2024/8/31
7時起床。台風が近いということで本日は一日自宅。朝のうちに日記を書いて、妻とそうめんの昼食。TVで今田耕司司会のトークバラエティ。なぜか自民党総裁選の話題で、誰がふさわしいかなんてトーク。吉本勢がこぞってあげたのが高市。うんざりしてテレビを消す。ダメだこりゃ。
アマプラでチャン・ユジョン監督「正直政治家チュ・サンスク」観る。志を持って政治家になったものの、今ではすっかり嘘をつくのにも慣れ、きれいごとを並べて政治家生活を送るチュ・サンスク。そんな彼女がある日突然嘘をつけなくなってしまった為に起こる騒動を描くコメディ。基本ベタなギャグで推し進めるのだが、社会風刺もしっかり入れ込むあたりは韓国映画。笑いの中に政治家のあるべき姿とは何かを説く。堅苦しいところは全くないけど、権力者、力のある者を茶化し糾弾する姿勢が根底にある。主演は脇役として長く映画やテレビドラマを支えたラ・ミラン。50代の女優、それも長く脇を務めてきた人がキャリアを重ね主演を張る。韓国映画を長く観続けると、そんな俳優たちのキャリアを重ねる過程を観ることができるのもまた楽しみの一つである。
夜。TV「博士ちゃん」で昭和歌謡の特集。野口五郎がランクに入って涙ぐむ五郎ファンの中学生。こうして時代を越えて愛されるっていいな。野口五郎本人が観たら嬉し泣きしちゃうだろう。しかし石原裕次郎や美空ひばりが死んだ年齢をすっかり超えてしまってんだな。
24時間TVは基本的に観ることはないけど欽ちゃんドラマだけはチェック。欽ちゃんが視聴率100%男だった頃は僕が小学生~中学生の頃。「欽ドン」「欽どこ」「欽曜日」が曲の垣根を越えて特番やったりしてね。MCU(マーベルシネマティックユニバース)ならぬKFU(欽ちゃんファミリーユニバース)って感じで興奮したなー。でそんな天下人だった欽ちゃんを引きずり下ろしたのがビートたけし。危険で刺激的なたけしに思春期を迎えた僕も完全に寝返ったけどね。でも小林信彦「日本の喜劇人」を読んでたこともあり、世間一般に思われていた「欽ちゃん=ほっこり優しい笑い」は欽ちゃんの本質ではなく、その本質は「狂気のお笑いアナーキスト」だという認識はあって、やっぱりそういう面で気になる人ではあるのだ。再現ドラマは「心温まる物語」にまとめてるんだけど、一個一個のエピソードを考えるとやっぱりどっか狂ってる。ドラマ前後に付けられた欽ちゃんとその息子たちの会話も興味深い。心温まらない、狂気の欽ちゃん物語をNETFLIXあたりで作ってもらいたいな。
2024/9/1
8時起床。とりあえず台風は行ったのか。妻は朝から出かけたのでアマプラで東かほり監督「ほとぼりメルトサウンド」を観る。かって祖母が住んでいた空き家を訪れたコト。庭に勝手に段ボールハウスを建て暮らしていたのは老人タケ。彼は様々な「街の音」をテープレコーダーで録音しては土に埋めていた。失われていく街の記憶を巡る物語。とはいえストーリーはあるような、ないような。街の音を録音する老人、タケを演じるのは鈴木慶一。ライダーズファンとしては当然「テープレコーダー/自分の声入れて/土の中に/埋める」と歌われる「夢が見れる機械が欲しい」を想起する。目まぐるしく変わり過ぎてゆく時間の渦に取り残され、立ちすくむ男の歌。監督はこの曲のことは知らなかったらしいが、通ずるものを感じた。
