日々の泡。

popholic diary

2022年10月8日~14日の話。

2022/10/8

8時半起床。うまく起きれなかった。ハムエッグとレーズンロール、ヨーグルトの朝食。でアップリンク京都へ。まずは一本、ライリー・ステアンズ監督「デュアル」を観る。突然の病で余命宣告されたサラ。サラは残された遺族の為にとクローンを作り出すプログラム「リプレイスメント」を決断。サラは残された日を、作られたもう一人の自分=クローンとの引継ぎに充てるも思いがけず奇跡的に病は完治。すでに引継ぎはほぼ完了しているが、クローンとの共存は禁止されている。もし両者が生存を希望した場合はどちらかが死ぬまでの決闘裁判を行わなければならない…ってなSFスリラー。主演はカレン・ギラン。二人のカレンが武器を持つポスターから自分VS自分の殺し合いアクションかと思いきや「思てたんと違う」。クローンに恋人や家族、何もかもを奪われてしまったサラは決闘裁判の日に向けて殺しの訓練を受け始める。当初は何もかもを奪われ復讐心に支配されていたサラだったが、都合のいい彼女を求める恋人、自分を押し付けてくる毒親から解放され逆に活き活きと本来の自分の姿を取り戻しはじめる。その反対に何もかもを奪いうまくやっているように見えたクローンだったが恋人や親に合わせるうちにかってのサラのように生き辛さを植え付けられる。映画は不穏な空気が漂い、ギリギリと神経を責め立てるように進む。そして二人が選んだ結末は…後味が悪い絶望が残るラスト。少し不思議でどこか諦念が漂う藤子F不二雄の短編のよう。後からいろいろ考えてしまうタイプの映画だった。

それから地下鉄で今出川まで出て出町座へ。まずは近くのパン屋「ボナペティ」へ。2時過ぎだったのでお目当てのパンはもうなかったけど、とりあえず腹ごしらえ。でナ・ホンジン原案・プロデュース、バンジョン・ピサンタナクーン監督「女神の継承」をやっと観る。舞台はタイ東北部。祈祷師・ニムを追うドキュメンタリー番組制作の体で映画は始まる。やがてニムの姪であるミンが謎の体調不良に見舞われ、人格が変わったかのように暴力的で不可解な行動をとり始める。彼女に憑りついたのは女神か悪魔か。いやー面白かった!ここまでやるかというおどろおどろしさ。ミンを演じる女優ナリルヤ・グルモンコルペチは超絶美少女なのだけど、ほぼ四つん這いに白目で血みどろ。最終的に〇〇や××を喰いちぎっていた。凄い。ナ・ホンジン監督作「哭声/コクソン」での印象的な呪術シーンをより濃厚に膨らませた壮絶さ。まさにこちらは藤子不二雄Aのブラックでひたすら不気味な短編のよう。

夜は「キングオブコント」。濃縮された演劇。脚本、演出、演技どれもがハイレベルで素晴らしい。個人的には「や団」が良かった。

2022/10/9

今日も8時半起床。もうちょっと早く起きたいとこだったけど、ま、寝られる日に寝ておこう。午前中、妻と地元のお祭り、大津祭りへ。3年ぶりの開催。天孫神社でベビーカステラを買って、妻とプラプラと歩きながら見物。止まっていた町が動き始めた感じ。

午後は今日も「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」。ウ・ヨンウはソウル大ロースクールを首席で卒業、弁護士試験でも高得点を得た天才弁護士。だが彼女は自閉症スペクトラムであり日常生活には様々な困難が伴う。大好きなクジラの話をしだすと止まらないし、毎日食べるのは海苔巻きだけ、回転ドアをうまく通ることもできない。そんな彼女が大手弁護士事務所「ハンバダ」で新人弁護士として成長していく物語。出生にまつわる秘密、同僚との恋、自閉症者であるがゆえの差別や偏見、法廷で取り上げられる数々の社会問題などなど一つのドラマの中にいくつもの要素が入っていて、笑い、泣き、きゅんとしたかと思うと深く考えさせる。ウ・ヨンウが務める事務所を大手事務所にしたところがうまい。弱者を守るだけでなく時には大企業側に立ち弁護する必要もある。苦い勝ちもあれば負けてすっきりすることもある。そんな中で彼女はゆっくりと成長していくのだ。彼女を取り巻く個性的な登場人物もみなそれぞれに多面性があり魅力的だ。ウ・ヨンウを演じるパク・ウンビンをはじめ役者陣も素晴らしく、もうずっと観ていたいドラマですっかりはまった。残り2話まできたが観終わりたくない。

2022/10/10

休日。8時起床。朝のうちに妻と買い物。午後アマプラでベンジャミン・リー監督「画家と泥棒」を観る。チェコ出身のハイパー・リアリズム画家バルボラ。ある日ギャラリーから彼女の絵が盗まれる。やがて捕まった犯人のカールにバルボラは接触し、あなたをモデルに絵を描かせてほしいと依頼する。窃盗の被害者である画家からの思いがけない依頼に戸惑い訝し気だったカール。しぶしぶモデルを務め完成した絵画を観た瞬間、ギャング団に入り、8年もの刑務所生活を送ってきたカールの目に涙が溢れる。自分の肖像画を前に子供のように泣きじゃくるカール。それ以来「画家と泥棒」には奇妙な友情が芽生える。そんな二人を追ったノルウェードキュメンタリー映画。二人の友情は深まるほどに危うくなっていく。画家は彼を描くことにのめりこむあまり生活が破綻しはじめ、泥棒は再び犯罪に手を染め交通事故の末、大怪我を負う。愛情に飢え、痛みを抱えた二人が「絵」を通じて深く深くつながっていく。実に興味深いドキュメンタリーだった。

2022/10/12

中川家の「ザ・ラジオ・ショー」オープニングでさんまさんの話。寝ているとき以外はすべて「明石家さんま」。そして寝ている姿をだれにも見せないという徹底ぶり。お笑い界という異界に生きる怪物の生態を中川家が嬉々として喋る。面白くないわけがない。番組ゲストは藤井隆。同期であり、ため口で喋る中川家とのやり取りが新鮮。藤井隆の狂気がにじみ出る常識人ぶり。こちらもすこぶる面白い。

2022/10/13

朝から外回り。昼は久々にブロンコビリーでハンバーグランチ。ドリンクバーのクーポンがあったのでしっかり使う。食前にコーラ飲んで、食事中にウーロン茶飲んで、食後はコーヒーにジェラート。貧乏性丸出しで恥ずかしい。

宇多丸さんのムービーウォッチメン。「NOPE」「LOVE LIFE」「さかなのこ」「ブレッド・トレイン」「秘密の森の、その向こう」を答え合わせ的にまとめ聴き。映画は観るのはもちろんだけど映画評を見聞きするのも楽しい。美しい評論には発見があるし、自分の見方をアップデートしてくれる。

