日々の泡。

popholic diary

2023年3月11日~17日の話。

2023/3/11

7時半起床。9時前には電車に乗って朝から映画館へ。アップリンク京都でシン・スウォン監督「オマージュ」を観る。3作目の映画が公開中の映画監督のジワン。だが客入りは悪く新作の目途が立たない。そんな彼女に60年代に活動した女性監督ホン・ジェウォンが残した映画のフィルムを修復する仕事が舞い込む。欠落したフィルムを求めジワンはホン・ジェウォン監督の人生を辿っていく。仕事も家庭もどん詰まりで体調も良くない。そんな中年女性であるジワン。今よりずっと女性が活躍しづらかった60年代の映画界で、懸命に作品を残そうとしたホン・ジェウォン監督の足跡を辿り、失われたフィルムを探すことで自分自身を取り戻していく。女性が働き続けることには困難がつきまとう。出産、育児、様々な壁、ガラスの天井…。社会は今もまだその途上にある。それでも切り開いた女性たちがいて、ジワンもまたそのバトンを繋げている。そこには時代を越えた連携があるのだ。それにしても横柄な夫、無邪気でわがままな息子、映画に出てくる男たちのなんと呑気なことか。ジワンを演じるのは名優イ・ジョンウン。そして彼女が訪れる引退した女性映画編集者を演じるのは50年のキャリアを持つイ・ジュシル。彼女たちもまたバトンを引き継ぎ繋げている女性たちだ。

イ・ジュシルさんといえば以前映画の舞台挨拶に京都へ来られたことがあって、その時いっしょに写真を撮ってもらったことがある。男性客が少なかったので大層喜ばれてこっちも嬉しかったなぁ。

ですぐにMOVIX京都へ移動して松本優作監督「Winny」を観る。2002年、ファイル共有ソフトWinny」を開発したプログラマー金子勇。しかし「Winny」を使って音楽やゲームが違法にアップロードされる事件が続出、社会問題化していく。そんな中、開発者である金子も著作権法違反幇助で逮捕されてしまう。映画は金子と彼の弁護を引き受ける壇を中心に、裁判の行方を追う社会派実録物。裁判の顛末とともに並行して描かれるのは、一見無関係と思われる警察による裏金問題。「殺人に使われた包丁を作った職人は逮捕されるのか?」無理筋と思われる逮捕の裏に何があったのかを浮き彫りにする。ただただプログラミングが好きで、プログラミングでしか表現できない天才プログラマーゆえに警察や検察に翻弄されていく金子。今や浮世離れした一癖ある役を演じさせたら抜群の東出昌大が事件に巻き込まれながらもどこか無邪気な金子を好演。裁判をいかに戦うかという地味な題材ながら、ユーモアも交えつつ映画として飽きさせない。吹越満渡辺いっけい、渋川清彦といった渋い脇役たちのいい仕事ぶりも忘れがたく、こういう映画がもっともっとあってもいいのにと思う。

京阪電車に乗って大津へ戻って、商店街の散髪屋でやっと散髪。北大路欣也あるいは河原さぶといったやたら伸びてくるもみあげの白髪が気になっていたのですっきり刈り上げ。これだけで少し気分がいい。

帰宅してスパイスカレー作り。3歩進んで2歩下がるという感じで。今回はちょっと滑らかさが足りない。ちょっとした加減がうまくいかないなぁ。

2023/3/12

朝から妻と買い物。昼はカレーの残りのトマト缶でボロネーゼ。

で今日もまた映画へ。京都シネマまで出てダースレイダー×プチ鹿島監督「劇場版センキョナンデス」を観る。ダース&プチのコンビが話題の選挙地に乗り込み突撃取材を敢行。まず訪れるのは「香川一区」。地元の巨大メディア「四国新聞創業家の出身で国会で「ワニ動画」を観ていたことでお馴染み、菅内閣でデジタル改革担当大臣を務めた“ワニ大臣”こと平井卓也氏と映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」で話題を集めたパーマ屋の息子、小川淳也氏が争う。平井氏の弟が社長を務める「四国新聞」は支持者からしても「(偏向は)若干、ある」と言わしめるほどの平井推し。問題となった平井氏のオリパラアプリ事業者への「脅し発言」も平井氏の言い分をそのままに好意的に取り上げ、選挙直前にライバル小川氏の批判記事を本人のコメントを取ることもなく大々的に掲載するなど若干どころか新聞の常識から逸脱するほどの偏向ぶりを見せつける。新聞14紙を読み比べる新聞読みの達人、プチ鹿島四国新聞を直撃する。逃げ惑う四国新聞記者に食い下がり、本社に乗り込みジャーナリストとしての矜持を問い、詰めていく。「批判記事を本人に当てずに書くのはなぜ」という質問状に対して回答期限の一分前にたった1行のFAXで返答する四国新聞。この返答は一番の爆笑ポイントでありながら、もっとも恐ろしい場面だ。機能しなくなったジャーナリズムがもたらす世界とは。そして舞台は2022年参院選、大阪へ。闘うリベラルとして維新に牙をむく立憲民主の菅直人氏をはじめ、自民、維新、共産各党候補者の演説の場を訪れ生の声を聞いていく。それぞれの党、候補者の個性が現れ面白い。白熱する参院選のさなか。思いもよらぬ事態が発生する。安倍元首相銃撃事件。映画はまさにその瞬間、その時の空気をドキュメントする。言葉と言葉でそれぞれの考えをぶつけ合う選挙戦。その言葉が暴力で封じられたのである。事態が呑み込めないまま選挙戦は続く。安倍氏と幾度となく論戦を交わした辻元清美氏の姿が印象的である。共産党、志位委員長もそうだが、安倍氏と意見を異にし言葉で闘ってきたものほど、暴力によって言葉が封じられたことに憤りを感じているように思えた。で舞台は京都へ。まさに今映画を観ている京都シネマがあるビルの前で繰り広げられる舌戦。そして維新・松井氏行方不明事件のトンチキぶり。選挙は祭りだ!と回されてきたカメラが、様々なものを映し出していく。候補者や取り巻く人々の態度は党の姿勢・本質を炙り出し、言葉に込められた熱、言葉に隠された嘘までをも暴く。とにかくエモいドキュメンタリーだった。必見!

