れ落ちてしまった人々だ。彼らは支えあって暮らしているという訳でもない。噂話をしあったり、時には衝突もあるが基本それぞれが勝手に暮らしている。誰もが叩けばほこりが出る。だから知らん顔で、深入りしすぎず、でもやっぱりどこか気にしている。「あまちゃん」でスナックに集まる大人たちのように、見なくていいとこは見ないふりして立ち入らず、支えあうんじゃなくてなんとなく肩を寄せ合い暮らしてるのだ。状況だけ見ればとても厳しく悲惨なエピソードが連なる。それでもそこにちょっとしたユーモアがあり、小さな希望がある。人生とは分母がブルーで分子がハッピー。笑いながら泣き、泣きながら笑う人生劇場。物語の中に社会から零れ落ちる人達に対しての愛情がある。それはいつかの自分であり、これからの自分かもしれない。めちゃめちゃ厳しい話でもあるんだが、それでも生身の優しさがある。

俳優陣がまた素晴らしい。主人公の池松壮亮は言わずもがな、仲野太賀もいつもながら巧いが巧いを越えた何かがあって、ベストアクトじゃないか。あと猫のトラ役(!)皆川猿時に爆笑。怒髪天の増子さんと荒川良々のコンビも最高。あとホームレスの息子を演じたのは映画「こちらあみ子」で主人公あみ子を演じた子だった。最初、気づかなかったなぁ。このホームレス親子のエピソードは特に印象深い。以前、俳優の三谷昇さんが亡くなった時に、爆笑問題の太田さんがラジオで映画「どですかでん」(原作は「季節のない街」)で三谷さんがホームレスを演じたこのエピソードが大好きだと言って、まるまま喋っていたなぁ。あの喋りは圧巻だった。

という訳で全10話一気見しちゃった。

2023/8/28

月曜はいつも死んだようになってしまうので、帰宅後映画を一本。来るべき「福田村事件」の予習もかねてアマプラで未見だった森達也監督「A」を観る。地下鉄サリン事件の後、オウム真理教の広報副部長・荒木浩をメインの被写体にしたドキュメンタリー。書籍版は読んでいたがやはり映像で見ると強烈。危険極まりないカルト教団、だがそこにいる人たちは一見普通の人たちで、話が通じないわけではない。でももちろん違和感もある。それは話が教祖である麻原に及んだ時だ。彼らは一様にそこで頑なになる。まるで自分に言い聞かすように、自分自身の揺れを否定するかのように尊師への想いを語る。その妄信ぶりが最後の砦となり、コミュニケーションを拒む。その頑なさが宗教の限界だなと思ったり。あとヒリヒリと緊張感の漂う公安との衝突。人権にも関わる極めて深刻な場面ではあるのだが、公安のわかりやすい自作自演のすっ転びと音楽使いでコントのごとき映像になってるのが、もう笑っていいもんかどうか。しかし派手に転んで足を引きずる「演技」を大真面目にやってるとこが公安の怖さであり闇であるのだから、なんとも…。とにかくいろんなとこを揺さぶられる。

2023/8/29

今日は外回りロングドライブ。一人営業車を走らせてると、このままどこか遠くに行きたくなる。なんて50を越えてもまだそんなこと言ってる。

radikoで「東野幸治のホンモノラジオ」。ゲストはフワちゃん。この人、実にクレバーだなと感じる。彼女なら日本版「バービー」みたいな映画撮れるんじゃないかと思ってみたり。世に出てくる人はやはり光る何かがある。

2023/8/30

胃が痛かった仕事を終え、少しほっとする。しかしまた次の胃が痛くなる仕事が列をなしている。いつになったらおさらばできるのか。

2023/8/31

町山さんの「アメリカ流れ者」(現「こねくと」内)森達也監督「福田村事件」回を聴く。続けてNHK+で「クローズアップ現代森達也監督回を観る。

そして完全に歴史修正に舵を切った政権、この国の未来を憂う。100年前のデマを再び流そうとする劣化した政治家、その扇動に前のめりになるSNSに集う人たちの群れ。歴史を学ばず、過去を反省しない国に未来などあるはずがない。

2023/9/1

杉作J太郎さんが急性心筋梗塞心不全で緊急搬送されたことを杉作さん自身のツイートで知る。杉作さんもまた「僕の好きな先生」。99年に出たマンガエッセイ集「ヤボテンとマシュマロ」は何度も繰り返し読んだ。かっこ悪い人間の生き様がそのかっこ悪さ故に胸を打つという、愛と叡智とユーモアが詰まった傑作で、その異常なまでの面白さに感服した。そして2017年南海放送で始まった「痛快!杉作J太郎のどっきりナイトナイトナイト」。「ファニーナイト」として今も続く杉作さんの魅力とラジオの面白さが詰まった名番組だ。どれだけ杉作さんのトークに爆笑し、救われてきたか。脱線、寄り道、回り道で自由奔放に広がり続けるお喋り。そこにふと現れる名言金言の数々。何より杉作さんのラジオは人に優しい。論点ずらして論破なんて恥知らずのバカがやることだ。杉作さんには負けてみせる強さと優しさがある。とにかく杉作さんには元気になってもらいたい。杉作さんの言葉や行動は生きる指針なのだから。