2022/10/14

一日バタバタと忙しい。最近はあれこれやりすぎると何か抜けてしまうので慎重に。昔はそんなことなかったが、最近は自分の記憶に自信が持てない。

 

2022年10月1日~7日の話。

2022/10/1

7時起床。本日もイベントで休日出勤。会社に出て営業車で水口まで。そこから準備してイベントして片付けて夕方終了。昼食どころか椅子に座ることもないままでさすがに足が痛い。帰りに一緒に行ってた後輩とラーメン屋へ。今日のイベントを最後に退社、転職する後輩と話しながら。さよならだけが人生だ。

2022/10/2

8時起床。ベーコンエッグとトースト、ヨーグルトの朝食。昨日の疲れが取れない。しばしぼんやり。「サンジャポ」観つつ、想うとこあり。太田さん、勉強不足というより言葉足らずでもどかしい。長尺で喋るラジオを聴いたり、ちゃんと書かれた文章を読めば太田さんが教団擁護じゃないことはわかるのだが。テレビの短時間で喋るには、あまりに整理もされてないし、喋れば喋るほど頑なに見えて、擁護に聞こえてしまっている。例えば先ごろ発売された「芸人人語」のあとがきを読むだけでも随分印象は変わると思う。そこには言葉を信じて必死で教団と戦ってきた弁護士の方々に対するリスペクトが、それに対しての自分やテレビがいかにダメだったかが真摯に書かれている。また「爆笑問題カーボーイ」では冗談めかしながらも談志師匠の名前を出しての批判に対してはっきりと違和感を表明している。もちろん全部が全部、太田さんが正しいとは思わない。あまりに全方位的に考えすぎて、整理されないまま喋るから結果「全部間違ってる」となってしまうのも事実だろう。でも簡単に断罪する気にはとてもなれないのだ。

午後は妻と「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」を。法廷劇にハラハラし、恋愛要素にキュンとし、描かれる社会問題に考えさせられる。ますますの傑作ぶりに唸る。

2022/10/3

加藤千晶とガッタントンリズムのライブを配信アーカイブで観る。最新アルバム「HEP-HICK JOURNAL」のレコ発ライブ。加藤千晶さんの音楽と出会ったのは97年、メトロトロンから出た1stAL「ドロップ横丁」から。それからずっと聴き続けている。加藤さんの音楽は人間の可笑しさと愛おしさに溢れている。ガッタントンリズムを率いての近年の活動でそれはさらに拍車がかかっている。ちょっとした切なさも、愉快なユーモアもバンドの音で増幅されて、聴く者の心に豊かに響く。可笑しくて、愛おしくて、楽しいライブ。スペシャルゲストは吾妻光良!人間味の塊のような歌とギターを聴かせる音楽家。相性ばっちり。アルバムにも収められたデュエットナンバー「フラれて泣くのはまだ早い」がとにかく素晴らしい。傘をなくした女性と傘を拾った男性。1本の傘を巡ってそれぞれの目線で歌われる。顔も名前も知らない、出会うことすらない二人の想いが、なぜか不思議とかみ合って物語が生まれる。聴き終わるとちょっとした演劇を観たような心地よい満足感が胸に広がる。まさに人間の可笑しさと愛おしさに満たされるのだ。

2005年、アルバム「おせっかいカレンダー」発売時に、会社が出してる情報誌に書いたアルバム評を発掘したので載せておこう。

加藤千晶「おせっかいカレンダー」
CM音楽やNHK教育の「ピタゴラスイッチ」等への楽曲提供で知られる加藤千晶、5年ぶり3枚目のアルバムがこの「おせっかいカレンダー」。そのタイトルが示す通り、一月から始まりなぜか十三月で終わる音楽のカレンダー。部屋に貼ったお気に入りのカレンダーみたいに、生活のそばにあって、ふっと心を優しくしてくれる、そんなアルバム。彼女の作る音楽は、決して派手なものじゃないし、何百万枚と売れるものじゃないかもしれない。でもここには量産型の音楽モドキとはまるで違う「本物の音楽」がある。毎日の生活の中から、そっと生み出された音、言葉が楽しげに舞っている。鳥羽修や高橋結子といった腕が良くって、ハートのある音楽家達と奏でられる音楽は、とても小さいけど、しっかり愛情が込められてる。そう、街の小さなパン屋さんが作る、懐かしくて温かでとてもおいしいクリームパンみたいにね。独特の情緒とユーモアが心の奥の柔らかな部分に触れる時、加藤千晶の音楽がそこにあることの喜びを知るだろう。まずは自分の耳で聴いてみて。

ここで書いたことは今もまだ有効で、聴けば聴くほど加藤さんの音楽がそこにある喜びを感じる。

2022/10/4

radikoで伊集院さんの「深夜の馬鹿力」聴く。笑いながら泣き、泣きながら笑うような素晴らしい放送。

会社帰りに耳鼻科へ。イヤフォンのし過ぎか、耳かきのし過ぎか、右耳がどうにも痛痒いので見てもらう。軟膏を塗ってもらい、薬を処方してもらう。しばらくはイヤホン禁止で。しかし耳鼻科に行くのは何年ぶりか。小学生の頃、鼻炎で近所の耳鼻科に通ったことを思い出す。鼻の穴に機械を突っ込んで砂時計をひっくり返して3分ほど洗浄するのだが、同じクラスの女の子が病院に来ていて、その姿を見られるのがひどく恥ずかしかった思い出。40年以上前の話だな。その病院の待合室で置いてあった手塚治虫の「紙の砦」を読んだ記憶も残っている。

2022/10/5

テレワーク日。とはいえ午前中は得意先で会議。テレワーク飯は久々にナポリタンを作って。ピーマン、玉ねぎ、人参にハム。下品なほどのケチャップで大満足。休日出勤が続いたので午後は代休にしたが、電話やメールがちょこちょこ入ってくるので落ち着かない。

HDにたまった録画を整理。2009年の三谷幸喜東京サンシャインボーイズ公演「returns」を2022年になってやっと観る。閉館となるシアタートップスの為に15年ぶりに集まった東京サンシャインボーイズ。ラストは「15年の休憩に入ります」の影アナ。ってその2009年からもう13年経ってるよ。もはや最近は月日の経つのが早い。録画して観忘れたまま、10年以上平気で経ってる。買ってから30年ぐらい寝かしたままの本とかあるもんな。そろそろちゃんと整理しなきゃ、観ないまま、聴かないまま、読まないまま、死んじゃう。

2022/10/6

そういえば新しい朝ドラが始まっている。最初は子役からという王道スタイル。お母さん役の永作博美は同い年。だからどうってことないが、今作はちむどんどんするかなー。

2022/10/7

からしっかり雨。25分の徒歩通勤ですでに疲れる。商談続きであっという間に夜。もう一度耳鼻科に寄って帰宅。しかし一気に寒くなったな。ご飯を食べて、風呂に入って、配信終了までにもう一回、加藤千晶さんのライブを観る。あぁやっぱり最高。吾妻さんの新曲「俺の金どこいった」も最高。音楽に救われる気持ち。

