1.「MOON OVER the ROSEBUD」ムーンライダーズ
うーん、やっぱりこうなってしまった。怪物・ムーンライダーズ30年目のアルバムが堂々一位。強いよ、強すぎるよ!冷静に聴いてみても、その革新的な音楽力に唸るばかり。鈴木-岡田曲の充実ぶり、メロディの復権など全てがツボ。恐るべし、ムーンライダーズ
2.「sunday clothes」sakana
ささやかながら、しなやかな強さ、そして美しさを持った音楽。「いい音楽」とはこういう音楽のことを言う。音楽家が音楽と向き合って生まれた無垢なる結晶。この先も大切に聴き続けたいな。
3.「WILD FANTSY」カーネーション
最新作が最高作。カーネーションの集大成的アルバム。世界最高レベルの楽曲と演奏。
僕にとって、カーネーションは人生のサウンドトラック。このアルバムを聴くたびに、06年の様々な感情が浮かび上がってくるだろう。
4.「con10po」スチャダラパー
スチャダラが「異議あり」と世に問う、等身大の社会派アルバム!譲れねぇ「スチャダラの一分」が重いビートとオモロの裏にさりげなく提示される。同世代、共感大、そろそろ怒ってもいいだろ。
5.「アンダースロウ・ブルース」レムスイム
新・リズム&ブルースの女王、大久保由希嬢の才能に出会えたことは、06年最大の収穫。かわいくって毒があって、音楽に対する愛があるアルバム。そしてレムスイムは音楽に愛されている。
6.「リフレクション」畠山美由紀
06年最もよく聴いたアルバムはこれかもしれない。その音の一つ、一つから、このアルバムがとても丁寧に作られていることがわかる。畠山美由紀嬢の包み込むような歌声が、確かに光を連れてきてくれた。
7.「3×3」ノーナ・リーヴス
音楽への愛をストレートに歌いきった、ノーナ渾身の一枚。煌くメロディーが世界を変える。そのことを信じてるポップバカ一代。心の鐘を鳴らす、音楽の魔法。最高なんだよ。
8.「Seven & Bi-decade」吾妻光良&ザ・スウィンギン・バッパーズ
親父ロックが何かと盛んだが、そんなのとは関係なく、スウィングし、ジャンプする親父達。ITも高血圧も偽装問題も、なんだかなーと笑い飛ばすジャンピンジャイヴなぼやき節。
9.「CATCH」小谷美紗子
静かな熱に満ちたアルバム。緊張感のある演奏、切実な想いが胸に響く。音楽に選ばれた音楽家、その決意、覚悟を感じる。
10.「休暇小屋」遊佐未森
僕にとっては数年ぶりの再会となった遊佐未森。変わらぬ澄んだ歌声、地に足が着いた音楽がもたらす幸福な時間。とても嬉しい再会になった。
<総評>
さて、そんな訳で2006年のベストアルバムです。こんなん、出ましたケド…という感じで。いやー今回は大混戦。ほぼ順不同と思って頂いて結構。
それにしてもムーンライダーズは恐るべし。正直、またライダーズ一位じゃおもしろくないな…って思ったんだが、いざ選んでみると、やっぱり一位になっちゃう。30年目にしてこの一歩を踏み出す凄み。各人の個性が浮かび上がりつつ、バンドとして輝きが増す面白さ。張り巡らされた伏線、しかけ、なのに、こんなにもポップ。懐かしさを感じた瞬間、過激な新しさに度肝を抜く。30年目にして最新作が最高作。うーん、やはり一位だな。参りました。
で2位につけたのがSAKANA。ギターと歌、この上なくシンプルで生活に根ざした音楽。
歩く速度で身体に染み入ってくる。一位と二位、聴き様によっては対極のこの2枚が並ぶところがおもしろい。表現こそ違えど、どちらも音楽でしかありえない表現。
カーネーションは、まぁ普通なら一位だよね。ずっとカーネーション聴き続けてきた。
それこそファーストをアナログで発売日に買った時からずっと。あれから十数年経って、辿り着いた先にあるのがこのアルバムで、高校生だった僕が、おっさんになって辿り着いたのがこのアルバム。極端に言うと、カーネーションの音楽はもはや他人事ではないのだ。
でスチャダラ。これはどうしても入れたかった。06年の自分を語る上でも外せない一枚。90年代を代表するアーティスト=小沢健二やコーネリアスもいい作品を残したが、僕はこのスチャダラに最も心動かされた。自分の心情とのシンクロ具合は怖いぐらいで、なんか「来た!」って感じだったんだよね。
