日々の泡。

popholic diary

2023年2月4日~10日の話。

2023/2/4

8時半起床。布団から出たくない。ハムと玉子のホットサンドの朝食。で朝から映画館へ。MOVIX京都でパヴィン・ラバリ監督「エンドロールのつづき」を観る。チャイ売りの少年サマイはある日家族で映画館へ。スクリーンに物語を映し出す光。映画に魅せられたサマイは学校をさぼって映画館へ。チケット代が払えず追い出されるサマイだが、映写技師のファザルと知り合い母が持たせてくれるお弁当と引き換えに映写室から映画を見せてもらうことに。映画館に通いながらサマイはいつしか映画を作りたいという夢を抱き始める…。監督の自伝的映画ながらそれだけではない不思議な感触がある。「映画」に魅せられる中で、彼は映画=フィルムに映された画が光によってスクリーンに映されるという構造そのもの、映写機やフィルムという映画を構成する物理的なモノにまで想いを馳せる。時代は移り行き映写機はプロジェクターにフィルムはデータに置き換わる。映画は廃棄されていく映写機とフィルムの行く末をドキュメンタリーのように描く。物語から離れまるで工場見学の様相。このちょっと違和感のあるシーンが効いている。なんというか映画への深い愛を感じるのだ。少年の旅立ち、映画がもたらすもの、その光。いい映画だった。

映画への行き帰りにはradikoで角田龍平の「蛤御門のヘン」。ゲストは「教養としてのチャップリン」著者の大野裕之さん。これが実に面白かった!失われたカットフィルムを求めイギリスへ。突き抜けた好きに突き動かされて無謀とも思える高い壁を飛び越えていく。カットされたフィルムに残るチャップリンの姿、極限まで切って削って残ったヒューマニズム。ここ数年、傷つけない/傷つける笑いといったことがよく言われるが、大野さんのチャップリン論を前にすればその論争の薄っぺらさがわかる。そしてヒトラーとの因縁、ユーモアの力を圧巻の喋りと熱量で。大野さんの講義を聴いているような学びのある回。聴きごたえたっぷりで素晴らしかった!

www.kbs-kyoto.co.jp

続けて杉作さんの「ファニーナイト」角田さんとのコーナーを。角田さんが語る大野裕之さん。突き抜けた好きを持つ人を突き抜けて好きな角田さんの興奮が伝わる。

今日は映画1本で済ませ帰宅。缶詰のタイカレーの昼食。スパイスカレーもいいけどタイカレーも美味しいな。でちょうどテレビでやってた「映画大好きポンポさん」観る。公開時話題になってたが見損ねてたので。こちらも映画の映画。映画作りの中でも「編集」をしっかり描いていて面白かった。

YouTube「町山&藤谷のアメTube」で町山智浩さんの「イニシェリン島の精霊」解説に納得。なるほどなー。もちろん解釈は一つではないんだろうけど、監督の意図したところがわかればストンと腑に落ちる。

映画を観た人はとりあえず↓の前編から観て、後編まで観てほしい。


www.youtube.com

2023/2/5

午前中はいつものごとく妻と買い物。皿うどんの昼食食べつつ、配信でダイアン単独ライブ「まんざいさん2022」を観る。珠玉の漫才をたっぷりと。ボケのセンスというところでいえばユースケはもう最高峰。ポーカーフェイスと最小限の言葉で繰り出される狂気のボケ。あと一歩踏み越えればホラーというギリギリのところで爆笑に転じる。面白かった。

NETFLIXでドラマ「舞妓さんちのまかないさん」観る。いかにも森七菜が森七菜という感じの森七菜っぷり。まだ一話なのでこの先どうなるのか

NHK「漫勉Neo」手塚治虫回。かってのアシスタントたちとともに、手塚治虫の線や画の凄さに迫る。手塚先生に学んだことは?の問いに石坂啓さんが「戦争を美化しない」と強く答えたのが印象的。その一点はすごく大きいと思う。ヒトラーに抗ったチャップリンのように、手塚先生もまた芸術、文化の力を信じ描き続けたのだ。

2023/2/6

今日もなかなかに忙しくあっという間に一日が過ぎる。NHK+で「TV70年!蔵出し映像まつり」を観る。「ウルトラアイ」とか懐かしいな。しかしNHKの膨大なアーカイブは貴重。最近の報道の腑抜けぶりはどうしようもないけど、ドキュメンタリーやドラマがそれを補っている。70年特設サイトの充実ぶりもすごい。

www.nhk.or.jp

2023/2/7

テレビ70年記念ドラマ「大河ドラマが生まれた日」を観る。まだまだ映画が強い時代、TV黎明期の物語。アイデアと工夫そして情熱を総動員して新しい何かが生まれる時。毎週放送の本格時代劇ドラマという無理難題に奔走するテレビマン達、セットを貸してほしいという申し出に最初は拒否していたもののその心意気に打たれ協力する東映の面々がいい。面白いものを作って、観ている人たちを喜ばせたいという想いは共通。そこでみせる工夫が楽しい。よきドラマだった。

しかし今週はなぜか「エンタテイメントの力」を問うものにぶち当たる。自分もエンタメ業界の末席にいるのだが、営業という仕事柄なかなかのジレンマに陥りがちだ。営業と制作の間には高くて厚い壁がある。自分はそのどちらもを経験しているだけに複雑な思いを抱くことが多い。こんな辛い思いして稼いできたのに、こんなつまんない番組作られちゃうんだ。あるいはこんな面白い番組作ってるのになんで稼いでこれないんだ。相反する思いを抱え両者は対立する。いいものを人々に届けたいという想いは同じはずなのに。今もなおお悩み中である。

