日々の泡。

popholic diary

2015年4月のTweet

2015/4/4

長い1週間が終わった。月~金の朝ワイドに加え、4月から2本の新番組立ち上げ。調整に次ぐ調整。器用貧乏ぶりが災いしてかどんどん自分の得意分野から遠ざかっていくなぁ。しかしここを乗り切って、いつか「サブカルくそ野郎」という本来の自分を活かした番組を立ち上げたい。

ということで映画。松尾スズキ監督「ジヌよさらば~かむろば村へ~」観てきた。小さな寒村にやってきた「お金恐怖症」の男・タケ。世話焼きの村長や神様と呼ばれる老人などが巻き起こす騒動。田舎の人々が巻き起こすほのぼのコメディーな訳はなく、松尾スズキ印の狂気と毒気が不穏に漂う人間喜劇。田舎特有のねっとりとした淫靡さと暴力性。そんな空気を漂わせた中で、どこか狂気じみた物語が展開される。そして浮き上がってくるのは人間哲学。当たり前のようでいて深い哲学の物語。じわーっと沁み込んでくるような映画。でもちろん笑えるコメディーにもなっている。松田龍平の身体の動きがまず可笑しい。松尾スズキが生み出す動きのおかしみを、松田龍平の長い手足がさらに過剰に表現している。大人計画メンバーが醸し出す突発的で暴力の匂いがする不穏な笑い。松たか子の滲み出るエロスもいい。

午後からは京都みなみ会館でアンソニー・チェン監督「イロイロ ぬくもりの記憶」観る。舞台は1997年シンガポール。共働きで忙しい両親とやんちゃな一人息子ジャールー。そんな一家のもとへフィリピン人のメイド・テレサが住み込みでやってきて…という話。閉塞する現代社会に浮かぶ孤独な魂の物語。多忙な両親、寂しさを感じている少年、子供を置いて出稼ぎにきたメイド。それぞれがそれぞれの孤独を抱え、時にぶつかりながら生活を共にする中で寄り添い合う。生活とはいつでもブルーなものだけど、誰かとの関わりがちょっとした温もりとなる。小さな家族の物語を描く中で、時代や国の風景が浮かんでくる。多くの民族、文化が交差するシンガポール。その国の風景、匂いを感じられる映画が好きだ。この映画はまさにそんな作品。

真夜中の映画ツイートはまだ続く。もう一本。マー・ジーシアン監督「KANO 1931海の向こうの甲子園」やっと観れた。舞台は1931年日本統治下の台湾。嘉義農林学校野球部KANO。日本人、台湾人、台湾原住民が揃う弱小チームが日本人監督・近藤のもと甲子園を目指すという実話を描く。基本的に「感動作」を謳う映画は疑った方がいいと思ってるし、実際酷いものも多いのだが、これは真に真っ当かつ本物の「感動作」。素晴らしかった。民族の壁を越え、チームとして成長していく姿、一つの想いが人々の心を動かすまさに感動作。「野球」というスポーツが軽々と民族の壁を飛び越えていく様、試合の興奮が映画の興奮となり、映画が物語同様に民族の壁を越えていく。3時間超えの作品ながら長さは感じない。僕は全く野球わからないトンチンカンな男だけど、心動かされたなぁ。

2015/4/5

今日は雨なのでおとなしく映画を一本。松岡錠司監督「深夜食堂」観てきた。漫画、ドラマでお馴染みのシリーズの映画版。ドラマ同様丁寧な作り。ほっこり優しい現代のファンタジー。とにかく美味いものを食いたくなる。舌で観る映画。3つのストーリーで構成。一話目に高岡早紀、3話目には筒井道隆。監督・松岡錠司とくれば「バタアシ金魚」。ってもう25年も前の映画なのか。学生の時観たなぁ。しかし爽やかな美少女だった高岡早紀の色気ダダ漏れぶり。25年ですか…