 

HEP-HICK JOURNAL [gattan-003]

HEP-HICK JOURNAL [gattan-003]

Amazon

 

2022年9月24日~30日の話。

2022/9/24

昨日の疲れが出たのか8時半起床。ハムエッグとトースト、ヨーグルトの朝食。今日はのんびり散歩がてらユナイテッドシネマ大津まで。原田眞人監督「ヘルドッグス」観る。闇に落ちた元警官がヤクザ組織へ潜入、危険な男とコンビを組んで組織の中でのし上がっていくってなお話をスタイリッシュかつハードに描く。岡田准一のキレッキレかつ重いアクションに食らいつく坂口健太郎クンがかわいいっ。いや、違うか。しかし、まぁ、この手のハードアクションものは散々韓国映画で観てきたこともあって、ついつい比べちゃう。となると…。ま、でも、荒唐無稽な物語を徹底した作り物の世界と生身のアクションで見せていて週末映画としては十分楽しめた。俳優陣では意外とはんにゃの金田が良かった。

帰宅し、チャーハンとサッポロ一番塩ラーメンの昼食。食べ過ぎだなーと思いつつ、ここんとこのハードな仕事もあって、ハイカロリーでジャンクで、淫らな食事をしたくなる。時には娼婦のように。

昼食べ過ぎたので、夜はハマチの刺身のみ。賢者タイムな夕食。NETFLIXで「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」。ますます良い。続いて日本のドラマ「初恋の悪魔」最終回観る。ジャンルを超えて人の心のひだに触れる。隣人の優しさが感じられる良いドラマだった。

2022/9/25

7時半起床。久しぶりにフレンチトーストを作って朝食。妻と実家へ。車中では「ダイアンのTOKYO STYLE」。ここんとこと妻と外出するときはほぼ聴いている。

で母も一緒に墓参りして、実家でご飯。エビフライにポテトサラダ、切り干し大根やらモリモリ。さらにおはぎも食べて、一服してコーヒーにケーキ。実家に来ると食べ物がありすぎて困る。あれこれ食べさせたいという母の気持ちもわかるが、もう高校生じゃないんだから…。あまりに食べ過ぎて、夜は白ご飯は抜いて、冷ややっこと焼き魚のみ。

2022/9/26

昨日もらってきたおはぎを朝から食す。最後の晩餐は何にしたい?というお馴染みの質問には「おはぎ」と答える。なお11月~2月の冬季については「ぜんざい」とする。僕ぁ、あんこが好きなんだなぁ。大福、あんぱん、どらもっち。阿闍梨赤福、陣太鼓。甘そな奴は大体トモダチ。…ちょっと疲れてるな。

2022/9/27

国葬反対。最後まで。国民の半分以上が反対しているにもかかわらずその声が届かない。結局数にすら関係なく、自分たち以外の声は徹底して無視する政権の姿勢が浮き彫りになる。これもまた死んだ男が残した罪だ。国葬の模様をニュースでちらとみた。薄っぺらい男にふさわしい薄っぺらい祭壇。全部が見せかけだけ。取り巻きたちの死んでもなお尻尾を振りケツをなめる姿勢には恐れ入る。挙句の果てに統一教会の擁護にすら回るその思考回路。愛国の果てが反日カルトの擁護って、完全に破綻してるだろ。もう終わりにしてほしい。

2022/9/28

遅すぎる夏休み。朝からアップリンク京都へ。まずはセリーヌ・シアマ監督「秘密の森の、その向こう」を観る。祖母が亡くなり、祖母と母がかって暮らした家の片付けの為に、父母とやってきた8歳のネリー。そんな中、母が悲しみに耐えきれず家を出てしまう。母の帰りを待ちながら、母が昔遊んだ森を探索するネリー。そこで出会ったのは自分と同じ8歳の母だった。神秘的な森を舞台に描かれるファンタジー。幼い二人は森の中でたわいのない遊びに興じながら、心を通い合わせる。突飛な設定ながら、二人が繋がりを深めていく様はとても自然だ。森の中で秘密の小屋を作ったり、たわいのないお喋りを楽しんだりしながら、お互いの痛みや悲しみを喪失感を埋めあっていく。同い年の母と娘という奇妙な関係を越え、人と人として確かに心が通い合っていく。なんとも豊かな素晴らしい映画だった。

続いてはチョ・ヨンソン監督「空気殺人」を観る。救急救命室の医師・テフンのもとに突然意識を失い運び込まれたのは一人息子のミヌだった。肺が固くなる急性間質性肺炎と診断。そんな中、妻までもが同じ肺炎で急死してしまう。調査の結果、テフンはここ数年同じ病で倒れている人が続出しており、その原因が加湿器用の殺菌剤にあったことを突き止める。世界的な大企業が製造販売し、国も認可しているその殺菌剤。テフンは被害者たちとともに大企業に戦いを挑むのだが…。韓国で実際にあった事件を題材にした骨太な社会派エンタティメント。政治家や研究者を抱きかかえあの手、この手で罪をないものにしようとする大企業。そのやり口に憤怒しつつ、弱き者たちが巻き返しを図る。現在進行形の事件を風化させないと映画に、それもエンタメとして面白い映画にしてしまう韓国映画界の反骨心、物語さながらに弱者の側に立って巨悪に立ち向かう姿勢はやはり凄い。重い内容ながら最後まで飽きさせず、すかっとどんでん返しという王道エンタメ作。俳優陣ではごつい身体にどこか愛嬌のある強面で悪人、善人、コメディからシリアスまで幅広くこなす名脇役、ユン・ギョンホが良い。いつになくクールで冷酷な悪役かと思ったら…という儲け役。

2022/9/29

テレビで「私のバカせまい史」。ものまねご本人登場史に笑った。清水アキラがなぜか競泳水着で浮き輪片手に橋幸夫「恋のメキシカンロック」のものまね。そこに登場するご本人・橋幸夫。謝るアキラにニヤリと返す幸夫。何度もこすられながら、毎回爆笑。ご本人・橋幸夫登場からの、恐縮しつつTバックにした水着を直すお馴染みのターンが最高。そして2022年、67歳の清水アキラが久々に水着姿でモノマネを披露、さらに79歳の橋幸夫ご本人登場。素晴らしかった。プーチンに見せてやりたい。知らんけど。

2022/9/30

朝ドラ「ちむどんどん」最終回。ついに最後までちむがどんどんしないまま。ダメな朝ドラの条件の一つ「強引な老けメイク」までやっちゃったよ。返還前の沖縄からスタートということで期待してたんだけど、結局沖縄が舞台である必要は本当にあったのかというぐらい浅かった。主演の黒島結菜はじめ俳優陣は良かっただけに勿体ないって感じ。