午後、帰ってきた妻といっしょにユナイテッドシネマまで塚原あゆ子監督、野木亜紀子脚本「ラストマイル」観に行く。同監督、脚本によるドラマ「アンナチュラル」「MIU404」とつながるシェアード・ユニバース・ムービー。ま、「欽ドン」「欽どこ」「欽曜日」みたいなもんか。巨大ショッピングサイトの配送センターから発送された段ボールが爆発。そして連続爆破事件に発展していく。仕掛けられた爆弾は一体誰が、何のために。事件を巡るミステリーが主軸という訳ではなく、やはり野木亜紀子脚本らしくその背景、事件を生む出した社会構造を炙り出していく。「すべてはお客様の為に」そんな言葉が呪縛となって、より過剰になっていく社会、肥大化していく経済。その中で押しつぶされていく人々。利益は上へ上へと、負担は下へ下へと流れていく。これって何かおかしくないか。そう思っても止まることのないベルトコンベアー。映画は立ち止まり抗おうとする人々に寄り添う。「アンナチュラル」「MIU404」がそうであったように。事件は解決するが問題は解決しない。映画は問題を提議する。映画の中で不条理な社会構造に声を上げる人達がいたように、映画が「それっておかしくないか」と声を上げる。その先は映画館を出た後の僕たちにかかってくる。ほろ苦い映画である。すっきりとはしない。だがそこに意味がある。すっきりなんかさせない、わかった気になんかさせない、あなたもまた当事者なのだと突きつける強い意志がある。そしてそれと同時に社会の中で懸命に働く声なき小さな人々への敬意が込められている。
満島ひかり、岡田将生と今考えうる最良の俳優、「アンナチュラル」「MIU404」チームの豪華な助演。まごうことなきエンタメ大作でありながら、どこかケン・ローチ作品やイ・チャンドン作品を想起させる社会派ドラマ。その志が嬉しい。
2024/9/3
仕事で大阪のなかもずまで。初なかもず。結構遠いな。商談を終え遅めのランチは「なかもず ランチ」で検索して見つけた町の洋食屋でロースカツとハンバーグの豪華定食。奮発して1500円。少し薄めのロースかつにふんわり柔らかハンバーグにたっぷりとデミグラスソースを絡める。豚汁にご飯、付け合わせの千切りキャベツはたっぷり山盛り。美味い!
小沢健二「LIFE」を聴く。再現ライブでTLが賑やかだったので、久しぶりに。フリッパーズギターが解散したのはちょうど就職活動をしている頃。そんなタイミングもあって青春の終わりを強く感じたものだ。社会人になって最初の夏に小沢健二はソロデビューする。デビューシングル「天気読み」、そしてデビューアルバム「犬は吠えるがキャラバンは進む」。フリッパーズギター時代とは打って変わってシンプルで自然体な歌とサウンド。新鮮な驚きと同時に一気に心を掴まれた。当時どれだけ聴いたかわからない。そしてブギーバックを挟んでセカンド「LIFE」。歌い方も変わって1stよりポップでキャッチー。小沢健二はTVでの露出も増えて、王子様キャラで一般的な人気も博していた。その頃は自分はズタボロのドブネズミみたいなサラリーマン生活に突入。レンタカーで地方を回り、時に名刺を投げられながら不慣れで苦手な営業仕事に心を踏み潰されていた。キラキラした世界とはまるで縁のない灰色の生活だ。でも「LIFE」は嫌いじゃなかった。いやむしろ大好きで録音したカセットテープを出張に持っていってレンタカーのカーステレオで流しながら営業回りしたもんだ。キラキラとした心躍るポップミュージック。でもその音楽は僕にはとても誠実に感じられた。自分に対して、世界に対して、音楽に対して。嘘や偽りがなく、音楽に真正面から向き合い、誠心誠意、誠実に作られた音楽だと感じることができた。30年経って聴いてみてもやっぱりそう思う。ノイズに邪魔されることなくまっすぐに今も胸に届く。いやーしかし30年かよ、そりゃ50肩にもなるぜ。会社や肩書きこそ変わったが、いまだに不慣れで苦手な営業回りやってるってどうなのよ。まー心も体もだいぶ図太くはなったけどなー。
