日々の泡。

popholic diary

2021年10月2日~8日の話。

2021/10/2

朝から映画館。電車乗り継ぎMOVIX京都まで。

𠮷田恵輔監督「空白」を観る。万引きをスーパーの店長に見つかり追いかけられた末、交通事故で死んだ少女。少女の父は激しく店長を追求。事件を巡り過熱する報道、“空気”が当事者たちをさらに追いつめる。父と店長、対峙する二人はそれぞれに喪失感を抱えている。怒りと暴力でしか埋める術を知らない父、埋めることができず穴が開いたままの店長。娘を失って当初は感情のままに怒りと暴力で無軌道にふるまっていた彼だが、ある出来事がきっかけでいかに自分が娘のことを知ろうとしていなかったかを知る。自分が感じている喪失感の源流を見つめ始めるのだ。寺島しのぶ演じるスーパーのパート草加部は映画の中でも最も印象的な人物だ。二人以上に喪失感を抱えているのが彼女で、狂気じみたまでの正しさでその穴を必死に埋めようとしている。正しさに囚われた彼女はこの映画の中で最も印象的であると同時に悲劇的だ。彼女もまた「正しく傷つけなかった」一人なのだろう。ラスト、父と店長にはちょっとした救いが訪れる。息が詰まるほどの重い空気が時間をかけゆっくりと晴れていく。彼女にもいつか救いが訪れるのだろうか。

映画観終わり少し界隈を散歩。学生時代バイトしていた二条麩屋町のあたり。昼休みの通った白味噌ラーメンの店も、美味しい定食屋も食後のコーヒーを飲んだ喫茶店も、今はもうなくなっていた4半世紀も前だもんな。

なんとなくラーメンが食べたい気分になり検索して近くにあったラーメン屋に。上品な塩ラーメン。美味しかった。

で次はお初の映画館、アップリンク京都へ。

春本雄二郎監督「由宇子の天秤」を観る。3年前の女子高生自殺事件を追うドキュメンタリーディレクターの由宇子。TV局との軋轢の中、事件の真相に迫る由宇子だが、父が経営する学習塾で起きたある出来事によって自らが当事者となっていく。観ている間も観終わってからもずっと心が揺れ続けている。凄まじい作品だった。天秤を揺らしているのは由宇子だけじゃない。すべての人間はそうして生きている。誰かの天秤が均衡を保とうとすれば、また別の誰かの天秤が揺れる。尤もらしい言い訳で折り合いをつけ、アンバランスな均衡を保とうとする。社会は大きな天秤の中で揺れ続けているのだ。映画は決して結論を出さない。誰かの正解が全てではなく、誰もがの正解ではない。社会に生きるとは誰もがが当事者であり常に天秤は揺れ続けている。真実はいとも簡単に目の前をすり抜け、均衡を崩す。観終わった後、カメラは観ている者の方を向き、問いかけるのだ。

報道という名の暴力が描かれるところは「空白」ともかぶるが、よりリアルに突き付けてくる。ドキュメンタリーのような語り口で、観る者を傍観者にはさせない力がある。うん、これは凄い映画を観た。

映画館への行き帰りにはradiko。いつものごとく角田さんの「蛤御門のヘン」。「東野幸治のホンモノラジオ」では東大卒のマネージャーに教える形で語られる東野さんのTV語り。昭和~平成のTVバラエティ史がおもしろい。北野誠さんの代演を水道橋博士さんが務めた「ズバリサタデー」を追っかけで。こちらにも角田さん。二人の共演はファンとして嬉しい。

帰宅して「キング・オブ・コント」。一発目の蛙亭、好きだなぁ。男性ブランコはずいぶん昔、公開放送に出てもらったことがあるが、こんなに面白くなってるんだな。優勝の空気階段は文句なし。面白かった。

2021/10/3

今日は妻の実家で義父の7回忌法要。家中の窓や扉を開けっぱなしにしてディスタンス取りながら。コロナ以前は義兄夫婦や甥っ子家族など皆集まってよく食事などもしていたが、しばらくそんな機会がなかったので久しぶりに。酒豪の義兄に勧められるまま、久々にビールを。早々に解散も帰宅後、酔いが回って昼寝。

2021/10/6

遅すぎる夏休みで、午後半休。ユナイテッドシネマでキャリー・ジョージ・フクナガ監督「007 NO TIME TO DIE」観る。ずいぶん待たされたがやっと公開。ダニエル・クレイグのボンド引退作となれば観ないわけにはいかない。いやーたっぷり170分。千鳥風にいうなれば大007の大エンタメじゃないの。大アクションの、大スケールで見応えありっ!若干大味なところも含めて、やっぱり映画館で観る大映画は最高。

夜、「水曜日のダウンタウンおぼん・こぼん。濃厚な人間ドラマ、愛憎入り混じる漫才コンビという奇妙な関係の奥深さ。人間への興味を掻き立てられる物語だったな。

2021/10/7

毎日昼休みに読む水道橋博士さんの日記。

note.com

ニッポンの社長のコントから筒井康隆を、樋口毅宏さんとの会話から中島らもの一節を、おぼん・こぼんから「バッドニュース・グッドタイミング」を。この感じがたまらなく好きだなぁと思う。観たもの、聴いたもの、積み重ねてきたものが繋がっていく。何を観ても何かを思い出す。その感じ。

そして「日常は腐り、肉体は潰えるから、本をバトンにして文で世代を超えて繋げる。日々が辛くて儚いからこそ、日常を強化するため、日記を書いて、ため息を封印して、
日常に劇を見つけるのだ。」という一節。

博士さんの日記復活に合わせて、今年に入って僕もこの「日々の泡」定期更新を復活させた。正直言うと、日常なんて本当に何もなくて、面白いことなど何も起こらない。ぼんやりと曇った目と頭では何も見えずただ漫然と時が過ぎていく。だから日記を書くことで少しずつ解像度を上げ、世界を、自分を観てみようと思う。「日常に劇を見つける」心に刻もう。

それからこれも昼休みに読んでる「メルマ旬報」にて。荒井カオルさんの連載でヤン・ヨンヒ監督の新作「スープとイデオロギー」の話。映画祭の上映に現れたキム・ユンソクさんの逸話に痺れる。キム・ユンソクさんと言えば「チェイサー」で注目を集め、今や出る映画全てが大ヒット。最近では自ら監督として「未成年」という秀作を発表している。この韓国随一の名優が在日コリアンの歴史と現在に強い関心を持ち、様々な映画や小説、演劇をチェックしているという。いやはや素晴らしい話。ここまで徹底的に勉強しているんだなぁ。ますますファンになった。

2021/10/8

朝から仕事がらみの講習会で市民会館に缶詰。夜、明朝からのイベント仕事の為に、会社の後輩たちと高速飛ばして長浜前乗り。コロナ以降は会社の飲み会も一切なく、イベント仕事もほぼなくなったので、なかなか後輩たちとゆっくり話す機会も少ない。20歳も年の離れた後輩は子供に近い年齢。普段仕事してると正直物足りなさも感じるんだが、それは自分自身が興味持って観ていないからだけなのかも。車中でいろいろ話しながら、それぞれ個性があり、興味を持ってる分野があり、いろいろ考えてるんだなと気付く。

 

今週聴いた音楽は