 

2022年9月17日~23日の話。

2022/9/17

6時起床。3連休に奄美に行く予定だった娘。台風で急遽ディズニーランドに変更。若いなー。で朝から娘を駅まで送っていく。ゆっくり朝食をとって久々に京都シネマへ。

まずは一本、深田晃司監督「LOVE LIFE」を観る。妙子は一人息子の敬太と再婚した夫・二郎と暮らしている。同じ団地の向かいの棟には二郎の両親が暮らしている。二郎の父はいまもまだ結婚に反対している。そんなある日、ある不幸が夫婦を襲う。失意に暮れる妙子の前に、失踪した前の夫、パクが現れて…。喪失感の中で生きることは難しい。心に空いた穴をだれかで埋めようとするが、それは結局まやかしでしかない。妙子も二郎も、パクも誰もが喪失感を抱えながら生きている。揺れながら、ぶつかりながら、それでも生きていくことが少しずつ喪失感を埋めていく。愛に溢れた日々なんてありえない。やりきれない悲しみの上に一瞬灯る愛がある。深田監督の映画にはいつもなんといえない不穏な空気が流れている。今作でもそこかしこに不穏な空気は流れるが、最後にふと晴れる瞬間がある。救われる気持ちになった。

あと本編に関係ないけど、途中で出てくるカラオケシーン。歌われる歌がパール兄弟「世界はGO NEXT」って!誰がわかるんだよ。でも嬉しくなっちゃった。

昼は「なか卯」で親子丼&ハイカラうどん(熱)のセット。相変わらず美味しいなー。

でもう一本はピル・カムソン監督「人質 韓国トップスター誘拐事件」を観る。韓国トップスターとは誰か?そう、それは我らがファン・ジョンミン兄貴!そんな兄貴が「誘拐されるファン・ジュンミン」役!本人役という設定からコメディかと思いきや、これがどハードにしてどバイオレンス!殴られ蹴られ、徹底的に痛めつけられ、失禁までしてしまう兄貴。韓国バイオレンス映画には様々な印象深い悪役が出てくるが、今作の悪役もなかなかのど腐れ外道ぶり。ニッポンの社長・辻似のいかれにいかれたサイコ野郎にゾフィー・上田似の躊躇せずに暴力をふるうクソチンピラ。いやはや面白い映画だったー。でこれ実際中国で起こった俳優誘拐事件があって、それを映画化した中国映画のリメイクなんだとか。実際の事件が基ってすげーな。

烏丸通を歩いて五条のマクドで、マックシェイクで休憩。ほっこりする時間。今日は王道の土曜日パターン。映画を観て、親子丼を食べて、radikoで「ホンモノラジオ」とか聞きつつシェイクを飲んで一休み。週に一回、こんな風に過ごせたらそれでいい。

2022/9/18

5時半起床、6時出発で水口まで。7時から18時までノンストップでイベント仕事。一日立ちっぱなしでさすがに足がきつい。老体に鞭打ってがんばる。19時過ぎ帰宅。

風呂入って、ご飯食べながら「鎌倉殿の13人」。壮絶。中川大志君、役者冥利に尽きるだろうなー。

で明日帰宅予定が台風で急遽今晩帰ってくることになった娘を迎えに駅まで。幼稚園の頃からの親友二人とワイワイ帰ってきた娘。ついでに皆を送り届ける。娘は幼稚園-小学校とずっと1クラスだったから友達たちも見知った顔。一人の子なんかは同じマンションだから0歳の頃からの付き合い。娘は一人っ子だけど、幼馴染が居て今もこうして友達として楽しく遊んでいるのをみると良かったなと思う。

2022/9/19

8時起床。嵐の前の静けさか。一日家で妻と「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」を観て過ごす。主人公、ウ・ヨンウが傷ついたり戸惑ったりしながら少しずつ少しずつ成長していく。くーっ、いいドラマ。

2022/9/20

たまりにたまった事務仕事を片付けているうちにあっという間に1日が過ぎる。以上。

2022/9/21

今月で廃刊となる水道橋博士編集長の「メルマ旬報」。続々と連載陣による最終回が配信。昼休みに順次読んでいく。いかに水道橋博士さんが多くの人をフックアップしてきたかがわかる。柳田さんと角田さんの「戯れ言WEST(仮題)」でも語られていたが、博士さんほど多くの後輩たち、芸人にとどまらず作家やライターなどその才能を見つけ、場を与え、世間に紹介してきた人はいない。博士さんを媒介にどれだけの人や作品と出会ってきたか。「メルマ旬報」はまさにそんな博士さんの集大成とも呼べる媒体だった。この場所から一体何冊の「本」が生まれたか。そう簡単にできることではない。つくづく凄いことだと思う。

2022/9/22

今日もひたすらお仕事。打ち合わせに次ぐ打ち合わせ。人と話すのは別に嫌いじゃないが、それでもやっぱり疲れる。帰りにネットカフェでコーラと週刊誌で一服。頭をクールダウンさせて帰宅。

2022/9/23

6時半起床。休日出勤でイベント仕事。コロナでこの2年ほど、ほとんど無くなっていたイベント系の仕事が一気に復活。年齢的に引退したいところだが、なんせ人手不足。小雨降る中、8時から17時まで立ちっぱなしの動きっぱなし。30代の頃のように体は動かないし、疲れも残る。帰宅してからもぐったり。

2022年9月10日~16日の話。

2022/9/10

7時半起床。ハムと玉子のホットサンド、ヨーグルトの朝食。朝から日記を書く。音楽を聴きつつ3時間もかかってしまった。昼はパスタ。まぜるだけのたらこソースで。たらこスパゲティを初めて食べたのは大学生の頃か。びっくりするぐらい美味しかった。それまではミートソースとナポリタンしか食べたことなかったからなぁ。

で妻と栗東のさきらホールまで。ヨーロッパ企画公演「あんなに優しかったゴーレム」を観る。ドキュメンタリー番組のクルーが野球選手の密着で彼の生まれ故郷に。そこには「ゴーレム」と呼ばれる土で出来た像が。そして町の人々は当たり前のようにゴーレムを「生きている存在」として語る…ってなファンタジー風味な会話劇。信じる・信じないの境界線が言葉の応酬で押し合い、へし合い、笑いを増幅させる。セリフのやり取りでキャラクターが立ち上がってくる感じ、地上と地下に分かれたセットの巧みな使い方など、ずっと最後まで楽しい舞台だった。