映画後はプロデューサーを務める大島新監督の司会で、ダースレイダー×プチ鹿島両監督の舞台挨拶。映画、そして生の言葉に込められた熱。エモかったなー。

2023/3/13

昼休み、ネットでアカデミー賞をチェック。「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」が席巻。ミシェル・ヨーの女優賞はやっぱりうれしかった。かっこいいぜ。

録画してた「ブラッシュアップライフ」の最終回を観る。劇的な部分をさらっと流し、たわいのないお喋りをたっぷり使う構成が良い。自分の中で「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」と「ブラッシュアップライフ」が重なる。幾多もの人生の分岐点と可能性。それでも今を選び、今を生き、「あなたに会えてよかった」という人間賛歌。

それと同時に頭をよぎることがある。地獄のような今を生きている人に、それが通用するのか?ということだ。「それでも生きて」というのは無責任な自己満足でしかないんじゃないかと。今もなお自問している。

2023/3/14

Audeeで「細田昌志の時空旅行RADIO」ゲスト、原カントくん回「2013年のメルマ旬報」トークを聴く。

audee.jp

水道橋博士編集長の下、大人のコロコロコミック、子供の文藝春秋のコンセプトで多くの執筆陣が集結し驚くべきボリュームで10年近く続き発信され続けたメルマ旬報。その実務を担当したのが原カントくんさん。執筆者の一人でもあった細田さんとのトークでその裏側が明かされる。博士さんの無茶ぶりに応え途切れさせることなくあれだけの文章を僕たちに送り続けてくれた原さんに頭が下がる想い。博士さんにとっての夢の砦、メルマ旬報は、ある種の強引さも含めて博士さんでしか出来なかった偉業だと思う。そして大番頭として原さんが果たした役割もとてつもなく大きい。壮絶な仕事ぶりも飄々と軽妙に語る原さん、話を聞きだす細田さんの名ホストぶりも楽しい。

しかし「メルマ旬報」には大いに楽しませてもらったし、刺激にもなった。メルマ旬報から多くの本が出版されたのも嬉しいことだったし、メルマ旬報フェスを観に行ったのは自分にとってもいい思い出だ。

popholic.hatenablog.com

あとメルマ旬報で興味を持って、自分がかかわるラジオ番組に出演してもらった方々も多い。角田龍平さん、柳田光司さん、エムカクさん、竹内義和先生、シンプレ渡辺さん、スージー鈴木さん、やきそばかおるさん、そして今週はコラアゲンはいごうまんさんにも。

それとエムカクさんの「明石家さんまヒストリー」の書評を博士さんに取り上げてもらったこともメルマ旬報があったからこそだ。

kangaeruhito.jp

かって「サブカルチャー」と定義されるものが確かにあったが、今はもう通用しない。「メルマ旬報」はもしかしたら日本サブカルチャー史の最後の一ページを飾るんじゃないだろうか。

ドラマ「大奥」最終回。実に見応えのあるドラマであった。こっちを大河にした方がよかったんじゃないか、なんて。秋からのシーズン2も楽しみ。

2023/3/15

朝から人間ドックへ。検査着が新調されていてジャージ生地で着心地良し。家に欲しい。諸々検査、待ち時間もままあるが、それもまた良し。しばし仕事やスマホから離れてゆったりと病院で過ごす。しかし1年ぶりのバリウム。こんなにきつかったかな。

で一日休みとってたので妻と銀行行ったり買い物行ったり。後はNETFLIXで「舞妓さんちのまかないさん」。回が進むごとに、主人公のキヨの幼馴染で舞妓として成長していくすみれを演じる出口夏希がどんどん良くなってきている。舞妓への想い、田舎に残してきた恋心、そして幼馴染のキヨとの関係、まっすぐ天然なキヨに対して繊細で複雑な心の表現が必要なすみれを上品に演じていて素晴らしい。

2023/3/16

ひたすら忙しい一日。昼はココイチでチキンスパイスカレー。コクがあってカルダモンの香りが絶妙で美味い!

radiko鈴木慶一さんゲストの「ビバリー昼ズ」。ムーンライダーズファンで、昨年のアルバム「It's the moooonriders」にもゲスト参加する昇太師匠が相手なので安心して聴ける。岡田徹さんの話もたくさんされていて嬉しい。そして新作からのONAIR楽曲が凄い!お昼のAMラジオで度肝を抜く選曲。素晴らしい!

2023/3/17

今日もやたらと忙しい。事務処理力には自信があったが、ここんとこ年齢による体力、集中力の低下、抱える案件も多くなりすぎていて、どこかで何かが抜け落ちてるんじゃないかと不安になる。頭の中で煙が噴き出しているのがわかる。

しかしミシェル・ヨーは還暦、慶一さんは70over、そう考えると俺などまだまだひよっこ。くーっ