日々の泡。

popholic diary

2024年9月14日~20日の話。

2024/9/14

7時起床。昨日の残りのチキンカツでカツサンドの朝食。朝からいつものごとくradikoで「蛤御門のヘン」聴きながら京都まで。まずは京都シネマで山中瑤子監督「ナミビアの砂漠」を観る。カナは優しいが刺激がないホンダと同棲中でありながら、刺激的なハヤシと二股中。常に空虚さをまといながら喉の渇きが潤せない状態のカナ。ホンダの家を出てハヤシと暮らし始めることに。だがそれでもカナには埋まらない何かがある。オープニングからのどこか太々しく投げやりに歩くカナの姿が印象的。で最初はイマドキの若者たちの恋愛模様かと乗り切れない部分があったのだがタイトルが出てからはこれいったいどこに連れていかれるの?という感じで映画に翻弄された。カナのいら立ちややるせなさ、怒りの矛先。それが何かはおっさんである僕には多分完全に理解することはできないだろうし、むしろその矛先に自分も入っているのだと思う。先日観た「ポライト・ソサエティ」をふと思い出した。あれは自分自身の「子宮を取り戻す」映画だった。主演は今を時めく河合優実。「あんのこと」「ルックバック」そして今作と2024年は河合優美イヤーであるな。印象的な歩くシーンをはじめ、やはり彼女が持つ身体性が良い。身体の動き、手足の使い方がちゃんと作品ごとに違っていて役に適切な体の動きをしている。そこはもう他に類を見ないというか、突出しているように思う。で映画の後は山中瑤子監督によるティーチイン。監督への質問も鋭いものが多く、勉強になった。「歩き方」についての質問には「北野武」の名前が出る。印象的な歩くシーンで想起したのは「その男、凶暴につき」だったので繋がった感じがしたな。「その女、凶暴につき」ともいえる作品でもあった。

で歩いて三条まで移動。時間も無かったので久々に「珍遊」でラーメンを掻っ込む。でMOVIXで話題の映画安田淳一監督「侍タイムスリッパー」を観る。会津藩士・高坂新左衛門は長州藩士を討つために京都へ。相手と剣を交えた瞬間雷鳴が。目が覚めると新左衛門は現代へタイムスリップしていた。それも時代劇の撮影所に…ってな話。設定的には比較的オーソドックスなタイムスリップもの。時代劇の撮影所で「役作りしすぎの役者」と勘違いされるコメディとして物語は始まっていくが、時代劇に魅せられた侍が、時代劇を救うことになっていく。そして途中で入るあるツイストで物語は一気に熱く激しく燃え上がり、ぐっと前のめりに惹き込まれる。名もなき者たち、そして忘れられ失われていくものへの鎮魂であり、それでもまだ終わりじゃない。例え小さな炎だとしても燃え続けるのだという溢れる熱い想いが滾る。主人公を演じる山口馬木也は朴訥と誠実な侍そのものにしか見えない。佇まいに古風な骨太さがあり素晴らしい。ベテラン俳優を演じる冨家ノリマサとの殺陣の迫力が映画というフィクションを越え、物語との奇跡的なシンクロを生む。そこには深い感動があり、映画をここまでの話題作にのし上げていったのだろう。エンドクレジット、監督である安田淳一の名前があらゆる役割でクレジットされているところから小人数、低予算で作られた映画だということがわかるが、映画内でヒロインである助監督役を演じた沙倉ゆうのが実際の助監督としてクレジットされているのには驚いた。インディーズ映画が口コミで話題を集め拡大公開されるパターンは「カメ止め」を彷彿とさせる。映画のタイプはまるで違うがともに人々を巻き込むだけの「熱量」がある。間違いなく今年観るべき映画の一本である。