そのまま車で妻の実家に寄って義母を拾い、ほど近い娘の職場に寄って仕事終わりの娘を拾って、皆で久しぶりに外食。キャベツ、ご飯、みそ汁お替り自由、胡麻をするタイプのとんかつ屋。娘もすっかり社会人。まだまだ心配な部分もあれど、自分で働いて稼いでちゃんとやっている。俺よりよっぽど真面目に働いている。えらいもんだ。働くまでは皆で食事して手もぷいと携帯片手にって感じだったが、今は大人として会話もできる。感慨深いな。

でとんかつは美味いな。九州のとんかつチェーン、濱かつを思い出す。サラリーマンになりたての30年前、九州エリアの担当で月の半分は九州出張。毎回最終日の夕飯は濱かつと決めていた。ランチ抜いてまで行ってたな。食べ放題の漬物、ぶらぶら漬けがあまりに美味しくて毎回買って帰ってた。仕事のことは忘れたが、こんなことだけ覚えてる。

テレビで松本人志太田光の共演。はしゃぎまくり、空回りまくる太田さんに松本さんが「M-1審査員やらへんの?」とぶっこむ。上沼恵美子オール巨人の二大巨頭が審査員を降りると明言している中、次の審査員は気になるところですな。太田光が入ったらそりゃ話題になるし盛り上がるだろう。

松本人志太田光、ともになにかと話題。時に頓珍漢にも思える政治的発言などで炎上もしばしば。いや、そりゃ僕も、んっ?って思うこともある。太田さんなんて9条を世界遺産になんて本を出すぐらいリベラルな人なのに…とか思ったり。でも「松本も太田もおもんない。」「笑ったこともない」なんて絶対言えない。実際どれだけこの二人に笑わせられてきたか。今もやっぱり松本人志は圧倒的に面白いと思うし、「水曜日のダウンタウン」に「ガキの使い」なんかは欠かさず見てるし大爆笑してる。爆笑問題の漫才があれば必ずチェックするし、TBSラジオ「JUNK爆笑問題カーボーイ」は毎週の楽しみになっている番組だ。それゆえに複雑な気持ちになることもあるが、爆笑させてもらった記憶がある以上は永遠に嫌いになることはできない。逆にほんこんみたいに笑わせてもらったことがなければとことん嫌いになれるのに。

2022/9/11

7時半起床。ハムとチーズのホットサンド、ヨーグルトの朝食。朝から妻と買い物。昼はそうめん。午後はうとうとと昼寝。NETFLIXで「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」観始める。これは確かに面白い!ルックはポップでありつつ、ここまで考え、練りこんで、深いところまでたどり着くのかという物語。まいった。

2022/9/12

涼しくなったと思ってたのに今日は随分暑い。営業車もクーラー全開で。

2022/9/14

テレワーク日。とはいえアポもあり外出したり、ちょいとトラブルもあり電話片手にバタバタと。テレワーク飯はインスタントの冷やし中華

radikoで「たまむすび 町山智浩アメリカ流れ者」「深夜の雑談 北野誠×角田龍平」「東京ポッド許可局」「中川家のザ・ラジオ・ショー」など。

2022/9/15

一日外回り。昼は道の駅で巻きずしとざるそばのセット。手作り太巻き美味しい。

近々転職する後輩と車中でいろいろ話。自分も転職してもうすぐ20年になる。今もまだいろいろあるが総じて転職してよかったとは思ってる。この先はどうなるかはもちろんわからないけどね。結局言えることは未来のことなんてなんもわからんってことだなー。人生を選ぶんじゃない、人生に選ばれるのだ。選ばれた方に行くだけだ。彼もまたそっちに行く人生に選ばれたんだろう。

2022/9/16

今日も一日外回り。朝から商談して昼は昨日から計画していた商店街の食堂へ。前はハンバーグ定食を食べたので、今日はロースかつ定食。カウンター席から店主の丁寧な仕事ぶりを観てるだけで嬉しくなる。1個ずつメニューを制覇していきたい。いかにも街の洋食屋のとんかつ。デミグラスソースがいい感じ。美味い!しかし隣の客が頼んでたオムライスも実にうまそうだった。次はオムライスだな。

radikoで角田龍平さんの「蛤御門のヘン」聴く。今週は角田さんの一人喋り。角田さんがオール阪神師匠から聞いた、故・太平シロー氏の話。ともに天才漫才師でありモノマネの達人であるオール阪神師匠と太平シロー氏は、なんと同じ中学の同級生、それも同じクラスだった!という話。なんたる濃厚なクラス!それだけでロマンを感じる。中学時代からシロー氏の天才ぶりを感じていた阪神師匠。若くして人気漫才師となっていたにもかかわらず、サブロー・シローが吉本に移籍してやってくると聞き、脅威に感じて巨人師匠に「サブロー・シローには絶対勝てない」と思わずつぶやいたなんてすごい話。漫画「漫才スーパースター列伝」がもしあるのならば、サブロー・シロー編で絶対描いてほしい名エピソードではないか。原田久仁信先生のペンによるちょっと怯えた表情の阪神師匠。腕を組み目を閉じる巨人師匠。右上にギラギラした表情のサブロー・シロー二人が浮かび上がる。ここで「続く」の文字。

太平シロー氏と言えば「ひょうきん族」でレツゴー三匹のパロディで披露したレツゴーじゅんのモノマネ。鶴ちゃんがひっくり返って大爆笑していた姿が忘れられない。あの時の爆笑最大風速は凄まじかった。ぜひこのシーンも原田久仁信先生に描いてほしい。

で番組はコラアゲンはいごうまん兄さんとの思い出話、柳田さんの「40を過ぎて出来た友達」話など、いつになくじんわり沁みるパーソナリティのまさにパーソナルな魅力がにじみ出たいい放送だった。

有村架純主演のドラマ「石子と羽男」最終回。いささか早足な感じもあったがいいドラマだった。「弱者に寄り添う」なんてイマドキ陳腐で、はやらないメッセージかもしれないが、それでもこれをやり続けることが重要だと思う。政治や経済に比べると文化は弱くて即効力はないけれど、人の心に深く入り込むことができるものだと思う。たとえただの理想だといわれても、正しいメッセージを投げ続けなければならない。その小さな一投がさざ波のように人の心に広がっていけば、きっと明日は今日より良い一日になる。ここ数年、政治や司法が強きを助け弱きを挫く姿を散々見せつけられてきた。嘘つき、ペテン師、悪党どもがでかい顔でのさばる世界はもうたくさんだ。心から思う。

 

2022年9月3日~9日の話。

2022/9/3

7時30分起床。トーストにハムエッグとヨーグルトの朝食。午前中は部屋で、音楽を聴きながら日記を書く。昼からはユナイテッドシネマ大津へ。腹ごしらえにフードコートでインドカレーの昼食。ナンがでかい。

