日々の泡。

popholic diary

Black&White

朝から、久々に映画を一本。西川美和監督「ディア・ドクター」観に行く。

過疎化が進む山あいの小さな村。村中の人々から慕われていた医師・伊野が突然謎の失踪を遂げる。映画は小さな村のたった一人の医者として献身的に働き続ける伊野と村の人達の関わりを映し出し、失踪に繋がっていく「一つの嘘」をあぶり出していく。-ってなお話。いやー実にいい日本映画。本物とニセモノとは?何が罪なのか?様々な疑問を投げかけながら、揺れる人間の心を丁寧に描いていく。前作「ゆれる」もそうだったが、人間という多層的で多面的な存在を、それだからこそ人間なんだと見つめる視線はもう絶対に信用できる。記号化された薄っぺらな登場人物ばかりの映画が最近は多いからねぇ。で鶴瓶師匠、今年は主演男優賞でしょ。表と裏がない交ぜになった伊野という男を見事に体現。ユーモアの隙間に時折のぞく絶対的な緊張感。目の奥が笑っていない鶴瓶師匠の凄味からさらに踏みこみ、心の内の弱さや葛藤までも引き出した演出力に拍手。そして脇を固める役者が凄い。瑛太余貴美子(「おくりびと」よりこっちのほうが数倍スゲー)、香川照之(巧すぎるぜ!)、松重豊笹野高史…と日本映画の屋台骨を支える役者陣が集結。なんたる贅沢。そしてなんといっても八千草薫さん。八千草さんが演じるかづ子と伊野とのシーンは、ある種ラブシーンであり、その清廉な美しさに潜むエロテシィズムとロマンティシズムにグっときた。そして音楽使いの誠実さも嬉しい。ラストでエイ○ックスやらソ○ー丸出しの音が流れてきたら台無になっちゃうもんね。