夜、NHK+で「恋せぬ二人」1~4話まとめ観。本放送時、気になりながらも見損ねていたので。贔屓の岸井ゆきの主演。アロマンティック、アセクシャルな二人の物語。多様性の時代などというが、それは今まで多数派の人々が見ていなかった/見えていなかっただけで、昔から人々は多様だったのだ。気づかず、気にも留めず、無かったことにしていただけなのだ。傲慢な色眼鏡を捨て去らなければならない。脚本は「虎に翼」の吉田恵里香。「虎に翼」にも多くの「無かったことにされていた」人たちが出てくる。ずっとそこに「居た」のに。SNSなどではポリコレが云々…という輩がいるがポリコレなんて言葉があろうがなかろうが、彼ら/彼女らはずっと居た。それを知らずに傲慢に生きてきたことを恥じるべき。

2024/9/15

朝から妻はお出かけ。トーストとスクランブルエッグの朝食。午前中、NETFLIXで「ベイビーわるきゅーれ2ベイビー」観る。ちさととまひろ、殺し屋女子二人組のゆるーい生活とキレッキレのアクション。新鮮さがある二人のアクションは見応えあり。だが前作にも感じたんだがオフビートな二人の日常描写がちょっと僕にはトゥーマッチ。そこはちょっと合わないかも。

で京都まで出てもう一本。アップリンク京都にて奥山大史監督「ぼくのお日さま」を観る。吃音がある小学6年のタクヤ。同級生たちとアイスホッケーチームに入っているものの苦手。ある日スケートリンクフィギュアスケートのレッスンを受ける中学生のさくらに目と心を奪われる。誰もいなくなったスケートリンクでさくらの真似をしてスケートを練習し始める。その姿を見たさくらのコーチでかってフィギュアスケートの選手だった荒川はタクヤにスケートを教え始める。そしてタクヤとさくらのペアでアイスダンスに挑むことに。荒川にほのかな恋心を抱くさくら、さくらに初恋するタクヤ、同性の恋人と暮らす荒川、3人が過ごしたひと冬の物語。淡くやわらかな光、少ない台詞と繊細な視線。甘くでもひどく苦い忘れ得ぬ日々。素晴らしかった。幼い二人の純粋さとそれゆえの残酷さ。Zombiesの「Going Out of My Head」をバックに3人が冬の湖で遊ぶシーン。美しく尊い冬の一日。恋人と過ごす荒川の姿を遠くに見かけたさくら。幼く小さな心の痛みが残酷な言葉となる。そして美しく尊い冬の一日は儚くも消えてしまう。幼い二人はやがて知るだろう、胸の痛みの意味を。そして月日が流れそれぞれがそれぞれの「忘れ得ぬ人」になることを。僕にとっても「忘れ得ぬ映画」となった。

東京ポッド許可局の「忘れ得ぬ人々」のコーナーが好きだ。人生の中で交差した人々。今はもう会うこともない人、だけど決して忘れられない人。いつまでも胸に刺さって抜けないエピソード、あれはいったい何だったんだというバカバカしいエピソードなどいつも楽しく聞いている。大人になったさくらが荒川やタクヤとの日々を綴ったメールを、サンキュータツオが読むところまでを夢想する。

映画観終わりなんか食べようかと迷っている内に大津まで帰ってきてしまう。結局、駅前の平和堂で「極旨いなりずし」。甘さにコクがあって美味しいのだ。帰宅しインスタントのざるそばといっしょに食べる。

フィルムエストTVのYouTubeチャンネルにUPされた友近サスペンス劇場「外湯巡りミステリー・道後ストリップ嬢連続殺人」観る。友近扮するライターとモグライダー芝扮するカメラマンが道後温泉で殺人事件に巻き込まれ…と昭和の2時間サスペンスあるあるを目いっぱい詰め込み、CMや主題歌、クレジットに至るまで凝りに凝った動画。VHSビデオの質感、再生する感じまでの再現具合が素晴らしい。エアコンのCMからの入りに爆笑する。