2024/9/4
会議に外回りに打ち合わせにと今日もバタバタ一日が過ぎる。それでもこうして何とか生きてるぜ。これが俺の「LIFE」だからな。
2024/9/5
昼は営業途中で部下となか卯でランチ。親子丼と冷たいハイカラうどんの小。安定安心の組み合わせ。親子丼は今日も美味かった。で明日は夏休みとってるので必死に仕事を片付け。って、ま、片付かないんだけど、とりあえず応急処置して終了。
YouTubeで吉田豪「豪の部屋」水道橋博士ゲスト回を観る。長く付き合いのある二人が、本やグッズに囲まれた「男の夢」が詰まった部屋で二人きりで語り合う。結婚話からビートたけし、甲本ヒロト、百瀬博教、爆笑問題、東浩紀、秋元康などなどのキーワードでじっくりと会話。「藝人春秋」のタネ。というかここでの会話を再構築すればもう一冊「藝人春秋」が出来上がりそう。博士さん言うところの「ドブ側」の人間なのでそりゃ面白い。考えたらそもそも吉田豪という名前を知ったのも博士の日記からだ。「男気万字固め」を購入し読んだのは2001年7月下旬(20年以上日記書いてるとこういうデータベースがすぐ出てくる)。さすがに仕事量がとんでもないので全ては追えないが、同じ1970年生まれである「吉田豪」の仕事は常にチェック対象ではある。
しかし自分は50を過ぎても映画や音楽に夢中。車もゴルフもましてや株なんかにはまるで興味がない。美女のいる店で飲みたいとも思わないし、高級料亭なんて遠い世界の話だ。通勤中にラジオを聴いて、仕事の合間に本を読んで、たまのランチはなか卯の親子丼、休日には1、2本映画、数か月に一度は観劇やコンサートに行く。好きなバンドはムーンライダーズで、好きな芸人は水道橋博士と太田光、町山智浩や宇多丸の映画評を参考にして、吉田豪のリポストで情報を得る…って完全にこっち側。
2024/9/6
夏休みをとる。7時起床。いつものごとくBSで朝ドラ再放送「オードリー」。影の薄い主人公、濃すぎるサブストーリー、長嶋一茂の棒演技…もはや何のドラマかさっぱりわからん。タイガー・ウォンの話、要る?ま、そこが面白いんだけど。
朝ドラ「虎に翼」、自分の中では殿堂入り。過去を描きながら現在を浮き彫りにしている。原爆裁判の判決に、ガザの今が重なる。続いての「あさイチ」では伊藤沙莉がゲスト。寅子を寅子たらしめたのは彼女の演技があってこそ。最近はもうタイトルバックの最後、ぱっと手を広げてカメラに向けられる表情だけで泣けてくる。
でradikoで「蛤御門のヘン」聴きながら京都まで。京阪で三条まで出てMOVIXへ。まずはニダ・マンズール監督「ポライト・ソサエティ」を観る。 パキスタン系イギリス人のムスリム家庭に生まれ、スタントウーマンを夢見る女子高生リアが主人公。芸術家志望で仲良しの姉リーナが結婚することに。大富豪と結婚し海外に行くという姉の結婚に納得いかないリア。そしてその結婚の裏にある陰謀があることを知り…。いやーこれは最高だった!ポップでキッチュ、カンフー+ボリウッドというルックの新しさ、浅川マキまで飛び出すいかした音楽、テンポよく見せていく編集、詰め込まれたユーモアに胸のすくラスト。自分の子宮は自分のもの。愛は子宮を救うという女性たちの連携。過去に女性たちが押し付けられてきた不条理を断ち切り、新しい世界に飛び出していこうというパワフルなメッセージが物語からはみ出している。リアの不屈のアクション、そしてリアの友人たちの大活躍ぶりも最高。楽しくて元気になるフレッシュな青春映画。これは多くの人に勧めたいなー。