でレムスイムとの出会いは今年最大の収穫。新しい音楽と出合って、まだこんな気持ちになれるんだって思ったし、その音楽の新鮮さには心が浮き足立った。ドラマーでもある大久保由希嬢の弾くリズムギターのカッコよさには惚れた。どこかユーモアがあって、リズムがとにかく立ってる。「細野さんの孫娘」僕がかってにつけたキャッチもあながち的外れではないと思うよ。ライブも素晴らしくて、今年のベストライブって言っちゃっていいかも。
畠山美由紀さんのアルバム、これは春先聞き倒した。何回も何回も聴きたくなる素晴らしい歌声。06年は向田邦子さんとか沢村貞子さんなんかの本をよく読んだ。凛とした強さと、穏やかで誠実な優しさ。そんな女性の姿に、憧れと尊敬の気持ちを持った。彼女の音楽はそんな女性達に通じるものがある。なんか聴いてると、胸の中にすっと心地よい風が吹く。随分救われた。
ノーナ・リーブスは「音楽」に対する愛をしっかり「音楽」で表現した快作。彼らにとっても渾身の一枚だったんじゃないだろうか。丁寧に細部まで神経を尖らし、音楽が最も輝く瞬間をアルバムに封じ込める。彼らの音楽を聴いてると、ポップミュージックは死なねーよ!って思える。力強い彼らに宣言に一票投じたい気持ちだ。
吾妻光良はとにかく音を楽しんでる。とかく理屈っぽく考えちゃうのが僕の悪い癖でもあるのだが、このアルバムの前では無意味だ。スウィングしなきゃ意味がない。なんつーかな、大木こだま・ひびき師匠の漫才を観てるような心地よさ(わかりにくい?)。
小谷美紗子、僕はこのアルバムで初めてちゃんと聴いたのだけど、この人は本物。いや、今さら何言ってんの?ってファンには怒られちゃうかもしれないけどね。ひりひりとする音の感触。音楽に選ばれちゃってるなぁ…って思った。
遊佐未森のファーストアルバム「瞳水晶」は今でも大好きなアルバム。それ以降のアルバムも聴いてはいたがファーストを越えることはなくてここ数年は離れていた。で今作で久しぶりに再会。その音を聴いてとても嬉しい気持ちになった。年を経て、彼女の歌声はあの頃よりも清らかに響く。絵空事ではない現実の中で、風に折れない花のように彼女の音楽は生き抜いてきたんだな。
という10枚でした。しかし今回は10枚に絞り込むのも一苦労だった。泣く泣く落としたアルバムも多数。例えば青山陽一「DEADLINES」。鈴木慶一を作詞に迎えた「Cherry Blossomは今」は06年ベストソングにしちゃってもいい。伊藤隆博、中原由貴を従えてのライブも強烈で忘れられない。それから堂島孝平「SMILES」も名盤。05年一位の「WHITE & BLUE」を凌駕するポップアルバム。はっきり言って日本のポップミュージックシーンはこの人にかかってる。僕らの愛するポップミュージックがもっと広く多くの人に聴かれるようになるには彼の力が必要だ。彼こそは尖兵、斬り込み隊長なのだ。実際、彼の積極的なライブ活動、良質のポップミュージック、優れた音楽家を紹介しようと奮闘する様は感動的ですらあるし、数年後大きく評価されるだろう。
でキリンジの新作「DODECAGON」も参りました。エレクトロ・ブルースな音、飄々と我が道を行く唯一無比のスタイル。30男としてもグッとくる名曲の数々。ある種、裏ベスト。
白井良明とポカスカジャンによるバンド、Eye don't Nose「大人の悩みに子供の涙」も挙げときたい。本気のロックアルバム。雄大なサウンド、ザ・バンドばりのコーラスワークなど聴き応えあり。うわっ、これも入れなきゃならなかったな。鈴木祥子「鈴木祥子」。自らの名前をタイトルに冠した、この覚悟。彼女もまた音楽に選ばれた音楽家。カーネーションを従えた「忘却」は紛れもなく名曲。
12月末に出た曽我部恵一「ラブシティ」は今まさに聞き込み中の名盤。そうそう「東京コンサート」も素晴らしいアルバムで、彼の充実振りがわかる。ってこりゃあと10枚余裕で選べちゃうな。
ま、それだけ印象に残ったいいアルバムと多く出会えたわけで、単純に音楽ファンとしては嬉しいばかりではある。で05年にも言ってることだが、音楽を語ることは自分を語ることになる。ここにあげた10枚はやっぱり06年の僕とは切り離せない。不思議なもんで最終的にあげた10枚を聴き返してみると、自分自身が06年に感じた想い、喜びや悲しみ、嘆きや怒り、葛藤etc様々な感情が浮かび上がってくる。そういうもんだ。
で毎年同じ締めになっちゃうんだけど、どこかで誰かがこれを読んで、ここにある音楽に興味を持って、聴いてみてくれたら、それはとても嬉しい。自分の耳で聴いて、自分の身体や心で感じて下さい。