日々の泡。

popholic diary

2024年6月8日~14日の話。

2024/6/8

8時起床。スクランブルエッグとトーストの朝食。朝のうちに少し日記を書く。で本日も京都まで。

アップリンク京都にて入江悠監督「あんのこと」を観る。母親からの激しい暴力、生活の為に売春を強要され、やがて薬に手を出した少女、杏。逮捕され出会ったのは風変わりな刑事、多々羅。彼の導きで自助グループに入り、薬を断ち、就職支援を受け介護の仕事を学び始める。やっと負の連鎖から抜け出せると思ったのも束の間、杏に様々な試練が襲い掛かる。という実話を基にした作品。大人たちの犯した罪が、少女に罰として振りかかる。暗闇の中でやっと見つけた光。その光に手を伸ばすが無情にも光は闇に消えてしまう。悲劇に閉じ込めてしまうにはあまりに悲しく重い。映画を観て、杏の人生を想う。でもそれだけでいいのかと思う。悲しいお話ですと終わっていいのだろうか。今も社会には多くの杏がいる。やりきれない想いが広がる。

杏を演じるのは今最も注目される若手俳優河合優実。杏の人生をただ悲しいだけにしない魂のこもった素晴らしい演技だった。清濁併せ呑む刑事・多々羅を演じるのは佐藤二朗。コミカルになり過ぎない一歩手前で得体のしれない怖さが感じられた。多々羅を追いながら二人に肩入れしていく新聞記者役は稲垣吾郎。距離と冷静さを保ちながらも、その内面は最も熱を帯びている。人間臭い揺らぎを内側に潜ませることができる役者。3人ともがこの映画に真摯に向き合っている。

力のある作品である。監督、俳優陣が誠実に切実に「杏」のことを、杏の人生を想っているのが伝わる。観るべき映画である。ただし観るだけで終わるべき映画ではない。この映画は答えではなく僕たちに与えられた課題なのだ。

で御池から三条まで移動して丸善書店へ。「蛤御門のヘン」細田昌志さんゲスト回、二人の打てば響く会話が楽しい。猪木が力道山から寵愛を受けていた話は「プロレススーパースター列伝」史観を植え付けられている者からすると驚愕。靴ベラで殴られ、いじめぬかれていたんじゃないのか!聴いている内に居てもたってもいられずに細田昌志さんの著作「力道山未亡人」を購入。丸善ではもう一冊高田文夫先生の「月刊Takada」も購入。Hanadaは一生買うこともないし軽蔑すらしているが、Takadaは買うしかない。

昼食は「なか卯」で親子丼。先週のリベンジ。果たして親子丼はどうなのか!?運ばれてきた親子丼は、トロッと黄金色。一口食べたら慣れ親しんだあの出汁の味。令和のヤマタク、親子丼大好き男、まずは一安心である。

でMOVIX京都で本日二本目。「チャレンジャーズ」観る。主演女優はサイゼリヤ。じゃなくてゼンデイヤ。今作ではプロデューサーも務めている。でそんなゼンデイヤが演じるのはテニス界のスタープレイヤー。そして彼女に魅了される二人の男子テニスプレイヤー。幼馴染でともに切磋琢磨してきた二人がゼンデイヤを巡って恋の鞘当て。10年以上にわたるテニスと恋愛が絡み合う、男と女と男のラブゲーム。からかい上手のゼンデイヤに翻弄される二人の男。しかしこちらは恋愛未満どころか恋愛以上の床上手と言いますか、上級者編過ぎてもはやなんだかわからない。テニスの試合かはたまたペニスの試合か、EDMが鳴り続ける中、球があっちこっちにもう大騒ぎ。しまいに球目線のカメラワークまで飛び出して観てるこちらもゼンデイヤに手玉に取られタマランチン。でもめちゃめちゃ面白い映画でタマげました。ラストのなんだかわからないも異様な高揚感がタマりません。

帰宅して先日収穫した枇杷でジャム作り。皮むき作業だけでも時間がかかる。鍋に砂糖とともに投入しこげないようにじっくりと煮るジャムおじさん

夜は日記を書く。久々に5000字越え。

2024/6/9

8時起床。昨日作った枇杷ジャムとトースト。

朝から久しぶりに妻と実家へ。「ホンモノラジオ」聴きながら。墓参り、買い物、近所に住む叔父宅にも寄って実家で昼食。母手製の稲荷寿司に天ぷら。何もかも美味しいなぁ。止まらない母のトークを一しきり聞いて帰宅。