2015/4/10

大阪での仕事後に映画を一本。チャン・ジン監督「ハイヒールの男」観てきた!屈強な肉体と驚異の戦闘能力で犯罪組織から「サイボーグ」と呼ばれ恐れられる刑事・ジウク。しかし彼の心の奥には一つの秘密があった。-女性になりたい-!!嘘でしょってな設定。しかしこれがまたとてつもない映画だった。のっけからアイデア満載のやりすぎバイオレンスシーンが炸裂。クールでハードなアクション満載の韓国ノワールの様相を呈しながら、主人公は1人部屋で女性になることを夢見て女装する。徹底してシリアスながら思わず笑うシーンも多数。それでいて主人公の抱える苦悩に泣ける。とにかくとんでもない映画。やり過ぎハードコアバイオレンスアクションの中にオフビートな笑いあり、さらに切なすぎる物語と複雑に絡み合っていくアウトレイジな展開。極端な設定ながら強引に観客を巻き込み魅せる韓国映画の凄み。参りました。主演はイケメン俳優チャ・スンウォン。屈強な肉体とハードなアクション、女性を夢見るオネエな心を大真面目にがっつり快演。美しさと強さが交差する女装姿での壮絶なアクションシーン。そしてラストのあの表情。唸ったなぁ。それから物語のキーとなるヒロインを演じるのは「愛のタリオ」での名演も記憶に新しいイ・ソム嬢。完璧なスタイルにピュアさと妖艶さを併せ持つ一重瞼が美しい演技派。ポスト、ペ・ドゥナと呼びたくなる。すっかりファンになったなぁ

2015/4/11

朝から映画館へ。ウディ・アレン監督「マジック・イン・ムーンライト」観てきた。舞台は1920年代の南仏。皮肉屋で現実主義のマジシャンと若くてチャーミングな占い師。サニー・サイド・オブ・ウディアレンなロマンティックコメディ。80歳にしてこの軽妙さ。どんだけ現役なのだ。ウディ・アレンが乗り移ったかのように喋りまくるコリン・ファースと若き日のダイアン・キートンのように溌剌とチャーミングなエマ・ストーン。2人が演じる恋の妙味。例えばこの前の月9「デート」なんかが好きな人も楽しめる仕上がり。

続いてもう一本。アレハンド・G・イニャリトゥ監督「バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」観る。今は落ちぶれた、かってのヒーロー映画のスター俳優。再起をかけブロードウェイの舞台に立とうとするがってな話。カット割り無しで文字通り一気に駆け抜けるエキサイティングな映画!120分間一気に駆け抜ける映像で見せる負け犬男のONCE AGAIN映画。人生にカット割りは無い。容赦なく未来はやってくる。その未来が明るかろうが暗かろうが、向かい風の中進むしかないのだ。鳴り響くドラムの音に鼓舞され、荒ぶる負け犬の魂に胸が熱くなった!主人公を演じるのはまさにかってのヒーロー映画のスター俳優、マイケル・キートン。顔に沁み出た味、鬼気迫る演技は圧巻。主人公の娘役にエマ・ストーン。「マジック・イン・ムーンライト」とは真逆の危うくはすっぱな表情を見せる。

映画「バードマン」は滋賀県では5月に大津アレックスシネマさんで公開。滋賀でもがつんとした映画を観たい。そんな環境づくりのちょっとした企てを仕掛け中。

2015/4/12

選挙の後に映画を一本。成島出監督「ソロモンの偽証 後篇・裁判」観てきた。前篇の謎を回収する謎解き篇、動きの少ない裁判シーン中心なれど160分があっという間に感じた。とにかく「顔」の映画だな、これは。面構え、眼差しがなによりも饒舌に物語る。またまた少年少女たちの不器用な真っ直ぐさにほだされた。主人公、藤野涼子の聡明そうなおでこの形と真を射抜く眼差しが素晴らしい。座長として映画を引っ張っていたなぁ。