デヴィッド・リーチ監督「ブレットトレイン」観る。ブラット・ピット主演のバカ映画。いい意味で。東京~京都間を走る新幹線っぽい列車の中で、ブラット・ピット演じるついてない男が繰り広げる大アクション。徹底的に作り物の世界で次から次へと襲い来る刺客。米原駅から乗り込んでくる真田広之が激渋。まーここまで大嘘の世界でドカーンとやってくれたら中身はないけどスカッと楽しい。休日にスクリーンで楽しむべき映画。

夜は録画していたNHKドラマ「アイドル」を。舞台は昭和初期の新宿。劇場「ムーラン・ルージュ」で日本初の「アイドル」となった明日待子の物語。未完成な踊り子がその未完成さゆえ、人気を集め「アイドル」となっていく。多くの学生が彼女会いたさにムーラン・ルージュに押し寄せる。やがて日本は戦争へ突入。出征した若者たちの為にと慰問を志願する待子だが…。あか抜けない田舎娘がステージで磨かれ、成長していく姿は活き活きとして輝かしい。だが戦争に飲み込まれ、出征していく若者たちを勇気づけようという行為が、実は若者たちを死に向かわせていたのだと知る。そのやりきれなさが切ない。なんとも魅力的な表情を持った主演の古川琴音が良かった。

2022/9/4

7時30分起床。昔は休みともなれば10時~11時まで寝ていられたが、今や寝る体力もない。午前中に妻と買い物。買ってきた天ぷらとざるうどんの昼食。「マルコポロリ」で二丁目芸人特集。虚実入り混じったエピソードトークケンコバの真骨頂という感じで面白い。

で夕方から妻と京都劇場まで。楽しみにしていた「世界は笑う」を観る。作・演出はケラリーノ・サンドロヴィッチ。舞台は昭和30年代、戦争の傷跡がまだ残る新宿。ドラマ「アイドル」の世界から地続き。笑いに憑りつかれた者たちの群像劇。勝地涼伊藤沙莉演じる兄妹のテンポのいい会話から始まり、千葉雄大演じる喜劇役者・是也が登場。彼がヒロポン中毒であることをさっと見せる。そしてオープニング。このオープニングがとにかくかっこ良くて度肝抜かれた。役者たちが次々と現れ照明、映像と一体化して紹介されていく。現代的な技術とセンスで昭和の世界が幕開ける。序盤は瀬戸康史演じる田舎から出てきた是也の兄・彦造にラサール石井温水洋一山内圭哉、マギーといったコメディの手練れたちが絡んで次々と笑いを生み出していく。昭和の軽演劇的な笑いを大いにまぶしながら、それぞれのキャラクター、関係性がよどみなく描かれる。笑いつつ複数の登場人物たちを巧みに出し入れしながら整理していくその語り口の良さに唸る。瀬戸康史は以前三谷幸喜の「日本の歴史」を観てその芸達者ぶりに驚いたのだが、今回もアクの強い登場人物の中で一服の清涼剤的な役割でありながら、受け身を取りつつ笑いを増幅させる演技で素晴らしい。あと彦造が恋する戦争未亡人の初子を演じる松雪泰子も良かった。最初彼女とはわからなかったぐらい、昭和の名女優然とした声の出し方と佇まいが素敵だった。

そしてシーンは劇団「三角座」へ。ここにもまた個性的なメンバーがそろう。荒くれ、殺伐としつつ、どこかに哀愁を感じさせる「喜劇人」たちの素顔。昔何かのインタビューでケラさんは幼少期、ジャズミュージシャンだった父の関係で昭和の喜劇人たちの姿を間近で見ていたというのを読んだことがある。ケラさんが肌で感じたであろう喜劇役者たちの姿が反映されているのだろう。どこか破滅的で狂気じみていて、なのに哀愁が漂う喜劇人の素顔。ラサール石井が演じる老喜劇役者トーキーさんが味わい深い。ラサールさん自身も師匠である杉平助さんはじめ昭和の芸人の匂いを存分に浴びてきた人だ。とても魂のこもった芝居で、犬山イヌコ演じる元相方のネジ子とのやりとりは可笑しくて悲しくてじんわりと沁みた。

そして数年が過ぎ、ヒロポン中毒から脱した是也は人気役者となっていた。だが自身が目指す笑いと人気とのギャップに次第に追い詰められていく。「笑わせてるんじゃなく笑われているだけ」。是也は自分の笑いを詰め込んだ渾身のホンを残し去っていく。

休憩をはさんで2幕は劇団が遠征に訪れた地方の旅館が舞台。是也が残した笑いに満ちた脚本は観客に受けず劇団はまたもとの古い脚本で芝居を続けている。劇団員たちは相変わらずで、ぬるくゆるく日々をやり過ごしている。初子にプロポーズをしようと計画する彦造。緒川たまき演じるトリコにその算段を相談する。緒川たまきさんの極めてチャーミングなコメディエンヌぶりが楽しい。アチャラカな二人のやり取りは喜劇の喜びに溢れている。

そしてネジ子の回想シーンも素晴らしかった。トーキーと二人で演じた「金色夜叉」を旅館の従業員から「一番面白かった!」と言われて喜ぶ二人。

「ただ、こうして生きてきてみるとわかるのだが、めったにはない、何十年に一回くらいしかないかもしれないが、“生きていてよかった”と思う夜がある。一度でもそういうことがあれば、その思いだけがあれば、あとはゴミクズみたいな日々であっても生きていける。」これは中島らもがエッセイで残した有名な文章だが、ふとよぎった。

二人にとって「生きていてよかった」と思える瞬間。「面白かった」というその一言が彼らを生きさせる。

自分の笑いが受け入れられず、再びヒロポン中毒となった是也。中毒症状を見せる演出もすごかった。彼に襲い掛かる妄想が舞台を覆い飲み込んでいく。

そんな是也にも一筋の光がある。観客に受け入れなかった脚本だが、劇団の看板役者で反発しながらも唯一「笑い」の部分で認め信頼するイワシ大倉孝二が素晴らしい)に面白いと認められたのだ。「笑い」に憑りつかれた者同士であり「笑い」に生きる同志であるイワシと「笑い」で通じ合えたことは、ヒロポン以上の昂揚を彼にもたらせる。そして是也は静かに病院へ送られていく。

2幕の終わり、彦造の恋も劇団の未来も残酷に打ち砕かれていく。

ラストシーンは再び新宿の街。夢の跡、過ぎ去りし日々の余韻。オープニングでテレビに悪態をついていた温水洋一演じるロートルのダメ役者、青タン。三角座に拾われるもどうしようもないセコっぷりを見せていた彼が、テレビの世界で人気を得て「先生」と呼ばれている。もっとも単純でもっとも鈍感で、何一つ変わらず同じことをやり続けた男が時代によってその位置を変える。人生の皮肉であると同時に人生の面白さがそこにある。飲み屋で働く彦造は是也が残した脚本を出版社に持ち込んでいた。生きている限り人生は続く。彦造あてに出版社から電話が入る。人生には悲劇と喜劇が繰り返し訪れる。