2023/2/8

午前の半休をとって朝から定期検査のため病院へ。30分安静にしたうえで採血というのがあってこれが結構大変。ベッドに寝かされ、本や携帯はもちろんダメ、動いちゃいけない、寝返りはしてはいけない、寝てもいけない、起きてもいけない、飯はうまく作れ、いつもキレイでいろ、できる範囲でかまわないから…ま、チョット覚悟はしておけ…とこうなる。(しかしもはやこのギャグも50代以上にしかわからんだろうな)

あとはCTスキャンなど済まし思ったより早く終わったのでさっさと帰宅。会社行くまで時間があるのでNHK+でドラマ「大奥」を観る。仲里依紗の綱吉編に突入。綱吉に対するはすっかり曲者役が板についた山本耕史で面白くなりそう。

アカデミー賞の短編ドキュメンタリーの候補にもなっているという短編ドキュメンタリー「Haulout」を観る。北極の小屋に男が一人。25分という短編でセリフはほとんどない。とにかくすごいという噂だけで前知識無く観て驚いた。ある瞬間から口あんぐりで釘付けになってしまった。とにかく衝撃の映像で戦慄した。地球温暖化と言われて久しいが、実際ここまで来ているのか!やばいぜ地球。というかやばいぜ人類。ここにあるのは人類の未来かもしれない。ぜひご覧ください。

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2023/2/9

YouTube東映チャンネルで中島貞夫監督「狂った野獣」を観る。かねがね噂には聞いていた映画だが、初めて観た。銀行強盗に失敗した二人組がバスジャック。そこに乗り合わせた人々の人間模様。さらにバスジャック犯よりやばい奴が乗っていてというバス暴走パニック。スタント無しで渡瀬恒彦自ら運転する大型バスが大横転!何度となくそのやばさは伝え聞いていたがこれがそれか。そのシーンもだが、全編通してとにかく面白い!78分間、シーンはほぼ暴走するバスの中。バスジャック犯・川谷拓三の悲哀、乗り合わせた激ヤバ野郎・渡瀬恒彦の凄まじいアクション、渦巻く人間模様、そこにある人間の下衆っぷり。「狂った野獣たち」と言いたくなる痛烈なラスト。面白いなー。

しかし日々上がってくる政治のニュース。本当に嫌になる。「誰も傷つけない笑い」よりも今必要なのは「誰も傷つけない政治」だろう。一人でも多くの人を幸せにする。民主主義とは多数決ではなく、誰一人とりこぼさないようにする姿勢だ。弱者や少数者、零れ落ちる人々にどれだけ寄り添い救えるか。それが政治が目指すべきところじゃないのか。ヘイトをまき散らし弱者叩きに終始する、挙句に差別主義者を差別するななんて馬鹿げたことを言い出す。いい年こいた政治家が平気でそんなこと言い出すんだからたまげるというか呆れる。屁理屈にも程遠いクソ理屈。もういい加減にしろよと言いたくなることばかりだ。腐りきった世襲政治家がやりたい放題、そんな政治家に群がる金魚のフンが中抜きし放題で、国民には増税に値上げ、同性婚夫婦別姓も許さず、わずかなポイントで役に立たないカードを押し付けたりと嫌がらせばかり。なんだこの腐敗しきった政権は。

2023/2/10

やっと金曜。いろいろあってここんとこ忙しくなかなか落ち着かない。

バート・バカラック死去の報。偉大なる作曲家、御年94歳の大往生。バカラックの名前を初めて知ったのは高校生の頃、ピチカートファイヴ経由でだ。86年、ピチカートの1stアルバム「カップルズ」。それは僕が初めて触れた「ソフトロック」の世界。当時の中高生たちはどんな音楽を聴いていたかというと、まず84~86年ごろは空前のヘビメタ・ハードロックブームが訪れる。そして86~88年ごろはBOØWYが大人気となりバンドブーム到来。そんな中、ポップなメロディにソフィスティケイトされたサウンド、流麗なストリングスにささやくようなボーカル…って誰が聴くねん!とさえ思われていた時代だった。ソフトロックを好んで聞くような奴は東京ならいざ知らず田舎の高校ではクラスに一人、いや学校に一人いるかいないかだったんじゃないか。僕はというと発売日の前日にフラゲした「カップルズ」にいたく感激。毎日繰り返し聴いて、ソフトロックとよばれる音楽を日に日に好きになっていった。根っからの文化系で、バンドを組む友達もいなかった自分にはその音楽はとてもしっくりくるものだった。88年に出た「A&M COMPOSERS SERIES VOL.1 BURT BACHARACH&HAL DAVID」。サエキけんぞうさんによるライナーノーツを繰り返し読みながらよく聴いた。当時買っていた音楽誌「テッチー」での特集も勉強になったなぁ。90年代に入ると渋谷系ブームが到来、ついにソフトロックの時代がやってくる。バカラック関連の再発盤やコンピ盤が数多く出て僕も随分買った。普遍的で心に残るメロディ、カラフルでゴージャスなアレンジにもシンプルなアレンジにもそのメロディは映える。今夜は久しぶりにCDを引っ張り出してきて聴こう。

夜テレビで「Aスタジオ」ゲストはシム・ウンギョン!名作「サニー」から早12年。バラエティでここまでの日本語対応できるとは凄すぎる。「えーやばい」「うわーなんですかこれは」などとっさの反応すら完璧に日本語で喋っていて感心した。母国語以外の言語で芝居するのもとてつもなく凄いこと。それにしてもちょっとした表情や動きにもユーモアが感じられて、観ていて幸せな気分になったなぁ。

それではここで大好きな彼女の動画を。

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