夜は久々にスパイスカレーを作る。トマト缶の酸味がなかなかうまく飛ばせない。

夜は録画したNHKのドラマを。「団地のふたり」大好き。永遠に観ていたい。「Shrink-精神科医ヨワイ-」最終話は「パーソナリティ症」。感情のコントロールがうまくできない風花が今回の患者。まるで相手を試すように揺さぶり感情をぶつける。確かにたまにこういう人に出会う。極端なアメとムチで相手を翻弄し人を動かそうとする人。対応に疲れて関わらないでおこうとしてしまう。一つの病なのだな。

2024/9/16

祝日。今日もやっぱり映画。出町まで出て出町座で久野瑤子・山下敦弘監督「化け猫あんずちゃん」を観る。母を亡くして父と二人暮らしの11歳の少女かりん。借金に追われる父とともに父の実家である古寺にやってくる。しばらく寺に預けられることになったかりんはそこで人間の言葉を話すおっさん化け猫あんずちゃんと出会う。当たり前のようにバイクにまたがり寺の下働きをするあんずちゃん。和尚さんに頼まれかりんの世話役に。グータラでデタラメ、おっさん丸出しのあんずちゃんと生意気でどこか冷めたかりんが繰り広げる冒険活劇!ゆるい二人の日常とかえるやたぬきといった愉快な仲間、そして地獄での大冒険が楽しい。少女の成長譚でもあり、笑い、泣き、元気になる。夏休みに繰り返しテレビでやってほしいような楽しくも心に残るアニメだった。

いつものパン屋が休みだったので今出川まで出てコメダで昼食。アイスコーヒーと月見バーガー

折角京都まで出てるので伊勢丹でやってるブラックジャック展を観に行く。これが想像以上のボリューム。テーマ別にストーリー紹介に加え原画の数々を展示。とにかく原画が美しい。直線、曲線、タイトルの書き文字、もちろんキャラクターの表情一つ一つ。完璧なレイアウト、完璧なデザイン、完璧な絵。そして20ページで展開される物語の独創性と多様性。考えてみれば物語を作る能力と絵を描く能力は全く別のはず。それがここまで高い位置で融合しているとは。手塚治虫が天才だということは小学生の頃からわかってはいたが、改めてひとまとめに観て天才としか言いようがないと思う。気が付けば3時間。濃厚な展示だった。

2024/9/17

大学生の頃に買った「ブラックジャック」愛蔵版全12巻を段ボールから出して久々に読み返す。週刊ペースでこれだけの物語。改めて凄いとしか言いようがない。子供の頃、寝る前に1冊漫画を読むのが習慣だった。枕元にスタンドを置いて、ポケットラジオを聴きながらお気に入りの漫画本を読む。今週はパイレーツを1巻からとか今週はDr.スランプだなんて。久しぶりにスマホを置いて寝る前に読もう。

2024/9/19

外回りで近江八幡まで出たので滋賀で唯一のバーミヤンで昼食。タブレットで注文し、ロボットが配膳し支払いもセルフ。味気ないとは言わない。チャーハンは美味しかった。にしても暑いな。9月も下旬に突入なのにカーエアコンも全開。9月が涼しかったのはもう昭和の話だ。

NHK+で「クローズアップ現代」ミッドライフクライシス-小泉今日子と考える老いを観る。おい、おい、老い、まさに自分の話だ。身体にはガタがきて、心が晴れることもない。今の暮らしは不満なわけでもないが、満足してるわけでもない。かといって何かを始める気力はないし、未来は不安だらけ。おい、おい、老い、冗談じゃねーよと笑い飛ばしたいもんだ。

2024/9/20

午後休で病院。3か月に一度の高血圧検診。診察時間はわずか3分ほどなのだが、大病院なので血液検査から始まってとにかく待ち時間が長い。薬処方してもらって結局2時間ほど。帰りに商店街の床屋へ。今週からは日曜、祝日に加え土曜も休みになるのだとか。どこともに人手不足のよう。

夜はひたすら日記を書くが書ききれず。