日々の泡。

popholic diary

2003年ベストアルバムの話。

1.「LIVING/LOVING」カーネーション
3人になっての初アルバムは20年目のファーストアルバムと言いたくなるよな作品。円熟の先にある新鮮さと勢いにぶっとんだ。そして自分の人生の転換期、そのハイライトのBGMとしても外せない一枚となった。2003年8月の終わりに聴いた「やるせなく果てしなく」を一生忘れることはないだろう。

2.「Famly」ポラリス
「美しい」としか言えない音楽。こういう音楽と出合った時、音楽を聴き続けて良かったと思う。およそ人間の持つ全ての感情がここにはある。その直球の美しさの先にポップミュージックの可能性を見た。

3.「厚木I.C.」小泉今日子
実は今年一番よく聴いたアルバムかもしれない。数年ぶりに出会った初恋の女性が、その頃よりずっと魅力的で美しくなっていた・・とそんな感じ。穏やかな笑顔をたたえ、タバコをくゆらす彼女の前で、よみがえる甘い記憶。それとプロデューサー・高野寛の丁寧な仕事ぶりは特筆もの。

4.「Imagination」クラムボン
クラムボンの意欲作。音楽との真っ向勝負ぶりに、彼らの覚悟と自信を感じた。研ぎ澄まされた感性は音楽だけに向かい、余分なもの全て削ぎ落とされた果ての音。有無を言わせぬ力を感じた。

5.「宇宙旅行パール兄弟
サエキけんぞう+窪田晴男=パール兄弟、実に13年ぶりの新作。一曲目イントロ、窪田晴男丸出しのギターカッティングに、パール兄弟が帰ってきたよ!と感動した。サエキの言葉のぬめり具合、窪田のあらゆる音楽に精通した上で繰り広げられる実験、パールはやっぱりこれじゃなきゃ。

6.「sweet hereafter」新川忠
今年一番の拾い物。ベッドルームから生み出された、未来のスタンダード。時代を越えていく、ポップマジックは驚きとしか言えない。どこにもない、誰にも似ていない音楽。

7.「踊る太陽」オリジナルラヴ
男濃度の高い今作は、田島貴男の天才ぶりが遺憾なく発揮された傑作。雑多な音楽性を飲み込み、知性と感性が肉体を通じて発される。その肉体性こそが肝で、男も惚れるオリジナルなロックがそこにある。

8.「㈱ワダアキコ」和田アキ子
出ました元祖R&Bの女王。小西康陽プロデュースで名曲の数々がR&B、ソウル、ジャズと多彩なアレンジで蘇る。そしてその中心には和田アキ子のパンチ効きすぎの歌唱が!まさに「悩み無用!!」な傑作

9.「KING」忌野清志郎
ソウルマン・清志郎のソウルアルバム。高校生の頃RCを聴いて胸を熱くさせた。そして今、清志郎の歌声にあの頃以上に胸を熱くさせる。永遠の思春期に捧げる傑作ソウルアルバム。

10.「day dream」Ann Sally
アンサリーmeetsジャパニーズポップスタンダード。彼女の柔らかな歌声にずっと包まれていたいと思った。穏やかさとしなやかさ、純化された歌はやはり美しい。

<総評>
さて、2003年のベストアルバムはこんな感じです。全体を見てみると、「美しさ」そして「肉体性」みたいなものが同時にあるアルバムを結果的に選んでるようですね。03年は個人的にも転機となる年で、人生のサウンドトラックとしてこれらの音楽はとても重要なものばかりです。特に一位のカーネーション、例えば「OOH!BABY」や「やるせなく果てしなく」を聴きながら感じた感情や想いは一生忘れられないだろうなというとこです。ポラリスクラムボンの作品には、ポップミュージックをひとつ先の地平に導くような光を感じた。彼らの音楽は純粋な「音楽」だけが持つ美しさと強さがあってとても感動した。パール兄弟の復活盤やオリジナルラヴ会心作は20~15年前からずっと聴き続けてきたものとしては感無量。俺は正しかったと胸をはって言いたい。そして小泉今日子の作品も素晴らしかった。20年前からずっと彼女は特別だったのだ。清志郎作もRCを彷彿とさせながら、確実に今の作品で年を重ねた上で感動できた。なんかこういうセレクトはノスタルジックに過ぎるかもしれないが、過去と現在は間違いなく地続きでそしてあの頃の想いを抱えてその先にある今に感動できるなんて素晴らしいことだと思う。和田アキ子作は最もエンターティメントな作品。02年のムッシュといい小西康陽はこういうことやらせたら天下一品ですな。新しいところでは新川忠があるが、このアルバムも不思議な懐かしさがある。そういえばアンサリー作も過去の名曲のカヴァー盤。頭に「美しさ」と「肉体性」と書いたが、もうひとつのテーマは「時間」なのかも。年をとったということなのかな。20年ほど前、音楽に興味を持ち新しい扉を開くように音楽を聴き始めて、03年にたどり着いた作品群がこの10枚だとしたら。自信を持って言える、間違っていない。あの頃の自分に言ってやりたい、20年後は今よりもっと素敵な音楽とおまえは出会う、だから自分の耳と感性を信じろと。なんつって。でもそんな感じ。