映画「ソロモンの偽証」観ながら、中学生という時期は正しさと正義が最もイコールで繋がる時期なのかもしれないなどと思う。良くも悪くもそれ以降は、そうでもないことに気づいて、まぁ逆に荷が下りる。正しさが人を追い詰めるなんてこともあるからねぇ。まぁ、中学卒業して30年も経つと、腹の中で舌出しながら平気で土下座とかできちゃうもんな。昔、シティボーイズのコントで「心から謝る大人なんかいるかよ」みたいな台詞があって、随分気が楽になったもんだ。

2015/4/20

雨の月曜。なんだか憂鬱になりますな。週末には英映画を2本。ウベルト・パゾリーニ監督「おみおくりの作法」観た。孤独死した人の葬儀を執り行う役所の民生係、ジョン・メイの物語。寡黙で几帳面、そして孤独な男が静かに誠実に死と向き合う。物悲しくもいい映画だった。主演はエディ・マーサン。ザ・英国俳優。癖があって、癖になるいい俳優さんだなぁ。名作「思秋期」での鬼畜DV男役が凄く印象に残ってたんだけど、真逆な今回の役も人間の奥深さが感じられて実に素晴らしかった。

もう一本は午前十時の映画祭からスティーブン・ダンドリー監督「リトル・ダンサー」。2000年の公開作。名作は色褪せないということだなぁ。今更言わなくても皆さん知ってるでしょうが、申し分ない傑作。夢、希望、家族、友情…なんて言葉を挙げていくと胡散臭いけど、やっぱり胸打たれる。

2015/4/25

小西さんプロデュースの「アイドルばかりピチカート」。ピチカートはデビューから解散まで全てリアルタイムで聴いてきたバンド。改めて楽曲の良さに感激。改めて大好きだなと思う。バニビ「私のすべて」、ワンリルキス「万事快調」そしてNegicco「マジック・カーペット・ライド」がお気にいり。

そして今更ですが、もはや邦楽はNegiccoしか聴いてないぐらいにはまっている。1stも2ndもホントにいい曲しか入ってない。3人の声のバランスも最高。ずっとずっと聴いてられる。

2015/4/26

朝一で映画。初日初回で北野武監督「龍三と七人の子分たち」観てきた!芸人・ビートたけしと監督・北野武のセンスと技が見事にスイングした娯楽作にして傑作コメディ!「くだらねぇ~」という最高の褒め言葉を送りたくなる爆笑シーン多数。「こんなジジイは嫌だ」言わば「たけしメモ」の映画化。最高。次々と繰り出される不謹慎で毒気があって、くだらない笑いの数々。老人もガキもやくざも右翼も不祥事も社会問題も、そして生も死も、所詮人間のやるこたぁ全部喜劇だ、笑いのネタだとビートたけしが吼えている。これぞ「毒ガス」映画の決定版!たけちゃんかっこいい!「アウトレイジ・ビヨンド」のさらに向こう側。ぐるっとひっくり返った感じ。懐古趣味とはまるで違う懐かしさ。懐かしさが新しさに転じる巧妙なる痛快さ。鈴木慶一手掛ける音楽がまたそれに見事に呼応しているのだ。先鋭と郷愁が同居する映画と音楽の共犯関係が凄い。ジジイたちが皆、最高。たけし軍団で目指した団体芸の最新型にして集大成。そして藤竜也近藤正臣中尾彬漫才トリオぶりがまた素晴らしい。特に豪快なリーダーと大ボケをつなぎ、回す近藤正臣さんの巧さに感激。ジジイを取り巻く安田顕勝村政信も素晴らしかった。しつこく映画「龍三と七人の子分たち」。笑いが詰め込まれたコメディながらどこか漂うやるせなさ。悲しみを胸の奥に、人生を笑い飛ばす“粋”。映画を撮りながら北野監督は、師匠・深見千三郎のことを想ってたんじゃないか。と勝手な想像をしている。