日々の泡。

popholic diary

I LIKE YOU

やっぱり今日は清志郎さんのことを書こう。キヨシローのことを。
それほど熱心なファンだったわけじゃない。それでもやっぱり彼は特別な存在だった。同世代の音楽好き、みんな同じだろうが。
初めてキヨシローのことを知ったのはいつだったかな。小学生の頃、テレビで「ステップ」を歌うキヨシローを観たのが多分最初。なんだ、この人は!とそりゃ小学生だもん、そう思った。それから坂本龍一との「い・け・な・いルージュマジック」だ。化粧をした二人がキスをして、万札が飛び散るPV。強烈だった。とてつもなくあやしくって、やばくって、かっこいい。今思えばロックの原体験だ。お年玉を貯めて買ったラジカセで「サマーツアー」だとか「つ・き・あ・い・た・い」だとか「ベイビー!逃げるんだ」なんて曲をエアチェックしてよく聴いてたな。その頃はロックなんて言葉もまだ覚えたてだったけど、RCがロックだってことはすぐにわかった。とてつもなくあやしくって、やばくって、かっこよかったから。
14歳になると僕はムーンライダーズを始めとしたポップミュージックにひたすら傾倒していったけど、RCはどっか気になる存在だった。ライブ盤「The TEARS OF a CLOWN」、キヨシローの初ソロアルバム「RAZOR SHARP」、2枚組の大作「MARVY」。熱心なファンではなかった証拠にみんな駅前のレンタルレコード屋で借りて録音してカセットテープで聴いてた。だから、RC=カセットって印象が今でもある。「スローバラード」も「トランジスタラジオ」も「雨上がりの夜空に」も「ドカドカうるさいR&Rバンド」も「WATTATA」も「曲がり角のところで」も「ツル・ツル」もだから全部カセットの音で記憶にあるんだ。きめが荒くて安っぽいカセットテープの音。その音はキヨシローの声に合っていた。20年経った今もその音はすぐに頭ん中で再生できる。それから当時よくやってたロックフェスをNHKが放送してて随分録画して観たもんだ。大体トリがRCでね。ステージを走り回るキヨシロー。これもすぐ再生できちゃうな。
そして忘れられないのが、当時のロック少年なら誰もが衝撃を受けた「COVERS」だ。もちろん僕も衝撃を受けた隅っこのロック少年だった。「何言ってんだーふざけんじゃねー」とキヨシローが歌ってた。続く「コブラの悩み」と合わせてもうめちゃめちゃ聴いた。通学の阪急電車の中で、学校近くの鴨川沿いで。「イマジン」の素直すぎる訳詞。ロックという言葉を覚えて数年。スタイルじゃないスピリットとしてのロック。本質。本物。それを教えてもらったし、それを見極める力をキヨシローを聴くことで鍛えていったように思う。
そうそうタイマーズが「ヒットスタジオR&N」で「エフエム東京、オマンコ野郎」と歌った瞬間もリアルタイムで観てた。相変わらずとてつもなくあやしくって、やばくって、かっこよくって、テレビの前で拍手を送った。そうそう「デイドリームビリーバー」は歌が下手でカラオケ苦手な僕が唯一歌う歌。この曲だけは褒められたことがある。
RCのラストアルバムとなってしまった「Baby a Go Go」。アコースティックで地味なアルバムだけど大好きなアルバム。今でも時々引っ張り出して聴いてる。「I LIKE YOU」「あふれる熱い涙」「空がまた暗くなる」etc。キヨシローは「Rock'n Roll Showはもう終わりだ」とも歌った。
細野さんと坂本冬美と組んだHIS「日本の人」。これも思い出深いな。大学生の時。細野さんとキヨシローの共通点であるユーモア。これもまたロックには必要不可欠なものだってことを教えてもらった。そして今思えばくだらないことだけど、年相応にいろいろ思い悩んでたりした時、「日本の人」「セラピー」なんて曲に救われた。キヨシローの優しさもまた信頼できるものだった。
社会人になってからもやっぱりキヨシローはまだ気になる存在のまま。「君にだけわかる言葉」「GOOD LOVIN'」「世界中の人に自慢したいよ」。スィートソウルに接近した3枚の8インチCD。特に「GOOD LOVIN'」が大好き。僕の中の名曲ランキングには10年以上ランクインしてる。それから大好きな竹中直人監督の「119」。このサントラもよく聴いた。キヨシローのメロディメイカーぶりがわかる、肩の力が抜けたいいアルバムなんだ。
最初で最後のキヨシローライブ体験は2000年の12月。30歳になる直前のことだ。その時の日記はコレ。「ロックスターである前に根っからのソウルマンだった」と書いてる。そしてこの時聴いた「トランジスタ・ラジオ」は今も忘れられない。この曲を作り、歌った一人のソウルマンがいた。忘れることはない。
昨日の夜は、2003年のアルバム「KING」をずっと聴いてた。忌野清志郎さん死去。一瞬、頭が真っ白になった。熱心なファンだったわけじゃない。でもこんな気持ちになっちゃうんだ。自分でも驚いた。随分涙もろくなった。
「KING」のジャケット写真。家の前でスーツにサンダル履きのキヨシローが突っ立てる。なんか好きなんだ、この写真。聴きながらずっと眺めてた。
キヨシロー、僕にロックを教えてくれて、ありがとう。感謝してます。
そしてあなたの音楽を愛してます。ずっとずっと。