TVerで「情熱大陸今泉力哉監督の回観る。「からかい上手の高木さん」で最も印象的だったシーン。告白した女子中学生とそれを振った男子中学生、廊下の片隅で二人が交わす会話。当初の台本を一旦白紙にして、演じる若い二人の役者と対話し、言葉や想いを引き出し作られたものだと知る。あの瑞々しく、眩しい台詞は実際に若い二人から出てきたものなのか。少し暗い廊下の片隅で会話を終えお互いの想いを知った二人が、晴れやかに歩き出し角を曲がると、そこは多くの同級生たちで賑わう陽が当たり明るい廊下。そこまで含めた一連のシーンがとても良かったのだが、そんな裏話があったのか。

2024/6/10

一気に暑くなって、どうにもだるい。会社で「なんか疲れてますね」と声をかけられる。傍からそう見えてるのだな。気を付けなければ。

昼休みの読書。玉袋筋太郎著「粋な男たち」読了。名著「美しく枯れる」を読んで前作である本書を読んでおかねばということで。やはり家族のことに触れる最終章が衝撃的。人生の経験を人間の味に変えて進んでいくのだなぁ。

2024/6/11

今日も暑い。徒歩通勤の20分が堪える。

「アフター6ジャンクション」江口寿史ゲスト回聴く。鳥山明の絵の凄さについて江口先生が解説。80年代初頭、「ジャンプ」の快進撃の原動力になっていた二人。「すすめ!パイレーツ」~「ひのまる劇場」~「ストップ!ひばりくん」そして「Dr.スランプ」。さらに「キン肉マン」に「奇面組」「キャッツアイ」に「こち亀」と毎月お小遣いをコミックス購入に費やしてたなぁ。いまでもその頃のジャンプコミックスは揃っている。前後二段式の本棚を買ってもらって、コミックスや文庫本をキレイに作者ごとに並べて眺めるのが好きだった。毎晩一冊その中から選んで眠る前に布団の中で読むのがルーティーン。当時は絵もよく描いていたので江口作品や鳥山作品は何度も何度も模写した。鳥山明が描く緻密でポップなメカの絵を惚れ惚れしながら眺めたもんだ。江口先生のプロの目から見た鳥山明の絵の凄さについて、また江口寿史自身の絵の進化、例えば鼻の穴や髪をどう描いていったかといった話も面白い。

2024/6/12

夜、珍しく仕事絡みで飲み。ビール一杯、梅酒のソーダ割2杯でもう頭が痛い。

2024/6/13

TVerで「アンメット」。若葉竜也杉咲花、二人のシーンの濃密さ。純度高すぎの芝居。ドラマ史上に残る名シーンに震える。もうこの二人が画面に映ってるだけで胸がぎゅーんとなる。

2024/6/14

NHK+で「燕は戻ってこない」。いやこちらも凄いところまで来ましたな。搾取する側、される側それぞれの信念が揺らぎ、共感とも共鳴とも違う本能的な連携が女性たちの中でも起こり始める。黒木瞳演じる嫌味な母親さえも揺らぎ始める。そしてこちらの稲垣吾郎もまた内側が大いに揺らいでいる。面白い。ポン・ジュノ監督「パラサイト」を思い出した。あれは上流階級の家族に、貧困家族がパラサイトする話ではなくてその逆。一部の富裕層が、庶民の労働力に寄生するのだ。まさにそれと同じ構造で貧困にあえぐ女性にパラサイトする。その「腹」に寄生し、自分たちの子を産まそうとする。で物語はさらにその先に進もうとしている。楽しみ。

「ボクらの時代」河合優実、見上愛、青木柚の回を観る。23歳だって。もはや娘より若い。しっかりしてるなー。

YouTubeで「太田上田」、「成瀬は天下を取りに行く」宮島未奈さんゲスト回観る。太田さんの大ファンで高校生の頃「カラス」を読んで救われたという宮島さん。99年の太田さん著作「カラス」は僕も読んだな。もう25年も前か。確かに成瀬の中に太田さんが感じられる。どこにも属さず孤でいる感じとか。