休憩挟んで4時間近い芝居だったが、全く長さは感じなかった。中学生の頃に読んで以来もう30年以上ずっとすぐ手に取れる場所に置いている小林信彦「日本の喜劇人」。昭和45年生まれの僕には戦後~昭和30年代の新宿、喜劇人たちの世界はもちろんわからないが、繰り返し読んできたこの本に登場する喜劇人たち。エノケン・ロッパからまさに新宿「ムーランルージュ」の役者だった森繁久弥由利徹伴淳三郎三木のり平渥美清フランキー堺、そして本書の中でも印象深い泉和助といった喜劇人たちのモノクロ写真が脳裏に浮かぶ。笑いに憑りつかれ、笑いに生き、笑いに死んだ喜劇人達への深い共感と愛情を感じる芝居だった。いや、ほんと素晴らしかったな。

しかし思えばケラさんのことを知ったのは中学生の頃に見たNHKの特集番組。当時盛り上がっていたインディーズバンドを特集した番組でひときわ異彩を放っていた有頂天のリーダーにしてナゴムレコードの社主。「宝島」に載っていたナゴムの手書き広告も読んでたし、有頂天からロング・バケーション、慶一さんとのNo Lie-Senseと音楽は長く聞いてきし、「1980」とか監督作も見てるにも関わらず、芝居は観るのは初めて。何をやってたんだ、俺。俺のバカと言いたい。でも50を過ぎてまだこうして新しいものと出会って感動できるんだと嬉しくなった。

2022/9/5

月曜。朝、晩は随分涼しくなったがそれでも昼間は暑い。杉作さんの「ファニーナイト」聴きつつ外回り。悲劇にも喜劇にもならない凡庸な一日。それでも人生は続く。

2022/9/6

午前中は快晴だったが、会社を出るころには雨。

2022/9/7

テレワーク日。テレワーク飯はレトルトの牛丼。汁に浮かぶ肉を掬いながら。

radikoで「中川家のザ・ラジオ・ショー」、町山さんの「たまむすび アメリカ流れ者」や「東京ポッド許可局」、「北野誠のズバリサタデー」などを聞きつつ。

夜、NETFLIXで韓国ドラマ「私たちのブルース」を観始める。観たいドラマは多々あるのだが、時間を取られ過ぎるのでなかなか踏み出せない。

2022/9/8

通勤中に聴いてたのはBandcampで購入した「箱舟旅行の直枝政広(Live at 晴れたら空に豆まいて2022.7.16)」。メロウに響く直枝さんの歌とギター。山水画のごとくシンプルで深い。しばし聴きいる。

2022/9/9

外回り。昼、気になっていた天ぷら屋でランチをと駆けつけるが駐車場に車止めたところで得意先から電話。しばし話してやっとご飯だと店の扉を開けると店員から終了ですのでの一言。時計観ると14時2分。ラストオーダーは14時だとのこと。完全に天ぷらの口になっていたのに、なんと無慈悲な…。泣きながら店を後にして、やさぐれて目についた店でカルビ丼を食べてやった。

radikoタイムフリーで高田先生のラジオビバリー昼ズ。「ドリフターズとその時代」の著者、笹山敬輔さんがゲスト。笹山さんは富山の製薬会社の社長にして演劇史の研究家。まだ40代と若いのだが「アイドル」や「世界は笑う」の時代までをも精通していて、「ドリフターズとその時代」も演劇集団としての側面からドリフを取り上げた評伝。先週の日記でも書いた通りこれがすこぶる面白い。高田先生も「アイドル」や「世界は笑う」の話を絡めつつ「明日待子に会いに行っていた学生の中に野末陳平さんが居たんだよー」「ムーラン出身の由利徹さんは最後まで泣かせにはいかず笑いに徹した」などなどの逸話、若い人がこうして消えていく芸能史を残していってくれることは嬉しいと言葉をかける。笹山さん、今後研究したいのは?の問いに演劇史からひも解く声優の歴史、サザエさんを演じる加藤みどりさんにインタビューしたいとのこと。テレビ黎明期、新劇の世界にいた俳優たちが吹き替えに呼ばれ、やがてアニメへ移行していく。確かにその歴史は面白そう。そして誰もが知っているサザエさんだがその声の主・加藤みどりさんのことをどこまで知っているかというと何も知らない。うわー興味深いな。あと高田先生との会話で出てきてたけど、堺正章さんの評伝とか絶対残しておくべき。テレビ演芸史において絶対的に外せない人でしょ。誰もが知っているけど、誰も知らない。そんな人たちの話を聞きたい。

2022年8月27日~9月2日の話。

2022/8/27

久しぶりに京阪電車に乗って京都へ。MOVIX行く予定で家出たのだが、映画館のスケジュール諸々チェックして予定変更してアップリンク京都へ。イ・オクソプ監督「なまず」を観る。看護師のユニョンと恋人で無職のソンウォンのゆるーい日常。どこか懐かしい雰囲気と不条理さがまぶされたザ・韓国インディー映画!って感じ。物語は疑問符だらけだし、ひたすらオフビートなんだけど、今注目の若手イ・ジュヨンとク・ギョフンの自然な存在感に見入ってしまう。そして大女優ムン・ソリがいつになく軽く演じていて楽しい。

徒歩移動でMOVIX京都へ。その前に昼食。悩んだ末、気になってた鶏白湯ラーメンの店へ。ま、想像通りの味ではあるが美味しい。

ジョーダン・ピール監督「NOPE」観る。平穏な田舎町、空からの落下物により事故死した父から受け継いだ牧場を営むOJ。一瞬垣間見た空に浮かぶ不審な巨大物。妹のエメラルドとともにその不思議な物体を撮影しようと試みるが…。UFOの夢をたまに見る。それははるか上空というよりは絶妙な高さを飛んでいて、それが見る見る近づいてくる。巨大な飛行物体がわずか数メートル先に今にも衝突する、これはまじでやばいっと逃げ惑う夢だ。まさにその感覚を味わった。スクリーンに映る空が脅威に代わる。スペクタルな映像表現としての面白さがありつつ、差し込まれるチンパンジーの惨劇などその物語はメタファーだらけで目と頭がフル回転。すべての感覚が映画に飲み込まれ、一体何だったんだ?と観終わってからも映画が抜けていかない。面白くて謎めいて後を引く映画体験。凄いものを観た。しかし、こりゃ後で町山さんの解説とかチェックしなきゃ。

京阪電車で大津に戻り夜市の準備中の商店街を抜けて帰宅。夏も終わりだな。

2022/8/28

8時起床。珍しく妻と外食。クーポンがあったので「ブロンコビリー」でステーキランチ。サラダバーで欲張りすぎる。抜けない貧乏性。メガドンキで買い物などして帰宅。

NHKで「まんが道」。無事最終話まで放送された。富山から上京してトキワ荘に辿り着くまでの物語。ぜひ続編となる「青春篇」も再放送してほしい。ここからがまた面白いのだ。