続いてMOVIX内8番スクリーンから6番スクリーンに移動してキム・ソンシク監督「憑依」を観る霊が視えないインチキ祈祷師のチョンと相棒のインベ。そこに霊が視えるユギョンから悪霊に憑りつかれた妹を救って欲しいと依頼が。悪霊との死闘の中、チョンの隠されていた過去が露わになって…。カン・ドンウォンのかっこいいポスタービジュアルから真面目なサスペンスホラーかと思ったら、Webコミック原作のコメディ風味の大エンタメ作だった。監督はポン・ジュノ監督ヤパク・チャヌク監督の下、助監督を務めていたのだとか。オープニングシークエンス、チョンとインベが除霊に訪れる「パラサイト」風の大豪邸。現れた豪邸に暮らす夫婦のキャスティングでつかみはOK。大胆かつベタベタなパロディに爆笑。気もほぐれたところで、ファンタジーエンタメアクション大作に突入していく。カン・ドンウォンとイ・ドンフィのバディに加え、名脇役キム・ジョンス、依頼人の美女ユギョンは僕も贔屓のイ・ソム。なぜかBLACKPINKのジスまで登場するやたら豪華な出演陣、続編作る気満々のラストと肩ひじ張らずに楽しめた。
で烏丸御池まで移動。次の映画までにマクドの月見バーガーで腹ごしらえ。最近すっかりバーガーキング派なのでたまにマクド食べるとバーガーの小ささに驚く。こんなに小さかったっけ。
でアップリンク京都にて、本日3本目カン・ジェギュ監督「ボストン1947」を観る。1936年、ベルリンオリンピックのマラソン競技。日本が得た金メダルと銅メダル。金メダルを得たのはソン・ギジョン、銅メダルを得たのはナム・スンニョン。植民地時代であった為、彼らは日本名で日本代表として日章旗をつけての出場であった。そして戦争が終わり韓国は日本から解放されたが、ギジョンが打ち出した世界記録は今も日本の記録とされていた。そして1947年ボストンオリンピック。祖国の誇りをかけて、若きランナー、ソ・ユンボクとともに再び金メダルを目指す二人。歴史に翻弄されたマラソンランナーが、再び立ち上がるワンスアゲインの物語であり、若きランナーに未来を託す継承の物語。その上、熱きスポーツ映画であり戦中、戦後を描く近現代史ものでもある。祖国の英雄でありながらも、「韓国人」として金メダルを獲得できなかったことを悔やみ、やさぐれていたギジョンが、盟友であるスンニョンとともにボストンオリンピックの出場権を得るために奔走。その姿を描きながら徐々に熱を上げていき、辿り着いたボストンでのマラソンシーンで一気に熱が燃え上がる。まるで実際のマラソンを観てるかのような臨場感を持ったシーンは歴史をわかっていても熱くならざるを得ない力があった。過去の栄光と後悔、複雑な気持ちを抱えながら、祖国、そしてマラソンに対する熱き想いを再び燃やすソン・ギジョンを無骨に繊細に演じるのはハ・ジョンウ。さすがの名優ぶり。常に前向きにギジョンを鼓舞し支えるナム・スンニョンをユーモラスに演じたぺ・ソンウは今作のMVP。そして若き天才ランナー、ユンボクを演じるのはイム・シワン。走る姿の美しさ、誰もが彼の雄姿に拍手を送るだろう。で実録物のお約束、最後は実際の写真と俳優が並び、その後の人生が紹介される。なんとギジョン、スンニョン、ユンボクともまさかの90越えで天寿を全うのご長寿ぶり。マラソン、身体にいい説を立証。気持ちの良い映画だった。
夜、NHK+でドラマ「Shrink」を観る。精神科医の弱井と彼のもとを訪れる人々の物語。第一話では「パニック症」について丁寧に描いていて見入る。心の病気ではなく脳の誤作動が生み出す症状であることを理解するだけでも、随分救われる人がいると思う。