大河「鎌倉殿の13人」くーっ、善児!心に残り続けるキャラクターになった。三谷幸喜梶原善の関係性なども含めグッとくる。

2022/8/29

午後代休で銀行行ったり諸々家の用事。

笹山敬輔ドリフターズとその時代」読了。著者は丁寧にメンバー一人一人の生い立ちからドリフ加入、そしてドリフで果たした役割などを辿っていく。その中でそれぞれの性格やコンプレックス、ルサンチマンなどが炙り出されていくわけだがドリフがいかりやの強い父性のもとで良くも悪くもグループを形成していったのがよくわかる。そしてその父性が軸となりいかりやと志村、二人の関係は奇妙にねじ曲がりつつ深く繋がっていく。絶対君主としてドリフを率いたいかりやに反発しながらも、やがて「父殺し」を果たし、自らが「いかりや化」していく志村。事故で記憶を失った実の父とうまく関係を作れなかったであろう志村が、いかりやと師弟でありながらライバル、そして疑似親子として愛憎入り混じる関係を形成していく。「お前、俺に似てるよな」晩年いかりやが志村に言った言葉である。くーっ!一度でもドリフのコントに笑った人は必読。そして日本演芸史~テレビ史においても貴重かつ重要な一冊。

 

2022/8/30

雨が降りそうで降らない。外回りでひたすら営業車を走らせる。車中で「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」ゲストはのん。性別とか年齢とかを超えた存在感で聴いてて元気になる。「東京ポッド許可局」でここんとこ牛・豚・鶏の中でどれか一つ食べられなくなるとすれば?という話題。これに関してはもう即答で牛を捨てる。まず鶏は絶対外せない。好物の親子丼にから揚げ、鶏のさっぱり煮、チキンカレー、冬場の鍋物には絶対鶏…鶏肉無しは考えられない。豚の汎用性も素晴らしい。最近は焼肉も牛より豚が好き。溶け出す油にカリッと焦げ目をつけた肉。サムギョプサルなんて最高。もちろんとんかつは絶対的エース。お好み焼きは豚玉だし、焼きそばは豚肉を食べるために食べてるようなもんだ。そうなると必然的に牛を切り捨てることになる。牛丼やすき焼きが食えなくなるけど、豚丼や鶏のすき焼きもそれはそれで旨いからなんとかなる。っつーかまじめに仕事しろ、俺。

2022/8/31

テレワーク日。一日部屋にいてPCに向かうのもしんどいな。テレワーク飯はざるそばと昨日の残りの枝豆と塩昆布をご飯に混ぜた枝豆ご飯。美味しい。

Webマガジン「onotano」郷ひろみ特集、ライターの下井草秀さんによる「郷ひろみを知るための厳選オリジナル・アルバム22枚」が素晴らしい。読み物としても面白く、興味を惹かれ郷ひろみのアルバムを順に聴いている。筒美京平先生をはじめとした作家陣の様々な実験を飲み込む郷ひろみの声の強さ。聴いてて楽しい。サブスクについてはいろんな意見があるが、やはり様々な音楽遺産に気軽にアクセスできるってのは単純にうれしい。サブスクがなければ40年前の郷ひろみのアルバムを聞くという行為は相当ハードルが高いだろう。またサブスク時代にあってはこういうレビューが本当に大切だと思う。このちょっとした後押しが聴くという行為に繋がり、新しい扉を開いていく。放り投げられた小石がやがて大きな波紋を生むのだ。

otonanoweb.jp

2022/9/1

9月。プチ鹿島さんが言う通り、9月になったらもう大晦日。ここからが早いのだ。

2022/9/2

今日も一日外回り。radikoで角田龍平さんゲストの「桑原征平 粋も甘いも」聴く。征平さんお素晴らしい話術に感動。とんとんとんと畳みかけ、気持ちよくゲストに話を振る。リスナーを誰一人置いていくことなく、話を引き出し、興味を掻き立てる。角田さんとの見事なラリー、素晴らしかった。

爆笑問題カーボーイ」オープニングでは太田さんが見たNHK柄本明 最後の講義」の話。たっぷり時間を使って語るのだがこれが凄かった。柄本明の話を通して、太田さんの演劇論、漫才も含めた人の前で演じるとは?が熱く深く語られていく。「わからない」ということを「わかる」こと。太田さんは徹底して考え、わかりたいと思っている人で、自分は無知であるという前提に立っている。わかってないのに、わかったようなことは言いたくないのだという強い意志がある。ゆえに様々な批判を浴びることもあるし、僕も時に太田さん何言ってんの?と思うこともある。それでも太田さんを信用しているのは、彼が言葉を、知性を、考えるということを投げていないからだ。

仕事終わりに映画を一本。沖田修一監督「さかなのこ」を観る。さかなクンのエッセイをベースに、さかなクンさかなクンになるまでの物語が描かれる。でさかなクン=ミー坊を演じるのが「のん」。もうこのミラクルなキャスティングだけで最高。映画は沖田監督らしいイリュージョンな演出と、とぼけたユーモアとオフビートな感覚が楽しい。でもポップでキュートというのとは違って、むしろ物語の奥には重く深いものが流れている。この前観た「こちらあみ子」と表裏一体というか、「普通」や「常識」と相いれない生き辛さを笑いに転じて描く無骨さがある。とはいえ大いに笑える映画でもある。ミー坊という異質な存在が巻き起こす愉快なコント的シーンの数々、役者陣の間と表情も素晴らしく声出して笑うシーンがいくつもあった。ミー坊の幼少期を演じる子役の子も素晴らしいのだが、学ランを着て青年期を演じるのんがとにかく見もの。「あまちゃん」以来の当たり役!夢中になってさかなの絵を描く活き活きとした表情、逆にさかな以外の部分での呆けたような表情。こいつ全く話聞いてねーなという絶妙な呆けぶりが最高。「普通ってなに?」と訊く時の屈託がないなんてものじゃない、迷いのないまっすぐさ。性別や年齢を超えた人間としての底知れない存在感。ミー坊とのんが一体化している。あとミー坊のペースに巻き込まれる心優しき不良の総長を演じる信頼と実績の磯村勇人、ミー坊の幼馴染で理解者でもあるヒヨを演じる柳楽優弥も素晴らしかった。柳楽優弥は「浅草キッド」で演じた「たけし」が抜けきってないような感じがあって、でもその「たけし感」がめちゃくちゃいい。

何かを好きになって、夢中になる。その何かがあるってことは本当に幸せなことだと思う。多くの人は社会や生活に押しつぶされてその何かを手放さざるを得なくなる。

好きを好きでいられる世界。それを子供たちに残すのが大人の役目だと思う。

 

今週聴いた音楽は